上西星来 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「上西星来」

2015/09/30

「自分ではない人になれることは本当に楽しい 私なりのおさえを演じられればと思っています」

上西星来

東京パフォーマンスドール(通称:TPD)のメンバーで、『Ray』モデルとしても活躍中の上西星来が外部舞台に初出演する。10年ぶりの再演となる名作『ダブリンの鐘つきカビ人間』で、ヒロインに抜擢。思っていることと反対の言葉しかしゃべれない奇病に冒された娘という難役に挑む。

上西星来
舞台の稽古はいかがですか?
「本当に温かい現場です。私の頭がパンクしそうになっても、共演者さんが笑わせてくださったり。(演出の)G2さんは、稽古に入る前にも何度かワークショップに参加させていただいたんですが、わかりやすい例えで演技を教えてくださるので。G2さんとお会いする前は、舞台の稽古って怖いイメージがあって、演出家さんが目の前に座って怒鳴られるのかと思っていました(笑)」
今回、『ダブリンの鐘つきカビ人間』のヒロイン役に抜擢されましたが、この作品のことは知っていましたか?
「お話をいただいたときは、知らなかったので、以前、中越典子さんが演じられたときのDVDと台本を観させていただきました」
上西さんが演じる“おさえ”は、思っていることと反対の言葉しか話せない女のコですが、難しい役だと思いました?
「正直最初はわからなかったです。TPDでやっていた公演以外では初の外部舞台で、何の経験もなくて、どの役が難しいとかの判断もつきませんでした」
舞台をやりたい気持ちはあったんですか?
「演技をやりたい気持ちはすごくあって、事務所の先輩方が出演されている舞台もよく観させてもらっていました」


上西星来
もともとはモデル志望でしたよね?
「小さい頃にすごく興味があったのはモデルで、それは絶対に叶えたかったので、オーディションを受けていました」
女優に興味が出たのは、どの辺からですか?
「2年前にTPDのPLAY×LIVE『1×0』(演劇とライブが融合した公演)で、演技を初めてやったときです。普段の私は、感情の起伏があまり激しくない性格だけど、役を演じてストーリーにのめり込むとすごく泣きたくなったり、怒りたくなったりしたんです。“自分にこんな感情があるんだ”とわかって、楽しいと思いました」
今回のおさえも“涙がこみ上げる”とか“絶叫する”といったシーンがあるようですが。
「稽古では涙が流れ出ないようにしています。G2さんに『本当に涙を流さなくていいから、気持ち的に泣いて』と言われるんですけど、涙が出てきちゃうので。それをどう止めようかと」
新人女優だと「涙が出ない」ということも多いのに、星来さんは感情が入りやすいみたいですね。一番難しいのは、やっぱり気持ちと反対の言葉が出るところ?
「それが本当に難しいです。心情が二重、三重になるので、どういう声のトーンや表情や動きで表現すればいいのか、毎日考えています。最初は台本の台詞と逆の、おさえの気持ちの通りの台詞を覚えて稽古しました」
たとえば、おさえは『好き』と思っていると『嫌い』と言っちゃうけど、最初はそのまま『好き』と言っていたと。
「そうです。まだ最初に覚えたまま『好き』と言っちゃうこともありますけど、考えすぎずに“気持ちは気持ち”、“言葉は言葉”とだけ考えるようにすることで、『好き』だと思っていて口だけ『嫌い』としゃべれるようになりました」

上西星来
演出的に特に言われていることはありますか?
「『上半身の芝居を下半身に届かせて』とよく言われます。前を向きたい心情になったら、上半身だけ前を向くのでなく、足を一歩踏み出してみるとか。そこがまだ私には難しくて、一歩出すのに違和感があるんです。感情がもっと乗ったら、一歩出るのかもしれません。あと『自分の台詞を相手に届かせなさい』と」
カビ人間役の佐藤隆太さんの台詞は届いていますか?
「もう、すごく届いてます。私はドキュメンタリーとかを観ても全然泣かないのに、隆太さんの言葉は届きすぎて、泣きそうになることがたくさんあります。共演の方には『感情の浮き沈みを激しく』というアドバイスもいただきました。小さいドラマとして捉えるのでなく、大きなドラマで考えるようにしたほうがいいと、教えてもらいました」
おさえの人物像についても掘り下げましたか?
「芯が強い女の子だと思います。市民のみんなの前で大きな声で話したり、やってはいけないことを止めるのは、勇気がいることだから。その印象は台本を読んだときから変わっていません。ただ、DVDで観た中越さんのおさえは全然違っていました。私が思ったおさえは芯の強さを表に見せないけど、中越さんは最初から強さを表に出す感じだったんです。私なりのおさえを演じられればと思っています」
容姿は醜くて心は美しいカビ人間に惹かれるのも、わかる心情ですか?
「たぶんおさえは、過去にあまり恋愛をしてなくて、だからこそ純粋に美しい心に素直に惹かれていくのかなと思いました。人間的な部分と野性的な部分の両方に。情が強かったりもするのかな」
上西星来
まだ稽古の段階ですが、女優の面白みも実感していますか?
「自分ではない人になれることは本当に楽しいです。他の人との会話でも、おさえは上西星来とは違う受け取り方をして、上西星来ならしない表情や言い方をするのが面白いなと思います」
さっき出ましたが、上西さんは普段、感情をあまり表に出さないと。
「表にあまり出さないので、愛知にいた頃は友だちに心配されていました。悩みがあっても、極限にまで悩んだ後に爆発しちゃうから『そうなる前に、途中で言えばいいのに』とか。たとえば、ちょっとイラっとしても絶対に黙っていて、自分のなかで解消しちゃうタイプです。嬉しいときは素直に喜びますけど、たぶん悲しいとか怒る気持ちを出すのが苦手みたいです」
『ダブリンの鐘つきカビ人間』の本番まで、大きな課題にしていることはありますか?
「正直、まだ不安がたくさんあります。基本的なことなんですけど、声がちゃんとお客さんに届くかとか、動きがちゃんと伝わるかとか。そこはしっかりやりつつ、毎回どれだけ新鮮な気持ちでやれるかも課題かなと思います。同じ相手の台詞でも、いつも同じトーンとスピードで聞くわけではないと思うので、毎回いかに心で受け止められるか。ただ単なる段取りみたいにならないようにしたいです」
家でも練習はしているんですか?
「一直線な性格なので、やらないと落ち着きません。朝起きて発声の練習をして、帰ってきたら朝にできなかった分の滑舌練習をして、その日の稽古の復習と次の日の稽古の予習をするか、他の舞台のDVDを観て寝る感じです。そういうのをちゃんとやらないと気が済まない性格です。小さい頃にバレエをやっていたときからそうなんです」
上西星来
上西さんはTPDの活動はもちろん、『Ray』モデルもやっていますよね。全部に一直線だと、時間が足りなくなりませんか?
「それは別に感じません。モデルのお仕事のときは、現場に行く前にファッション誌をチェックして、自分がビューティーページをやらせていただくことが多いので、そういうページのポーズを勉強したりします」
切り替えがうまいんですかね?
「全然切り替えているつもりはないんです。たぶん勝手に替わってるんだと思います」
TPDの活動のときも、今の上西さんとは違うスイッチが入っている感じ?
「全然違いますね。TPDのときは『やってやろうじゃないか!』みたいな、『お客さんの熱気に負けないぞ! そして、感動させるぞ!』ってなります。あと、9人で力を合わせて揃えるところは揃える、苦しいときは声を出し合って歌う……という感じです。舞台でも『やってやるぞ!』という想いはありますけど、種類が違いますね。自分の演技でどれだけ深く感動していただけるか……となります」
将来的にも、TPD、モデル、お芝居、全部やっていきたいですか?
「そうですね。欲張りになってしまうけど、すべてに挑戦していきたいです!」

インタビュー・終

撮影/mika(f-me) 取材・文/斉藤貴志

Profile

上西星来
じょうにし・せいら●1996年8月14日生まれ、愛知県出身。キューブ所属。東京パフォーマンスドール、雑誌『Ray』専属モデルとしても活躍中。2015年2月に、テレビ朝日『セカンド・ラブ』でドラマ初レギュラー出演を果たした。

INFORMATION

ダブリンと鐘つきカビ人間

PARCO&CUBE present『ダブリンの鐘つきカビ人間』
東京公演:10月3日(土)〜25日(日)パルコ劇場
福岡公演:11月4日(水)福岡市民会館
広島公演:11月6日(金) JMSアステールプラザ 大ホール
大阪公演:11月13日(金)〜15日(日)森ノ宮ピロティホール
仙台公演:11月17日(火)電力ホール
札幌公演:11月20日(金)札幌市教育文化会館 大ホール
チケット発売中!!

2002年と2005年に上演された、笑いと感動の伝説の名作『ダブリンの鐘つきカビ人間』が10年ぶりに再演。 不思議な病に襲われた中世を思わせる町。そんな中でももっとも不幸な病にかかった二人がいた。心と体が入れ替わり、心は水晶のように美しいのに、誰も近づきたがらない醜い容姿になったカビ人間と、思っていることの反対の言葉しか喋れなくなった娘・おさえ。誰からも愛されない男・カビ人間の美しい心にふれたおさえは、彼に心を開いていく。しかし、心惹かれれば惹かれるほどに、おさえの口から出るのはカビ人間への罵倒の言葉。やがてその言葉がカビ人間を窮地に追い詰めていく――。美しくも哀しく、残酷な童話ラブロマンス……。

『ダブリンの鐘つきカビ人間』
特設HPアドレス:http://www.parco-play.com/web/play/dublin2015/

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