山口まゆ | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「山口まゆ」

2023/06/29

「私もロージーと同じ19歳の頃、漠然とした将来への不安みたいなものがありました」

山口まゆ撮影/ワタナベミカ 取材・文/児玉澄子

中学生の頃から数々の映画・ドラマで活躍し、若き演技派女優として注目を集めてきた山口まゆ。事務所に所属して10年目となる今年は、日本大学芸術学部映画学科を卒業。6月30日より上演される舞台『これだけはわかってる』は、そんなさまざまな節目を迎えた彼女にとっての初舞台。実力派俳優たちが織りなす家族の物語で、葛藤多き19歳の末娘を演じる。自らも「19歳の頃は仕事を辞めようと真剣に悩んだ」と振り返る彼女に、その葛藤を超えて芝居を続ける決意をした時期のエピソードや、稽古に奮闘する日々について聞いた。

山口まゆ

──初舞台が決まったときの率直な気持ちを聞かせてください。

「『ついに来たか』と思いました。舞台は観るのも好きですし、ずっとやってみたかったんです。自分が役者として新たに開かれる、そのきっかけはきっと舞台だろうなとずっと予想していたので。今年はいろんな節目も重なったので、ちょうどいいタイミングだったんだと思います。今まで築いてきたものを全部壊して、新たに叩き直される時期に来ているのを感じています」

──舞台は楽しみな一方で、試練の予感もあったんですね。では台本を読んでみていかがでしたか?

「台本を開いたとたん『マジか』となりました(苦笑)。冒頭すぐあとに4ページにわたる長ゼリフがあったので…。しかも私だけのモノローグのシーンで、ある意味、私がどう立ち振る舞うかでこの作品の空気が決まってしまう。(オファーを受けて)やりますと即答したものの、今更ながらに『どうしよう』と慌ててしまいました。そうは言ってもセリフを入れないことには何も始まらないので、稽古前はひたすら日常生活の中で反復して覚えました」

山口まゆ

──演じるロージーは山口さんより少し年下の19歳。どんな人物ですか?

「4人きょうだいの中でもひときわ年の離れた末っ子で、自分が何かをしたいのか、どこに向かっていけばいいのかがまだわかってない。この作品の登場人物はみんな何かしら悩みを抱えていますが、ロージーだけその悩みの正体が具体的に見えていないんです。たしかに19歳くらいの頃って、そうした漠然とした将来への不安みたいなものがあったなって思い出しました」

──当時の自分と重ねて共感できるところも?

「そうですね。ただ私はその時期を乗り越えてしまったところがあるので、稽古に入る前はどこか俯瞰でロージーを見ていたんです。ところが稽古で追い詰められた結果、私まで『どこへ向かっていけばいいんだろう?』と迷ってしまって。そういう意味では、今の私とロージーは絶妙にシンクロしています(笑)」

──まさに初舞台の試練ですね。特にどんなことに苦労されていますか?

「最初に指摘されたのが、声が小さいということ。すごく基礎的なことなんですけど、舞台で求められる発声は映像とはぜんぜん違っていて、共演のみなさんの声の大きさにはいつも圧倒されています。なんとかついていこうとボイトレやカラオケに行ってから稽古場入りしてるんですけど、まだまだ声が出てないと言われて落ち込んで。でも稽古は毎日あるので、落ちている暇もなくて、無理やり気持ちを上げて稽古に行って、また落ち込んで……という繰り返しの日々です」

山口まゆ

──だいぶ鍛えられているようですが、カンパニーの雰囲気はいかがですか?

「とにかく私は泣くんですよね。泣いて泣いて疲れ果てて、それを家族が包み込んでくれて。物語と同じような関係性になっています。舞台のカンパニーってこういう感じなんだというのが新鮮です。私自身は長女なので、末っ子の感覚がわからないというか、本来は甘えるのが苦手なんです。だけどここは存分に甘えさせていただこうと、剥き出しの甘えを発揮しています(笑)。(母親役の)南果歩さんが『役者は演技で感情を剥き出しにする分、穏やかに日常を生きられる』とおっしゃっていましたが、私も早くその境地に行きたいです」

──先ほど「19歳の頃は自分も漠然とした将来の不安があった」とおっしゃっていました。まだ"何者"でもないロージーとは違い、山口さんはすでに女優として活躍されていましたが、どんな不安があったんですか?

「19歳の頃はちょうど(主演映画の)『樹海村』を撮っていました。その現場入りの直前にドラマ『リカ〜リバース』を撮り終えて、わりとがっつりと演技に向き合ってた時期だったんです。その一方で『自分は役者を続けていってもいいのか?』ということにすごく悩んでいました。この世界とぜんぜん関係ない資格を取ったら、事務所にも『辞めます』って言えるかなとか真剣に考えたり…」

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Information

舞台『これだけはわかってる 〜Things I know to be true〜』
2023年6月30日(金)〜7月9日(日)東京芸術劇場シアターウエスト

作:アンドリュー・ボヴェル
翻訳:広田敦郎
演出:荒井遼
出演者:南果歩 栗原英雄 山下リオ 市川知宏 入江甚儀  山口まゆ

これだけはわかってる


これは「私の家族」の物語です。
物語はオーストラリアの地方都市アデレードの郊外。いわゆる地方都市。
そこにプライス家の日々がある。
母親のフラン(南果歩)は看護師、父親のボブ(栗原英雄)は元自動車工。
今は長女ピップ(山下リオ)の子供の迎えや庭の手入れ、特にそこに植えられたバラの手入れが主な彼の仕事だ。
そこにヨーロッパへ一人旅にでていたはずの末娘のロージー(山口まゆ)が帰ってきた。どうやら旅先で出会った男性との恋にやぶれ、心の傷を癒すために家族の元へ戻ってきたようだ。
プライス家は六人家族。長女のピップは教育局で働くキャリアウーマン、長男のマーク(市川知宏)はIT系のエンジニアで次男のベン(入江甚儀)は金融関係で働いている。どこにでもある家族の会話と風景がそこにある。一家を切り盛りする母親を中心に皆が家族を想い、慈しみ合っている。とても明るい活気のある家族。しかし、それぞれがなかなか家族に言い出せない悩みや問題を抱えていた。
一番近いはずの家族、でも実はもっとも遠い存在と感じることがある「家族」。打ち明けられない悩みや、本当に言いたいことが伝えられないもどかしさ。そして本当は愛していると伝えたいのに、感謝しているのに、それがことばにできない時、あるいは意図せずに酷いことばを投げつけて、傷つけ合ってしまう家族との関わり。
わたしたちの人生はこんな痛みや悲しみや、もちろん喜びもですが、を家族や人との関わりの中で経験し、自分が「わかっていること」、自分にとって「本当のこと」のリストを増やしていくのでしょう、決してそれを知らなかった頃には戻れないことを知りながら・・・・。
春・夏・秋・冬・・・、そして春・・・。再び巡ってくる季節、木々や花たちは1年前と同じように芽吹き、花は咲く。しかし、その春は1年前の春とは確実に違う春なのです。
この物語はそんな家族のとある1年間の物語です。

◆公式サイト
https://tspnet.co.jp/whats-ons/koredake/

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