――橋本さんに対してはいかがでしょう。

鯨井康介「汰斗は感性の人です。その感性がすごくビビットだし、なにせそれが橋本汰斗であるということが、僕はすごく好きで。これって、なかなか持てるものじゃないと思うんです。自分の表現って、みんながずっと探していくものだと思うんですが、汰斗はそれがもうすでにある程度ベースが見えているんだろうなと。そこに無理が見えない。無理して表現しているのではなくて、すごく自然体に表現しているっていうのが、橋本汰斗の大きな魅力だなって思うし、羨ましいとすら思う部分です」

牧田哲也「僕からすると汰斗って、アーティスト感がすごく強いんですよね。歌やダンスもこれでもかっていうくらい、そこまでやらなくても…って思うくらい、突き詰めるタイプで、本当に好きなんだなって伝わってくる。そういう技術も持っているんだけど、表現者としてはすごくピュア。技術を持っている人っていろんな人がいるけど、その技術に頼るだけじゃなくて、そこに人間味というか、ピュアさっていうものが滲み出てくるっていうのは、他にいない俳優さんだなって思います」

鯨井康介「あと、汰斗が怒ってるところ、見たことない」

橋本汰斗「僕、ぜんぜん怒らないですね」

鯨井康介「そうだよね。稽古場でいつも笑顔なんですよ。別に自分から何かを発信してその場を回すわけでもないけど、その場にいてずっとニコニコ笑っている。それってすごい魅力だなって思うし、人間としてすごく大事なことだと思うんですよね」

――そういう人がいるだけで、場の雰囲気が柔らかくなりますよね。

鯨井康介「そうなんです。それは俳優としての表現としてもすごく近いというか、汰斗が出てくると、舞台上の空気が柔らかく感じることって、お客さんもけっこう感じているんじゃないかって。それはすごく大きいなと思います」

牧田哲也「確かにね」

――では、最後に牧田さんの印象を。

鯨井康介「今回、初共演なのでまだ日は浅いのですが、ニュートラルでいるところは魅力的だなって思います。お芝居にとってニュートラルというのは、僕もすごく大事にしていて。そこから芝居を作っていくという、１つの方法論として大事だなと思っているのですが、そのニュートラルを作るのがとても上手い人という印象です。稽古場の居方もそうですが、なかなかそこでニュートラルで居られる人って、僕は多くないのかなと思っていて。実は怖いことでもあるんですよね、武器を持たずに立つわけですから。でも、その選択ができる人っていうのは、やっぱり強い人だなと思うので、そういうものをこの稽古期間で牧田さんに感じました」

橋本汰斗「本当に、常にニュートラルでいるイメージ。その場にいるだけで人が寄ってくるというか、敷居が高くなくて、誰とでも心の距離を近づけやすい人だなって思います。それは舞台上でも一緒。役としていたとしても相談しやすかったり、そういう意味でもすごくニュートラルな人だなって思います」

鯨井康介「それと歌声がすごく素敵！ 鉄ミュを振り返ると、低音の響く人ってあまり居なかったんですよね。上手いというのはもちろんなんですが、すごく素敵なんです。僕、自分とはぜんぜん関係のないシーンなのに、稽古動画で牧田さんの歌のシーンを見ていたら、“この人、すげぇ！めっちゃ素敵!!”って思って、次の日に本人に言いました。牧田さんの歌声、超好きです！」

牧田哲也「なかなか自分が出ていないシーンの稽古動画見る人いないから、見てくれたんだって嬉しかったよ」

鯨井康介「みんなどんなことをやっているのか気になるんですよね、この座組が楽しいから（笑）」

――『デビュー』という媒体なので、芸能界デビューを夢見る読者に向けて、みなさんが夢を叶えるために大切にしていることを教えてください。

橋本汰斗「目の前にあることを淡々と１つずつやることかなと。何か物事を進める時って、けっこう左右してくるような外からの意見とかも多かったりすると思うんです。でも、自分が成長するためには、誰に何を言われようが、自分を信じて、自分がこれは本当に成長できるって思うようなことを１つずつやることが、一番の近道なのかなって思います」

鯨井康介「なんか汰斗が言うと説得力あるな。僕もちょっと近いかもしれないけど、最近自分で思っていることなんですが、“世間は自分のことをたいして気にしてない”ということ。どうしても周りが気になったり、どう思われているのか気にしちゃったりするけど、周りの人ってそこまで他人には興味ないって思うんです。やりたいことがあるならしっかりと挑戦していいし、その人に届くようにアプローチすればいいんじゃないかなと」

――周りを気にして躊躇するより、思い切って踏み出したほうが道は開けますよね。

鯨井康介「世間の目や人の目を気にして二の足を踏むくらいだったら、思い切ってやったほうがいいと思います。周りの人に対して、“なんでやってくれないの？”と求めるくらいだったら、そもそも自分に興味がないんだから、その人に届くぐらいもう１歩自分が頑張らないといけないって思って動いたほうが、いろいろと上手くいくのかなって最近思っています」

牧田哲也「これは僕自身、そうしなきゃなって思っていることでもあるんですけど、とりあえず楽しむことを突き詰めていくようにしようって思っていて。これって日本の昔の考えかもしれないけど、僕の中では、自分の強みや良いところを伸ばすのではなく、自分の弱点を強化していかなきゃっていうような考えがどうしてもあって。でも、自分は何に興味があって、何をやっているときが楽しいのかっていう、自分の好きなことを突き詰めることって大事なんだろうなって、最近すごく思うんです。僕らの職業は、特に何が活きるかわからない世界だから。たとえば鉄道がすごく好きだったとしたら、鉄ミュのような作品と出会ったときに、役作りでめちゃくちゃそれが活きたりすることもある。これやらなきゃ、あれやらなきゃ！っていうことではなく、興味のあるもの、好きなものを突き詰めていくことで、夢に繋がっていくんじゃないかなと思います」