萩原みのり×久保田紗友 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「萩原みのり×久保田紗友」

2017/07/05

「この作品を通して、自分が将来なりたい女優像というものが明確になりました」

萩原みのり×久保田紗友

思春期の少女たちが抱える孤独やデリケートな人間関係をほろ苦くも瑞々しく描き、「友達ってなんですか?」を問いかける映画『ハローグッバイ』。その繊細でリアルな演技が東京国際映画祭でも絶賛を浴びたW主演の萩原みのりちゃん&久保田紗友ちゃんに、丁寧な作品作りを積み上げて完成した本作の舞台裏を語ってもらいました!


萩原みのり×久保田紗友

萩原みのり

二人がW主演した映画『ハローグッバイ』で描かれる女子高生たちの関係がとてもリアルでした。大人でもそう思うくらいだから、現役世代が見たらもっと感じるものが大きいんじゃないですか?
萩原みのり「そうですね。私は現在20歳でちょっと振り返るくらいの年齢なので、“あの頃はこんなことに悩んでいたな”とか、“クラスで目立っていたあの子も、きっと必死だったんだな”と前向きに、ちょっと微笑ましく観れる部分もあったんですけど、現役世代だったらどこか胸が苦しくなったり、自分自身に刺さるものも大きいかもしれないです」
久保田紗友「私はそれこそ現役女子高生なんですけど、自分が演じた葵みたいな、優等生で周りからはちょっと浮いているという子もきっとどのクラスに一人はいるし、みのりちゃんが演じたはづきみたいな、目立つグループにいながらも、本当は周りに合わせているだけの子も絶対にいるだろうなと思いました」

萩原みのり×久保田紗友

久保田紗友

女子高生特有の関係性みたいなものがありますよね。
萩原「『私たち、友達だよね?』というセリフも、最初に台本を読んだ時は“こんな気持ち悪いこと言わないよ〜”と思ったけど、自分の中高生の頃を振り返ってみると、意外とリアルに言っていたなって思い出しました」
久保田「私は今、高3なんですが『卒業してもずっと友達でいようね』みたいな言葉がけっこう学校で飛び交っていて。その言葉も、無意識に今の関係性に保険をかけているのかもしれないなって、ときどき深読みしちゃうことがあるんです」
萩原「卒業してみると、中学や高校のクラスってすごく特殊な空間だったんだなって思う。特に私は中高6年間、女子校だったから、いろいろありました(笑)」
久保田「でも共学でも、男子に『女子って、面倒くさっ』って言われることあるよ(笑)」
萩原「きっと誰もが通る道だから、観終わってからいろんなことを考えるし、語りたくなる映画になったんじゃないかなと思います。でも、それも撮影から1年経った今だから言えることで、撮影中は完全にはづきとして生きていたので、そんなふうに客観的に考えることはできなかったですね」
二人の繊細でリアルな演技がとても印象的でしたが、役作りはどのようにしていったんですか?
萩原「私は撮影に入る前に、クラスメイトを演じる共演者の方々との関係性を作るリハーサルが1週間あったんです。劇中のセリフを練習するのではなく、表面的には仲良しだけど上っ面なだけの関係性を作るということを、ほぼエチュードみたいな感じで」
萩原みのり×久保田紗友
劇中では二人はすでに別れていて、今ははづきの友達と付き合っているという設定ですよね。
萩原「はい。元カレ役の小笠原海くんとのリハーサルは、まず付き合っていた頃から別れた時の距離感から作っていきました。逆に紗友ちゃんとはほとんど関わらず、むしろ距離を置いていました」
久保田「すれ違っても“あ、いるな”くらいの感じで、コミュニケーションはほとんどなかったですね」
萩原「今振り返ると、変にこっちが関わったら、紗友ちゃんの役作りを邪魔しちゃっていたと思います」
紗友ちゃんはどんなリハを行ったんですか?
久保田「私のリハーサルはみのりちゃんとはぜんぜん違っていて、ほぼ一人で自己分析をするというものだったんです。監督からは『葵はクラスの中で孤立している存在で、クラスメイトが仲良くしていて思うことはあるかもしれないけど、特に何も発信せずに自分で消化しちゃうタイプだから、とにかく自分と向き合ってください』と言われていました」
萩原「監督も紗友ちゃんとは、あえて距離を置いていた感じだったよね。“自分で考えなさい”というふうに」
久保田「そうなんです。でも、そうやって自分で作った葵像が正解かどうかも、監督は何もおっしゃってくれなくて、それがとても不安で。その不安が葵の孤独感として表現できていたのかもしれないって、完成した映像を見て改めて監督の意図がわかりました」

萩原みのり×久保田紗友
W主演とは言っても、それぞれ役作りの方法がぜんぜん違ったんですね。
久保田「そうですね。でも自己完結で役を作っていけた私に比べて、みのりちゃんのほうが断然、負担は大きかったと思います」
萩原「確かにやることはたくさんありました。事前に監督からも『座長としての意識を持ってほしい』と言われていたんです。『この物語は友達との関係も含めて、はづきが中心になって回していくものだから』と。だから、リハの間は友達の距離感を作ることに必死でした。リハじゃないときもクラスメイトの子たちとグループLINEで頻繁にやり取りをしたり、ご飯を食べに行ったりと、監督やスタッフさんなど大人のいないところでの友達同士の距離感を意識的に作っていました」
久保田「撮影中は、そういったみのりちゃんの取り組みはぜんぜん知らなくて。こうして一緒に取材を受けて初めて知ることも多いんです。『ありがとう』って言うのも変だけど(笑)、感謝しかないです」
萩原「単純にこの作品での役割の違いだと思うよ。でも私としては、そんなふうにリハと撮影を含めた2週間、朝から晩まで萩原みのりに戻る瞬間がまったくなかったおかげで、現場に入った瞬間に何も考えなくても、自然にはづきとしてそこにいられたのはありがたかったなって思っています」

萩原みのり×久保田紗友
ちなみにリハ中はまったくコミュニケーションを取らなかったとのことですが、もともとお互いのことは知っていたんですか?
萩原「初対面ではないけど、ちゃんとしゃべったことはないくらいの関係でしたね」
久保田「それこそ挨拶をするくらいかな。『お疲れ様です』とか」
萩原「うん、最初は、葵とはづきとほぼ似たような距離感だったと思います。それをリハの間も維持し続けて、現場に入ってからちゃんと話し始めて、少しずつお互いを知っていくというふうに、葵とはづきと同じスピードで私たちも距離を縮めていけたので、映画には本当にリアルな私たちの距離感が映っていると思います」
撮影初日はぎくしゃくしていた二人が、最終日には抱き合ってクランクアップしたとか。やっぱり一つの作品を作り上げると、絆も生まれるんでしょうか?
萩原「そうですね。何よりとてもいい空気感の現場で、スタッフさんキャストさん交えてみんなでしゃべっていることが多かったんです。みんなが同じ方向を向いている組って感じで、映画っていいなと思いました」

萩原みのり×久保田紗友
ところで映画ではもたいまさこさん演じる認知症のおばあさん・悦子さんとの交流を通じて、二人が表面的ではない絆をいていきますが、大先輩であるもたいさんはどんな女優さんでしたか?
久保田「お芝居の時はとても集中される方ですが、実際のもたいさんは、穏やかでとても優しい方でした。私たちもとても可愛がっていただきました」
萩原「もたいさんと私たちとの何よりもの違いは、私たちは現場でずっと葵とはづきとしているんですけど、もたいさんは普段はもたいさんなんです。なのに、カメラの前に立つとただそこにいるだけで悦子さんなんです。黙っていても、後ろ姿でも。その悦子さんを見るだけで、はづきとしての私もいろんな気持ちでいっぱいになってしまって。背中を見せるだけでここまで私たちに伝えられる、そのパワーってなんなんだろうって思っていました」
お二人との決定的な違いとしては、キャリアの長さもあると思いますが。
萩原「でも、私がもたいさんと同じ年齢になったときに、同じようなお芝居ができてるか──。でも目指したいって思いましたね。今までなんとなく憧れていた存在はいたけど、この作品を通して、自分が将来なりたい女優像というものが明確になりました」
久保田「何より、もたいさんのおかげでこの映画も幅広い世代に届く作品になったと思います。それは私たちの力だけではできなかったことなので、もたいさんの存在の大きさを感じます」

萩原みのり×久保田紗友
では最後に、この作品を通して感じた「芝居の面白さ」について教えていただけますか?
萩原「今まで出させて作品の中で、この映画ほどモニターチェックをしなかった現場はとても珍しかったです。完成を観て初めて、“私、こんな表情していたんだ”“こんなに感情が動いていたんだ”って気づくことも多くて、自意識を持たず、役のままで現場にいる面白さを味わうことできた作品でした」
久保田「私はいつも前日に台本で予習してから撮影に臨むんですけど、実際に現場に立ってみたら予習したこととはぜんぜん違う感情が生まれることがとても多かったんです。現場で感じたままに、繊細な感情の揺らぎが出てくることの面白さを感じた作品でした」

インタビュー・終
撮影/mika 取材・文/児玉澄子

Profile

萩原みのり
はぎわら・みのり●1997年3月6日生まれ、愛知県出身。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。ドラマ『放課後グルーヴ』(TBS系)で女優デビュー。近年の主な出演作は、ドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)、映画/『64-ロクヨン』、『何者』など。2017年は、『ソースさんの恋』(NHK BSプレミアム)映画『昼顔』(公開中)、『心が叫びだかってるんだ。』(7月22日公開)など多数の作品に出演。

久保田紗友
くぼた・さゆ●2000年1月18日生まれ、北海道出身。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。 2013年にドラマ『神様のイタズラ』(BS-TBS)、『三人のクボタサユ』(NHK札幌)で共に主演を務める。近年の主な出演作は、ドラマ/『世にも奇妙な物語』(フジテレビ)、『4号警備』(NHK総合)、連続テレビ小説『べっぴんさん』(NHK総合)、『映画/『先生と迷い猫』、『疾風ロンド』など。7月12日スタートの新水曜ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)に出演。

INFORMATION

映画『ハローグッバイ』
映画『ハローグッバイ』
©2016 Sony Music Artists Inc.

映画『ハローグッバイ』
7月15日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

初監督作品『ディアーディアー』が第39回モントリオール世界映画祭に正式出品され華々しいデビューを飾った菊地健雄監督最新作。旬な若手女優、萩原みのりと久保田紗友がW主演を務め、それぞれ心に問題を抱えた、クラスの中で交わることがない二人の女子高生が、一人の認知症のおばあさんと出会い交流することで、ぶつかり合い、認め合いながら一歩前に進んでいく物語。
≪story≫
クラスでも目立つ存在のはづきと、いつも一人ぼっちの優等生の葵。はづきは元カレとの子供ができてしまったかもしれないことを一人悩み、葵は忙しくて家庭を顧みない両親への寂しさを紛らわす為に万引きを繰り返していた。
そんなある日の学校の帰り道、一人の認知症のおばあちゃんと出会ったことがきっかけに、世代を超えた「友達」関係が始まる。初恋の人へのラブレターを大切に持っていることを知った二人は、そのラブレターを渡すために、おばあさんの初恋の人を一緒に探そうと決心する……。

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