上白石萌歌 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「上白石萌歌」

2016/04/27

「オーディションを受けていなかったら、感じることの量が全然違っていたと思います」

上白石萌歌

撮影/古賀良郎 取材・文/斉藤貴志 

『第8回 東宝シンデレラオーディションIn collaboration with集英社』の募集がスタート! さかのぼること5年前、第7回の同オーディションで、当時10歳の史上最年少でグランプリに輝いたのが、女優として活躍目覚しい上白石萌歌。今夏『赤毛のアン』でミュージカルに初挑戦する彼女に、東宝シンデレラ、そして女優としての“今”について聞いた。
上白石萌歌
――第8回『東宝シンデレラオーディション』の募集が始まりました。グランプリを獲った前回のことも思い出します?
「はい。第7回も長澤まさみさんの募集ポスターで、ドレスを着ているのに靴はスニーカーだったんです。“シンデレラなのになぜ?”ってインパクトがありました」
――審査のことは?
「鮮明に覚えてます。一番思い出深いのは合宿で、3日間ずーっと大人の方たちに見られている状態で、常に緊張していました。東京に来たこともあまりなかったですし、(他の出場者は)みんなお姉さんだし。私はすごく人見知りで、みんなで話していてもうなずくだけで。姉(上白石萌音)は当時から活発でしたけど(笑)」
――グランプリで名前が呼ばれた瞬間は、先に審査員特別賞を受賞していた萌音さんがステージ上で泣き出す光景がありました。
「私はよくわからなくて『無』になっていた感じでした。ビックリもしなくて、これで女優さんになれるとも考えなくて、ただスポットライトが眩しくて“どうしよう……”という気持ちでした」
――まだ10歳でしたからね。もともと地元のミュージカル教室の先生の勧めで応募したんですよね?
「何も考えず、お母さんが“どうせ落ちるんだから”と送ったんですけど、第二次審査で、歌ったとき、すごく楽しくて。今までにない感覚でした」
――審査とはいえ誰かに聴いてもらうことが楽しかったんですか?
「そうなんです。“人前に出ることってこんなに楽しかったの?”と、そのとき感じたんです。そこから“女優さんって素敵なんだろうな”と思うようになりました」
――応募してみたら意欲が出たと。
「たぶん今の私がこんなに大きなオーディションを受けていたら、緊張で潰れちゃっていたと思います。あの年齢で何もわかってなかったから、緊張しないで済んだんでしょうね」
上白石萌歌
―― 実際に仕事を始めてからも楽しかったですか?
「最初の頃は今みたいに、お芝居についてちゃんと考えられていなかったかもしれません。初めてのドラマの現場では、カメラの前に立つだけで精一杯。休憩中も“スタッフさんとどう話せばいいの?”とか、頭のなかは“どうしよう?”ばかりで」
――でも、そこから人生が変わって。
「3年前に鹿児島から東京に引っ越してきて、環境が変わったのが一番大きいです。最初はいっぱい電車を乗り間違えて、逆方向に行っちゃったり。今も人混みはあまり慣れていません」
―― 渋谷のスクランブル交差点に驚いたり?
「戦争をしているのかと思いました(笑)。道路のあっちの陣営とこっちの陣営が、信号が変わると一斉に向かって行って、“何だ、これは?”と。今は私も歩くスピードが速くなってきました」
――都会生活にも順応してきて。
「人とたくさんしゃべれるようになって、いろいろな人と出会うのが楽しいと感じられるようになりました。でも、お芝居には慣れることがありません。緊張しっぱなしです。今のほうが考えることが何倍も多くなって、その場では納得できても、出来上がった作品を観たら、全然考えていたことが出せていなかったり。本当に奧が深いので、思い通りにならなかったところを研究し続けていきたいです」
――この世界で別の自分になっていく感覚はありました?
「はい。自分が演じる役について“この人すごい”と尊敬することがあって。今度やる『赤毛のアン』でも、感情をすぐ素直に出せるアンに憧れるし、演じていくなかで自分自身が近づいていきたいです」
――萌音さんや山崎紘菜さん、浜辺美波さんらオーディション入賞者が8人いて、『東宝シンデレラ』として一緒の仕事もあったことは、芸能活動を続ける上で大きかったですか?
「良かったと思います。お姉ちゃんと同じお仕事をして、こんなに心強いことはありません。プレッシャーを感じることもたくさんありましたけど。お姉ちゃんに大きな仕事が決まると本当に悔しかったし、その役を見事に演じ切るので、一時はずっと劣等感があって苦しかったんです」
――萌音さんが周防正行監督の映画『舞妓はレディ』に主演した頃とか?
上白石萌歌
「いろいろありました。でも、そんな気持ちはお姉ちゃんには話さないし、自分のなかに留めておいたら、エネルギーに変わったりしました。だから、今はさらに仲良くなっています」
――家で萌音さんと演技について話したりもしますか?
「しょっちゅうします。この前、私が出た『さよならドビュッシー』を一緒に観ていたら、“ちょっとした瞬間に萌歌が出ちゃう”と言われました。目を少し動かすときや歩くときの姿勢が役ではなく私のままだから、“歩き方とか工夫してみたらいいんじゃない?”って」
――鋭い指摘ですね。
「自分で観ても“そうだな”と思えたので、これからの課題にします。お姉ちゃんは役作りをすごくスパルタでやっているので」
――映画『ちはやふる』に出演して、家でもかるたの練習をしていたり?
「そこは見てないんですけど、かるた愛はハンパなくて百人一首も全部言えたり。お互いすごく意識して、いい刺激になります」
――そんな萌歌さんにも、今度の『東宝シンデレラ』で後輩ができます。
「5年ってあっという間で、私が先輩になるなんて信じられません。今年は9歳から18歳までなので、私より年上の人がグランプリの可能性もあるんですよね。ちょっと複雑な気持ちになるかもしれませんけど、楽しみです。審査もぜひ観に行きたいです」
――萌歌さんの10歳の頃の経験を踏まえて、応募しようと思っている人にアドバイスはありますか?
「少しでも興味があったら受けてほしいです。私は興味がない方でしたけど(笑)、人の勧めでも、ちょっと踏み出してみたら違う世界が見えるので。でも軽い気持ちだけでなく、覚悟もしてほしいと思います」
――甘い世界ではないから?
「私もむしろ事務所に入ってから、オーディションを受けては落ちの繰り返しで、落ち込んだりもしました。最近は受かるどうかはご縁だと割り切って、リラックスするようにしています。一生懸命やって、あとはご縁。それはこういう大きなオーディションでも同じじゃないかと思います」
上白石萌歌
――前回の『東宝シンデレラ』のとき、自己PRとかで特に頑張ったことはありますか?
「歌う曲はミュージカル『アニー』の『トゥモロー』に決めました。もともとはお姉ちゃんが歌う予定だったんですけど、予選の前の日の夜に『やっぱり私はこれが歌いたい』と言ったら、『いいよ』と言って譲ってくれて。お姉ちゃんはアンジェラ・アキさんの『手紙』を歌ったのかな? カブっても問題ないですけど、声が似ているらしいので別々の曲にしました」
――今回も入賞したら東宝芸能の所属になります。
「撮影現場に初めて入る日は、身内と言える人がマネージャーさんしかいないんですが、一人付いてくださるだけで本当に心強いです。すごく支えていただいて、お芝居について『こうした方がいいよ』と常に言っていただいて。自分の意見もたくさん聴いていただいてます」
――もし10歳のときに『東宝シンデレラ』を受けてなかったら……と考えることはありますか?
「ずっと鹿児島にいて、それはそれで良かったかもしれませんが、今ほどいろいろな想いをしたり、東京で洗練されたものを見たり、いろいろな人に会ったりはできなかったので。感じることの量が全然違っていたと思います。楽しいことや刺激を受けることは本当にたくさんあります」
――グランプリの重さを感じることはありませんでした?
「やっぱり今回の募集が始まって、やっと(前回の)『シンデレラ』のグランプリという重さは少し軽くなる感じはします。シンデレラだからやらせていただいたこともたくさんありましたけど、これからは自分だけの力がますます必要になるので、そこはちゃんと考えていかなきゃと思います」
――そんななかで、8月にミュージカル『赤毛のアン』に主演することが決まりました。去年主演していたのが萌音さんで。
「初めての舞台、初めてのミュージカルで姉の次に同じ役をやらせていただくのは、後にも先にもないことですよね。今までは映像のお仕事をたくさんしてきて、舞台のことはあまり考えてなかったんですけど、いつかはやりたいと思っていたので、決まったときはうれしかったです」
――去年の萌音さんの舞台を観て、「自分だったら……」と考えたりは?
「まったくなかったです。完全にお客さん目線で、普通に楽しんじゃいました。でも、姉には相談してます。私はダンスが苦手で、稽古はまだ始まってませんけど、アンがダンスするシーンの振りのさわりを先駆けで教えてもらったり」
――発表会見では親友のダイアナ役のさくらまやさんとのデュエットも披露しました。
「まやちゃんは小さい頃からテレビで見ていて、一緒に歌えるのは新鮮でした。デュエット自体が初めてで、相手のことも考えて息を合わせないといけないし、普通の歌とミュージカルの歌は全然違うので。私はまだ表現の仕方がわかっていなくて迷走中ですけど、これからたくさん練習して、どうやったら楽しさを出せるか研究します」
上白石萌歌
――歌自体は好きなんですよね?
「はい。でも、ミュージカルでは声を出すだけではダメで、感情を出すことが第一だから。そこが難しいなと思っているところです」
――萌音さん以外にも多くの人が演じてきたアンですが、萌歌さんならではのアンにしていこうと?
「どうしても姉と比べられると思いますけど、自分ではまったく別物として考えるようにしたいです。今、原作を読んでいて、アンについてわかったことがいっぱいあるんです。空想好きなところは、私とドンピシャリだったり」
――萌歌さんはどんな空想を?
「授業が退屈に感じたときは『恐竜が来ないかな』とか(笑)。何か面白いことが起きないかと、非現実的なことばかり考えています」
――他にアンについてわかったことというと?
「小さいこと一つひとつ全部反応しているのが可愛くて、あと、もともと孤児院で育ったから、気持ちの強い女の子だと思うんです。みんなが知っているようなアンの活発なところだけでなく、そういう部分も繊細に演じられたらと思っています」
Profile
上白石萌歌(かみしらいし・もか)●2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身、161p。東宝芸能所属。2011年に第7回『東宝シンデレラオーディション』でグランプリ。2012年にドラマ『分身』(WOWOW)でデビュー。『さよならドビュッシー』(日本テレビ系)、映画『脳漿炸裂ガール』などに出演。8月にミュージカル『赤毛のアン』に主演。また内村光良監督作品、映画『金メダル男』(2016年10月22日公開)も控えている。
『第8回 東宝シンデレラオーディションIn collaboration with集英社』
東宝シンデレラオーディション
1984年にスタートし、これまでに沢口靖子や長澤まさみらを輩出した「東宝シンデレラオーディション」が、2011年の開催以降、5年ぶりに8回目となるオーディションを開催。 グランプリ受賞者には、集英社原作による東宝製作映画(2017年撮影予定)で、女優としてスクリーンデビューが約束されるほか、東宝シンデレラ史上最高額となる賞金300万円、推薦者には100万円が贈られる。また、集英社編集スタッフが審査に参加する集英社賞受賞者には、雑誌デビューが約束される。さらに、東宝製作アニメ作品に、主題歌アーティストとして参加できるアーティスト賞が用意されている。募集するのは、9歳〜18歳までの健康で明朗、個性豊かな魅力ある女性。“映画に出演したい!”“雑誌で活躍したい!”“アニソンアーティストになりたい!”というシンデレラたちを探している。

オーディションの応募受付は終了しました
2万人の鼓動 TOURSミュージカル「赤毛のアン」
赤毛のアン
キャストオーディションを全国で開催し、プロの俳優と全国のキャストの共演で感動のミュージカルを作り上げるTOURSミュージカル。14年目の今年、主人公のアンを演じるのは、これが初舞台初主演の上白石萌歌。公演はすべて全席無料の招待制で、現在チケットのプレゼントキャンペーンを実施中。詳細は公式サイトに掲載(6月30日締め切り)。公演は8月14日の札幌市教育文化会館を皮切りに全国8都市、11公演を実施。

公式サイト: http://www.st-musical.com/

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