まずは、映画『人生の約束』に出演が決まった時の感想を聞かせてもらえますか？

「すごく嬉しかったです。でも、『キャストがものすごく豪華だよ』と言われて、どんな人が出るんだろうと思ってたら、その少し後にいただいた台本を見て『うわあああ』ってなっちゃいました。主演の竹野内豊さんはもちろんですけど、その他のみなさんも全員すごい方々ばかりで、“えっ、この中に私が入って大丈夫なの!?”って思いました」

唯一の新人だったけど、作品の中では"もう一人の主役"と言っていいくらい存在感を放っていましたよね。役作りはどんなふうにしたんですか？

「“役作り”ってよく聞く言葉ですけど、本格的なお芝居は初めてだったので、何をどうしていいかぜんぜんわからなくて。クランクインの前に監督さんが個人レッスンをしてくださるということだったので、その前までに台本をたくさん読んで“ここはこんな気持ちなのかな”と想像したり、いろんな映画やドラマを観て研究しました」

監督が『最初はガチガチだったけど、最終的に"呼吸する俳優"になってくれた』とコメントしていましたね。

「本当に最初は、カメラ前で歩くだけでも手と足が一緒に出るくらいガチガチだったんです(笑)。だけどとても丁寧に指導してくださって、だんだん場の空気にも溶け込んでいけました。"呼吸する俳優"になれたかどうかは自分ではわからないけど、（演じた）瞳になれた実感もありました」

出演シーンは多いけどセリフが少なくて、自分の想いを内に秘めるタイプの女の子だったけど、演じていて難しかったところは？

「素の私とぜんぜん違ってすごく落ち着いた子なので、立ち居振る舞いは特に意識しました。話し方も『なるべく間を取って、そこに感情を入れるように』という監督さんからの指導を実践してみました。それと、セリフが少ない分、表情で演じることが多かったのが難しかったところです。“どういう表情をしたら、観ている人に気持ちが伝わるだろう”って、ロケ先のホテルでもずっと鏡とにらめっこしていました」

素のひかるちゃんと違うということは、瞳の感情を理解するのは難しかったですか？

「やっぱり、お父さんもお母さんも亡くしているという境遇からして違うので。それに内に秘めるタイプでもないですし。友だちともノリツッコミで会話が成立しちゃうみたいなテンションなので(笑)。でも大人に対して自分が言いたいことをうまく伝えられないもどかしさ、みたいな気持ちは私にもあるので、そこから少しずつ寄せていった感じです」

ロケ先での日々の話も聞いてみたいんですが、ベテランの俳優さんばかりの中で緊張しなかったですか？

「最初のほうはやっぱり、映画という雰囲気に圧倒されていたこともあってなかなかお話できなくて。でも、みなさんが声をかけてくださったおかげで、だんだん馴染んでいけました。一緒にいる時間が長かった竹野内さんは、スタッフさんのモノマネをして笑わせてくれるとても面白い方で、江口洋介さんもすれ違うたびに『元気？』って声をかけてくれる気さくな方です。本当にステキな方ばかりで、映画の現場が大好きになりました」

共演の皆さんとの思い出に残っている交流はありますか？

「たくさんあるんですけど、中でもスタッフさんや竹野内さん、江口さんと一緒に釣りをしたことが思い出深いです。『瞳も行こうよ』って誘ってくださったんです。それだけでも嬉しかったんですけど、カサゴとかが釣れた時はみんなでわーっと盛り上がって、すごく楽しかったです。その釣りに行った日というのはちょうどロケの真ん中くらいだったんですけど、竹野内さんが演じる中原祐馬は、瞳にとってお父さんを裏切った人なので、瞳としては最初はけっこう距離を置いてるんです。だけど、交流を通してだんだん心を通じ合っていくという関係性なので、ロケの途中で一緒に釣りに行けたことも、演技の距離感に生かせたのかなと思いました」

クライマックスより少し前に、瞳の重要なシーンがありますよね。竹野内さん演じる中原に両親の話をするという。

「あの日が撮影の最終日だったんですよ。だからこれまで現場で学んだことをすべて出し切ろうと思って、撮影に臨んだんですが、自分でも本当に瞳になり切れた実感がありました。スクリーンで観てもぜんぜん自分に見えなくて、そこでようやく達成感を感じることができました」

映画を１本撮り終えてみて、自分の成長みたいなものは実感できましたか？

「成長できたかどうかは別として、一番良かったなと思うのは、自分の弱点がたくさん発見できたことです。撮影の最中もできないことと向き合うことになるし、スクリーンで観ると今度は客観的に自分のダメなところが見えちゃう。だけどそういうのを知れるので、今後の課題になるし、なりたい女優像もはっきり見えてきました。やっぱり現場で得るものは多くて、特に小池栄子さんのお芝居はもちろん、待ち時間の立ち姿もすべて、何をしていてもサマになってるんですよ。その時思ったのは、普段の姿勢や意識ってお芝居にも出るんだなということで、私もセリフがなくても背中で気持ちを表現できる女優になりたいという目標ができました」

では映画デビューも果たした2015年、振り返ってみてどんな１年でしたか？

「映画はもちろんCMにもたくさん出させていただいて、とっても充実していました。それからビックリするくらい体が丈夫になりました！ 前はすぐに風邪をひく方だったんですけど、今は全然大丈夫。お仕事に迷惑をかけたらいけないので、体に気をつけるようになったところもあるんですけど。滋賀県って、冬になるとすごく寒いので、体を冷やさないように家でもスヌードをつけたりして。あとカテキンがいいと聞いたので、煎茶もよく飲みます。『健康になって芸能界に感謝だね』って家族ともよく話しています(笑)」

今年の春から中学３年生。何かチャレンジしたいとはありますか？

「高校受験もあるので、勉強を頑張らなきゃいけないというのもあるんですけど、最近純粋に勉強が好きになったんです。きっかけはK-POPが好きなので韓国語を覚えたいと思って韓国語のテキストを勉強していたら、語学って面白いなってことに気づいて、英語の授業も好きになったんですよね。そこからほかの教科も意欲的になって、やっぱり好きなことから始めるって大事だなって思いました」

韓国語や英語は女優としても使えそうですよね。

「はい！ すぐには無理だとは思うんですが、たくさん下積みを積んで、いつか国際的な作品に出られたらいいなと思います。あと、お仕事以外でも韓国に旅行に行って韓国語を使ってみたいです。K-POPの方のファンミーティングとか、まだ行ったことないんですけど、そういうものに行って少しでも通じたらすごく感動しそうです！」

そんなワクワクもいっぱいの2016年、まずは映画『人生の約束』から始まるわけですが、最後にひかるちゃん的見どころを聞かせてください。

「お金とか仕事とかじゃない、“人生にとって大切なもの”みたいな深いところまで考えさせられる映画だと思います。私くらいの若い世代にはちょっと難しいところもあるかもしれないけど、竹野内さん演じる仕事人間だった人が、人とのふれあいで表情がどんどん変わっていく様子にきっと惹きつけられると思うし、富山のきれいな風景や迫力満点のお祭りの場面も見どころなので、ぜひ注目していただきたいです」

��橋ひかる
たかはし・ひかる●2001年9月22日生まれ、滋賀県出身。オスカープロモーション所属。2014年『第14回全日本国民的美少女コンテスト』グランプリ。『代々木ゼミナール』、『日本生活協同組合連合会』(CO･OP)　大鵬薬品工業株式会社『チオビタ・ドリンク』のCMに出演。今作で映画初出演を果たす。