――これまで2作演じてきて、キャラクターの印象の変化はあったりしますか？

植田圭輔「僕はないですね。最初の印象からあまり変わらないかも。話が進んでいったり、小説版などで描かれたりすることを知って、“あ、そうなんだ”って思ったことがあっても、けっこう印象は変わらずにここまでこれたというか。最初に抱いていたものが間違いじゃなかったんだなというところから、さらに蓄積や深堀りをしていけるという部分がすごく多かったので。シリーズものをやる上で、良いステップの踏み方をしていけているんじゃないかなって思っています」

橋本祥平「僕も大きく印象が変わったというところはなくて…。どちらかというと、今回は自分と分離した異能と戦うので、芥川というより自分の異能の『羅生門』に対して、“お前、そんなことを思っていたのか”みたいな、異能側の印象とかが、僕の中では“なるほど”って思ったりしました。あと、今回はめちゃめちゃ明るいキャラっていうのが居ないんですよね」

植田圭輔「いないよね〜」

橋本祥平「これまでは武装探偵社の人たちが、場をにぎやかしたりしていたけど、今回はそういうのがないのも新鮮。ギャグシーンととらえていいのかわからないですけど、派手には動けない芥川なりのちょっとした面白さみたいなものがあったりするので、今までにない芥川を出せるかなとも思っています」

――これまでもシリーズものの作品をたくさん演じられてきていますが、久しぶりに演じる役というのは、どんな風に自分の中に戻すのですか？ 自然によみがえってくるものなのでしょうか？

植田圭輔「なんか自然と戻ってくる感じだよね？」

橋本祥平「そうですね」

植田圭輔「どんな風に発声してたっけ？くらいは、なんとなく思うんですけど、結局、感情が乗ってくるとなぞってなくてもいつもそうなるというか。ベースはもちろんありますし、アニメ化されているものや自分たちが過去やってきたものとかもあるので、あまり自分の中に戻すっていう感覚はないかも」

橋本祥平「そうですね。稽古場にきて、掛け合いをして“あ、そうそうこんな感じだった”って思いだしていく感じです。初演のときは、それこそ何回もアニメを観て、セリフまわしを確認していたけど、今は純粋に原作アニメを楽しんで観て、そのまま稽古場に持ってきてやるっていう感じですね」

――ご自身にとって、改めて舞台『文豪ストレイドッグス』とはどんな作品ですか？

植田圭輔「文ステって、面白いことにけっこう毎回メンバーが変わるんですよね。文ステを背負うメインキャストが変わったり、カンパニーのメンバーがぐっと増えたり、逆に今回みたいにギュっと人数を少なくしたり…タテにもヨコにも幅が広い。作品としても、こういう時代や社会を生き抜く上で、今回特にそうなんですが、“自分の敵は自分だ”みたいなものや、生きていく、支え合うとか、困難を乗り越えるみたいなものをしっかりと濃く描いている作品で。そういう作品のカンパニーにいると、自分も頑張ろうと思える。いい感じのペースで2年いかないくらいに1回（シリーズ公演を）やっているので、自分たちもそれなりに年とキャリアを重ねて、また新しい自分の姿を見せられる場所でもあるんです」

橋本祥平「文ステ初演から3年以上経ちますけど、間違いなく文ステで自分の1つの殻が破れたなという感覚があって。演劇の楽しさ・厳しさとか、そういうのを教えてくれたのが、この文ステなので、それが続いていくとなると嬉しいですし、文ステの稽古場に来るときに、“ああ、帰ってきたな、ホームだな”って思うし、帰って来られる場所があるっていうのはすごく幸せなことだなって思います。あと、初演からそうなんですが、文ステの稽古は進みが本当に速いんです。しかも、初日からほぼほぼ台本を持っている人を見ない」

植田圭輔「すごいよね（笑）」

橋本祥平「だから、みんなすごく仲は良いんですが、そういう見えない張りつめた空気っていうのはずっとあって。別に台本を持っているからって、何かを言われるわけじゃないけど、ただそんなダサいこともできないなって。優しくもあり、厳しくもある…そういう現場だなって思います」

――今回、絡むシーンがあるというお二人、稽古ではどんな感じなのでしょうか？

植田圭輔「最初からわりとセリフ合わせとか自然とやって、自然と板の上でやってっていう感覚でもあるし、祥平とは役者としても人間としてもかなり深いところまで知っている仲でもあるので、『ここをもっとこうしよう』とかっていう話し合いはしないよね。違ったらお互いわかるみたいな…いい関係だと思いますよ、祥平とは」

橋本祥平「嬉しいですね。植田さんとご一緒させていただくときって、あまり相談とかはせず、芝居中に“あ、ちょっとセリフのテンポが上がったな、じゃあ僕も上げよう”とか、やりながら察する感じ。気づけていないことも多いと思うんですけど、『すみません、まだ自分ちょっと足りてないです』って言うと、植田さんはすぐ『大丈夫だよ』って言ってくれるんです」

――芥川と中也、二人の関係性がご自身たちの関係性と似ているということですが、お互い役者として尊敬する部分はどんなところですか？

植田圭輔「急に褒め合いが始まるんですね（笑）」

橋本祥平「そんなのいくらでもありますよ！ 今回みたいに主演を支えるポジションのときや、植田さん主演の舞台でご一緒したりしていますが、植田さんはとにかく視野がとても広いんです。それに、自分のことよりも人のことを優先的に考えるお方で。前に共演した作品で、めちゃくちゃ悩んでいたことがあったんです。ただ、人にも言えないし、これは一人で抱えていくしかないって思っていたのですが、植田さんはすぐに気づいてくださって。しかも悩んでいることを『これだろ、大丈夫か？』って、ドンピシャで当てられて。何も言ってないのに人の心を読み取って優しく包んでくれるんです。本当に何回もそれに助けられました。そういうこともできればおもろいこともできるし、僕は何一つかないません!!」

植田圭輔「あはははは（笑）。まあ、そう言われると素直に嬉しいですね。まあ、気に掛けるのには理由があって。支えたいなとか、話を聞きたいなとか、自分の好意がある上でのことだと思うので、そういう魅力を持っているのは祥平の持ち味だと思います。祥平が居ると現場がすごく明るくなんですよ、本当に。やるときはしっかりやって、ふさげるところは群を抜いてふざけるし、そういうところがずっと変わらない。それぞれみんな、求められるものや場所が変わっていく中で、そういう根幹の部分が変わらないって、なかなか難しいんですよね。そこを変わらずにしっかりと持っているというところと、人間らしさを持っているいい役者さんだなって思います」