古川雄輝 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「古川雄輝」

2016/02/10

「『狂気的な役をやりたい』とずっと言っていたので、ゼラ役ができると聞いて、素直に嬉しかったです」

古川雄輝

撮影/草刈雅之 取材・文/根岸聖子

古屋兎丸によるロングセラーコミック『ライチ☆光クラブ』が満を持して映画化。『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』や『5→9〜私に恋したお坊さん』などで演じてきた好青年役から一転、今作では、光クラブを絶対的なカリスマ性で独裁的に支配するゼラを熱演している古川雄輝。新境地を開拓した『ライチ☆光クラブ』への想いをたっぷりと語ってくれた。
古川雄輝
――映画『ライチ☆光クラブ』は、これまで出演してきた作品、役柄とはかけ離れた、独特の世界観の映画です。どのような経緯で出演が決まったのですか?
「これまで、似たタイプの役柄が多かったのですが、同じようなキャラクターを演じ続けるよりは、違った作風のモノもやってみたいと思っていたんです。少女マンガに出てくる王子様キャラのような役が多かったので。2年前くらいから『狂気的な役をやりたい』とずっと言っていていたところに、この作品のオーディションがありまして。受けたのが2年前で、出演が決まったのが1年後くらい。ゼラ役ができると聞いて、素直に嬉しかったです」
――オーディションは、最初からゼラ役で受けたのですか?
「その場で、タミヤ、ゼラ、ジャイボの中から好きな役柄を選んで演じてみるという形だったのですが、以前、同じ事務所の木村了くんが出ていた舞台版を観ていて、物語の内容は知っていたので、最初にゼラを選びました。次に狙える役はジャイボかなと思い、ジャイボでもやりました。台本を読んだ感触として、映画版ではタミヤが主役だなと思ったので、そこはハードルが高い。そこで、ジャイボにするか、ゼラにするかで一瞬迷いましたが、やりたいと思ったのがゼラだったんです」
古川雄輝
――『Deview』読者の中には、“オーディションでは緊張してしまい、自分が思うように行動できない”という声も多くあります。古川くんのように落ち着いて決断するには、どうしたらよいでしょう?
「僕も緊張はしますよ(笑)。ただ、これまで出演してきた映画は、ほとんどがオーディションで役柄をもらっているので、常に“勝負の場だ”とは思っています。なので、どうすれば受かるのか、自分なりに真剣に考えてきました。僕はこの仕事を始めたのが22歳のときで、芸能界で言うと決して早いとは言えない年齢です。それまで演技経験がない人間が仕事をもらうためには、オーディションで勝ち取るしかない。やり過ぎても、やらな過ぎてもいけないというところが、オーディションの難しさなんですよね。僕の場合は、常に全体の雰囲気を見るようにしています。やる必要がないのに台詞の終わりに何かを言ってみたり、アドリブを入れてみるとか、余計なことをしてしまうと、選ぶ側も疲れてしまう気がするとか。だから、あまり余計なことはしないですね。その場その場で、僕なりに印象に残ることはするようにしていますけど。すごく個性的な人が隣りにいたときは、その人を巻き込みながら話してみるとか(笑)」
古川雄輝
――今回の映画で14歳という年齢の少年を演じることに対して、意識したことは?
「この世界観の中で14歳というのは重要なポイントでもあるのですが、それ以上に、“ゼラという存在でいられるか”というほうを強く意識していました。正直、こういう作風、役柄に挑戦するのは初めてだったので、“本当にできるのか……”といった不安もありました。台本と向き合う時間をたくさんとって、1ヵ月以上前から準備をして、衣装合わせをする頃には、どの台詞も言えるぐらいにして、現場に入りました」
――未経験だったことに挑んでみて、何か変わりましたか?
「自分がちゃんとできているのかどうかは、観てくれた人が判断してくれるので、まだ何とも言えないのですが、“挑戦できた”という自信には繋がったなと。引き出しが増えたという感じですかね。僕自身が目標にしているのが、引き出しが多く、頭の回転が速くて何にでも対応できる俳優さんなので、今のうちに、いろんな役柄を経験しておきたいんです」
古川雄輝
――今までと違う役柄を演じてみて感じたことは?
「楽しかったのは、僕が演じたゼラはわりと自由に動けたことですね。ゼラが他のメンバーを支配しているので、“座る”“立つ”位置も全部自分で決められた。全部細かく決められるのではなく、決定権は自分にあったので、やりたいようにできたんです。大変だったのは、ドイツ語の台詞や演説シーンが多いので、台詞量が多かったこと。それとグロテスクなシーンもあるので、血のりを大量に浴びるのが辛かった(笑)。約1ヵ月間、真冬の廃工場で、夜に撮影がスタートして、日が昇る朝まで撮影をするというのが、ずっと続くという、環境的な厳しさもありましたね」
――完成した作品を観た感想は?
「どの作品もそうなんですけど、どうしても反省点のほうが気になってしまうんです。アップか引きの画になるのかという、編集によっても印象が違うので、“もっと、こうしておけばよかったかな”とか。ゼラは怖く見えなくてはいけないキャラクターだけど、僕自身がそんなに怖い顔ではないので(笑)、角度によってそう見えるかどうかなど、気になってしまって。そこは克服しなければいけない課題だったので、撮影でも見え方についてはかなり考えて臨みました」
――前半のカリスマ性のある部分と、後半で変わっていくところとの落差は、特に印象に残りました。
「その後半に向けての準備が大事だと思っていたので、“どのポイントからゼラが崩れていくのか”というのを決めて演じていました。台本上では他のシーンも入って来るので、その間にゼラが変化していっていることを忘れられないように。例えば、それまでは冷静だったのにチェスボードを倒すとか、声のトーンを変えて大きな声にしていくとか。台本を読み込む時間があったのと、事前に監督と話し合い、リハーサルで方向性を決めてから撮影に入れたのも大きかったです」
古川雄輝
――特殊な作風ですが、古川くんが思う、『ライチ☆光クラブ』の魅力とは!?
「独特の世界観ですね。マンガっぽい個性の強いキャラクターが揃っているけれど、観ているうちに、それが現実的なようにも感じられてくる。原作ではゼラが主役ですが、映画では野村周平くん演じるタミヤという、唯一普通の価値観を持つキャラクターが主役なので、観ている人は共感しやすくなっていると思います」
――特殊な世界の中でリアリティを出すという部分で、お芝居で気をつけたことは?
「現実世界ではあり得ないキャラクターだけど、あり得るような程度の濃さで演じる……というラインです。ゼラに関しては、手の動きに気をつけていました。原作のマンガだと、すごく手が強調されているんです。彼がしている、★のついた手袋を顔の近くに持ってきたりとか。そこまで手を動かすのは普通は現実的ではないけれど、それがないとゼラではなくなってしまう。なので、ところどころで不自然ではないように、手の動かし方を考えました」
古川雄輝
――この映画では14歳の少年たちの悲劇が描かれていますが、古川くんが14歳の頃は、どんな少年でしたか?
「14歳のときはカナダに住んでいたのですが、恥ずかしがり屋で、あまり人前に出るのは好きじゃなかったです。今とあまり変わらないというか、こういう仕事をしているのが不思議なくらいですよ。今も、作品の中では目立ちたいですけど、それ以外では、あまり人前には出たくない(笑)。あとは……そうだなぁ、異性の存在も気になって、ちょっとカッコつけたい部分もあるような、至って普通の14歳でした(笑)」
――では最後に、芸能界でのデビューを目指す読者に、メッセージをお願いします!
「これは役者に限らず、どの仕事でも活きると思うのですが、学生のうちから、いろんなことを経験しておいたほうがいいと思います。役者の仕事で言えば、例えば、コンビニの店員役をやるときに、実際にやったことがあれば、それがそのまま活かせる。学生のうちにできることって意外に多いけれど、自分から行動しないと、待っているだけでは何も起こらないんですよね。僕も大学のミスターコンテストに出たことから、この世界に入っているんですが、そこで“出る”と決断したから、今に繋がっている。一歩踏み出して、何か新しいことを経験してみたらいいと思います」
Profile
古川雄輝
ふるかわ・ゆうき●1987年12月18日、東京都出身。ホリプロ所属。7歳からカナダへ過ごし、以後11年間、海外生活を送る。その後、ミスター慶応に選ばれ、2010年にホリプロ主催のオーディション『キャンパスター★H50withメンズノンノ』で審査員特別賞を受賞し芸能界デビューを果たす。ドラマ『イタズラなKiss 2〜Love in TOKYO』で入江直樹役を演じて話題を集め、日本のみならずアジアでも絶大なる人気を誇る。映画『太陽』(4/23公開)に出演するほか、2016年公開の日韓合作映画『風の色』では主演の西邑涼、村山隆の一人二役に挑戦。3月25日から上演される舞台『イニシュマン島のビリー』では主演を務める。
映画『ライチ☆光クラブ』
2月13日(土)新宿バルト9ロードショー
2月27日(土)全国拡大公開
映画『ライチ☆光クラブ』

映画『ライチ☆光クラブ』
(C)2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会
古屋兎丸によるロングセラーコミック『ライチ☆光クラブ』が満を持しての映画化。 物語は、黒い煙と油にまみれた町・螢光町で、廃工場の秘密基地に集う「光クラブ」を結成した少年たちの、大人になる前の脆く、残酷で多感な思春期を描く。光クラブを率い、醜い大人を排除した世界を理想とするカリスマ・ゼラや、ゼラを慕う謎めいた美少年ジャイボ、ゼラの思想に反発をおぼえていくタミヤなど、9人の少年たちによる裏切りと愛憎の物語が展開する。物語の鍵を握るのは、光クラブに囚われる少女カノンと、大人に抗うため少年たちが作り上げた機械(ロボット)ライチ。成長を否定した美しい少年たちの罪と罰―。
そして、少女とライチの切なく淡い恋を描いたダークファンタジーが完成。

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