木村 了 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「木村 了」

2016/08/03

「“え、浦島太郎!? しかもミュージカル!?”と耳を疑うと思いますが、僕もほぼ同じリアクションでした(笑)」

木村 了

撮影/加藤千絵(CAPS)取材・文/長島恭子

おとぎ話で有名な『浦島太郎』を、脚本を担当する池田鉄洋が新たな解釈でリメイクし、愛と海と冒険のミュージカルとして上演。世界一運が悪い男・浦島太郎を演じる木村了に、初日を目前に控えた今の心境をたっぷりと語ってもらった。
木村 了
――まず『TARO URASHIMA』への出演が決まったときの気持ちを教えてください。
「恐らく、全国の皆さんは今回の舞台の話を初めて耳にしたとき“え、浦島太郎!? しかもミュージカル!?”と耳を疑うと思いますが、僕もほぼ同じリアクションでした(笑)。すごい勝負に出たな……と」
――誰もが知る昔話に秘められた謎を池田さん流の解釈で種明かししていくと聞き、それは面白そうだとワクワクしています。
「そうなんです。浦島太郎って、亀を助けたら竜宮城に連れていかれ、遊び倒しているうちに長い年月が経っていて、玉手箱を開けたとたんおじいさんになっちゃった……で終わり。鬼退治などで活躍する桃太郎や金太郎に比べると、大した事件も起こらずに終わるという印象ですよね? でも、今回は新しい着眼点から物語を描いているので、浦島太郎という昔話のイメージがすごく変わると思います。脚本はイケテツさん(池田鉄洋さん)ワールド全開。一見、意味のないやりとりが展開されますが、それが作品のいいスパイスだったり、種明かしにつながったりと、とてもうまい具合に構成されていてかなり面白いですよ」
木村 了
――キャラクター設定からユニークですよね。浦島太郎は負け犬の漁師だし、乙姫様もひきこもりだし。
「“どれだけついていない人生なのか”を乙姫と競い合う主人公ですから、カッコイイヒーローでは決してありません。一方で、太郎と乙姫とのちょっとしたドラマにもキュンとさせられますし、心がお疲れの人もきっと癒されますよ。まあ、基本は曲者ぞろいの強烈なキャラクターばかりなので、かなりコメディですが!(笑)」
――出演者も経歴の異なる個性派ぞろいですしね。
「普通、和泉元彌さんをミュージカルにキャスティングしないですよね!?(笑)。だってホンモノの狂言師ですよ! 稽古場でも皆さん、個性をブワーっと全開にしていますし、まさに異種格闘技の様相です」
――とてもエネルギッシュな稽古場になっているのでは?
「そうですね。稽古に入る前、演出の板垣恭一さんから『どんなことでも、心が動く、面白いことをしてください』と一言プレッシャーを与えられたので、それにみんな答えようといろいろ試しています。座長としては“これ、どうまとめたらいいんだろう(笑)”という感じですが、変にまとめようとせず、個々の力を集結させることで魅力的な舞台になるのかな、と思っています」
木村 了
――初めて共演する方が多いと思いますが、特に絡みの多い乙姫役の上原多香子さんや亀役の斉藤暁さんの印象は?
「上原多香子さんとはよくお話をしていますが、見た目に反してオッサンっぽい面がちょくちょく出てきますね(笑)。例えばお酒が好きで、とりわけ赤提灯系の店が大好きとかね。仲間だな!と親近感がわきます。斉藤暁さんは大先輩の役者さんですが、とても物腰が柔らかく、近所に住むおじさん的な親しみやすい雰囲気の方。稽古場でも若手の役者に対し、熱心に演技指導をされているんです」
――友人役の崎本大海さんに対しては?
「大海は前から知り合いなので、特に感想はナイですね〜(笑)。乙姫のお兄さん役の滝口幸広も10年以上ぶりの共演。彼はいい意味で変わっていない。仕事的には幅も広がり活躍されていますが、人としてはまったく成長していないっていうのがイイですね!(笑)」
――そ、そんな(笑)。
「だって、10代の頃と同じテンションのままなんですよ? いったいどう生きてきたらそうなるのかな……と(笑)」
――木村さん自身は、今、どのように稽古に取り組んでいますか?
「本読みの翌日から立ち稽古に入ったばかりなので、今は台本を頭に入れながら稽古を進めている状態です。変にアドリブを入れるよりも、脚本を読んだときに受けた衝撃を、素直に、そして真面目に演じていきたいですね。あとは共演する皆さんを信じて、芝居を積み上げていけば、必ず面白くなる作品ですから。同時に苦手な歌や振り付けも入れなければならないので、次から次へと課題が積みあがっていくばかり。座長として、もっと全体を見て、絡んでいきたいのですが、これだけ大所帯の舞台だし、個性も強いので、正直、イッパイイッパイ。ですから、若手にも目を配る斉藤さんの姿や和気あいあいとした現場の雰囲気を見ると、安心します。全体を見ながら一つの芝居としてつなげていくも、浦島太郎……僕の役割だと思っているので」
木村 了
――歌は苦手とのことですが、演者としてミュージカル作品で苦心されている点は?
「ストレートプレイはセリフに気持ちを乗せて、また、相手とのセリフのやりとりで積み上げていき、感情を表現していきます。しかしミュージカルは、歌にも気持ちを乗せていく力が必要。その意味は理解できても、なかなか奥が深くて難しいんです。歌うことに一生懸命になると気持ちが乗らないし、歌としての表現力も必要で、それには技術がいる。最近やっと“あぁ、こういうことかな”とわかってきたのですが、演者としてはまだまだです。難しい課題ではありますが、階段を一歩一歩上った先に何かが見えるかなと考え、今は与えられた作品に対し、全力で取り組んでいくだけ。結果、その努力が自分を高めると思うし、演じるモチベーションにもつながっていますね」
木村 了
――舞台、特にミュージカルは、エンタメ業界を目指す若い人にとっても観に行く機会が少ない分野です。木村さんはミュージカルの魅力をどこに感じますか?
「ミュージカルにも歌だけでセリフが構成されるものもあれば、芝居が主だったり、ダンスがあったりと、実は様々なスタイルがあります。ミュージカルと聞くと、世界中で上演される『レ・ミゼラブル』のような大作をイメージして、勝手に敷居を高くしている人って多いと思います。でも、実際は気軽に楽しめる作品は数多くあって、日本でもそんな新しい演目が、続々と出てきている。今回の『TARO URASHIMA』もミュージカル、ショー、人間ドラマ、コメディと様々な要素が詰まった、皆が楽しめるエンターテインメントです。ミュージカルの舞台は熱量も膨大だし、若い人たちの観る機会がどんどん増えるといいですね」
――では、テレビや映画にはない、舞台と魅力とは?
「僕が舞台に立つうえで大事であり素敵だなと思うのは、お芝居の世界の住人になりきっているとき、そこにいる人たちのなかで“つながっている瞬間”がたくさんあることです。リアクション、セリフ、息遣いや溜息ひとつでも、毎回違う反応が生まれ、積み上げられ、一つの舞台になっていく。さらにそこで完成ではなく、身を乗り出したり、息を飲んだり、笑ったりというお客さんの反応によって、芝居がまた変化する。それが、舞台でしか感じられない面白さです。また、カットが決められている映像作品と違い、お客さん自身が、セリフを言う人でも好きな役者さんでも、観たい視点から観れるのも舞台ならでは。実際、本筋に関係するセリフ周りだけでなく、舞台の脇や奥でも芝居は進行していて、いろんなことが起こっているんですよ。今作も役者たちが“収集がつかないのでは?”と思うほど、めちゃくちゃなことをしています(笑)。きっと何度脚を運んでもいろんな視点で楽しめますよ!」
木村 了
――では、デビューを目指す読者に先輩としてのアドバイスをお願いします。
「テレビに出てスターになりたい、役者として芝居をやりたいのとでは、進む道は異なりますが、共通するのは経験することに一切ムダはないこと。例え失敗したりいい結果が出なかったりしても、この世界を目指す人にとって経験そのものがすべてプラスになります。常に新しい目標やチャレンジを設定し、地道に1歩1歩積み上げていくことは必ず将来につながるし、結果、様々なことを吸収できると思います」
Profile
木村 了(きむら・りょう)●1988年9月23日生まれ、東京都出身。ホリプロ所属。近年の主な出演作は、学蘭歌劇『帝一の國』シリーズ主演、舞台『虹とマーブル』、ミュージカル『花より男子』など。8月6日公開の『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』にアルゴス/仮面ライダーダークゴースト役で出演。10月に上演される舞台『フリック』への出演も決定している。
ミュージカル『TARO URASHIMA』
8月11日(木・祝)〜15日(月)明治座
TARO URASHIMA
あの浦島太郎の物語が、あくの強いキャラクター(主に魚)たちと共に、ついにミュージカル化! 何故、乙姫はたまて箱を渡したのか、何故、海の底には竜宮城があるのか、何故、浦島太郎は海の中で暮らせたのか?すべての謎はこの舞台で判明する!?
さらに、浦島太郎と乙姫のきゅんきゅんする恋愛、深海の生物たちとの戦いなどを描いた、愛と海と冒険のミュージカル。第二部では竜宮城で開かれる「鯛や平目の舞い踊りショー」を、三上真史を司会に迎えてお届け。

公式サイト: http://www.meijiza.co.jp/info/2016_08_urashima/

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