蒼井 優 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「蒼井 優」

2017/12/25

「10年前にこの戯曲に出会い、アンチゴーヌは私のヒロインだったので、まさか自分が演じることになるとは思っていなかったです」

蒼井 優

撮影/加藤千絵(CAPS) 取材・文/永堀アツオ ヘアメイク/石川智恵 スタイリスト/田畑アリサ 衣装協力/ニットトップス¥5,800:Ray BEAMS(問合せ先:レイ ビームス 原宿/tel:03-3478-5886)、スカート:スタイリスト私物

ドラマ『先に生まれただけの僕』(NTV)の現代社会の先生役をはじめ、ドラマ、映画、舞台、CMと様々なジャンルで、その独特な存在感で魅了し続けている実力派女優・蒼井優。デビュー出身者でもあり2018年1月に主演舞台を控える彼女に、10年前に出会ったという本作についての想い、舞台の魅力・面白さなどを聞いた。
蒼井 優
――この作品が発表された際、蒼井さんのコメントに“ちょうど10年前にこの戯曲に出会った”とありましたが、どのようなきっかけでこの戯曲に出会われたのですか?
「蜷川(幸雄)さんの舞台(2004年の『シブヤから遠く離れて』)に出させていただいたときに、当時の私は、戯曲に触れる機会もあまりなかったので、“戯曲の世界にいろいろと慣れたほうがいい”ということで、演出助手の方にたくさんの戯曲をいただいたんです。その中の一つに『アンチゴーヌ』があって、今でも持っていて。ボロボロになるくらい、何度も読んだ本でした」
――たくさんあった戯曲の中から『アンチゴーヌ』に惹かれたのは?
「二十歳のアンチゴーヌが魅力的な女性だったんですよね。それに、どこか自分がクレオン(国王)のように、社会に迎合した考え方になっているんじゃないかと感じたときに、アンチゴーヌから力をもらっていて。勇気をいっぱいもらいました」
――作中のアンチゴーヌと同じ年齢の時に出会って、20代はアンチゴーヌとともに生きてきた?
「本当にそうだと思います。でも、アンチゴーヌは私のヒロインだったので、まさか自分が演じるとは思っていなかったです」
――いつかやりたいとは思ってなかった?
「まったくなかったです。普通は同じ年くらいの登場人物の本を読んだら、そういう発想になるんでしょうけど。“『アンチゴーヌ』の舞台が観たい”とは思っていたんです。でも、自分の中でのアンチゴーヌは実在の人物に近いくらいの感覚になっていたんですよね。一人の人間として見ていたので、そういう発想にはなりませんでした」
蒼井 優
――“あるセリフをどうしても生で聞きたかった”というコメントも残していますね。
「最初に本を読んだとき、“おお!!”って驚いたんです。今回は脚本が違うので、全く同じ言葉ではなくなっているんですけど、その一文をこの王様に向かって突きつける強さが変わらずに好きですし、クレオンと対峙する際のセリフは大切に言いたいなと思います」
――自分ではやらないと思っていたヒロインを自分でやることが決まって改めてどう感じました?
「まず、“こんなにセリフがあったのか!”って思いました。一番はそれです。アンチゴーヌは、登場人物が出てくる度に喋るので、もう出てこないでくれって思ったくらい(笑)。それは冗談だとしても、信念を貫くってすごい覚悟がいるし、信念を持っているアンチゴーヌはものすごいエネルギー量を持った人なので、本当に悔いのないように1公演1公演やりたいなと思います」
――年齢を重ねたことでアンチゴーヌに対する気持ちの変化はありました?
「クレオンに対する印象が違いました。初めて読んだときは、完璧にアンチゴーヌ目線で読んだけど、今はクレオンの孤独さや苦しみもわかるようになって。アンチゴーヌに対しては若干、憧れに近くなってきているけど、クレオンの方が実感を持ってわかるって言えるなと思います」
蒼井 優
――大人になったっていうことなんですかね。わかっていいのかどうか迷いますが。
「でも、いろんな立場の人の感情がわかるようになるのは楽しいんじゃないかと思います。クレオンの気持ちを想像すると、日本のトップの人の気持ちがわかったりもし始めるし。わかるというか、想像するようになってくるって言った方が近いかな」
――大人になって読むと、国の法や規律を守るクレオンと、人間としての正義を守りたいアンチゴーヌ、どちらも正しく感じたりします。
「そうなんですよね。動物なら許されるけど、人間なら許されないことってたくさんあるから。<たとえ一人でも、世界に立ち向かう。>っていうキャッチコピーも、世界なのか、社会なのかどっちなんだろと思うんですよね。もしも動物なら、クレオンも逃げ出して、動物として生きればいいけど、社会に生まれちゃっているから、王として生きるしかない。同じようにアンチゴーヌも社会に生まれたはずなんだけど、もっと動物的でいられているがゆえに、こういう状況になってしまっている。そこが人間の面白さかなって感じたりしていますね」
――翻訳劇はハードルが高いという方もいますが。
「『アンチゴーヌ』はとてもわかりやすいと思います。私が知っているものの中で、一番シンプルな話だと思う。戯曲を読みなれていなかった20歳の私がわかったくらいですから。登場人物も少ないですし、まっすぐの道で、ちょっとだけ揺れ動いてる感じ。“自分って一体なんだろうか”、“人間って何なんなんだろうか”、“社会や世界ってなんだろうか”とか。いろんなことを感じてもらえると思うんですけど、決して難しくないし、太い芯がどんとある作品なので、わかりやすい作品ではあると思います」
蒼井 優
――今回の劇場は、客席の中央に十字の舞台が組まれた特設ステージになっています。
「そうなんですよね。十字架の四隅にお客さん入っていただくから、こちらとしてはみなさんをテーバイっていう国の社会の人たち……つまり、共演者として考えていて。舞台はお客さんで本当に芝居が変わりますからね。“お客さんと作り上げていくのが楽しいんだ”と、昔、先輩がおっしゃっていたことが、最近、やっとわかるようになってきました」
――これから稽古が始まりますが、何か準備はしていますか?
「とにかく、最初はリラックスして稽古場に行くことをイメージトレーニングしています。主演舞台というのはそこまで経験がないので、いいカンパニーになればいいなと思っています。あとは前の戯曲を参考にしながら、新しい台本と見比べたり、ネットで英文の『アンチゴーヌ』も読んで見たりして、セリフをちょっとずつ覚えています。やっぱり、新年を楽しく迎えたいですし、今はとにかく、ワクワクしています。年が明けると、また新しい気持ちになるだろうし、お客さんと一緒に作品を作れるのも楽しみだし。そのために、年末に追い込んで、一生懸命にお稽古したいし、いいカンパニーを作りたいなって思っています」
――2017年はご自身にとってどんな1年でした?
「ドラマ『先に生まれただけの僕』で、初めて高校の先生役をやらせてもらったことが大きかったです。このドラマの生徒役の方々は、あまり役者としての仕事の経験がない10代の子たちをあえて、オーディションで選んでやっていて。最初はみんなすごく緊張していたし、声も張れないし……という状況から始まって、3ヵ月間一緒にいたんですけど、最後は別人になっていたんですよね、みんな。“こんなまっすぐにセリフ言えるようになるんだ”、“一本の作品でこんなに成長するんだ”と思ったときに、“私、この一本でどれくらい成長したんだろう”と感じて。そのくらい、すごく刺激をもらいましたし、私も一作品あたり、あの子たちくらい成長したいって思ったんですよね。それが今年、大きかったですね。本当にみんな素晴らしかったから」
蒼井 優
――ご自身の10代も思い出しました?
「はい。当時の私は、特に成長したいとも思ってなかったし、割とぼんやりしていたけど、きっと、あのくらい成長していたんだろうなって。今は言われたことをちゃんとやるとか、怒られてもどこかごまかすことができるようになっているじゃないですか(笑)。そういう保身も考えずに、ちゃんと作品と向き合って、ちゃんとぶつかることができたら、私もまだいけるんじゃない!っていう感じで、勝手に自分に希望を見出していました(笑)」
――そんなことがあったんですね。ドラマで刺激を受け、映画『彼女がその名を知らない鳥たち』では、報知映画賞で主演女優賞も獲得しました。映像作品をはじめ、多ジャンルで活躍されている蒼井さんが思う、舞台作品の魅力・面白さとは?
「同じ立場の俳優っていう道にいる方々と長い時間、一緒にいられるというのは魅力の1つだと思います。映像の世界だと、作品によってはそんなに長く現場にいないこともあるので。それと映像では必然的に同じシーンが多い人といることになるけど、舞台の場合は、同じシーンがない人ともずっと一緒にいられるので、一気にいろんな人の考え方や作品との向き合い方を見ることができる。それは、私にとっては大きな魅力になっています」
――映像を中心に活躍されている方の中には、舞台はやってみたけど苦手だったっていう方もいますが。
「多いかもしれませんね。でも、私は好きとか嫌いとか、まだ判断できるほどやってないので、“知りたい”という気持ちの方が強いです。何が自分にできるのかを知るのも大事だけど、何が自分はできないかも知りたいのでやっています」
蒼井 優
――観る方としての面白さは?
「観劇する立場としては、映画からもらうパワーと、演劇からもらうパワーは別物だなと感じていて。映画はストーリーだったり、瞬発力からくるパワーだったりが素敵だなと思うんですけど、演劇の場合は、持続力と瞬発力の両方を観ることができるので、私は生のお芝居を観るのも大好きです」
――デビュー出身者でもある先輩の蒼井さんから、役者を目指しているデビュー読者に向けて、夢を叶えるために必要不可欠だと思うことは?
「感性、そして自分が何を好きかをはっきり言える強さ。それが、人に笑われるようなことでもなんでもいいんですよ。好きなものがあることが今の社会では珍しいから。嫌いなものは簡単に言えるし、嫌いなものを言って、優位に立った気になっているようでは役者にはなれないと思う。自分が好きなものをはっきり持つことが大事かなって思います。あと、私は最近、学校とか会社にいるのが苦しく感じている人はみんな、この世界においでって思っていて。もちろん、役者として役をもらうのは難しいことだし、未だに私も何にも保証がない中でやっていますけど、映画でも演劇でも、とっても情に厚い人がいっぱいいるから、少しでも興味があるなら挑戦してほしいなと思います」
――俳優部以外にも衣装部、美術部、演出部、照明部などたくさんありますしね。
「“作品を一緒に作る”という意味で言ったら何にも変わらないし、私たちも“役者”という名のスタッフですからね。何より、これからこの世界を目指しているなんて、すごく素敵な立場だなって思うんです。あとは、みんなに言いたいのは、“オーディションに落ちても、あなたが悪いわけじゃない”ということ。オーディションに落ちると、人格否定されたような気持ちになるんですよね。でも、私が受かったときに気づいたのは、役が今まで合ってなかったなっていうことだったんです。受かったのは、役が自分に合っただけだった。だから、自分のキャラクターを知ることも大事だし、感性を磨くことも大事だと思います。ドラマや映画を観過ぎて、人の芝居に憧れないことも大切なんじゃないかなって思う。すでに誰かがやっている芝居の真似をする人は必要ないですからね。新しい感性を持って挑んで欲しいなと思います!」
蒼井 優
――ドラマや映画を観ることも大切だけど、それだけではないところで感性を磨くことが大切ということですよね。
「人とたくさん関わって、自分が何に喜んで、何に傷ついているのかをきちんと知る。その主観で台本とかオーディションのセリフを読むこと。自分の感性をちゃんと持っていれば、必ずオリジナルになると思うんです。“このセリフは、ここで息を入れて言う”とかを変に意識しすぎて演じてしまうと、何にも魅力的じゃなくなってしまう。その人なりの感性が見えなくなるから。この世界には、たくさんの先輩たちがいて、いろんなことを教えてくれるし、いろんな芝居をする役者さんがいる。スタートから誰かのモノマネになっちゃうと、勿体無い!となってしまうと思うんです。私もデビュー出身ですし、このインタビューを読んでくれている読者の方々といつか共演するのを楽しみにしてます!!」
Profile
蒼井 優(あおい・ゆう)●1985年8月17日生まれ、福岡県出身。14歳のときに、ミュージカル『アニー』でデビューして以降、女優として映画、舞台、ドラマ、CMなど幅広く活躍中。『フラガール』では、日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞と新人俳優賞のほか多数の賞を受賞。近年の主な作品は、映画/『家族はつらいよ2』、『東京喰種 トーキョーグール』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『ミックス。』、ドラマ/『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』、『先に生まれただけの僕』(NTV)など。
パルコ・プロデュース2018『アンチゴーヌ』
東京公演:2018年1月9日(火)〜27日(土)新国立劇場 小劇場<特設ステージ>
松本公演:2月3日(土)、4日(日)まつもと市民芸術館<特設会場>
京都公演:2月9日(金)〜12日(祝・月)ロームシアター京都 サウスホール<舞台上特設ステージ>
豊橋公演:2月16日(金)〜18日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT<舞台上特設ステージ>
北九州公演:2月24日(土)〜26日(日)北九州劇術劇場 大ホール<舞台上特設ステージ>
アンチゴーヌ
時代を超えて世界中で上演され続けている、フランスの劇作家ジャン・アヌイの代表的悲劇作『アンチゴーヌ』が、栗山民也演出のもと、岩切正一郎の新訳・豪華俳優陣の競演で現代に蘇る。
≪story≫
アンチゴーヌ(蒼井優)は、反逆者として野ざらしにされていた兄の遺体に弔いの土をかけたことで、捕らえられてしまう。
王クレオン(生瀬勝久)は一人息子エモンの婚約者である彼女の命を助けるため、土をかけた事実をもみ消す代わりに、遺体を弔うことを止めさせようとする。
だが、アンチゴーヌは、「誰のためでもなく、自分のために」と、法に背いても自分を貫こうとする。兄を弔うことを止めず、自分を死刑にするようにクレオンに迫るアンチゴーヌだが…。クレオンは、国の秩序を守るため、苦渋の決断を下す。

公式サイト: http://www.parco-play.com/web/play/antigone/
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