いよく直人 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「いよく直人」

2012/09/10

シンデレラボーイになれなかった人も努力で勝ち上がっていく。
それが劇団では絶対可能だと思っています。

いよく直人
俳優として、そして脚本家、劇作演出家として活動する、いよく直人さん。彼が率いる劇団FREE SIZEの第6回公演『この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ありません』が9月13日(木)〜16(日)日に中野ザ・ポケットで開催される。役者としての葛藤から劇団を旗揚げ、今もモチベーションが上がり続けているといういよくさんに話を聞いた。



いよく直人

いよく直人

Q 劇団FREE SIZEの最新作『この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ありません』はタイトルからして意味深ですね。

「番組製作会社のグループが、1年前に別荘地で起きた7人全員が死亡した殺人事件をドキュメンタリー番組にしようと現場のペンションに泊まりに来るところから始まります。事件の深層は謎なのでイジリようがあると、制作会社の賢い上司と、バカな新入社員がどんなことが起きたのかを想像し合います。ペンションの二階の部屋で賢い上司が『火サス』のようなリアルな展開を想像すると、一階でリアルな回想シーンの芝居が展開。また階上に戻って、“いやいやそうじゃないんです”とおバカな社員が妄想すると、階下の回想シーンがコミカルなものになってしまうという。そうやって“リアル”と“笑い”の芝居が交互に展開していくんです。しかし、アホな想像がだんだんと昔に起きた“ある事件”とリンクし始めて……これ以上はネタばれでお話しできません」

Q 脚本や演出の構成も凝っていますね。

「現在の番組制作会社のシーンの7人、サスペンス調でリアルな回想シーンの7人、コミカルでおバカな回想シーンの7人と3グループに分かれています。サスペンスチームはいたってリアルな芝居ですね。おバカなシーンの7人は衣裳はサスペンスチームと一緒なんですけど、お話が飛躍しすぎて戻ってこれないくらいまで崩れてしまうんです。脚本や演出を考えるときに、登場人物の出入りを厚紙に名前を書いたものを動かしてシミュレートするんですけど、その時点でごちゃごちゃになってしまいました(笑)」

Q そんな作品の見どころは?

「まじめな妄想は、殺し殺されという殺伐とした殺人事件を追ったサスペンスになっていて、役者の力量の見せ所というか、演じ甲斐があると思いますね。一方、おバカな妄想のほうはスピード感のある言葉のやり取りのシチュエーションコメディになっています。こちらは力量がよく分かったFREE SIZE劇団員が主に演じています」

Q これまでいよくさんが作ってきた作品の傾向は?

「どちらかというと“笑い”のほうで、芸術性というよりエンターテインメント性を重視していて。僕は三谷幸喜さんの本や演出が好きなんですが、登場人物たちはいたってまじめにやっているんだけど、ズレが生じて、そのズレがお客さんには理解できて“笑い”が起きるという作風ですね。だから今回もリアルなほうもおバカなほうも、いたってまじめに演出していますね。物語や事実の裏側にある人間のおかしみが軸になっていて、世に否定されているものは肯定していく。本当に悪いヤツっていなくて、そいつはそれを選ばざるをえなかったという理由があったり。そうやって一つの物事を切り口を変えて、描くのがテーマになっていますね」

Q 2006年に自分で劇団を立ち上げたきっかけは?

「フリーで客演として舞台に出ていたんですが、役者は台本をもらって、作品には口を出せずに役作りをするということに葛藤を抱いたんですよ。“本がもっとこうだったら”とか、“演出がこうだったら”って葛藤がどんどん生まれてきちゃって。これは自分でやりたいものをやるには、自分で劇団を旗揚げするしかないって、社長に相談して」

Q 脚本や演出の勉強はせずに我流ではじめたんですか?

「そうなんですよ。最初は役者の感覚で書いちゃって。でも舞台の本を書きながら、漫画の原作を書いていたことが勉強になっています。僕はパチスロに詳しかったので、周りの作家さんの勧めで、飛び込みで雑誌社に原作を売り込みまして。たまたま月刊誌に空きがあったことで始まって、2年弱も連載することができたんです。その間に編集さんと話すことで物語作りを学んでいけたことが大きかったですね。そのほかにも、先輩からはとにかく書くことが大事だと教えられて、劇団の毎回の稽古のために1ページで完結するシーンを書いて教えるようにしたんです。そうやって自分が書かなくちゃいけないような背水の陣を作って、とにかく書くことで鍛えていきました」

Q まずは始めることから身につくこともあるんですね。ちなみに、いよくさんのデビューのきっかけは?

「19歳ぐらいのころ、当時まだストリートダンスというものが世に定着していないころに、ブレイクダンスのチームを地元・茨城の先輩と作って踊っていまして。そのころ東京では(TRFの)SAMさんがMEGAMIXというグループで踊っていたという本当に初期のころなんですけど。そうやってダンスを始めたころに友達がデ☆ビューに応募して、誌面に掲載された写真を事務所の社長が見て、スカウトされました」

Q デ☆ビューがきっかけだとは。順調な滑り出しのように思いますが。

「そこから僕が全然言うことを聞かなかったんですよ(笑)。その頃は将来のことも考えていない時期だったので、いろんな先生を呼んでもらってレッスンをしてくれても、当時はやらされてるという感じで迷惑をかけました。それでも見守ってもらいつつ、サーフィンやスノーボードが大好きだったので、その流れで雑誌『Fine』のモデルを4年間レギュラーでやらせていただきました。『Fine』のロケで会うモデルはタレントや役者のたまごが多かったので、“先を考えるんだったら演技の勉強をしたほうがいい”って刺激をもらって、だんだん芝居のことを考えるようになっていきました」

Q そこから俳優活動、そして劇団旗揚げにつながるんですね。

「僕は、興味を持ったものは何でもやってみるというところから始まって、直感にしたがって進んできてしまったので。でも、土台として“俳優”があるうえで、演出や脚本があると思っていますので、いつでも役者で出たいんですよ。しかし、すごい数の役者がいるなかで上がっていくというのは厳しい話なんですが、劇団FREE SIZE自体がテレビや映画とは違う形態で商業化していけば、俳優がどんどん外へ出ていける。劇団には自分より年上の俳優もいますけど、シンデレラボーイになれなかったところから努力で勝ち獲っていく、それが劇団では絶対可能だと思っているので」

Q 近年は映像作品も作られていて、賞も受賞しています。

「役者が映像の制作現場に行ったときは、よほどいい役でレギュラーで入らない限り、現場のことは覚えられないんですね。自分が経験してきた映像の制作過程を教えるための場所として映像の制作を始めたんですけど、どうせ作るんだったら、コンクールに出そうと思って出したら『NHKミニミニ映像大賞ベストプラン賞』、『P-LABO映画祭特別賞』をいただいて。自分のスタイルは間違いじゃなかったとホッとした部分もあります」

Q ご自身の経験を踏まえて、デ☆ビューの読者へのメッセージをお願いします。

「今の子たちはシンデレラボーイやシンデレラガールになれないと、あきらめちゃうじゃないですか。“やる気だけは負けません”とみんな言うんですけど、1年後にそのモチベーションって続いてないんですよ。現実を知れば知るほど、レッスンをすればするほどわかっていっちゃう。ただそれを知ってからがスタートじゃないですか? 役者をやりたいのであればとにかくやめないで続けること。やっていれば勝手に実力ってついていくし、やっていれば下手にはならない。そしてやめてしまった人には絶対にないチャンスが訪れます」

Q 年齢などをきっかけにあきらめてしまう人も多いですよね。

「考え出したら、役者っていつでもやめるきっかけがあるから、それを超えるモチベーションを常に持っていないと。だからいい意味での『アホ』でなくちゃいけないですよね。賢すぎたらこの業界は選ばない。最初に始めるきっかけを持ったのであれば、やめないでほしいですね。僕が俳優として舞台に上がったのは30歳が初めてなんです。モチベーションが下がっていく感覚というのは理解はできるんですけど、いまいちピンとこない。僕はやればやるほどモチベーションが上がっていくタイプなので、今がいままででピークなんですよ(笑)。これやりたいあれやりたいって、たぶん来年はもっと上がっちゃうんですよね。何をやりたいかによるんですけど、アイドルではなく役者ならば40歳で未経験でからでも、いつ始めても1年である程度は出来るようになる。と思いますし、そういう努力ができる人なら、うちの社長は拾うと思いますよ」

インタビュー・終


いよくなおと●劇団FREE SIZE主宰。1971年4月23日生まれ、東京都出身。映画『恋するマドリ』、『新・天までとどけ5』(TBS)、『救命病棟24時』(フジ系)。監督受賞歴=NHKミニミニ映像大賞ベストプラン賞、P-LABO映画祭特別賞。脚本=映画「ひとりかくれんぼ 劇場版 真・都市伝説」(ワーナー・マイカル・シネマズ板橋ほか順次公開中)ほか。エクスィード アルファ所属。
「ひとりかくれんぼ 劇場版 真・都市伝説」
劇団FREE SIZE
『この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ありません』
9月13日(木)〜16(日)日/中野ザ・ポケット

あらすじ/映像製作会社の面々が、一年前の謎の殺人事件の番組制作を手掛ける事になる。フィクションも交え構成を考え進めて行くうちに、四十四年前のある事件との結びつきを発見してしまう。警察でさえ見逃していた重大な結びつきを前に、今までにない番組を世に発表出来ると沸き立つ制作チーム。しかし…。
出演/南羽翔平(ボックスコーポレーション) 末野卓磨(J.A.E.)大部彩夏 日野ありす 大力 大久保たぁ坊(劇団俳小) 中村利裕 橋倉靖彦 沢村龍太郎 宮川高幸 堤下裕也 鹿野ちひろ 副島しんご 平子北斗 村岡幸治 都 松田佳子 高坂ちか 陽 浅川巳愛 桐谷直希 後田和也
http://www.officefreesize.com
◆劇団FREE SIZEスペシャルオーディション開催
【主催】劇団FREE SIZE
アニメ『フレッシュプリキュア!』『ルパン三世vs名探偵コナン』などの脚本を手掛けてきた脚本家の前川淳の書き下ろしで、いよく直人が監督を務めるショートムービーのメインキャストを募集中。作品は映画祭などに出品の予定。
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