清水富美加 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「清水富美加」

2015/05/07

あの頃泣いてた自分に“もうちょっと待ってたらいいことあるから”って言える未来を創りたい!

清水富美加

NHK連続テレビ小説『まれ』でヒロインの同級生・蔵本一子を演じている清水富美加ちゃん。一子の役作りに関する話や、デビューのきっかけになった『レプロガールズオーディション』のエピソードなど、かなりディープな話を聞いちゃいました。


清水富美加
蔵本一子ちゃんという役を演じることになったとき、まずどんなことを考えましたか?
「一子ちゃんは結構分かり易い性格で、悪く言うとちょっと圧が強くて、わがままな一人っ子みたいな感じ。でも自分は末っ子で、お姉ちゃんの陰に隠れながらわがまま言うみたいな子だったので、ちょっとタイプは違うんですね。一子ちゃんは言いたいことは言うし、全然怖気づかないし。まず台本を読んだとき“え、これ私がやるの?”って。こんな台詞言うのもつらいっていうか、これまで生きてきた自分の“殻”ってあるじゃないですか。私は一子ちゃんみたいな子についていくっていう感じの子だったのに、今度はリーダーシップをとるような女の子を演るのか…出来るのか?って不安でしたね」
そんな風に思っていたとは意外でした。
「でも、寺岡みのり役の門脇麦ちゃんと会って最初のころに、“一子ちゃんはこういう役だけど、富美加ちゃんみたいなコがやるから、あんまり嫌な感じじゃなくなると思うよ”って言ってくれて。“あっ、よかった〜”って思って。気が強い子をやるからというのもありますけど、怖気づかないで、“ウチが言うこと、なんか文句あるがかいね?”みたいな精神で(笑)、撮影に臨むようにしています」
言うとおり、憎めないキャラクターになっています。その一言は大きかったんですね。
「弥太郎さん(中村敦夫)や文さん(田中裕子)には逆らいきれない、みたいな。ちょっと可愛らしいですよね。フフフ。でもやっぱり麦ちゃんの一言はありがたかったです。最初のほうなのでまだ全然仲良くなれていない頃だから“何かとりあえず喋らなきゃ”みたいに何気なく発した言葉なのかもしれないし、本心なのかも分からないけれど、そういう風に前向きになれる要素をくれたことは確かですね」
清水富美加
その麦ちゃんをはじめ、幼馴染のメンバーの空気感や関係性はどうやって作られていったんですか?
「わりとそのままかも知れないです。みのりも希(土屋太鳳)もそのまんまだし、洋一郎(高畑裕太)も高志(渡辺大知)も…大知くんは声が出ないわけじゃないけど(笑)、似たような雰囲気だし。(山ア)賢人くんは圭太よりもふざけるけど…みんなイイ感じにバランスが取れてて、現場は楽しく和気あいあいです」
演出で作る部分もあるでしょうけど、みんなでシーンを作ることもあるのでは?
「アドリブはすごく多いですね。お弁当を食べたりするシーンがありましたけど、放送されていない部分で、実は10秒ぐらいそのままアドリブでお芝居を続けていたりします。アドリブといっても標準語に戻るわけにいかなくて、方言を喋らないといけないから、みんなで“どうやろう”みたいに相談したり。消えもの(食べ物)のなかで“どれ食べる?”とか狙いつけて“これおいしかったよ!”とか(笑)。そういうことをやりながらシーンを創っていくなかで仲良くなっていきました」
アドリブも方言でやらないといけないのは大変ですね。
「最初のうちは方言も全然わからないから、とりあえず“ないやいねー”とか“何しとるんけ!”とか言っとけば大丈夫(笑)、みたいに毎回同じような感じだったんですけど、余裕が出てきたら遊び始めて。言葉も習得してきたので自分達でやってみて、わからないところは確認してました」
一子ちゃん役に決まったのはオーディションがきっかけ?
「一子ちゃん役のオーディションではなくて、『朝ドラ』の主役オーディションを受けたんです。最初はやっぱり悔しかったですけどね……。そりゃあそうですよー! 2020人でしたっけ? それだけの女の子が“絶対主役になりたい”って来ているわけで、それは私も同じでしたけど」

清水富美加
でもヒロイン・希と互いに影響を与え合う重要な役柄に選ばれました。
「良かったなって思います、今は。撮影もかなり進んでますけど、一子ちゃんの気持ちが分かることもあれば、分からないこともあったり。でも私の持っていないものをすごく持っているコなので、出会えて良かったなって思っています」
一子ちゃんの気持ちをどうやって理解していったんですか?
「幼稚園のときでも、小、中学校でも、お仕事始めて何年かしたときでも、いろいろな状況のなかで、ただ夢を見て憧れているときと、今の自分の状況が嫌で夢に憧れているときとがあって。まだ20年ですけど、いろんな夢の見方をしてきたなかで、一番一子ちゃんに近い状況を思い出しました。この仕事を始めて今7年目なんですけど、最初は中2ですから、楽しくて、派手で、目立ててという『夢』だった部分ばかりが目に入るんですが、そのうちに、自分にとってデメリットと感じる部分もどんどん見えてくるわけじゃないですか。そうなってくると“普通の女の子に戻りたい”というのも『夢』になっちゃうわけで。そういうときって、今いるところが幸せであるはずなのに悪く見えてきちゃう。一子ちゃんの気持ちは、そういう時期の自分とちょっと似ていて。東京にすごく憧れて、ホントにその場所に行きたいって心底思ってるのに、なかなか能登から出られないし、出るのが怖い。そういう気持ちと、かつて仕事を続けながらも“普通の生活に戻りたい”って考えてた自分とが似てるなって思ったので、そこと照らし合わせながら演じていました」
芸能界の仕事を始めてからの気持ちに似ているというのが興味深いですね。
「自分が芸能界に憧れた中学生のときと、一子ちゃんぐらいの年齢では夢の見方が全然違うと思うし。一子ちゃんは東京に特別な想い出があったりもするので、全部が同じような気持ちではないです。でも“ここから出たい”っていうエネルギー量でいうと一緒だなと思ったので、そのときに設定しました」
富美加ちゃんが芸能界にデビューしたきっかけは、『レプロガールズオーディション』に自分で応募したことですよね。
「幼稚園のときには“天文学者”とか、“モーニング娘。”になりたいとかいうときもあって、小学校に上がったら“大塚愛さんみたいになりたい”って思ってたときもありました。漠然と芸能界に入りたい、キラキラした世界に行きたいという想いがあったところに、テレビで『TOKYO GIRLS COLLECTION』の華やかなランウェイをモデルさんが歩いているのを観て、そのタイミングでレプロのオーディションが募集を行っていたという具体的なきっかけがあって」

清水富美加
そのころに目指す夢が定まったという感じですか?
「私、オーディションを受けたのが中学2年生なんですけど、別に芸能界に行くためにこれを頑張ろうとか、何かやっていたわけではなかったんです。むしろ堅実に(笑)、こんな大学に行って、こんな勉強したいから付属の学校に行こうとか考えていて、夢は夢のままでふわ〜っとした状態だったんですね。まだ中学生だし、勉強しておけばいいかみたいな感じだったんです。だから、やっぱり『きっかけ』って大事ですよね。オーディションというきっかけがあって、応募して受かったから、そこから180°といわないまでも全然違う人生を歩んでいるので。お父さんにいまだに言われますもん。“お前が芸能界に入ってなかったら、今頃大学3年生で…資格を取るとか、就活とか言ってんだろうなあ”とか。私も“本当だね”って」
お父さんは反対しなかったんですか。
「反対と言うよりも、お父さんとは芸能界でどうやっていくとか真面目な話を、あまりしたことがなかったんです。だから高校生になったぐらいのときに初めて、あまり良くは思ってなかったというのを聞きました。高校3年間は否定され続けていて、たまに“大学に入れ”とか、“英語を習え”とか言われたりしてたんですけど、今では“お前が選んで、周りの人の協力があって、そのレールに乗せてもらえているんだから、行けるところまで行って、極めるところまで極めるっていうのがお前の筋だろ?”みたいに、あんまり賛成じゃないのに背中を押してくれるっていう。カッコいいんですよ、ウチのお父さん。フフフフ(笑)」
“辞めたい、降りたい”と思っていた時期を乗り越えて、続けることができたから応援してくれのでしょう。
「そうですね。あの頃泣いていた自分に“もうちょっと待ってたらいいことあるから!”って言える未来を創りたい!(笑)。お母さんからも、“あんたが、『初めて紙の台本もらった!』って言ってたのが、ワンシーンしか出ないようなドラマだったりしたこともあって。それが今…”って泣いてるスタンプいっぱいのLINEが送られてきて(笑)。“大きくなって、ハタチになって、朝ドラ出てんだねぇ。よかったね、おめでとう、頑張ってねこれからも”って。いやいや、まだまだですよって(笑)」
そんな風に「トンネルを抜ける」経験をしてきたことは、一子ちゃんを演じる上でも重要じゃないですか。一子ちゃんはこれからが大変なのかもしれないですが…。
「一子ちゃんの闇は、深いですよ〜(ヒソヒソ声)。一子ちゃんの上京したいっていう想いとか、付き合ってる男の子と上手くいきたいという願いとか…まあ〜上手くいかないんですね! なおかつ、思ったことはすぐに言うコだけど、自分の中でグルグルしていることは言えない、素直になれない。だからどんどんドツボにハマッていくんですね。ただそういうことも、大事な友達がいるから乗り越えていける。幼馴染のメンバーのなかで、一子ちゃんが一番不安定で、どっちの方向に行くのか定まっていないので、これからの展開がどうなるんだろうって、純粋に楽しんでいただきたいです。恋とか夢とかで悩んでいる方がいたら、私はどうするだろうって、一緒にドラマを観ながら葛藤したり、悩んだり、共感したりしてもらえたらなと思います」
「きっかけ」や「気付き」は友達が与えてくれるときもありますよね。
「自分のなかだけでドツボにハマっていってるときに、気付いてくれる人がいるのは大きい。圭太とか希とかみんな、いいですよね。こういう友だちが欲しかったです(しみじみ)」
富美加ちゃん自身がドツボ状態を抜け出すきっかけは?
「自分はドツボにハマると、どんどんどんどん底なし沼なので時間がかかるんですけど。単純に新年度とか、高校生活が終わるとか、実家を出るとか、そういう節目に何かのありがたみに気付くので、その度に前に進んで来れたかなって思います」
新しい現場に入るというのも節目になりますか?
「現場に入るとドツボにハマることが多いですね。ちっちゃい悩みが多いので(笑)。でも終わったあとは、“こんなに優しい気持ちになれた”とか、“撮影中はあんなに出来なかったのにできるようになった”とか。そんなことの積み重ねですね」
清水富美加
現在の『まれ』の現場は、ベテランも、達者な役者さんもいて鍛えられるのでは?
「鍛えられるというより、メモ!って感じですね。台本に入ってない台詞だけど、ちっちゃく“ちょっ”とか言ったほうが自然だな…というのをドンドン入れていらしたりとか。台詞が無いところで、動作だけでしっかりお芝居に参加されてる方もいたり。今自分がスポンジになっておけば、たくさんのものを吸収できる現場だなっていうぐらい、勉強になる方が多すぎて、大変ですよ、パンパンです。吸収することが多すぎる上に、ああ、できなかった!みたいな落ち込みとか反省とか、じゃあ次どうする?とか、グルグルしてますよ! しかも長丁場ですし。でも逃げない!(笑)」
今は女優として、演技の面白さや難しさを感じているときですか?
「所属してから7年目ですが、最初はモデルやりたいって言って、そこからバラエティやりたいって言って。この3年間は女優に絞ってやって来ました。正直演技が面白いとか、楽しいとかいうより、何故かここにたどり着いてますね。今までやってきた中で、一番長くやり続けて、だからもうこのレールに乗って最後かなって思っています。最初は志だけで、もっと演技が上手くなりたいとかは、好奇心で言っていたところもあると思う。女優でやっていきたいという本心は、あとからついて来たかなという感じです」
そんな富美加ちゃんに憧れて入ってくる後輩達が、『レプロ次世代スターオーディション2015』に応募してくるわけですよ。
「ビックリですね。気付いたらレプロから最近出てきた子たちが年下だったりするので。この業界でハタチって結構お姉さんじゃないですか。自分が中2のときを知ってるからちょっと焦りますけどね。演技レッスンで中学生のコとかに会うと、“朝ドラ観てまーす”みたいに言ってくれるんですけど、そんな後輩達をみるとちゃんとしなきゃ、ヤバイなって思います。こんなに可愛くて、言われたことにすぐ柔軟に対応できる子なんてすぐ来るぞ!みたいに(笑)。いい刺激です」
自分がレプロのオーディションに応募したときのことを思い出してもらえますか?
「意外に現実的でしたよ。2次審査の段階で、周りのお姉さん達がキレイすぎて。こんなにキレイでオーラを持っている人ばっかりだったら、自分みたいな顔のヤツが最後まで残るワケがない、みたいにかなり冷静でした。モデルのオーディションでしたし、ハーフの人も多くて、自分このまま行ったらダメだな、キャラで行くしかないなって思って。最終選考でグランプリは取れないかも知れないけど、それ以外はかっさらってやろうっていう気持ちで行きました。その結果、『グッドキャラクター賞』をいただきました。そんな賞があるとは知りませんでしたけど」
実は戦略家ですね。
「戦略家ですよね。中2ですよ! 怖ッ!(笑) 今思い出すと『仮面ライダーフォーゼ』のときも、お芝居やったことないんだから、上手くなくて当たり前じゃん、印象に残ることを考えようって。もうオーバーにオーバーに、とにかく元気にっていう気持ちで臨んで、それだけでオーディションに残れたり。いかに印象に残るかっていうのが大事で。他の人と同じことをやってもダメだし。どうやったら相手の土俵じゃなくて自分のほうに引き付けられるかって、そればっかり考えてました」
オーディションではそういう考え方も有効ですよね。
「例えば5人の女の子が出てきて、自分より先に挨拶する2人の子が元気に笑顔でやってたら、自分は逆に無愛想にやったら印象に残るんですよ(笑)。極端に人と違うことをするというのは、分かりやすく印象に残るかなって思います。でも、最初に受けたオーディションのときは、やっぱり勢いですかね。あのキラキラした場所に行きたい、女優さんみたいになりたい、撮影ってどんなだろうって、もう期待しかないんですよね、当時は。それが若さですよね!」

清水富美加
これから夢をもって応募してくる子たちにメッセージをいただけますか?
「緊張しちゃって上手くできなくても受かる子もいるし、緊張しないで受かる子もいる。何も正解じゃないから、思い切って自分の好きなようにやるのが一番です。若いなら怖気づかすに。大丈夫ですよ、20代でもまだ全然修正が効きますからね。自分もオーディションに落ちまくりで、いままで何回受けてきたか分かりませんもん。自分で選んで応募するというのは経験にもなるし、一つ踏み出すことが人生のなかで大きいきっかけになるかも知れない。いいなって思ったものには、全部首を、足を突っ込むこと! 私だって、何回路線変更してるんですかね、7年間のなかで(笑)。たぶん、女優が最後だと思います。次は主婦ですかね! ハハハハ」

インタビュー・終
撮影/厚地健太郎

清水富美加ちゃんが所属するレプロエンタテインメントが
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Profile

清水富美加
しみず・ふみか●1994年12月2日生まれ、東京都出身。『レプロガールズオーディション2008』でグッドキャラクター賞を受賞し芸能界デビュー。2009年より『ラブベリー』(徳間書店)の専属モデルとして活動スタート。2011年『仮面ライダー フォーゼ』のヒロイン・城島ユウキ役でレギュラー出演。2013年は海外でも話題になった映画『HK / 変態仮面』のヒロイン・姫野愛子役を務める。現在NHK連続テレビ小説『まれ』では、ヒロインの同級生・蔵本一子役で出演。今後は、映画『龍三と七人の子分たち』が公開中。映画『ズタボロ』(5月9日公開)ではヒロイン清美役を演じる。6月4日〜7日、赤坂ACTシアター『東京03 FROLIC A HOLIC』にヒロインとして出演。

INFORMATION

まれ

NHK連続テレビ小説『まれ』

石川県能登地方を舞台に、世界一のパティシエを目指すヒロイン・希(土屋太鳳)の成長を描く。清水はヒロインの夢のライバル、恋のライバルとしてヒロインと対照的な人生を歩んでいく幼馴染・蔵本一子を演じる。

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