前原滉×白石糸 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「前原滉×白石糸」

2016/02/23

「今まで出会ったことのない自分に会って、殻が一枚割れました」「気付くヒントをたくさんくれて、可能性を信じてくれます」

前原滉×白石糸

小栗旬や綾野剛、木村文乃、田中圭といった実力派を擁する芸能プロダクション、トライストーン・エンタテイメント直営の演技研究所『トライストーン・アクティングラボ(TSAL)』。TSALでの研究期間を経て、トライストーン・エンタテイメント所属の俳優となった白石糸さん、前原滉さんに、TSALで学んだこと、そして役者としての目標について話を聞きました。


白石糸×前原滉
2人はTSALで在籍期間はかぶっているんですか?
前原「白石さんは初年度から、僕は2年目からで在籍期間はかぶっているんですが、クラスが違っていまして。僕はTSALに4年間いたから、事務所歴は白石さんのほうが長いので、尊敬すべき大先輩です」
白石「そういうこと言うのやめてよ(笑)」
92年生まれで年齢は一緒なんですね。
前原「この間、初めて知りました」
白石「前原くんが事務所に入ったときにリサーチ済みでした。あっ! 92年、同い年だって思って」
前原「ずっと年下だと思ってたんですよ。入った年齢が若かったし、持っている雰囲気も含め、年下の先輩だと思ってました」
お互いの印象はどうでした?
白石「すごいの来た!って思いました(笑)。唯一無二の強い個性がすごく羨ましいです」
前原「ヘンなの来たって思ってたでしょ。僕は眼鏡や髪型で空気感を作り出すタイプだと思うんですよ。でも、白石さんは自分の空気感や個性を作り出さなくても元々持っていると思います」

白石糸

白石糸

白石さんが女優を目指したきっかけから聞きたいんですが。
白石「小学生の頃、父と一緒に映画を観ていました。主に洋画だったんですけど、当時『マトリックス』を観てすごく面白いと思って映画に興味を持ちました。そこからお芝居に興味を持ち始めたのが第一歩ですね。女優になろうと思ったきっかけは、中学生の頃に観た『プラダを着た悪魔』です。アン・ハサウェイさんがものすごく可愛かったのが衝撃で。そのときは深く考えずに、こういうことを表現する人、こういう世界を疑似体験したいという想いでした」
そこからすぐに行動を起こしたんですか?
白石「高校2年生のときに“まずは事務所に入ろう”って思って本屋さんに行って情報を探して。そうしたら『TSAL開講 レッスン生募集します』という記事と『本物になる』っていうキャッチコピーが目に飛び込んで、とっさに応募しました」
その言葉が刺さった理由は?
白石「『本物になる』ってどういうこと? 『本物』ってなんだろう?って、そこに惹かれたというか圧されたというか、他とは違うのかなと。洋画から入ったので、映画女優になりたいという気持ちがあって、ちゃんとお芝居を習ってからという気持ちが強かったので、『本物になる』っていう言葉が信用できたんです。養成所はお金を取られるというイメージが強いし、「行っても無駄なんじゃない」って母親からはすごく反対されていたんですけど、やはり他とは違う何かを感じて、“どこでもいい”というよりは“ここに行きたい”と言う気持ちが強かったです」
賛成してもらうために土下座までしたとか?
白石「母に内緒で応募していたんですが、2次審査の通知を母が取ってしまって、“これ何!”ってなって、家族会議が開かれたんです(笑)。父は賛成していたので“好きにやればいいと思うよ”って言ってくれたんですが、母は首を縦に振らなくて。そこで初めて土下座しました。母も最初は仕方なく認めてくれたんですが、毎回長野から深夜バスで通っているうちに自分自身が変わっていって。私は今までは何かに夢中になることも、取柄もなかったんですが、TSALに通っている間も、前向きで貪欲で夢中だったんです。お芝居をするということも初めての感覚だし、人と何か違うことをしているっていうのも楽しくて。その変化を母も汲み取ってくれて、今ではとても応援してくれています」
劇的に変わったんですね。
白石「高校時代は部活も何もやってなくて、ホントにいい加減でした。ただ映画が好きというだけで、一歩を踏み出す勇気がないことに焦りもあって。だから、人間として変われるきっかけを作ってくれたのがTSALだったので、今では家族も良かったって言ってくれます。一歩を踏み出したら止まらずに、ずっと走りきろうと思って夢中になれました」
前原さんが俳優を目指したきっかけは?
前原「中学、高校とずっとサッカーに打ち込んでいたんですが、工業高校だったので卒業とともに就職の時期になったとき、いわゆる“仕事”というものをしたくなくて、その頃に地元で舞台のお芝居を観て素敵だなって思って、初めて役者を意識しました。その頃の自分には、役者が単純に仕事をしているように見えなかったというか、楽しそうにやっていることが仕事になっているというのがすごく羨ましくて。今はそんなこと全然思わないんですけど」

前原滉

前原滉

TSALに応募したのは?
前原「ホントに何も考えてませんでした(笑)。僕はやりたいと思ったことは人に相談せず勝手にやっちゃうんです。その時もやると決めたら親がなんと言おうが上京するつもりでしたし。その頃は事務所についても全然知らないし、何もあてが無いのにこっち(東京)に来る予定だったんです。でも母親が“上京するなら、どこかに決めてから行きなさい”って見つけてくれたのがTSALだったんです。母親がなんでTSALを選んだのか改めて聞いたら“ここならいけると思った”っていうよくわかんない理由で(笑)。事務所に入ったら入ったで『異質』とか言わてれるのに。そんな母親の『先見の明』があって今があります。結果的には間違ってなかったので、ただただ感謝なんです」
ラボに入ってから発見したことについて教えてください。
前原「入る前は、カッコいいことや表面的に美しいことを見せるのが演技だと思っていたんですが、実際は真逆で。むしろ自分のなかの醜いもの、汚いもの、下心とか、自分が見せたくないものを出したときの演技が良かったり、きれいだったりするというのは、学んで初めて分かったことです」
レッスンのなかでキツいなと思ったことは。
前原「ラボのスタジオを使ってアトリエ公演の形で芝居を上演したときに、自分を勝手に追い込んで、それが上手く作用しなくて、最終的に台本上ほぼ削られて台詞が無くなってしまって。経験も少なくて方法論もなかったので、そのときは本当にキツいな、向いてないな、辞めたいなって思ってました」

前原滉

前原滉

それが「ヒッチハイクの旅」に出るきっかけになったんですね。(前回インタビュー参照)
前原「お芝居ってどうしたらいいんだろうっていうことが分からなくなっちゃって。ヒッチハイクの旅に出ました。それで、自分のやりたくないこともたくさんやらないと、人の心を動かすものは出ないんだなっていうところに最終的にたどり着きました。その旅に出るにしても、レッスンを休まないといけなかったんですが、スタッフの方は後押ししてくれました。“それがお芝居のための経験になるなら、レッスンを休んでも行きなさい”って押してくれたので。演技の勉強を広い部分で捉えてくれてるスタンスはありがたいなあって思います」
白石「お芝居は現実の真似事で、シンプルで簡単なものだと思っていたんですが。やってみたらとても奥が深くて、答えがないものを追求して行くというのが衝撃的で。あとお芝居は、自分自身を知ることができて、自分がいままで出会わなかった自分と出会えるということも新鮮でした。自分と向き合うのはしんどいんですが、とことん向き合って出てきたものが良い芝居だったりするので、やりがいもあるし、楽しいなって思います」
アドバイスで覚えていることは?
白石「一番最初の講師の先生から、上手く感情が出てない、本当の自分を出せてないと、すごく追い込まれて、泣かされたことがあって。泣いたときに出てきた感情が大事で、本当の自分の感情なんだぞっていわれたときに、自分の殻が一枚割れた感じがしました」
以前に認識していた自分ってどんな人でした?
白石「こんなことを言うのは恥ずかしいんですが、正直自分で、なんでも世の中上手くいく、なんでもそれなりに上手くできちゃう人だと勘違いしていました。でもそれは全くの誤解だったということに気づかせてくれて、有難かったです(笑)」
前原「いや、ちょっと分かる。俳優さんを目指す人って、たぶん基本そうだと思います(笑)。オレは何でもできるから、本気出してないだけだから、まだ世の中に出てないけどって」

白石糸

白石糸

少なからずそういう気持ちもないと、一歩踏み出せないかも知れませんよね。
前原「そうかもしれないです。だから無神経にいけるんですよね(笑)」
白石「怖いもの知らずだよね」
前原「でも、どうしても越えられないものにぶつかるんですよね」
白石「そこで改めてゼロベースになれるというか、リセットされる気がします。でもその状態になるまでが難しいよね」
前原「そこに気づいた人は早いと思います。自分って別に思っていたほどカッコよくないんだとか。ホントに僕はそう思ってたんですよ(笑)」
白石「分かるよ、すっごい分かる(笑)」
前原「最初、ホントに小栗さんになれるって思ってたから」
白石「ヤバイね!(爆笑)」
前原「ヤバイでしょう? でもそこが分かった瞬間から開けて行くのが早かった」
普通に生活していてもそこまで自分と向き合えないし、向き合いたくない。
白石「スタッフの方も講師の方も、全力で向き合ってくれていたからこそ自分に向き合えたと言うのもあります。そこに対してウソをつけないというか」
前原「直接的に言うんじゃなくて、自分で気付きなよっていうスタンスで、気付くヒントはたくさんくれるんですけど、答えを言うわけじゃなくて、その人の可能性を信じてくれています。答えは人によって違いますし。例えば、やる気出せよっていうのも直接は言わない。だから自然に、演技の上手下手だけじゃなくて、やる気があったりやろうとしている人が上がって行く感じがします」
そうして2人ともトライストーン・エンタテイメントの所属になったわけですが、事務所はどんなところですか?
白石「お芝居に対して、すごくシビアに見ています。たた容姿が良くて人気があるというのをゴールにしていない。本気でお芝居をやりたい人にはとてもいい環境だなと思います。お芝居に対して熱量があって、そしてアットホーム。アットホームで信頼できるという前提があるから、切磋琢磨もできると思います」
前原「僕は4年間ラボにいたので、トライストーン所属の方のことはちょっと神格化していたというか(笑)。でも事務所の所属になってみたら、役者という土俵は一緒で、みんなお芝居が好きで、お芝居で食べていきたいと思っているベースは変わらない。いい意味で芸能人、芸能人していなくて、先輩方にもそれがないんですよ。だから気軽に話しかけて下さるし、お芝居の悩みも相談できることが有難いです。ただし、仕事の部分は今までとは変わりました。マネージャーさんが頑張ってくれて、オーディションも増えましたし、仕事としてやっていかなきゃいけないんだっていう自分の意識も改めて強くなりました」

前原滉×白石糸
事務所の先輩方と共演して感じることは?
前原「みんな広いな、どっしりしてるなって思います。自分は基本的に小心者なので」
白石「そうなんだ(笑)。私は皆さん“ついて行きたい”先輩たちだなって思います。たとえ出番が少ない役で入っている後輩でも見てくれていて、お芝居の悩みを相談しても親身になって聞いてヒントをくれるんです。ドラマ『コウノドリ』で、綾野剛さんと一緒の現場だったんですが、お芝居でも前に出られず、正直ちょっと引いてたんです。そのときに綾野さんが“糸、後輩とか、初めての連ドラとか、役が小さいとか、全く気にすることではなくて、みんな同じ役者で同じ目線で、同じ土俵に立ってるんだから、同じ気持ちでぶつかって来ていいんだよ”って言って下さって、ホントに救われました。そういう気配りも出来る先輩ってすごいな、カッコいいな、ついていきたいなと思いました」
前原滉

前原滉

お二人ともドラマ、映画、CMとコンスタントに仕事をして、着実にステップアップしていますね。前原さんがドカンと前面に出ているコマーシャルにはビックリしました
前原「CMのプランナーさんに気に入ってもらえることが多くて、じぶんとしてはCMのオーディションはすごくやりやすいです。キャラクターを出していけば、ハマるかハマらないかで判断してくれるので、気負いがないですし、このコンテに対して、このキャラを出せれば面白いだろうなって、自分の持ち味でやれるので。ドラマや映画は他の人との兼ね合いも考えないといけないんですが、CMの場合は面白いと思うことを全力でできるので、それが合ってるのかなあって思います」
白石糸

白石糸

白石さんは綾野さん主演の映画『日本で一番悪い奴ら』に出演します。
白石「映画の題材は実話でシリアスな部分もありますが、全体的にエンターテインメント作品です。そのなかで唯一普通の女の子で、特に黒い部分のないピュアな女性を演じさせていただいています。私は前原くんとは対照的で、面白いことを考えようというより、その役に合わせて行こうと思っていて。今回の役も、いつもどおりの自分らしくいけば近くなるのかなと思って、恋人役の方への想いを大切に演じました。毎回現場に行くたびに悔しさが増して、毎回芝居が好きになる思いが増えて、その積み重ねです。だからこそやめられないなって思います」
これからの目標を教えてください。
前原「自分は『変わりダネです』みたいなことを言うんですけど、、ここ最近キャスティングの方やマネージャーさんに“三の線だけに限定しないほうがいい。それができないタイプじゃないから”って近いタイミングで言っていただいて、視界が広がったんですよね。分かりやすいところでは、阿部サダヲさんって二の線も出来るし、周りも固められる。タイプは違うかも知れないですけど、そういう人はたぶんトライストーンにいないと思いますし、そこで存在感を出せればと思っています」
白石「観ている人が共感できて、親しみやすいと思ってもらえるような芝居ができる女優さんになりたいです。将来的にはやっぱり、ちゃんとお芝居で評価される女優さんが目標。日常的で当たり前のようなことが当たり前に演じられて、それを観ている人が心揺さぶられるお芝居ができる役者になりたいなって思っています」

インタビュー・終

撮影/厚地健太郎

Profile

白石糸
しらいし・いと●1992年12月31日生まれ、長野県出身。事務所所属後、2012年の舞台『問題のない私たち』に出演。以後、ドラマ『ごめんね青春!』『コウノドリ』、CM「積水ハウス」などに出演。6月25日公開の映画『日本で一番悪い奴ら』では、主人公・諸星要一(綾野剛)の手下・山辺太郎(YOUNG DAIS)の恋人・沙織役を演じる。

前原滉
まえはら・こう●1992年11月20日生まれ、宮城県出身。2015年、舞台『AZUMI 幕末編』、映画『S-最後の警官-奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』、CM「NTTドコモ『dTV』」他に出演。2016年はドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』第7話(2月29日放送)、『わたしを離さないで』、映画『だれかの木琴』に出演。。

INFORMATION

トライストーン・アクティングラボ
レッスン生募集

小栗旬や綾野剛、木村文乃、田中圭といった実力派を擁する芸能プロダクション、トライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所。演技の未経験者から、演技術の向上を目指すプロの俳優まで、幅広く門戸を開いている。講師陣は多数の俳優を指導してきたエキスパートぞろい。また、映画や舞台の製作者、監督、演出家、俳優などによる特別講義も実施している。映画『クローズZERO』シリーズや『ルパン三世』そして『新宿スワン』といった大型映画を自社製作しているのもトライストーン・エンタテイメントの特色。インタビューで語られているようにTSAL生にもこれらの作品への出演の機会を提供している。もちろん、外部の映画、ドラマ、舞台のオーディションへも積極的に送り込んでおり、TSAL在籍中から俳優として活動する人は多い。レッスンで有望と認められたり、人一倍の努力が評価された場合にはトライストーン・エンタテイメント所属に向けて推薦が受けられる。

トライストーン・アクティング・ラボの詳細は下記まで
TEL:03-5433-2195
WEB:http://www.tristone.co.jp/tsal/

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