――これまでもオーディションでたくさんの役を勝ち取ってきた池田さん。その反面、落ちることも多かったですか？

「何百回と落ちてきました。昔は、“自分は一生懸命やっているのに、なんで落ちるんだろう!?”と思っていたんです。努力しても結果につながらないことに、苛立ってしまっていたときもあって。『お芝居はとても良かったんですが、身長が…』なんて言われると、“そんなの、プロフィールの段階でわかるじゃないか！ 最終まで残しておいて、最後にそれ!?“って（笑）。オーディション会場で、見ず知らずの大人の前でお芝居をすることを楽しめる人なんて、そうそういないと思うんです。演技審査で同じ年くらいの初対面の子と一緒にお芝居してくださいと言われても、“この子のこと、ぜんぜん知らないのにな…” って。幼い頃は台本も読めない漢字だらけだったり、料理のレシピみたいな長台詞を渡されたりと理不尽なこともたくさんあって、オーディションって戸惑うことばかり要求されるなって思っていました」

――悔しい思いをしながら多くのオーディションを経験してきて、今はどんな気持ちで臨んでいますか？

「重く考えることはしなくなりました。この一瞬のことだけだし、審査はされているけど、上手くやろうと気負うのはやめようと。ちなみに、緊張してしまったときは、普段、やらないようなことやるとほぐれるんです。隣りの人やスタッフさんに話しかけるとか。いつもだったらやらないことを思い切ってやってみると、肩の力が抜けるというか。緊張している自分を責めず、俯瞰でそんな自分を認めて、その上で、自分らしくやればいいのかなと。“僕だったら、こんなふうに表現します”というのを見てもらう。渡された台本を、学校で出される問題のような感じで、“僕は、こんなふうに解きました”と提出する感じで臨んでいます。僕は課題の台本を前日までに覚えて、移動中にもう一度復習したら、あとは好きな動画を観たりして深追いはしないようにしています。台本を何度も何度も読んで、頭の中で一からお芝居を作り上げてしまうと、現場での瞬発力がなくなってしまうんです。人間らしさ、リアリティがなくなってしまうというか。お芝居は相手あってのことなので、深く考えすぎずに、相手の台詞を受け取ったときの気持ちでやったほうがいい。台本に『怒る』って書いてあっても、演じているときに感情がそっちにいかなかったら、無理に怒らなくてもいいやって」

――それで特に問題もなかったと。

「なかったです。オーディションって結局、人間性を見られている気がするんです。ときどき、“なんで残ったんだろう!?”って感じることもあって。演じてみて、“ああ、自分と近い部分があったんだ”って。年齢を重ねるにつれて、オーディションにも心の余裕を持って臨むようになりましたね。落ちるときも、『今回の役には当てはまらなかったです』と言われたら、それはもう、仕方のないことですから」