佐藤 健 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「佐藤 健」

2016/10/12

「映画を観て“自分が何者であるか”ということよりも、“自分が何をしたいのか”が大事なんだと感じてもらえたら」

佐藤 健

撮影/booro(BIEI)取材・文/永堀アツオ

『桐島、部活やめるってよ』などのヒット作を生み出している朝井リョウが、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した『何者』を映画化。就職活動を通して自分が“何者”であるかを模索する若者たちの姿を描いた本作には、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった、今をときめく実力派俳優が集結。主人公の冷静分析系男子・拓人を演じた佐藤健に、本作への想い、実際に体験したという“就活体験”についてなど、たっぷりと語ってもらった。
佐藤 健
――映画『るろうに剣心』シリーズをはじめ、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』など、数々のヒット作に出演されていますが、作品を決めるときの決め手のようなものはあるんですか?
「基本的には事務所と話して決めているんですけど、今回の映画『何者』に関して言うと、そもそも、僕、原作者の朝井リョウくんと友達だったんです。だから、映画化とは関係なく、『何者』を読んで、面白いなと思っていたんです。そのあとに、友達として、『何者』を実写化するという話を聞いて。『まじ? キャストどうなるの!?』みたいな話をずっとしていたんです。『でも、この主役は難しいよね。キャラクターとして立ってくるのは(二階堂ふみが演じた)理香や他の人になってくるから。誰にするかも難しいし、悩みどころだね』って。実写化するっていう話しが出た当時、僕は覚えてないんですけど、朝井くん曰く、『もし、オファーきたらやる?』って聞かれて、僕は『いや、どうだろう』って答えたみたいです(笑)」
――そうだったんですね(笑)。自分にやらせろという気持ちはなかったですか?
「無かったですね、本当に。でも、2〜3ヵ月くらい経ったある日、突然、僕のところに出演のオファーが来たんです。友達として話を聞いていた僕からすると、本当にキャスティングが大変だったんだなって思って」
佐藤 健
――それは朝井さんから?
「いや、東宝さんから事務所に来て、朝井くんはしれっとしていました(笑)。本当に難航して、だから、俺のところにまで来たのか! 大変だったんだなっていう気持ちで受けました。もしも普通にオファーを頂いていたら、正直、断っていた可能性もあったと思います。でも、プロデューサーが、『バクマン。』のプロデューサーで、『世界から猫が消えたなら』の原作者でもある川村元気さんだったのも大きいかな。作品が続いていたし、信頼のある方からのオファーだというのもあって、話を頂いてからは即決でした。なるほど、やりますか!って」
――オファーを受けた決め手というとやはり……。
「毎回違いますけど、一番大きいのは、やっぱり人ですよね。信頼できる人からの誘いは乗りやすい。誰と一緒にその作品を作るかっていうのが一番大きいと思っています。ものづくりにおいて、特に俳優の一人の力はちっぽけなものだと思っているから。どんなに自分一人が頑張っても、誰と組むかで太刀打ちできないくらいのものがあるので。誰と一緒にやるかっていうことが一番大事だと思います」
――本作でいうと誰の存在が大きかったですか?
「きっかけとしては、朝井くんと川村さん。あと、三浦監督も決まっていました。映画『愛の渦』は知っていたので、いい意味で、きっと変態なんだろうな〜というイメージはあったんですけど(笑)、お会いしたことはなかったので、余計な先入観を入れないようにしてたんですね。でも、映画『バクマン。』をやった時に、大根監督が『三浦大輔は天才だ』と言っていて」
佐藤 健
――三浦監督の最新舞台『娼年』のパンフにも寄稿していました。『「演技者。」で一緒にやって以来、“才能しかない男だ”と感じてる』と。
「そうなんですね。だから、僕が信頼している人が『信頼できる人』と言っている方であれば、大丈夫だと思いました。実際の現場では三浦監督が本気で作品に向き合っていることがひしひしと伝わってきて。本番前の稽古というか、リハーサルを繰り返す回数も多かったし、テイク数もこれまでにないくらい多くて大変だったけど、同時に楽しい作業でもあって。監督の言うことを信じてやって、それが失敗でもいいやって思えるくらい本気でやっているのが見えたし、心から信頼できる監督でした」
――クランクイン前には、某人事部の全面協力のもと、2016年度の内定者10名と一緒に“就活体験”もされたんですよね。
「就活生の方々は、本当に大変だなと思いました。まず、エントリーシートを書くのが面倒くさくて(笑)。それを何社分も書かないといけないので、本当にみなさん偉いなと。あと、面接で落とされたりもするわけじゃないですか。“いやいやいや。そんな30分で、わかるわけないだろう”っていうフラストレーションもたまるだろうなっていうことを実感しましたね」
――就活生を演じた5人の中では、誰が就職できそうだなと感じました?
「基本的に面接は一人ずつで、グループディスカッションだけ、僕は二階堂さんと同じグループで受けさせてもらったんですけど、ふみちゃんは受け答えがしっかりしていたし、その場の空気を支配していた感じがあるので、受かるタイプだと思いますね。あとの3人のグループディスカッションは見てないんですけど、みんなと話した感じだと、どうもダメだったみたい」
佐藤 健
――佐藤さんが演じた拓人は、冷静分析系男子ということですが、どんな人物だと感じました? 有村架純さんは『佐藤さんは冷静に分析する拓人にそっくりだ』と言ってましたが。
「あの5人の中だったら、まちがいなく拓人になりますね。拓人が言うセリフやよく思うことは、自分が普段から言っていることだったりもして。例えば、僕の場合、自然な会話の中で『あの人はこういう人だよね』って言ってしまうことが多いんですね。僕も拓人も分析しているつもりはなくて、無意識のうちだと思うんですけど、知らないうちに観察して、知らないうちに分析しているんだなって思って。あと、かつての演劇仲間である銀次が、ブログに“今、こういうことを頑張っています”っていうアピールを書くんだけど、それを見て“そういうのは全部終わってから書けばいいんだ、まだ発表する段階にないことをいちいち言うなよ!”って思う拓人の気持ちもわかったりします。そういう感じで、小説を読んでいる時から、ずっと、拓人の気持ちに乗っかりながら、共感しながら読んでいました」
――自分と似ているな〜と思いながら読んでいた?
「そうですね。でも、自分に近いというよりは、拓人の目線で読んでいたという方が正しいかもしれない。原作者の朝井くんも“誰もが拓人の感覚を持っているはずだ。拓人はマスだ”っていう気持ちで書いていたそうなので、みんながみんな、拓人の気持ちに乗っかって、共感して読んでいくけど、最後にその気持ちさえ裏切られるっていう構図になっていると思います」
――その共感が裏切られる展開はとても映画的で、演劇的な見せ方になっていますよね。詳しくはネタバレになるから言えないですが……。
「過去にやった芝居と全く同じ動きをするっていう、より技術が求められるシーンだったと思うんですけど、楽しかったし、燃えましたよ。素敵なお芝居をするなって思っている同世代の人たちと一緒に作るっていうのはワクワクしました。他の現場以上に、芝居っていうものに向き合って作り上げていく作業を共有するのがこのメンバーでよかったし、すごく幸せな環境でしたね」
佐藤 健
――プレス資料には「全然交わらなそうな人たちをキャスティングした」とありますが。
「そう言っていましたけど、残念ながら、すぐ仲良くなりました(笑)。僕はみんな、大好きですし、現場では撮影の合間でワチャワチャしていましたよ。もともと仲の良かった二階堂、菅田の二人が元気に現場を明るくしてくれて。いい雰囲気でしたし、刺激的だったし、気持ち良かった。さっきも言ったことですけど、芝居は一人がどんなに頑張っても、かみ合わなかったらどうしようもないんですよね。相手がいて、その相手がいい芝居をしてくれたら、それに乗っかって、結果、いいものができる。だから、その作業は気持ちいいんです」
――芝居でぶつかり合う作業が楽しいと感じるようになる以前の話も少しお伺いしたいと思うんですが、高2でスカウトされてこの世界に入った佐藤さんが、“この世界でやっていくんだ!(芸能界に就職する)”と決意した出来事や仕事とは?
「厳密に言うと“コレ!”というのはないんですけど、『仮面ライダー電王』をやっている最中には、“この仕事をずっと続けていきたいな”って思っていました」
――それ以外の選択肢は考えなかった?
「なかったですね。デビューする前まで、高校3年生まではずっと考えていましたけど、“大学を受験しない”って決めた時が、1つのポイントだったんだと思います」
――デビュー直後は、オーディションに参加することもあったと思います。就活でもオーディションでも30秒〜1分間の自己PRは必須ですが、佐藤さんだったら何をアピールしますか?
「僕もオーディションとか、面接が苦手なんです。僕は、オーディションの時、特技披露でよくブレイクダンスをやっていましたけど、ブレイクダンスをやって受かったオーディションはないです(笑)。正直言うと、受かるか受からないかは、自己アピールの上手さじゃないと思うんです。今回、『何者』をやるにあたって、いろいろ研究もしたし、取材もしたんですけど、どうやら、結局は何をするにも人柄を見ているらしく。自己アピールするときも、内容よりも、その時に喋っている表情を見ているし、質問に対する答えの内容よりも、人間性を見ているっていうことなんです。……でも、じゃあ、どうすればいいんだろうっていうことですよね(笑)。人柄を見ているんだとしたら、考えすぎたり、殻に閉じこもっちゃうのは良くない。オープンに、恐れることなく、自分の人間性を全部さらけ出す方がいいと思います」
佐藤 健
――ありがとうございます。では最後にデビューを目指す読者にメッセージをお願いします。
「もしも何か、自分がなりたいものがあるんだったら、行動を起こすことは絶対に必要です。行動したけど受からない人っていう人もいると思いますが、いいアドバイスはできないけど、『頑張れ!』って言いたい。応援はする。でも、どうしたら受かるかは、自分でじっくりと考えてみてください。あと、今、10代の方には、学生生活は二度と戻らない、かけがえのない時間なので、全力で過ごしたほうがいいよっていうことを伝えたいですね。何であれ、とにかく全力で、学生生活を過ごしてほしいです。この映画を観て、“自分が何者であるか”ということよりも、“自分が何をするか、何をしたいのか”が大事なんだと感じてもらえたらいいなと思います」
Profile
佐藤 健(さとう・たける)●1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。アミューズ所属。ドラマ『ROOKIES』(TBS系)やNHK 大河ドラマ『龍馬伝』、映画『BECK』、映画『るろうに剣心』シリーズなどの話題作に次々と出演。近年の出演作としては、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、TBSドラマ60周年特別企画 日曜劇場『天皇の料理番』、映画『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』など。写真集+DVDブック『X(ten)』が発売中。
映画『何者』
10月15日(土)全国東宝系にてロードショー
何者
何者
(C)2016映画「何者」製作委員会 
平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した、朝井リョウによるベストセラー『何者』(新潮社)を映画化。『桐島、部活やめるってよ』で等身大の高校生を描き切った朝井リョウが今回描いたのは、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生たち。お互いを励まし合いながらも、友情、恋愛、裏切りといった様々な感情が交錯していく彼らの姿に『リアルすぎるw』『就活中に読んだらマジ凹んだ』など話題をよんだ本作。
映画化にあたり、主人公の冷静分析系男子・拓人を演じるのは『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』と立て続けに主演作が公開し、いま最も人気と実力を兼ね備えた俳優・佐藤健のほか、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった、この世代を代表する実力派俳優たちが集結。
映画のラスト、全ての観客を巻き込んで問いかけられるメッセージ「はたして自分は何者なのか。」誰も観たことのない就活青春エンタテインメント、ここに誕生!

公式サイト: http://nanimono-movie.com/

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