清野菜名 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「清野菜名」

2015/07/22

「この作品で、“一つ壁を乗り越えると、次はもっと高い壁に当たる”ということ知った」

清野菜名

映画『TOKYO TRIBE』(監督:園子温)でヒロインを演じ、注目を集めた清野菜名ちゃんが、押井守監督の最新作で初主演に大抜擢! 世界的な映画監督に立て続けに起用され、女優として着実にステップアップしている彼女に直撃インタビュー!!


清野菜名
 初主演映画『東京無国籍少女』が、いよいよ7月25日に公開されますね。押井守監督の実写最新作ということでも注目を集めていますが、最初にこの映画の台本を読んだときの感想はどうでしたか?
「最初にいただいた台本が、プロット(物語の要約)みたいなものだったので、“ここから完成に近づけていくのかな?”と思っていたら、監督から『これで完成系だから』って言われたんです。それで台本を読んでみたら、情景とかト書きがほとんどで、びっくりして。役についてもざっくりとしか書いてなかったから、ぜんぜん役を掴めなくて“どうしよう”ってなりました。監督は『役作りとかそんなにして来なくてもいい。現場の空気や美術、照明で感じるものがあると思うから、とりあえず現場に入ってみてからだね』とおっしゃってくれたんですけど、私自身はアドリブも苦手だし、現場で急に付け足されるのも怖いし、現場入りするまでは不安しかなかったです」

清野菜名 清野菜名
 押井監督は『演技力、アクション、そしていまどき珍しい“硬質な少女”の雰囲気から清野さんを抜擢した』とコメントしていますが、現場でも清野さんの感性に期待するところも大きかったのでは?
「どうなんでしょうね。でも監督はあんまり決めすぎるのが好きじゃないみたいで、現場でも『空気で感じた通りに動いてみて』と言われることは多かったです。でもやっぱり理解してないまま撮影が進むのは嫌だったので、わからないところは監督に何度も聞いて。そのたびに丁寧に教えて説明してくださって、すごく優しい方だったんですけど、映画が完成して監督と二人でインタビューを受けたときに『しつこかった』って言われました(笑)」
 "世界の押井守"を翻弄したということですか(笑)。
「『いろいろ質問してくれたことで、役についてもさらに考えることができたから良かったけどね』って、フォローもしてくださいましたけど(笑)。でもそんな感じで、現場ではほとんど監督と一緒にいました。女子美術高等専門学校が舞台なので、同世代の共演者もたくさんいたんですけど、私が演じた藍が孤独な女のコという設定だったこともあって、演技以外のところでもあまりしゃべらないでいたんです。その分、いじめられるシーンも生々しくリアルにできたと思います」
 孤独な女のコということで、セリフも非常に少ないけれど、演技の面で特に難しかったところは?
「特に前半は体の動きも小さいし、表情もそんなに豊かなコではないので、目の演技がほとんどだったのが難しかったですね。私はちょっとドライアイ気味で、しかも現場って照明もあるからすぐ乾いちゃうんです。だからつい瞬きが多くなってしまってたんですけど、監督から『瞬きが画面に映ると、見る人が意味合いを勘ぐってしまうから、なるべく我慢して』と言われて、そこから目の演技をすごく意識するようになったし、藍という女のコの役作りのヒントにもなりましたね」
 前半が“静”なだけに、クライマックスからラストシーンに向けての“動”の展開は圧巻でした! 清野さんのアクションもさすがで、しかもほとんど切れ間なく動いてましたよね。
「はい。大変といえば大変なんですけど、長回しで撮っていただけたのはすごく嬉しかったです。今年春に出させてもらったドラマ『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』でも最後のほうにアクションのある場面があったんですけど、けっこうカットを割っていたので、スタントマンがやってると思った方も多かったみたいで」


清野菜名
 たしかに清野さんが“アクションができる女優”だという認識がなかったら、女のコがあそこまでガチで動けるとは思わないかもしれないですね。
「でも私はアクションには絶対に妥協したくないし、その分見てもらえたらやっぱり嬉しい。だから長回しだとごまかしは効かないけど、やりがいは大きいです。しかも今回は屈強なロシア兵と戦うアクションだったので、型をきれいに見せるというよりはズタボロになるまで動くシーンが多くて、膝をついて床を滑って膝がヤケドみたいになったりしたことも何度もありました。だけど本当に動いている間は、怪我なんかぜんぜん気にならなくて、とにかく“この作品のためだったらこの身がどうなってもいい”という気持ちでいました」


清野菜名
 生身のアクションもさることながら、今回はガンアクションもド迫力で、カッコ良かったです!
「本当ですか? 良かったです! 監督も銃器の扱いにはとてもこだわられていて、最初に持ったときは『ぜんぜん馴染んでない』ってダメ出しされたんです。『それじゃロシア兵を倒せるわけがないと』。それがけっこう悔しくて、でも持ち慣れてないのは事実だから、美術さんにお願いして銃を家に持ち帰らせてもらったんです。あの大きな銃は本当に重たくて、肩と腕で支えるんですけど、最初の頃はすぐにフラッとなってしまって。でもそれが慣れてない証拠だと。『自分にちょうどいいポジションが見つかれば、重くても支えられる』と教えてもらって、まずはポジション探しから始めましたね」
 戦いの最中にパッパッと弾薬を詰め替える手さばきも、とても慣れた感じでした。
「あの手順も何度も家で練習しました。ボタンをマガジンで引っ掛けて外して、新しい弾をはめるという手順で、銃を見ながらやればそんなに難しくはないんですけど、戦いの最中にいちいち手元を見ていたりしたら、その隙に倒されちゃう。だから見ないでもできるようにしてほしいと言われて、家でずっと練習してました」
 初主演映画は悔いなく、満足の仕上がりになりましたか?
「そうですね。自分の中ではアクションにすごいかけていた部分があったので、一切妥協せずにできたという満足感はあります。なので、アクションはぜひ見てほしいんですけど、前半の鬱々とした空気感があってこそアクションシーンも引き立つと思うし、そこに伏線もいっぱい張られているので、ぜひ大画面の映画館で見てもらいたいです」
 昨年、ヒロインを演じた映画『TOKYO TRIBE』で一気に注目を集めて、さらに今年はドラマ『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』『LOVE理論』とお仕事もどんどん充実しています。そんな清野さんも、一時は女優を辞めようとした時期もあったそうですね。
「はい。オーディションにもぜんぜん受からないし、演技も好きじゃないし。そんな時期に唯一の救いというか、発散になってたのが、アクション道場で体を動かすことだったんです」


清野菜名
 それが結果的に女優としての大きな武器になっていたわけですが、今から女優を目指す人に何かアドバイスをいただけますか?
「『TOKYO TRIBE』を撮り終えて、ものすごく大きな壁を乗り越えたという感覚があったんです。だけど“一つ壁を乗り越えると、次はもっと高い壁に当たるんだな”ということを『東京無国籍少女』で知りました。でも壁が高ければ高いほど、乗り越えたときに得られるものも大きいんです。それは周りからの評価だけじゃなくて、充実感とか自信とか、自分の中の問題なんですけど。でもオーディションに落ち続けていた頃って、“受かるはずがない”と思いながら受けていて、結局それが落ちた一番の原因だと思うんですよね。だから何か一つでも自分に自信の持てるものがあると強いと思います。努力は絶対に無駄にはならないので、今何か壁に当たって悩んでいる人も、好きなことを突き詰めていけば、きっと乗り越えられると思います!」

インタビュー・終
撮影/booro(BIEI)取材・文/児玉澄子

Profile

清野菜名
せいの・なな●1994年10月14日生まれ、愛知県出身。ステッカー所属。映画『虎影』(6/20公開)に出演。2016年2月公開予定の『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』に出演が決定。

INFORMATION

東京無国籍少女

映画『東京無国籍少女』
7月25日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー

女子美術高等専門学校を舞台に、事故をきっかけに心身ともに傷を負ってしまった若き天才女子高生・藍(清野)。彼女を利用しようとする大人達、そして特別扱いされる彼女に嫉妬する同級生達、彼女が疎ましい担任教師。心やすまる場所のない学園生活の中、彼女はひたすら創作に没頭する。群発する地震、不愉快な大量の鳥達の羽音が響く毎日。何かが絶対におかしい日々は、衝撃的なラストに向けて加速していく。ラスト15分、さらにその先の驚愕の結末は予想できない――。

(C)2015 東映ビデオ

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