松井勇歩×納谷 健(劇団Patch) | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「松井勇歩×納谷 健(劇団Patch)」

2019/03/08

「シリーズものですが、他を観たことがなくても楽しめるし、『TRUMP』シリーズの特徴でもある“絶望”も、しっかりと味わえます!!」

松井勇歩×納谷健 撮影/mika 取材・文/根岸聖子

劇団Patch×TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』がいよいよ3月29日(金)より幕を開ける。2015年に劇団Patchの6回目の本公演として上演された『SPECTER』を、TRUMPシリーズ10周年を機にキャストを一新してリニューアル。今作で主演・臥萬里を演じる松井勇歩と、『TRUMP』シリーズ初参加となる納谷健に、同シリーズの魅力や人気の秘訣、本作ならではの見どころなどを聞いた。

松井勇歩×納谷健松井勇歩

――新作が上演されるごとに人気を増しているTRUMPシリーズですが、初演から10周年を迎える記念の年に、2015年に劇団Patchによって上演された『SPECTER』が再演されます。このシリーズの人気というのは、2人も肌で感じていたりしますか?

松井勇歩「実は僕、2012年に大阪でやっていた『TRINITY THE TRUMP』が、自分の人生で初めて観た舞台だったんです。僕にとっては記念すべき舞台観劇デビューとなった作品でしたが、そのあとも東京でD2さんによる『TRUMP』(2013)、ハロープロジェクトの方たちによる『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』(2014)と続き、劇団Patchで『SPECTER』をやることになった頃には、『TRUMP』シリーズの人気はかなり高くなっていましたね。大阪のABCホールで上演した前作のときと比べても、今回は東京公演が本多劇場、大阪公演が森ノ宮ピロティホールと、劇場も広くなり、また再演が決まったことへの反響がとても大きかった。作品のファン、人気は本当に根強いなと思いました」

松井勇歩×納谷健納谷健

――納谷さんは、前回『SPECTER』が上演された当時、まだ劇団Patch加入前で、今回が『TRUMP』シリーズ初参加となりますが、どんな印象がありますか?

納谷 健「僕が学生の頃、演劇部にいたときから噂には聞いていました。当時、演劇部に所属はしていたもの、将来俳優の道を目指そうとまでは考えてはいなかったんですが、『「TRUMP」っていう舞台がおもしろいらしいよ』と、耳に入ってきていて。その後、舞台の仕事をするようになってからも、この作品は演劇ファンの間だけでなく、より多くの人に支持されていることを実感しました。実際に劇場に足を運んで観ることに意味がある、一つのコンテンツとして、さらに大きなものになっているなと感じています」

松井勇歩×納谷健

――作品の解説も含めて、2人が演じる役柄について教えてください。

松井「TRUMPシリーズは、吸血種“ヴァンプ”をテーマにした作品で、永遠の命を持つとされる原初の吸血種“TRUMP”をめぐる不老不死伝説を描いた物語です。ヴァンプの思春期は“繭期”と言って、人間の思春期よりも情緒不安定さが激しくて、幻覚や幻聴など様々な症状で精神が不安定になるんです。そんな吸血種の少年少女たちを教育(矯正)するための“クラン”という施設があり、『SPECTER』は、そのクランから逃げ出した若きヴァンプ4人が、とある村に関わるところからストーリーが展開していきます。その村自体も実は大きな秘密を抱えているんですが、その村が抱えている闇と、そこに迷い込んでしまった繭期のヴァンプ4人、そしてヴァンプの少年たちによって起こる問題を解決するために呼び出されたヴァンパイアハンターたちの物語になります。今回僕は、物語の主人公でもあるヴァンパイアハンターの一人、臥萬里(ガ・バンリ)を演じます」

納谷「僕はそのクランを逃げ出した繭期のヴァンプ4人のうちの一人です(笑)」

松井「『SPECTER』は、それぞれが秘密を抱えているというのがポイントだと思います。僕が演じる萬里は人間なんですが、彼にもヴァンプにまつわる悲しい過去がある。あまり人と深く関わろうとしないというか、口が悪かったり、わざと人を遠ざけたりと、一見、イヤな人に見えがちなんですが、実はその裏にはそういった彼のつらい経験が背景にある。そういう彼の深みのある人間性をどう表現するか、いろいろと考えているところです」

納谷「僕が演じるサトクリフは、いろいろと暴走するヴァンプの少年4人の中でも調整役というか、まわりが割と見えている少年です。“繭期”の症状はヴァンプによっていろいろで、サトクリフにも特殊な症状が表れるんですが、そこは、観てのお楽しみということで(笑)」

松井勇歩×納谷健

――サトクリフも重要な鍵を握るキャラクターの一人ですよね。

納谷「そうですね。僕らヴァンプ4人がネブラ村に迷い込んだことで、その村にどんな影響を与えて、ヴァンパイアハンターがどう翻弄され動くのか。その引き金になる役割を担っています。だから『SPECTER』の中では、僕らはできるだけ“悪”であることを印象づけたいなと思っていて。本当にね、僕らは普通に考えたら許容してはいけないようなことをしでかすので。キャラクターとしては、ものすごく愛着が持てるのですが、実際にこんな子らがいたら、大変ですよ(笑)。シーンごとのキャラとしてのおもしろさはいいけど、ストーリー全体としては、“こんなことは許されないことだ”って思ってもらわないといけない。そこに関しては、僕ら繭期4人でしっかりと話し合って作っていきたいなと。すでに僕ら4人だけでグループLINEを作って、“ヴァンプは人間と思考が違うから、僕らが考える感情は取り入れてはいけない”、“人と違った視点を持って、人間との距離感を作っていったほうがいいんじゃないか”とか、どういう立ち位置で、どんな視点で演じたらいいのかということを常に話し合っています」

松井勇歩×納谷健納谷健

――このTRUMPシリーズを手がける末満健一さんの演出というのは、どんな感じなのでしょうか?

松井「“この人の頭の中って、一体どうなっているんだろう!?” と、僕は出会ったときからずっと思っているんですけど、それがより一層強くなるのが、TRUMPシリーズだと思っていて。『スター・ウォーズ』みたいに、パート1、2、3って順番で進まずに、上演される作品の時間軸がバラバラで、2作目が1作目の数年前の話かと思ったら次の作品は3000年後の物語とか、年代を行ったり来たりするという作り方をしているのに、辻褄が合わなくなることがない」

納谷「しかも、作品ごとに『TRUMP』シリーズの伏線がいろいろと含まれているんです」

松井「そう! 『TRUMP』で出てきた謎が、『LILIUM』や『SPECTER』で繋がって、“おぉ、なるほど!”ってなると同時に、その『SPECTER』で生まれた謎が、次の『グランギニョル』でまた解明されていくっていう感じで、本当に“末満さんの頭の中って、どうなってんの!?”ってなりますよ(笑)」

松井勇歩×納谷健松井勇歩

――だからこそ、『TRUMP』シリーズは、1つ見るとほかの作品も気になって見たくなるし、前に見た作品ももう1度見返したくなるんですよね。

松井「末満さん自身が、TRUMP世界の時代を行き来して観てきているんかな!? と思うくらいすごいなと。TRUMPの世界は、末満さんが一つも見落とすことなく、しっかりとこだわって構築することで実現しているんだろうなって思います。頭の中で、すでに完成されたものが視えているんだと思います。曖昧なことや何も見えてないっていうことは、ひとつもない。末満さんと話し合ったりしながら役のイメージを作ったりしつつも、きっと末満さんの中にはすでにあるんだろうなと感じることが多々あって。稽古でいろいろと話し合いながら進める中で、僕らの案を採用してくださってその場で変わったりすることはあるけど、“答え”というのは教えてくれないから、僕らもいい意味で、甘えることはできないんですけど(笑)」

納谷「末満さんに寄り添っていくことができれば、ものすごく早いスピードで進んでいくんだろうなと。だからこそ、稽古では何を求めているのか、末満さんに寄り添って汲み取ることに意識を集中して作品づくりをしていきたいなって思っています。お芝居や殺陣だけではなく、ヨコの繋がりだったり、一つひとつ本当にこだわっている作品なので、しっかりとそれを僕らが表現していかなきゃなと」

松井勇歩×納谷健

――2人が思う、『SPECTER』の魅力とは?

松井「『SPECTER』にはヴァンプだけでなく、人間が出てくるので、より共感はしやすいところがあるんじゃないかなと。“あぁ、確かにこの人の立場だったら、そうなるよなぁ”っていうような共感ができる。観る人によって、ヴァンパイアハンターの視点だったり、ヴァンプの視点、村人の視点とか、いろんな視点で観ることができるのも、この作品の楽しみ方のひとつだと思います」

納谷「『マリーゴールド』(2018)にも人間が出て来ていましたが、『SPECTER』は、簡単に言えば、人間たちが住む場所に悪さをする繭期のヴァンプたちが迷い込んで、それを倒すヴァンパイアハンターがやってくるという、“善”と“悪”という構図なんです。でも、それだけじゃない。そこまで単純な話ではなく、ヴァンプ側、人間側、村人側とそれぞれドラマがしっかり描かれていて。人間の感情というのは、ふとしたきっかけでこんなにも振り回されて、乱されてしまうんだと感じることができる。シリーズで観ていくと物語により深みが増しますし、単独の作品としても、そういった感情を動かすような、作り込んだ部分が魅力かなと思います」

松井「シリーズものではありますが、今まで『TRUMP』シリーズを見た事がないという人でも、『SPECTER』から観ても全然大丈夫です。ただ、『SPECTER』を観たら、確実に他の作品が気になると思います(笑)。そして『TRUMP』シリーズの特徴である、“絶望”も、しっかりと味わえます! そこは任せてください!!(笑)」

松井勇歩×納谷健

――アピールポイントがひと味違いますね(笑)。

松井「TRUMPシリーズのファンの方は、絶望したくてハマっている人も多いらしいですから(笑)。しかも、このシリーズは観てくれた方々の考察が本当にすごいんです! 僕は前作にも出ているので、そのときのお客様のアンケートなども拝見させていただいたんですが、いろんな考察であふれていました。今はシリーズの作品も増えていますから、みなさん、もっと深く読み解いてくると思うので、僕らも負けていられません!」

納谷「僕は今回初めて『TRUMP』シリーズに参加できるということが単純に嬉しいですし、なによりもヴァンパイア役をやれるということに少年心を掻き立てられていて、ずっとワクワクしています!」

松井勇歩×納谷健

――(笑)。劇団Patchは発足してから7年になりますが、お二人は夢を形にするためには、どんなことが大事だと思いますか?

松井「ブレないことが大切なのかなと思います。僕が第一期生として劇団員になってから、ずっと僕らが目標にしていたのが、森ノ宮ピロティホールでの公演だったんです。『幽悲伝』(2015)でその目標を叶えるまでは、どんなことがあってもブレなかったし、“絶対にやれる!”と諦めなかった。結局、夢をブレさせるって自分なんですよ。目標はずっと、そこにあり続けて動かない。だから自分を信じて、やり続けるしかないんです。ブレずにやってきたからこそ、平成生まれの役者たちで平成にできた劇団が、平成最後の年に再びピロティに立てることになった。だから夢を形にするまで、ブレないことが大事なんじゃないかって思います」

納谷「僕は自分を卑下しないことかなと思います。芸能の世界って、チャンスがぜんぜん巡ってこない時期もあれば、可能性がどんどん広がるときもある。状況やタイミングによっても違ってくるので、上手くいかなくてもクサらず、今の自分には何が必要なのかを考え、やるべきことに焦点を当ててトライしていくしかない。狭き門に挑んで、もしダメだったとしても、そこで夢が消えるわけじゃないと思うんです。自分の夢や目標がはっきり見えていれば、どれだけ遠回りをしてでも辿り着けるんじゃないかなと。その遠回りは失敗じゃないですし、それが正解だったりすることもある。けど、努力もせずに漠然とした夢のままでは叶わないと思います。“思った通りに行かないのは当たり前”くらいの気持ちで続けることが大事なのかなと。以上が、劇団Patchに入るまで8年間、オーディションに落ち続けた僕からの意見です(笑)」

松井勇歩×納谷健

――自分を卑下していた時期もありましたか?

納谷「ずっとクサってました(笑)。僕も目指し始めてから『デビュー』をずっと読んでいて、オーディションに応募し続けていたけど、劇団Patchに受かるまで“合格”というのを一度ももらったことがなかったんです。最後の最後だと思って、一番本気になって受けたのが劇団Patchだった。それを考えると、努力しないで受かることなんて、そうそうない。しっかりと自分の目標を見据えて努力して挑戦し続けることはやっぱり大事なんだなって思います」

――その本気度は、松井くんから見ても感じ取れました?

松井「健はオーディションでズバ抜けていましたね。本当にお芝居がやりたくて来たんだなっていうのは、誰の目にも明らかでしたから。僕はちょうど4期生のオーディションのMCをやっていて、全員をフラットに見るようにしていたけど、健のことはしっかりと覚えている。ズバ抜けて本気度も高かったし、芝居の面においても即戦力だなとも思ったんですよね」

納谷「ありがとうございます! 時間はかかりましたけど、辿り着けたのでよかったです!!(笑)」

劇団Patch松井勇歩&納谷健、最近”デビュー”したことを大発表!

PROFILE

劇団Patch(げきだんぱっち)●2012年4月に関西で結成された、ワタナベエンターテインメント所属の演劇集団。関西弁「必死のパッチ」にその名を由来。2015年12月には、舞台『幽悲伝』で旗上げからの目標であった森ノ宮ピロティホールでの公演を成功させる。2017年度、大阪を代表する劇団として認められ、「芸術文化都市」の創造を目指して大阪市が始めた文化事業企画『演劇鑑賞会』の最初の劇団に抜擢され、『大阪ドンキホーテ〜スーパースター Patch ver.』を上演した。

松井勇歩(まつい・ゆうほ)●1991年10月30日生まれ、兵庫県出身。劇団Patch公演のほか、舞台『黒子のバスケ』シリーズ、舞台『キャプテン翼』、舞台『野球』飛行機雲のホームラン〜HOMERUN OF CONTRAIL、舞台『LADY OUT LAW!』、極上文學 第13弾『こゝろ』、舞台『シメタン 締切明けの探偵』などに出演。またABC『おはよう朝日土曜日です』レギュラー出演中。今後、舞台『DYNAMIC CHORD the STAGE』(5月11日〜15日ヒューリックホール東京)への出演が控える。

納谷健(なや・たける)●1995年8月7日生まれ、大阪府出身。2015年に「第4回劇団Patchオーディション」で準グランプリを受賞し、4期生として入団。劇団公演のほか、舞台『刀剣乱舞』シリーズにて小夜左文字役で注目を集めたほか、ミュージカル 『薄桜鬼』、舞台『煉獄に笑う』、舞台『おおきく振りかぶって』、舞台『七つの大罪 The STAGE』、『DIVE!!』The STAGE!!などに出演。今後、THE PLAN9芝居座〜其の参〜『無人島に何か一つ持ってくとしたら、何持ってく?』(4月東京)、エン*ゲキ#04『絶唱サロメ』(10月東京・大阪)への出演が控える。

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Information

Patch × TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』

大阪:2019年3月29日(金)〜3月31日(日) 森ノ宮ピロティホール
東京:2019年4月19日(金)〜4月21日(日) 本多劇場

『SPECTER』

<Story>
「この村は死んでいるのと同じだ────」
外界との関わりを絶つ森奥深くのネブラ村で、猟奇的な連続殺人事件が起こる。
それは繭期(人間でいう思春期)を迎えた吸血種の少年少女たちを収容する施設「クラン」から脱走四人の吸血種たちの仕業であった。著しい情緒不安定に陥る繭期の少年たちは、ある目的のために凶行を重ねていた。
ひとりの村人が掟を破り、事件解決のために部外者であるヴァンパイアハンターを村に招き入れる。だが調査が進むうち、村人たちが抱える秘密の蕾が緩やかに綻びを見せていく。村人たちはなにを隠しているのか? 繭期の吸血種たちはなにを目論んでいるのか? やがて、吸血種たちの間で語り継がれる伝説上の吸血種「TRUMP」の不老不死譚と、「永遠に枯れない花」をつくろうとする植物学者の悲恋が事件と繋がりを見せる時、その秘密は白日のもとへと曝されていくこととなる……。

Present

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松井勇歩×納谷 健

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【応募締切】
2019年3月22日(金)23時59分まで。

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※当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。

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