――梅棒への加入も転機の１つですよね。

「事務所に所属している身として、どこかの団体に所属するなんて昔の自分だったら考えられなかった。でも、それも梅棒と出会って変わったし、モンテ〜をやりきったことで梅棒に入ろうと決めました。その前から“入りたいかも”とか“どうしようかな”っていうのは頭の中にあったけど、モンテ〜が終わった後に、役者として“自分はここでこういうことをやっていくんだ”っていう、自信と１本の筋みたいなものが構築されたような気がして。ブレないものができたから、自分が本当にやりたいことやこれから学んでいきたいこともプラスアルファでできるために、梅棒という場所が自分にはとても合うなと思ったので、自信を持って行けたんだと思います。これが2019年とかだったら、まだ無理だった気がするんですよね」

――いろんなタイミングが重なっての決断だったんですね。コロナ禍の自粛期間もプラスにできた？

「本当にありがたいことなのですが、コロナ禍でも芝居をやらせてもらえていて。公演期間が短くなったり、地方公演がなくなってしまったりしたことはあったのですが、公演自体が中止でなくなるという経験はまだしていないんです。なので、そういう意味では芝居ができないことに対してのフラストレーションが溜まることもなく、いろんなことをプラスに考えることができたのかなとも思います」

――そして、今回「新・熱海殺人事件」と「改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン〜復讐のアバンチュール〜」の2作連続出演という、また新たな挑戦が待っています。この話を聞いたとき、率直にどう思われました？

「『本気？』って思いました（笑）。それはつか作品を経験したことがあるからこそわかるというか、つか作品ってどの戯曲でもどんな役でも、ものすごいエネルギーを使うので。喉が持つかな？とか、精神的・体力的に大丈夫かな？というような不安はありましたが、どちらの作品も自分にとっては大事な作品ですし、このタイミングを逃したらこんなこともないだろうと思って。2作連続でやるというのも、10周年だからこそやる意味があるのかなと。自分にとって必要なところで必要な仕事が来るって、ずっと前から思っているので、きっと今の自分に“4年前にやった熊田をもう１回やりなさい”、“去年ちょっと悔しい思いもした大好きなモンテ〜を、『新・熱海殺人事件』が終わった後、中3日でやりなさい”という風に言われているのかなって感覚があったので、挑戦したいと素直に思いました。これを終えた後に、また新たなステージに行けそうな気もするし、より自信がつくんじゃないかなと。あとは単純に、これをやり切れたらもう怖いものはないかもって思ってます。頭も使って体も駆使して、喉も酷使して、これほどまでに追い詰められることって、もう二度とないような気もするし、これを乗り越えられたら何でもできるんじゃないかなっていう想いもあります」

――稽古も2作平行して行われるんですよね？

「そうですね。（取材を受けている）現段階ではまだモンテ〜のほうは稽古に入っていないのですが、モンテは短い期間で思い出して作りこんでいくという感じになりそうです。ただ、中屋敷さんがちょっと変えたり、曲を加えたりしたいというようなことをおっしゃってたので、短い期間のなかでそれをどうやっていくのかというのはありますが、モンテ〜は前回と同じキャストでできるのは、そこはすごく安心しています。まあ、ただ『新・熱海〜』の稽古が終わってみんなが帰る中、僕だけは残ってモンテ〜のみんなが合流して稽古をやる日々が始まったり、『新・熱海の〜』の本番中も休演日は舞台上でモンテ〜の稽古をやることになるでしょうし、昼・夜1公演だけの日は空いている時間でモンテの場当たりをやるとかになると思うので、大丈夫かなという不安はありますけど（苦笑）」