――いろんなことを経験して、最近のターニングポイント『君の花になる』で、注目度が上がった実感があったんですね。

綱啓永「それは大きかったです。たくさんの人が見ている仕事なんだなと改めて感じることができた。その自覚はあったと思っていたけど、全然薄かったなと。いろんな人が作品を見て、いろんな感じ方をして、僕を生きがいにしてくれる人もいる。そういうのを肌身で本当に感じることができました」

――綱くんはずっと変わらないですよね。焦っていたり、落ち込むこともあったりといろいろありつつ、その当時と今とで対応や性格的な印象が本当に変わらない。

綱啓永「僕、よくそれ言われるんです（笑）」

――キャラ作りじゃないですけど、もっとこういうほうが良いのかな、とか考えたことは？

綱啓永「ありますよ。めっちゃ考えていました。もっと陰キャのほうがいいのかな…とか（笑）。俳優さんだと変わっている人、個性的な人もたくさんいますから。そういう人のほうがウケるのかな？ 自分もそういう方向に振っていったほうが良いのかな？と考えたこともあるのですが、性格は変えられないし。そこを無理やり頑張るのって、なんか違うよなと。だったら仕事に全力で向き合ったほうがいい。で、気づいたのは、人気のある人って本当に良い人ばかりだってことなんです。性格的に変わっていようがいまいが、本質的に良い人で、そういう人たちがちゃんと残っている。僕は正直、癖もないし個性的なタイプでもないけど、この普通なところが今の自分の武器になるかもと思うことにしたんです」

――個性強めな人が多い世界でもヘンに影響を受けず、ブレずに自分らしくいられること自体、すごいことですよね。

綱啓永「『本当変わらないね』と言われることが、僕は嬉しいんです。変わりたくないって思っていたから。だから『変わらないよね』って言ってもらえると、“良かった、変わっていないんだ”って安心できます」

――その秘訣は!?

綱啓永「まわりの人たち、友だちに恵まれているからだと思います。役者だと樋口幸平とか。そのあたりの人たち、みんな良いやつだし、優しい。だから僕も変わらずにいられるんです。いい縁に恵まれているだけに、彼らに見合うよう自分自身をしっかりと保っていきたい」

――4月期はドラマ『366日』に出演しますが、高校生と20後半と両方演じるという、これまでにないチャレンジになりそうですね。

綱啓永「僕が演じる吉幡和樹はエリート会社員で、高校時代から頭脳明晰な人物です。学生時代、先生から信頼されている子っているじゃないですか。“お前なら大丈夫”みたいな。あのポジションの役なんですよ。でも社会人となった今は、あることがきっかけで学生時代の仲間たちと疎遠になっている。その辺も後々回収されていくと思うんですけど、今までやってきた役とはぜんぜん違うタイプです。これまでは明るいか、ちょっとチャラい役が多かったけれど（笑）、今回の役はちょっとシリアスな感じです」

――その意外性が楽しみでもありますが、役を知ったときの印象はどうでしたか？

綱啓永「これまでもそうなんですが、“なんで自分をこの役にしてくれたんだろう？”というのはいつも思いますし、わからないので毎回、聞けそうなときは聞いています。でも今回は、役柄がどうこうというよりも前に“月９”という放送枠や、キャストを見ての驚きと嬉しさのほうが大きかったんです。そこからジワジワと、この作品は難しそうだなという実感が湧いてきて。現代と高校時代、ここまでハッキリと２つの時間軸で演じていくというのは、これまで経験したことがないので」