舞台の面白さは常に発見があること

全編尾崎豊の楽曲で構成される話題の舞台「MISSING BOYS　僕が 僕であるために」（4/18〜5/5　赤坂ACTシアター） に出演する松本まりかさん。カラダが資本の舞台を演じ切るエネルギーの源は、“天然生活”にあった!?　今年でデビュー９年 目を迎え、女優はもちろんナレーションや声優でも才能を発揮する彼女 に、こだわりのライフスタイルとお芝居にかける重いを語ってもらいま した。

Ｑ　公演間近の舞台「MISSING BOYs　僕が僕であるために」はどんなストーリー？

「早乙女太一くんがボーカル役を演じるMISSING BOYsというバンドがいて、今はまだライブハウスで頑張ってる感じなんですが、やべきょうすけさん演じる音楽プロデューサーがデビューを持ちかけるんですね。だけど、バンドのメンバーはいらない、太一くんだけを欲しいと言うんです。キミは絶対に売れるから、って。太一くんにも売れたいと いう気持ちはあって、だけど自分の音楽もやりたいしと、すごく迷うんですが……」

Ｑ　ウーン、デ・ビュー読者もちょっと考えさせられる話かも？

「だけど若者だけじゃなくて、大人も迷ってるんです。尾崎豊さんの『僕が僕であるために』という曲の歌詞がストーリーの軸になってるんですが、誰もが『自分にとって正しいものとは何なのか？』ということを模索している、というのがこの舞台のテーマだと思うんですよ。やべさんは、お金儲けばかり考えてるすごくイヤな大人の役だけど、かつては自分も音楽をやってて夢に破れてるんですね。そんな自分の心の奥を、『太陽の破片』という曲に乗せてふと漏らすシーンがあるんですが、そこがすっごくステキなんですよ」

Ｑ　全編にわたって尾崎豊さんの楽曲がたくさん出てくるんですよね。

「そうなんです。オリジナルのアレンジのまま生演奏する曲もあれば、今風にアレンジした曲もあるんですが、どれも歌詞がいいんですよね。尾崎さんの曲は中学の頃に初めて聞いて衝撃を受けたんですが、今回改めて大好きになりました。どの曲もいいけど、特に『街路樹』という曲はメロディも心地よくて家でも何度も聞いてます。こないだカラオケに行った時も、尾崎さんの曲ばかり歌っちゃいました(笑) 」

Ｑ　ここ数年、コンスタントに舞台に出演しているけど、舞台は好き？

「正直、昔はぜんぜん好きじゃなかったんです。06年に劇団☆新感線の舞台に出た時も毎日のように演出家さんに怒鳴られて、精神的にも肉体的にもクタクタで、なんでこんなツライ思いしなきゃいけないんだろうって思ってました。それでも無我夢中でなんとかついていって、 公演の最終日に『アレ？』って思ったんですよ。少しだけ何かわかった気がする、って。それから自分でもいろんな舞台を観に行くようになったんですよね」

Ｑ　舞台の面白さって？

「日々の稽古でも公演が始まってからも、常に発見があることですね。 人間にはこんな感情もあるんだとか、こういう気持ちの伝え方もあるんだとか。それはお芝居だけじゃなくて、人間関係からも発見できることで。舞台は稽古が始まるとほぼ毎日カンパニーで過ごすから、集団の中での自分の立ち位置や主張の仕方みたいなことも学べるんです。同じ演じると言っても、ドラマや映画の現場とはそこが少し違うんですよね」

Ｑ　人間として成長できる場、ということ？

「だと思います。もちろんお芝居だけでも引っ張れる役者さんもいるけど、私は人間として豊かなものを自分の中に育てて、それをお芝居にも繋げられる女優になりたいんです。そんなこと考えるようになったのもここ２年、舞台に出るようになってからですね。中３でデビューして今年で９年目なので、私の成長が遅いのかもしれないけど(笑)」

Ｑ　こんな人みたいになりたい、という目標の存在はいる？

「心から尊敬しているのは松田美由紀さん。話をするたびに泣いちゃうくらい、目標と言うには大きすぎる存在なんですけど。でも、自分がこうなりたいと強く思ってたら、違う方向には行かないと思うんですよ。たとえ今はぜんぜん違う場所にいても。だから時間はかかるかもしれないけど、ブレない人になりたいですね。『自分はこうなんです』と胸を張って言えるような強い人間に」

TEXT/児玉澄子