前原滉 | インタビュー | Deview-デビュー

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インタビュー「前原滉」

2017/03/01

「役者はどれだけ自分の持ち味を芝居に生かせるかが勝負」

前原滉

4月からNHK大河ドラマ『おんな城主直虎』 に登場する前原滉。小栗旬や綾野剛といった顔ぶれがそろうトライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所「トライストーン・アクティングラボ」から、事務所に所属となって2年目、話題の映画に続々と出演を果たしている期待の若手個性派だ。自ら「超イケメンでも超ブサイクでもない中途半端な顔」という彼が、個性を開花していったそのプロセスについて語ってくれた。


前原滉
大河ドラマ「おんな城主直虎」への出演が発表されて、周囲の反響はいかがですか?
「今まで以上に大きいです。おめでとうっていうメールをたくさんもらったり、正月にも実家に帰ったら、マンションの1階が定食屋さんなんですけど、そこのおばちゃんがお客さんに『ここの○階の子が大河に出るのよ!』って広めてくれているらしくて(笑)。ちょっと恥ずかしいけど、お礼に行かなきゃなって思ってるところです」
百姓の若者・角太郎という役どころですが、主演の柴咲コウさんとの絡みもけっこうあるそうですね。
「はい。直虎は領民と深く関わったお殿様だったということで、大河でも珍しくお百姓さんもけっこうフィーチャーされるんです。そういう役の上での関係性もあってか、撮影の外でもいろいろお話しさせてもらったりと、ベテランとか新人とか関係なく共演者の距離がとても近いんです。中でもやっぱり身近なのはお百姓さんチームなんですけど、(隣村の百姓役の)TKOのお二人と漫画やプライベートの話をしたり、そこに(長老の補佐役の)山中崇さんが茶々を入れたり、(村の長老役の)山本學さんが戦時中の話を僕たち若い世代にしてくださったりと、現場での過ごし方が自然と役のポジションと重なっていて、この雰囲気がうまく画面に乗ってるといいなと思ってます」

前原滉
角太郎の人物像についても教えていただけますか?
「あんまり頭は良くないんですけど、若者だけに純粋なんですね。いろんなことを知ってる大人よりも自分の直感を信じて行動するところがあって、だから直虎についても『今までにないことをしようとしてるお殿様だけど、この人だったら信じてついていって大丈夫なんじゃないか』と興味を持って、積極的に関わっていくという役どころです」
出演はオーディションで決まったそうですね。
「はい。というか、呼ばれたオーディションの役は落ちてしまったんですけど、後日に『こういう役があるんですが、出演しませんか?』とお声がけいただいたんです。オーディションは同世代の役者がたくさん受けていたんですが、中でも最終オーディションで同じ組の8人のうち、2人が映画『何者』で共演した人たちで。しかもその2人と演技審査を受けることができて、すごく楽しかったんです。それが選んでもらえた要因なのかなと」
どんなところに手応えが感じられたんですか?
「喧嘩してる2人を僕が止めに入るという演技審査があったんですけど、数ヵ月前まで現場で一緒に撮影してた仲だっただけに、信頼関係ができていたこともあって、お互い目線を合わせたり、打ち合わせをしたりしたわけでもないのに、いきなり2人がトップギアで喧嘩し始めたんです。僕としてはもう、ヤバイヤバイって本気で止めに入るしかなかったんですけど、そのリミッターの振り切り方が純粋に楽しくて、審査が終わって帰るときにも3人で『今日は面白かったね』という会話をしました」

前原滉
作品を重ねていくと、オーディションでもそういう再会があったりするものなんですね
「はい。今の22、23歳の役者って10代の頃からやってきてる人が多いので、『あいつ、また来てるな』みたいに認識しあってるみたいです。ただ、僕は2年前にようやくこの世界に入ったばかりなので、まだまだ初めましての人も多くて。でも本当にオーディションって、こういう芝居をする同世代の役者がいるんだ、ということをいっぺんに知ることができるすごく刺激的な場で、これからもたくさん挑戦したいです」
ちなみに時代劇なので劇中でメガネは着けないと思うんですが、オーディションには?
「メガネをかけていきました。最近はこれで覚えてくださる現場の方も少しずつ増えてきたし、これを着けてると調子がいいという勝負メガネみたいなのもあるんですよ。ただ、劇中ではもちろん着けられないので、装備が一つない感はあるんですけど、それはそれで新鮮で身が引き締まりますね」
先ほどこの世界に入って2年とおっしゃいましたが、トライストーン・アクティング・ラボ(TSAL)へは高校を卒業して入所されたんですよね。そして4年学んだ後に、トライストーン・エンタテインメント所属になったと。
「養成所に4年いたと言うと、けっこう現場でも驚かれるんですよ。でも役者が世の出るタイミングって本当に人それぞれで、僕にとっては4年が必要だったと思うんです。それこそTSALに入った頃は窓際族みたいに目立たなくて、講師の方からもまっさきに辞めるタイプだと思われてたらしいので、あの4年がなかったら今こうやって現場に出られていないと思います」

前原滉
TSALで学んだことは今、どのように生きていますか?
「TSALを通して染み付いたのは『準備』ということですね。たとえば大河のオーディションが1週間後にある。じゃあ、それまでにどれだけこの時代のことを調べられるかといったこともそうですし、あと、今年公開される映画『あゝ、荒野』の撮影を去年やったんですけど、役作りのために1ヵ月で10キロ体重を落としたんです」
もともと痩せてるほうなのに、フラフラにならなかったですか!?
「一時期はきつかったですけど、体調を崩したら撮影に響くので、そのギリギリのところでなんとか保ってましたね。この役は僕にとって今までにない重く暗い役で、監督さんから『もうちょっとこけた感じにしてほしい』と言われたんです。それで現場入りまでに減量したんですけど、そのときは体調というよりもメンタル面で役に飲み込まれました。普段はあんまり役に侵食されないタイプなんですけど、日常生活でも普段は意識しないような死生観みたいなことを考えてしまって」
それだけ役にのめり込んだんですね。
「そうですね。脇役ではあるけども劇中のあるエピソードの軸になるという、これまでやった中でも重要なポジションだったこともあって。役者2年目にして、本当にありがたい経験をさせていただきました」
それも、先ほどおっしゃった「準備」を万全にしたからできたこと。でも「準備」って、素人考えだと特に学ばなくてもできそうな気もするんですよ。それこそ学生だったら、テストの日を逆算して勉強するみたいな。役者の準備って、それとどう違うんですか?
「うーん、うまく言えないですけど、TSALのレッスンは週1回なんです。その残りの6日をどう費やすか、というのが『準備』なんです。最初は、たとえば衣装のことだけしか考えられないとします。来週はこういう芝居のレッスンがあるから、こういう服装で行こうと。でも衣装だけじゃダメだってことに気づいて、じゃあ何が足りないのか、髪型なのか、内面的なことなのか、そうやって毎週一つひとつ積み重ねた結果でどんどん準備の質を向上していくことができた。それが今では、すごく当たり前のこととしてできるようになったと感じています」
トライストーンエンタテインメントとTSALはすぐそばにありますが、今もレッスン場は利用されるんですか?
「よく行きます。それこそ『あゝ、荒野』では7ページくらいの長セリフがあったので、スタジオを使わせてくださいとお願いして。あとはなんとなく日常がルーティーンになってるときには、自分を崩すためにスタジオでメンテナンスしたりします。そこは元TSAL生の特権ですね」
スタジオに来ると、昔の仲間に会ったりしますよね。事務所に所属して2年経ちましたが、今はどんな関係ですか?
「いまだに普通に飲んだりしてる仲なので、あんまり久しぶり感はないですね(笑)。芝居が好きな人しかいないので、話をしててもすごく楽しいです。もちろん彼らにも、僕が仕事をしてるのを見て、悔しいっていう気持ちはあると思いますが、一方で、大きな仕事が決まったときは『やったな』と心から喜んでくれる。僕自身、TSALの先輩や後輩や同期ですごくステキな芝居をする人を見て、いまだに悔しいと思うことはありますし、お互いに発奮し合える関係。それってまさに、役者仲間ってことだと思うんです」
いつか作品の現場で一緒になる仲間もいるかもしれないですね。
「絶対にあると思います。ここって芝居にひたむきな人は絶対に切らないんですよ。僕も4年いましたけど、養成所としては新しい人をどんどん入れて入学金をいただいたほうがビジネス的にはいいじゃないですか。でもそうじゃなくて、本気で芝居をやりたい人だったら、どんなゆっくりでも成長を後押ししてくれる。それこそスカウトですぐに脚光を浴びるみたいなタイプじゃない僕にとっては、最高の環境だったと思っています」

前原滉
3月には蜂谷すばる役を演じる映画『3月のライオン』の公開が控えています。昨年出演された映画『聖の青春』に続いて、将棋づいてますね!
「ただ今回は『聖の青春』と違って原作にも登場する役なので、利き手を矯正するという役作りが必要だったんです。僕はもともと左利きなので、右で駒を指せるようにかなり練習しました。しかも将棋の才能がすごくあるがために、早指しという将棋の世界ではマナー違反をしがちな人物なんですが、それが原作でも魅力的に描かれているので、映画でもその人物像がうまく伝わってるといいなと思ってます」
昨年から今年にかけて、注目作の出演が相次いでいますが、ご自身の中で何か変化はありましたか?
「実は『何者』と『聖の青春』、そして今年公開される『あゝ、荒野』の3本の映画は全部、キャスティング担当の方が同じなんですよ。その方が『何者』をきっかけに、『あゝ、荒野』のオーディションにも呼んでくださって、役をいただくことができた。去年は本当に、運や縁というものがすごくつながった1年でした。そのキャスティングの方が『あなたは三枚目だけで勝負しようとしてるけど、二枚目でも行けるんだから、そこもちゃんと意識しなさい』と言ってくださったんです。たしかに僕はイケメンというタイプじゃないですから、役者としても飛び道具的なポジションで勝負しようって考えていたので、その言葉はとても心強くて嬉しかったです」
そういえば、前のインタビューで「役者を志し始めたときには、小栗旬さんみたいになれると思ってた」とおっしゃってましたね。
「はい、早い段階でその勘違いに気づけたのは良かったです(笑)。でもその方がおっしゃった二枚目というのは、ルックスという意味じゃなくて、作品の中でのポジションのことだと思うんですね。つまりパッと画面に出て印象を残す飛び道具ではなく、作品の中央を担う役どころという意味合い。そこは誰もが目指すところだけど、実際やってみると、画面に長く出続けるって役者にとってすごく重いことなんです。憧れだけで越えられる壁じゃない。今、活躍されている方はその壁を乗り越えてきたんだなと思うし、自分もその壁を乗り越えていきたい」
前のインタビューでムロツヨシさんが目標だとおっしゃってましたよね。ムロさんもまさに今回の大河ドラマで重要な役どころを担っていますが、共演してみていがかですか?
「現場でムロさんのお芝居を見ていると、単なる自由とは違って、制限のある中でも自分のやり方を貫いていらっしゃるんです。しかもムロさんが入ると現場が明るくなるというか、『どんな芝居をするんだろう』っていう期待感が現場に満ちるのがわかる。でもムロさんの芝居は、ムロさんだから成立するものであって、真似できるものでもないとも思うんです。だから勉強になることはもちろんたくさんあるけど、現場では純粋にムロさんのお芝居を楽しませていただいてます」

前原滉
憧れの存在ではありつつも、前原さんは前原さんなりの芝居を追求していこうとしている。たしかにそこは役者2年目の大きな変化ですね。
「先ほどのキャスティングの方の言葉が証明してくれたように、役者って結局はルックスじゃないんです。自分で言うのもなんだけど、僕ってイケメンではない代わりにものすごいインパクトのあるブサイクでもない、言うなれば中途半端な顔立ちだと思うんです。たしかに目は人一倍、細いですけど、だから中の下から中の中くらいですかね(笑)? それはいいとして、役者はどれだけ自分の持ち味を芝居に生かせるかが勝負。で、その持ち味というのは誰もが持っているけど、生かすにはこの世界に飛び込んで、磨いていくしかないと思うんです。僕もまだぜんぜん途中なんですけど」
それこそルックスへのコンプレックスだけで役者を諦めている人には、心強い言葉です
「実はこないだ正月に昔の友だちに会って『俺もちょっと役者をやってみたかったんだよね』って言われたんですよ。人生の選択は人それぞれであって、どんな道に進むのもいいと思います。でも、もし今どうしようかって考えてる人がいたら、後になって後悔するよりも、飛び込んでみたら? って言いたいです。僕みたいな例もあるわけだから、ルックスだとかそういうことで簡単に諦めないで欲しいなと思います」

インタビュー・終
取材・文/児玉澄子 撮影/厚地健太郎

Profile

前原滉
まえはら・こう●1992年11月20日生まれ、宮城県出身。トライストーン・アクティングラボ(TSAL)』での研究期間を経て、トライストーン・エンタテイメント所属の俳優となる。2015年、舞台『AZUMI 幕末編』、映画『S-最後の警官-奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』、CM「NTTドコモ『dTV』」他に出演。2016年はドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『わたしを離さないで』、映画『だれかの木琴』などに出演。2017年はNHK大河ドラマ『おんな城主直虎』の4月2日の放送回から出演。映画『3月のライオン』【前編】が3月18日から公開。映画『あゝ荒野』、『トリガール』(9月公開)の公開も控える。

INFORMATION

NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』

NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』
(NHK総合:毎週日曜20時/NHK BSプレミアム:毎週日曜18時)

直虎(柴咲コウ)が治める井伊谷の民・瀬戸村の百姓・角太郎役として、4月2日の放送回から登場。

INFORMATION

トライストーン・アクティングラボ
レッスン生募集

小栗旬や綾野剛、木村文乃、田中圭、坂口健太郎といった、人気・実力を兼ね備えた俳優が所属する芸能プロダクション、トライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所。演技の未経験者から、演技術の向上を目指すプロの俳優まで、幅広く門戸を開いている。講師陣は多数の俳優を指導してきたエキスパートぞろい。また、映画や舞台の製作者、監督、演出家、俳優などによる特別講義も実施している。映画『クローズZERO』シリーズや『ルパン三世』そして『新宿スワン』といった大型映画を自社製作しているのもトライストーン・エンタテイメントの特色。インタビューで語られているようにTSAL生にもこれらの作品への出演の機会を提供している。もちろん、外部の映画、ドラマ、舞台のオーディションへも積極的に送り込んでおり、TSAL在籍中から俳優として活動する人は多い。レッスンで有望と認められたり、人一倍の努力が評価された場合には、トライストーン・エンタテイメント所属に向けて推薦が受けられる。

トライストーン・アクティング・ラボの詳細は下記まで
TEL:03-5433-2195
WEB:http://www.tristone.co.jp/tsal/

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