濱田龍臣 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「濱田龍臣」

2016/09/14

「肩幅もあるし、自分ではゴツイなと思っていたので、可愛いなんてそんな……(照)」

濱田龍臣

10代の終わりに男から女に生まれ変わった実在のトランスジェンダーの現在と過去をインタビュー&ドラマで構成した、笑って泣ける型破りなドキュメンタリー&ドラマ、映画『ハイヒール革命!』。本作のドラマパートで、性同一性障害の主人公を演じ、女性役と女装に初挑戦した濱田龍臣に直撃インタビュー。女子顔負けの可愛らしい姿を見せ、新境地を開拓した本作への想いを語ってもらった。


濱田龍臣
演じてみて、率直にどう思いましたか?
「性別すら真逆の、自分とは全く違う人物を演じるという点でとても面白かったです。どんなに(役者を)長くやっている方でも、なかなか演じる機会のない役でしたし、いい経験ができたと思います」
例えば、スカートを履いたりしたのはいかがでしたか?
「恥ずかしいということもなく、楽しくやっていました(笑)。スカートを履くこと自体、初めてだったので、最初は違和感があって、なんか変だなあ、スカスカするなあ、寒いなあと思っていましたが、だんだん慣れてきて、イケるイケるっていう、そんな感じでした」
美脚でしたし、とても可愛くて驚きました! ちなみに、ご自分を可愛いなとか思ったりしましたか?(笑)。
「ありがとうございます。でも肩幅もあるし、自分ではゴツイなと思っていたので、可愛いなんてそんな……(照)。でも、スカートは自分でも短いなと思っていました。スカートの下はひらひらの見せパンみたいなのを履いていて、映るか映らないかの瀬戸際くらいを映していたので、意外に危なかったです(笑)」
モデルとなった真境名ナツキさんとはどんなお話をされましたか?
「手の動きや歩き方、立ち方、座り方など細かい動きを教えていただきました。女の人が無意識でしている普段の動作を自然に見せたかったし、ちょっとでも意識して不自然になったらおかしいので、真境名さんの動作はとても参考になりました。でも本当に難しかったので、自然に見せるためにひたすら何回も何回も同じ動きをマネして、自分のものになるようにしました」
劇中では真境名さんにインタビューするシーンがありましたけど、普段はインタビューされる立場ですよね。
「そうなんですよ。普段とは立場が逆なので緊張しました。でも真境名さんがとても明るい方で、話していてすごく楽しかったです。お会いする前は、複雑な過去があって、中学生時代がトラウマだというお話を聞いていたので、ちょっと気難しい面もあるかもしれないと心配していたんですが、お会いした瞬間からすごく明るくてあっけらかんとしていて、イメージが180度ひっくり返りました」

濱田龍臣
イメージとは全然違っていたと。
「僕自身、初めてLGBTの方とお会いしてお話ししたので、すべてのことが衝撃でした。LGBTは中学の道徳の時間に習って知ってはいたのですが、さらに深いお話や実体験、“今、どういうことを思っているのか”、“どういうふうに今まで頑張ってきたのか”というお話をうかがったんですが、大変だったこともすごく軽くお話されるんですよ。そういう話は本当に興味深かったし、いい意味でショックを受けたというか。途中から真境名さんのお母さんも来てくださったんですが、お二人ともテンションが高くて、話がポンポン進んでいくから、話に入れなかったです(笑)。でも聞いているだけで楽しかったですね。お二人は親子というより姉妹という感じに見えました」
演技する時はどのようにキャラクターを作っていったのでしょうか?
「古波津陽監督の作品や役柄に対するイメージをまず教えていただいて、そこから僕自身が台本を読んで感じたことと、真境名さんが話してくださった当時の心情という3つの要素を自分の中でまとめて一つにして表現するという形でした。僕が演じるのは真境名さんなんですけど、でも真境名さんご本人そのままではないというか……。もちろん真境名さんの中学生〜高校生時代を演じているんですけど、そこには監督の解釈と僕の解釈も入っているので、実際とは少し違った人物になったかもしれない。真境名さんの表面だけを体現するのではなくて、脚本を読んだ自分の解釈……客観的な視線を入れていくということを意識していました」
脚本を読んで、もし自分だったらどうするかを考えるということでしょうか?
「そうですね。自分が実際にそういう場面にあったところを想像してみて、自分がどんな感情になるか、どんな立場に立たされていて、相手の人とどんな関係性なのかということを客観的に捉えてみます」

濱田龍臣
なるほど。どの作品でもそうしているんですか?
「最初に脚本を読む時はまず、俯瞰で全体を把握します。それからもう1回、演じるキャラクターだったとしたらという主観で読んでみます」
今回、演じられたのは中学〜高校時代の主人公ということで、まさに今の濱田さんと同じくらいの年齢です。同年代という点でのシンパシーはありましたか?
「自分は真境名さんのような悩みはありませんが、一時期、オーディションに受からなかった時期が続いたので、そういう点で悩んだことはありました。でも、真境名さんが僕くらいの年齢で悩んでいたことに比べると、“なんてちっぽけなことなんだろう”と思いました」
真境名さんも過去を振り返って、『あの時、悩んでいたことなんて全然大したことじゃなかった』と劇中でおっしゃっていますよね。濱田さんはそうした悩みがある中で、どうやって乗り越えていくんですか?
「僕は、友達にしろ親にしろ、あまり誰かに相談せず、自己解決しようとしちゃうんです。相談することで、自分が弱っていると見られたり、悩んでいるんだなと見られるのが嫌なんですよね。同情されたくないというか。そういう部分は、自分でもワガママなのかもしれないと思いますけど」

濱田龍臣
悩んでいる時に、誰かに言われて、ハッとしたことなどはありますか?
「ある映画のオーディションを受けた時に、最後の方まで残っていたんですが、結局、落ちてしまったことがあって。でもその時、監督が、『オーディションは勝ち負けじゃない。役者それぞれに個性があって、その個性と役がいかに当てはまるか、イメージに合うかということ。だからたとえオーディションに落ちても負けたと思うな』とおっしゃってくださった言葉がすごく自分の心に響いて、それがきっかけで“もっと頑張ろう!”という気になりました。僕は、オーディションは一緒に受けている人との勝負だと考えていたんです。でも、『今回は役のイメージに合わないからオーディションには落ちてしまったけど、スタッフや監督に覚えられれば、自分と役のイメージが合う作品がいつか来るかもしれないんだよ』と教えてくださって、成長させてもらったなと思いました。それからは監督さんやスタッフさんとの出会いや、一つの作品に携わらせてもらうこと自体、が自分にとって大きな糧になっています」
オーディションに落ち続けた時期があったとおっしゃっていましたけど、とはいえ、コンスタントに作品に出演されているという印象があります。もう10年近く、活躍されている秘訣は、ご自身ではどう考えてますか?
「うーん、何ですかね。自分で言うのは難しいですが……。自分はけっこう負けず嫌いなので、一時期、そういう面が出てしまっていたと思うんですけど、最近は演技やお仕事を純粋に楽しむことの大切さがわかってきました。お芝居してテレビに出させていただくという仕事は、やっぱり簡単にできることではないと思うので、誇りに思っていますし、嬉しいので、自分にできる限りの力を尽くして、できる限り、楽しもうと思っています」

濱田龍臣
では改めて、濱田さんにとって役者の楽しさは?
「自分ではない人物を演じて他の人に見られるというのは、とても特殊ですが、それ自体、とても面白いと感じます。自分の演技を褒めていただいたり、作品に感動してもらえると嬉しいですし。それにいろいろな人と出会えることは自分の成長にも繋がっていると感じます」
芸能界デビューを目指す読者に、メッセージをお願いします!
「皆さん、オーディションでは緊張すると思いますが、緊張してもいいと思います。僕もしていましたし。ガチガチになってセリフを噛んだって別にいい。人間は誰だって失敗しますから。その代わり、自分を作ったらダメ。なるべく自然体でいることが大切だと思います。監督やスタッフの方は数えきれないほど大勢の人を長年見てきているので、たぶん自分を作って誰かを騙そうとしても、わかってしまうんですよね。だから皆さん、背伸びしようとせず、自然体でオーディションに臨んでみてください」

インタビュー・終

撮影/草刈雅之 取材・文/熊谷真由子

Profile

濱田龍臣
はまだ・たつおみ●2000年8月27日生まれ、千葉県出身。テイクオフ所属。NHK 大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬の幼少期を演じたことで注目を浴びる。その後、ドラマ、映画、バラエティ、舞台、CMなど幅広く活躍。六本木3丁目移転プロジェクト ドラマスペシャル 宮部みゆきサスペンス『模倣犯』([前篇]9月21日(水)、[後篇]9月22日(木・祝) 午後9:00〜 テレビ東京系)、10月8日公開の映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』に出演。また、11月26日公開の映画『疾風ロンド』への出演も決定している。

INFORMATION

『ハイヒール革命!』
『ハイヒール革命!』
『ハイヒール革命!』
(C)2016「ハイヒール革命!」製作委員会

映画『ハイヒール革命!』
ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

男として生まれた真境名ナツキ(本名:真境名薫)が、思春期に“性の壁”をも越えて女に生まれ変わり、いかにしてコンプレックスを豊かな個性に変えて“本当の自分”を勝ち取ったのか――。リアルなインタビューと、取材に基づいた少年時代のドラマパートを交互に見せながら現在と過去を描く。誰もが笑って泣ける型破りな新しいタイプのドキュメンタリー&ドラマ。
再現ドラマパートでは、ナツキの原点でもある少年時代を濱田龍臣が熱演。今年16歳になる彼が、カツラをつけて女子の制服を着るシーンは、見違えるほど可愛らしい女の子そのもの。さらには、幼少の頃からナツキの一番の理解者だった母親役に西尾まり、高校時代の教師役に藤田朋子と、実力派俳優たちが脇を固めている。

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