――それぞれ、役を演じる上でこだわっている部分、大切にしていることはなんですか？

鯨井康介「兄（東海道新幹線）を想う気持ちです！ 後にも先にもそれしかない。それ以外に何かありますか？（笑）」

橋本汰斗「確かに（笑）」

鯨井康介「とはいえ、東海道本線は日本最古の１本目の鉄道という重責や、そこから解き放たれたのが兄の存在だったり、いろんなバックボーンが描かれているので、この151年間の歴史の中で動いてきた彼の心情の変化というものを、シーンごとに意識していきたいなと思います。特に、今回描かれるのが、黎明期を共にした彼ら（函館本線役・北陸本線役）との今の話なんです。彼らや兄と出会い、変化した自分がどう彼らと接するのかというジュニア（東海道本線）を今回は楽しんでいきたい。そこをうまく表現できたらすごく嬉しいですし、2人のおかげだなって思います……最後、上手くまとめましたね！」

牧田哲也「いや、ソレは自分で言わなくていいやつ。周りが言うことだから（笑）」

橋本汰斗「あはははは！」

――橋本さんは、函館本線と西武新宿線の２役を演じますね。

橋本汰斗「僕の演じる2役は、ちょっと似ているんですよね。他の路線との関係性やキャラとしての立ち位置とか、似ている部分も多いんです。今回の稽古をやって改めて似ているな、どう分けて表現しようかなと考えているので、そこは意識してやりたいなと思います」

――演じ分ける際に、それぞれこだわっている部分は？

橋本汰斗「特に歌ですかね。歌うときの声の出し方は変えたりしています。西武新宿線のほうが浅いというか少し軽めな感じで、函館本線はもう少し男らしい感じで深くするよう意識しています」

鯨井康介「へ〜、スゴイね！」

牧田哲也「そっか。2役だと歌い方も分けたりしないといけないんだね」

橋本汰斗「多少、違いはわかると思います」

牧田哲也「僕はこの取材を受けている時点ではまだ創作の段階で、作り上げられていないのですが、今一番大事にしていることは、一喜一憂しないこと。原作を読んだり、いろんな話を聞いたりする中で気がついたんですが、僕が演じる北陸本線は人間の感情みたいなものが欠落してるキャラクターで、それにもちゃんと意味があるんですよね。僕ら３線は日本の鉄道の黎明期にできた鉄道路線で、もともと鉄道を作っていた国が手伝って作った東海道本線、函館本線があって、北陸本線はその３つ目で、初めて日本人だけで作った鉄道だったから欠陥が多かったらしいんです。なので、ちょっと頭のネジが１本ないというか、感情がないわけでもないし、ロボットでもないんだけど、みんなとはちょっと違う感じなんですよね。なので、みんなが舞台上でワイワイやっている中、一喜一憂せず、大らかにいるという感じが出たらいいのかなと思っています」

――日本の鉄道の御三家を演じるみなさん。それぞれお互い、役者としてどんな印象をお持ちですか？ では、まず鯨井さんから。

牧田哲也「鯨井ちゃんは地に足のついたお芝居をするイメージが強かったです。芝居が好きで、なおかつ器用にいろいろやっているっていうイメージがあったので、今回初めて共演できるっていう、ワクワク感がありました。一緒に稽古やってみても、そのイメージは崩れないまま。その瞬間、瞬間を楽しんでお芝居しているっていうのも感じられて、最初の印象から＋αの好感を持っています」

橋本汰斗「僕も（鯨井さんは）器用になんでもできるっていうイメージが最初に来ます。すごく真面目な芝居でもつい目がいってしまうし、ユーモアのあるシーンでも、やっぱり気づいたら目がいっているというか、そこにしか目がいかなくなってしまうような、魅力的な俳優さんだなって思います」