――そして現在は、あだち充さん原作の舞台『虹色とうがらし』の稽古も終盤を迎えているとか。この記事が出るときには、絶賛上演中になります。

荒井敦史「はい。稽古は楽しくやっていますよ。僕は、“ザ・2.5次元”という王道の作品はやったことがないのですが、90年代の、昔のマンガ原作の舞台化という意味では、以前やった『闇狩人』に近いのかなと。マンガのコマだから成立するものを生身でやろうとすると、なかなか難しいこともあったりして。あだち充さんらしい、ぽそっと突っ込む部分を意識して、僕はあえて不協和音を奏でています（笑）。僕が演じる麻次郎はぽけっとしているキャラなのに、戦うと超強いんです。主演の長江崚行くんも、ヒロインの伊波杏樹さんも、きちんと成立させるのが上手な人たちなので、その芝居のテンポをずらしまくるってことを意図してやっています」

――現場はどんな感じですか？

荒井敦史「山椒役の子役キャストが2人いるので、明るく、楽しく、めちゃくちゃ元気です。1人が出ている間、もう1人はずっと、僕の膝の上に座っているんですよ。『そろそろ、どいてくれないかな？（笑）』って言うと、『椅子だから』って。『麻にぃ〜』って言いつつ、椅子扱いですよ（笑）」

――好かれていますね！

荒井敦史「昨日も、殺陣の練習をやっているのにトコトコ近寄って来るから、『危ないよ』って言ったんです。そうしたらコソッと『麻にぃの差し入れ、食べてもいいですか？』って囁いてきて。『うん、いっぱい食べな！ 今、殺陣やってるから、またあとでね！』って。まぁ、可愛いです」

――SF時代活劇という異色作ですが、見どころは。

荒井敦史「7人きょうだいの周りの人物が濃いキャラだらけ、というのも見どころかなと。主人公の七味が、ツッコミ役になることが多いですからね。きょうだいは母親が違うので、それぞれの母親の墓参りの旅を通して、父親のルーツを探しに行く。何回も墓参りのシーンが出てきて、その墓参りが終わったら敵が出てきて、うわ〜！っていう。私、そういう作品たくさんやってきましたから（笑）。『ここはもっとこうしたほうが面白くなるんじゃないかな』と、アンサンブルの方々とも相談しながら芝居を作っていっています」

――舞台をやりつつ、ドラマ『サ道 2021』のほうは、どんな感じで参加していたんですか？

荒井敦史「今回は関西のほうでのロケ撮影が多かったので、出演はそこまで多くないのですが、前半と後半に分けて撮影に参加した感じで、『新・熱海〜』の公演合間と、『虹色とうがらし』の稽古期間中に撮影に参加してました」

――そして最近は、音声配信アプリstand.fmでの配信にも挑戦。これはどういう経緯で始めたんですか？

荒井敦史「僕はSNSなどで文字で発信するよりも、しゃべるほうが好きなんです。ラジオというか、音声アプリみたいなものをずっとやりたいと思っていて。顔出しをせず、ただ話したいことを発信できたらいいなと、マネージャーさんに相談したら、stand.fmを提案してくれたんです。気軽にしゃべりたいことをしゃべるだけなので、楽しいですよ。応援してくれている人との交流の場としても、開けたオープンな場としても、自分に合っているなと。間口が広いので、荒井敦史のことを全く知らない人がたまたま行き着いて入ってきたりするのも、おもしろくて。やりたいことがあるなら、失敗したらどうしようとか躊躇したり、あれこれ考え過ぎずにやったほうがいい。今の時代は、そのほうが生きやすい気がします」

――やってみないとわからないことってありますからね。では、今後のお仕事のお話も。10月から舞台『五番目のサリー』〜The Fifth Sally〜に出演が決まっています。

荒井敦史「『アルジャーノンに花束を』『24人のビリー・ミリガン』などで知られてるダニエル・キイスの小説を舞台化した作品で、僕は主人公で“五重人格”のサリーの主治医、精神科医のロジャー・アッシュ役を演じます。原作だと4、50代のイケオジ枠なんです。ちなみに、僕は男性キャストの中では一番年下なので、僕自身も配役を聞いたときにびっくりしました。しかも、全員が歌えて踊れるキャストなんですよね。ストレートだと言われていますが、これはもしかして歌うのでは!?って疑っています（笑）。こんな手練ばかりの中で歌わされたら、畑違いの僕は何かしらの味を出すしかない。同じ土俵では戦えないですから（笑）、もし歌うことになったとしても、自分なりにやっていこうと思っています」

――それぞれの人格との対話をする医師の役ですが、現時点ではどんなイメージですか？

荒井敦史「めちゃくちゃ大変そうです。他の方はサリーのうちに潜む別人格を演じたり、何役かやるらしいのですが、僕はロジャー・アッシュだけなんです。まだどうなるかわからないですけど」

――いろんな作品に出続ける秘訣というのは？ オーディションが多いのでしょうか。

荒井敦史「映像はオーディションのことが多いですが、舞台は特に受けていないですね。『熱海殺人事件』に関しては、ずっと出たいと思っていたので、稽古場にお邪魔しては『いつやらせてくれますか？』て岡村さんに直談判していました。今の時代らしくないかもしれない方法です（笑）。他の役者さんが名前を出してくれるなど、人が繋いでくれることもあります。今回の『虹色とうがらし』に関しては、細貝圭くんがSET（スーパー・エキセントリック・シアター）のプロデューサーさんに『荒井くん、いいですよ』って言ってくれたみたいで。本当にどこで繋がるかわからないので、『五番目のサリー』も、いろんな人に観に来て欲しいです（笑）」