――では、初めてご一緒される演出家の河原さんとの仕事も楽しみですね。

「初めての演出家と仕事をすること自体が久々なので、きっと最初は緊張すると思いますが、楽しみです。特に稽古初日というのは、芝居や歌、ダンスなど、自分は何が出来るのかを見せる場だと考えていて。演出家や共演者の方々がまず一番最初のお客さんだと思って、立ち稽古をやるようにしています。これまでもいろんな先輩方から『一発目が大事だぞ』と習いましたし、今回、特に河原さんは初めてなので、初日は“俺はここまでやりますっ！”っていうのをどこまで見せられるか…。どう演じたら面白いかを家でめちゃめちゃコソ練して行きます！（笑）」

――失敗を恐れず？

「稽古は失敗しても良いんです。やり切った結果、『全然違う』と言われることのほうが多いし、初日に『いいね！』って言われることはほぼないのですが、失敗を恐れて守りに入るなら、冒険して失敗したほうが良いと思っていて。なんかよく分からない人だなと思われるより、『間違ってはいるけど、本気でやってきたな』と思われたほうが気持ち良い。一発目で自分を出しきると、その後の関係も築きやすくなると思うんです。僕は、ダメ出しをされた時はめちゃめちゃ凹むけれど、割りと寝たらすぐ持ち直すタイプなんです。というか、だんだん、凹んでいる自分に腹が立ってきて、“凹んでいるぐらいなら、どうするか考えろよ！”とシフトチェンジできるタイプ。それは、自分の強みだと思います」

――15歳でデビューし、今、30歳。ここにくるまでのターニングポイントになった作品や出来事を教えてください。

「ミュージカルだったら『ロミオ＆ジュリエット』（2013年）、すべての作品からいうと演出家の白井晃さんと初めてご一緒させていただいた舞台『マーキュリー・ファー』（2015年）です。どちらも20代前半の作品ですが、30歳の今やっていることのスタートというか、指針になりました」

――具体的に言うと？

「10代〜20代前半の頃は、自分は“本当にこの仕事が出来るのか、やっていけるのかな”という、迷いや不安が強かった気がします。自信がなかったので、“大丈夫だ、大丈夫だ”と自分に言い聞かせながら、虚勢を張り、自信のあるふりをして、マネージャーさんや周囲の方に対して、頑固に接したりもしてしまったなと。例えば『ロミジュリ』のときは、“自分なんかが、ミュージカルなんて出来るわけがない”と。それまで、歌ったことのない自分が、急にグランドミュージカルの大きな舞台で、しかもソロで歌うなんて考えてもみなかったし、本当に自信がなくて、不安でいっぱいでした。今だから言えるけれど、正直、『ロミジュリ』では、自分は何もできずに終わったなと思っていて。でも、そういう経験をしたことが、重要なターニングポイントになったと感じます」

――『マーキュリー・ファー』に関しては？

「役者という肩書に対してようやく慣れたというか、覚悟を持てた作品です。それまでは自分の肩書きが『俳優・役者』と記されることに対して、ムズがゆかったし、自分は“役者”といえるほど、たいそうな人間ではないのに…と思っていました。そこから、『マーキュリー〜』で芝居とドップリと向き合って、そのときの自分の技量を知り、どの程度の役者なのかを痛感できたことでようやく、お芝居をやる、役者という肩書きを背負う覚悟を持ちました」

――自分に向き合うことで、覚悟も出来た。

「そうですね。“役者でありながら役者だなんて言えない”と思うことは、役者・水田航生を好きだと応援してくれている方たちに対して、すごく失礼だとも考えました。そんな奴、自分だったら応援したくない。ならば覚悟を持たなければ！と思うようになり、『役者の水田航生です』とちゃんと言えるようになりましたね。それに、去年コロナ禍で自粛期間とかあった中で、自分がやってきた作品の台本とかを実家から取り寄せて読み返したりして、自分はやっぱり舞台やミュージカルというものが本当に好きなんだなと改めて発見できて。その想いを大切にずっと持っていれば、きっとこれからも舞台に立ち続けるんだろうなという自信にもなった。好きなことをやって、それを観て自分のことを好きでいてくれる人がいるって、なんて幸せな仕事なんだろうって思いました」

――最後に、デビューを目指す読者に伝えたい、夢を叶えるために大切なこととは？

「いま僕がいちばん大切だと思うのは、“想像力”です。“自分は今後、どうなりたいか”を描く想像力を持つ。その想像力が、どんどん枝葉分かれていって、具体的な行動になっていくと思っていて。例えば、僕だったら“この作品に出たい、こんな役者になりたい”とリアルな想像したときに、そこに到達するためには、いま何が足りないてないのか、これが足りてないからそこに行けていなんだとかを考える。すると、足りないものを補うためには、次に何をしなければいけないのかが見えてくるんです。なので、まずは“役者になりたい”、“歌手になりたい”という夢を具体的に想像して、そして“いま、自分には何が足りてないから、そこに到達できないのだろう”ということを考えてみることも1つ策だと思います。想像力を豊かにすれば、自ずと具体的な方法が見いだせる。それが夢を叶える近道にもなるのかなと思います」

――とても参考になる良いお言葉を頂きました。ありがとうございます！

「ありがとうございます！　僕もデビューっ子なので、そう言っていただくと嬉しい。15年間、頑張ってきてよかったー！(笑)」