溝端淳平 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「溝端淳平」

2015/11/25

「舞台は“全身全霊で、魂を込めて芝居をする”という濃密な時間が過ごせて、生きてるって実感が得られる」

溝端淳平

撮影/草刈雅之 取材・文/根岸聖子

蜷川幸雄作品の『ヴェローナの二紳士』につづき、この冬、寺山修司の戯曲『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』に挑む溝端淳平。ドラマ、映画、舞台、バラエティと、幅広いフィールドで活躍中の溝端が感じる“舞台の魅力”とは!?
溝端淳平
――――2015年は『ヴェローナの二紳士』に引き続き『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』と舞台への出演、しかもシェイクスピア作品に寺山修司作品と、チャレンジの連続といった感じですね。
「そうですね。蜷川幸雄さんのシェイクスピア、そして寺山修司さんの戯曲に挑戦してみたいというのは前々から思っていたことで、それが同時に叶った感じです」
――そうした舞台への意欲が高まってきたのは、いつぐらいから?
「僕が初めて観た舞台が、蜷川さんのシェイクスピア舞台だったんです。僕が蜷川さんの舞台『ムサシ』で藤原竜也さん、吉田鋼太郎さんと共演する前ですね。稽古場の見学などもさせてもらったり、お話を聞いていると、みなさん、すごく追い込まれているんです。そういう世界に入っていったら、自分にも得るものがあるんじゃないかと。舞台自体もすごく好きなので、寺山さんの『身毒丸』を観て、普通のドラマではできないことにもチャレンジしたくなった。自分を鍛えたいという思いが強くなっていたんだと思います」
溝端淳平
――初めて舞台を観て興味を持ったのはいつですか?
「『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』で共演した、小栗旬くんが出ていたシェイクスピア作品『お気に召すまま』です。旬くんが出ているからというキッカケで、“舞台って観たことないし、一度行ってみたいな”と思って観に行かせていただいて。キャストが客席から登場したり、あっちでもこっちでも役者さんが芝居をしていて、“どこを観ていいのかわからない!?”っていう衝撃がありましたね。“すぐに自分も舞台をやりたい”っていうより、ただただ衝撃を受けた。“こんな世界があるんだ”って。そこから徐々に、自分もやってみたいと思うようになったんです」
――そんな溝端くんにとって、舞台の魅力というのは?
「稽古から本番まで、舞台って一つの作品に対して、稽古から本番合わせて、約2、3ヵ月も没頭できるから、台詞のひと言にもいろんな発見があるんですよ。映像は一度撮り終わったらそれで終わりですが、舞台は毎日悩んで、毎日変化があって、いろんな答えがある。役者として非常に身になる現場なんです。編集するでもなく、生で、そのまま直にお客さんに伝わって、その反応を直に感じるって、とてつもなく怖いことなんですが、そのドキドキ感、ライブ感に中毒性がある。たまらなく気持ちがいいし、“全身全霊で、魂を込めて芝居をする”という濃密な時間が過ごせて、生きてるって実感が得られるんです。だからこそ、舞台だからできる表現に挑戦したいと思うようになりました」
溝端淳平
――それこそ、まさに今回の『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』じゃないですか。
「はい。演出の松本雄吉さんの“ヂャンヂャン☆オペラ”という方法は、台詞をリズム、音にハメて言うので、体感するという表現が一番合っているような気がします。入りはけのタイミングも音きっかけだったりするので、リズムを取り逃したら全部がダメになる。普段使わない感覚を使っている感じで、稽古しながらも毎日、発見の連続なんですよ。難しいですけどね」
――共演の柄本時生さんの印象は?
「今回は対になる役なので、僕も時生をよく観察しているんですが、まぁ不思議な魅力がありますね。自分では体現できないような魅力を持っている人です。歩いているだけでも雰囲気があって、独特な存在感を放っていて。時生のことを僕が真似できないように、時生が真似できない僕らしさを、これから何とか光らせていきたいですね」
――稽古場はどんな感じでしょう?
「みなさん、明るい方たちばかりで楽しいんですが、自分自身のイヤなところやコンプレックスを刺激される毎日です。都市や集団心理をテーマにした演目でもあるので、改めて、自分自身のことについても考えさせられたりするんです。よく心の中に壁を作るって言うけれど、僕自身は心を開くタイプだと思いつつも、すべての心開くまで10歩分の距離があったとしたら、7歩まではいいけど、残りの3歩分は、踏み入れて欲しくないなって。そんなことを考えると、いろんなタイプがいると思うんですよね。1歩目がなかなか踏み込めないけど、一度心を許したら9歩目までいいよっていう人もいるだろうな、とか。そんなことを考えながら、毎日稽古してます」
溝端淳平
――学園ドラマに刑事ドラマ、シェイクスピア作品など、役者を目指す人にとっては憧れの王道コースを歩んでいるイメージの溝端くんですが、新人、若手から大人の役者へステップアップするに当たって、意識していることというのは?
「フレッシュさというのは徐々に薄れていくものだし、同じことをやりながら、この世界にい続けることは難しいですよね。先輩たちの話を聞いていると、やっぱり、もがきながらでも、自分にしかないものを見つけたいって思うんです。僕の性格上、つい意識が外側に向いてしまうんですが、その前に、自分とは!?っていう内側にも向けないといけないなと。だからこそ、舞台作品に関わっていたいというのはあります。役者って、スポーツ選手みたいに勝ち負けがあるわけでも、打率があるわけでもなく、自分の中で何を信じたらいいのかわからなくなることもあるんです。結果がぼんやりしている分、どこを目指したらいいのかわからなくなる。僕にはいわゆる下積み期間というのがなかったので、今が自分を追い込んで、成長させる時期なのかなって思います。憧れのベクトルが、確実に10代の頃とは変わってきていますね。それこそはじまりは、“雑誌やテレビに出てみたい”っていうだけでしたから(笑)」
――ベテランの大先輩たちとの一緒の舞台では、落ち込むようなこともありますか?
「ありますよ! 『ヴェローナの二紳士』でも、女性の格好をして芝居をしながら、蜷川さんに『下手くそ!やめちまえ!』って言われ続けて、“俺、何やってるんだろう!? 本当に役者やってていいのかな…”って(笑)。自分の中で全く答えが出せなくて、夜中に(吉田)鋼太郎さんの家で稽古をつけてもらったりもしました。ただ、そこまでヘコんでも、泣きそうになりながらも、苦しいから逃げ出すっていうのは絶対にないですね。途中で逃げるのは悔しいし、一生後悔すると思うんです。それだけ苦しむからこそ、得られるものがあるし、メンタル面は相当鍛えられました」
溝端淳平
――舞台のチケットというのは比較的高額ですが、今回の作品は、東京芸術劇場プレイハウスでは高校生割引チケットが1000円(東京芸術劇場ボックスオフィスにて学生証提示の前売りのみ)など、他会場でも若い人たちへの割引チケットが用意されています。最後に溝端さんから、若い世代のデビューを目指す読者にメッセージをお願いします!
「そのシステムはすごいですね。ぜひ、『Deview/デビュー』読者の方たちにも観に来てもらいたいです。これまでに観たことのない世界に触れられると思いますし、1000円以上の芝居はしますよ!(笑)。あと、舞台って作品によっては、理解できない、わからないことがあっても当然なんです。ドラマでは、わかりやすい作品が多かったりしますが、僕も舞台を観て、“よくわからないけど、なんかおもしろかった! 興奮した!!”っていう、言葉にできない感動をたくさん味わってきました。台詞の意味がわからなくても、楽しめる部分はたくさんあります。あまり考え過ぎず、目の前で何が行われているのかを素直に体感してもらいたい。何を感じるかは人それぞれじゃないですか。僕も稽古をしていて、他の誰も笑ってないのに、僕だけなんか面白くなって笑っちゃうことがあったりしますし(笑)。正解なんてないので、好きなように観て、自分の感性で受け止めてくれたら嬉しいですね」
Profile
溝端淳平
みぞばた・じゅんぺい●1989年6月14日生まれ、和歌山県出身。エヴァーグリーン・エンタテイメント所属。NHKドラマ10『わたしをみつけて』(毎週火曜 全4回)にレギュラー出演中。公開中の映画『ボクは坊さん。』に出演。『誰だって波瀾爆笑』(日テレ系)MCレギュラー。
寺山修司生誕80年
音楽劇『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』
東京公演:12月6日(日)〜12月20日(日)東京芸術劇場 プレイハウス
福岡公演:12月26日(土)、27日(日)北九州芸術劇場 大ホール
名古屋公演:1月8日(金)愛知県芸術劇場大ホール
大阪公演:1月16日(土)、17日(日)森ノ宮ピロティホール
『レミング〜』
寺山修司(1935−1983)の遺言とも言える最後の演出作品となった『レミング』(1983)。現代社会の抱える問題や若者の内面を寺山らしいシュールな言葉とイメージの連鎖で挑戦的に表現。寺山修司没後30年を記念した2013年の舞台(パルコ劇場 他)では、維新派の松本雄吉と少年王者舘の天野天街が上演台本化。演出家として、壮大な野外劇を得意とし、言葉を解体し変拍子のリズムに乗せて再構築する「ヂャンヂャン☆オペラ」という独特の表現を特徴とする松本雄吉が、『レミング』に新解釈で挑み、トータルシアターとして唯一無二と言える壮大なスケールの作品を出現させた。 今回はその再現に留まらず、さらに上演台本の改訂と新たな演出を加え、新キャスト・劇場を生かしてスケールアップした音楽劇『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』へと生まれ変わる。初演では、八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊が演じたそれぞれ個性的な役柄。今回は溝端淳平、柄本時生、霧矢大夢、麿 赤兒 という、注目度も実力も高い俳優陣が挑む。

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