時代劇は今回が初挑戦になりますね。

「そうですね。時代劇も、京都に長く滞在しての撮影という環境も初めてです。しかも、素敵なキャストの方々というか、大先輩方が集まった作品でもあって。どの作品に入るときも緊張はするんですけど、今回は今までにはない緊張がありました」

京都の太秦撮影所に入ってみて、どんなことを感じました？

「周りの方から『太秦は怖いよ』って聞いていたんです。だから、ある程度の覚悟を持って入ったんですけど、きっと私の想像が相当すごかったんでしょうね（笑）。実際は、できて当たり前のことを教えてくださる現場だなって感じつつ、プロフェッショナルな技術の方々が集まっているので、いろんなことを学んでいる毎日です」

時代劇に対する不安は解消されました？

「私自身は、所作や喋り方を気にしていたんですけど、プロデューサーさんや監督さんから『気にせずに、そのままで大丈夫』って言われたんです。長屋の女房たちというのは、礼儀や所作を学んでいない人もいるので。とはいえ、手の組み方１つで、何か意味を持ってしまうのではないかっていう怖さもあったんですけど、初日の撮影で監督さんから『何か問題があったら、こっちから言うから大丈夫だよ』って言われてからは、どんどん自由に楽しく、“おぶんちゃん”をやらせていただくようになりました」

おぶんちゃんはどんな女の子だと捉えました？

「一話目の試写を観て思ったのは、結構、怒ってるなって……」

あはははは。確かに、眉間に皺が寄っているシーンが多かったですね。

「そうなんですよ（笑）。（高橋）克典さん演じる信兵衛さんに『先生、ちゃんとしてください！』って詰め寄る場面が多かったんですよね。本来は明るくて元気で真っ直ぐな子であって。ただ、そこも悩んだところなんです。長屋の人たちと同じテンションで、同じ空気感を出せたらいいなと思いつつ、作中で一番若くてヒロイン的な立ち位置でもあるから、綺麗でいなくてはいけない存在でもある。でも、長屋だから、例えば江戸時代のお姫様ほど綺麗でなくていい。そういう立ち位置であることをしっかりと意識しながら、廃れすぎずに……っていうことを考えてました」

しっかりとした役作りや登場人物の中での立ち位置を考えて臨んだんですね。

「いろいろ考えてはいたんですけど、おぶんちゃんが何かをするっていうシーンでは、すべて頭の中に信兵衛さんの存在があるんですよね。おぶんちゃんの行動は全部、信兵衛さんのことを思ってのことなんです。鶴坊（赤ん坊の鶴之助）のためであっても、その根底には信兵衛さんを楽にさせたいっていう思いがある。自分ではなく、信兵衛さんの気持ちを一番に考えているという真っ直ぐさを大切に演じることで、自然とおぶんちゃんらしくなるかなと思ってます」

10代〜20代の読者にはこの時代劇をどんな風に楽しんで欲しいですか？

「現代には感じられないような、長屋のみんなの助け合い精神を見ていただけたらいいなと思います。私が小学生の頃は、目の前の家のおばさんと『あら、おかえりなさい』なんて会話もありましたけど、一人暮らしを始めてからはご近所付き合いは全くなくて。長屋のように壁も薄くて、会話も筒抜けなのは……現代だったら嫌でしょうけど（笑）、長屋の温かさ、こんな人と人のつながりがあったらいいなって少しでも感じてもらえたら嬉しいです」

撮影はもう少し続きますね。

「緊張していたけど、あっという間の日々で。諸先輩方に囲まれながら、刺激的で楽しい毎日を過ごしています！」

これまでは同世代との共演が多かったですよね。

「そうですね。特に今年は凄まじかったです（笑）。2月に『烈車戦隊トッキュウジャー』を撮り終えて、映画『先輩と彼女』を撮って、その後には『表参道高校合唱部！』があって……」

『烈車戦隊トッキュウジャー』を終えて、小島梨里杏に改名し、女優として新たなスタート切った1年だったのではないかと思うんですが。

「はい。ただ、戦隊ものを撮っている時から、“私にはこの仕事があるから大丈夫”という安心感はなくて。もともと先を見るタイプなので、戦隊ものをやりながらも、常に“次は何をするべきか”ということを考えていました。そこで、今まであまり経験のなかった学園ものの映画『先輩と彼女』の撮影があって、（志尊）淳くんが一緒でびっくりしました（笑）」

志尊くん演じる美野原圭吾が憧れる先輩・沖田葵役でした。

「沖田葵を演じるというのを意識しながら、原作の漫画を読んだので、そんなに悪い人に思えなくて。高校生の私が読んだら“なんでりかちゃんの邪魔をするの？”って思ったかもしれないんですけど、21歳の私から見たら、高校生のりかにとっては痛い言葉があったかもしれないけど、当然のことを言っているだけだなって思ったんです。監督さんからも『葵ちゃんを悪者にしたくない。温かい人にしたいんだよね』って言われて。だから、よくある恋敵というか、ヒロインを陥れようとする悪い人ではなく、人間味がちゃんと出ればいいかなと思っていて。あくまでも、圭吾に一方的に思われてて、りかから勝手に妬かれているだけで、葵さん自体は何も思ってない。だからこそ、一人別格で冷淡な感じがしてしまうかもしれないんですけど、私自身は、葵さんは“彼氏に浮気されている”というベースがあったので、可哀想な子だなって思っていたし、気持ち的に悪いものはなかったんです」

でも、圭吾に対して、思わせぶりで小悪魔的な態度をとったりもしますよね。

「確かにそう感じるかも。私も全体を通して映画を観たときに『誘ってるやん!?』って思いましたもん（笑）。だけど、葵さん自身は誘ってないんですよね。観てくださった方から『あれは好きになっちゃうよ』って言われたのは嬉しかったですけど、撮影では、一人だけ大学生の役でみんなと離れている役だったから、部活のシーンもなかったので、少し寂しかったです」

そのあとのドラマ『表参道高校合唱部！』も敵対する1軍メンバー役で……。

「そうなんです！“オモコー”も寂しかったです。私、寂しいんですよね（笑）」

（笑）。そのドラマでも圭吾役の志尊くん、りか役の芳根京子ちゃんと再共演してます。

「芳根ちゃんとは、『先輩と彼女』の時はぜんぜん喋らなかったんです。役柄的にもお互いに話さない方がいいだろうっていうのを探っていて。寂しいなと思いながらも撮影が終わってしまったので、打ち上げで全部、打ち明けたんです。『私は芳根ちゃんが演じてるりかちゃんに、自分がもう失ってしまったまっすぐさを痛いほど、感じてました。りかちゃんは葵さんに憧れていたかもしれないけど、葵さんはりかちゃんのまっすぐさやキラキラさに心を傷めることもあったと思う。そういうことを感じさせてくれたのは、芳根ちゃんだったからだと思う』っていう話をして。『もっと喋りたかったし、もっと仲良くなりかった』って伝えたら、『私もです。梨里杏さんが先輩で本当に良かったです』って言ってくれて。二人で打ち明けあって、号泣しました」

あはははは。そんなことがあったんですね。

「それがあっての、“オモコー”だったので、“仲良くなったのに逆戻りじゃん！”って思いました（笑）。しかも、今までは自分が演じる役は必ず愛してあげたいと思っていました。だから、小島梨里杏としては共感できなかったとしても、少しでも理解出来るポイントを見つけたり、愛そうとしてきたんですけど、風香ちゃんは…（笑）」

でも、風香がいないと物語が動かないですからね。

「そうなんですよね。作品に必要という意味では愛せます！演じる側としては性格の方を考えたりして、台本には書いてないけど、“きっと辛いことがあって、こんな子になってしまったんだな”っていう設定を自分なりに作って持っていったりしたんですけど、『もっと悪くていいから。悪なんだよ、悪』って言われたので（笑）、とにかく悪い子をやっていました」

（笑）。そのあとに、dTVの『みんな!エスパーだよ! 〜欲望だらけのラブウォーズ〜』があり、今回の時代劇もあって……。

「本当にいろんな役をやらせていただけた１年だったと思います。怒涛すぎて、必死だったけど、皆さんに“こんな役をやるの？”って驚きを与えられた年かなと思いますし、自分としても、できあがった作品を見て、面白い！と思えたので、充実していたと思います」

では、最後に、芸能界デビューを目指す読者にメッセージをお願いします。

「諦めずに続けることが大切だと思います。自分の好きなことをお仕事にするのは、楽しいばかりではなく、大変なこともいっぱいあると思うけど、好きだっていう真っ直ぐな心を忘れずに、決して諦めることなく、この世界に入ってきて欲しいです」

小島梨里杏
こじま・りりあ●2011年『グラビアJAPAN 2011』週刊プレイボーイグランプリを受賞後、ドラマや映画、舞台など女優業を中心に活動。主な出演作に、『烈車戦隊トッキュウジャー』（テレ朝系）、ドラマ『表参道高校合唱部！』（TBS系）、映画『先輩と彼女』など。現在dTVにて一挙配信中のドラマ『みんな ! エスパーだよ ! 〜欲望だらけのラブ・ウォーズ〜』では新ヒロイン・星野明日香／今日子として一人二役で出演中。『街活ABC』（日テレ系）、『あにまるまにあ』（tvkテレビ）レギュラー。