――紫臣は洞察力が鋭かったり、人との距離を詰めるのが早かったりするキャラクターですが、その部分に関してはご自身の性格と比べていかがですか？

井上想良「僕も洞察力はわりと自信あります。周りを見ているほうだと思うし、紫臣のように、“あれ？ あの人はこの人のこと好きなのかな？”みたいなものもけっこう気づくタイプだと思います。人と距離を詰めるという部分に関しては、僕自身も苦手なこともないですけど、時間がかかるタイプです。ファーストコンタクトで距離をガッと詰める感じではなく、ちょっとずつ探りながら距離を詰めていくほうなので、そこに関しては紫臣とちょっと違うところかなと」

――それは初めての現場に参加するときも同じ？

井上想良「そうですね。探りつつ小出しにしながら輪の中に入っていくような感じです。でも、自分が年上の現場のときは最初からアクセル全開で自分から距離を詰めにいっていました」

――そんな紫臣を演じる上で、どのような部分にこだわってやりましたか？

井上想良「ちょっとした表情の変化に関してはけっこう細かくやっていました。洞察力があるキャラクターだったので、雅と２人で話しているときとか、雅の言葉１つ１つにちょっと引っかかって『ん？』っていう表情をしたり、視線の送り方だったり、表情の変化をあえてつけてみたり、いろいろとこだわって演じました」

――幼なじみという役柄である草川さんとはどのように関係を築いていったんですか？

井上想良「草川さんにも弟がいて、長男同士ということもあって、お会いしたときに同じ空気を感じました。すごくしっかりしている方だけど、気さくな感じでコミュニケーションもとってくれたりして、途中からは僕がイジったりして、『おーい!!』って突っ込んでくれたり、すごくやりやすかったし、楽しい現場でした」

――菅井さんの印象は？

井上想良「菅井さんもすごくしっかりしている方なのですが、時々フワっとしていて面白い人ですね。撮影の合間にいきなり『ファー』みたいなことを言い出して、『え？ 何ですか、今の!？』って聞いたら、『いや、なんか静かだったから』って言っていて。“え、どういうこと!?”ってなったんですけど（笑）。けっこうそういうことがあったりして、意外と面白い人だなっていう印象です」

――さきほど、役作りで苦戦されたとおっしゃっていましたが、井上さんは自分に近いキャラクターとかけ離れたキャラクター、どちらのほうが演じやすいとかってありますか？

井上想良「どっちだろう。どっちにも難しさがあると思うので一概には言えないですけど。共通点が全くないほうが、もしかしたら振り切ってやりやすいのかもしれないし、でもそれはそれで気持ちを理解するのが大変だったりするし…。たぶん、僕は自分に近いキャラクターのほうがやりやすいというか、理解しやすいなとは思います。考え方とかも理解できるほうが演じやすいのかな」

――役者さんによっては自分の引き出しから近い感情を持ってきて演じられたり、自分の気持ちとは全く関係なくキャラクターを新たに作られたり、いろいろなやり方があるかと思いますが、井上さんは自分の持っているものから役作りすることが多い？

井上想良「そうですね、今まではそのやり方が多かったです。でも、それだとふり幅が全然ないなと思ったことがあって。『シガテラ』や『ギフテッド Season1』などに1話だけゲスト出演させていただいたときに、自分とはかけ離れた役だったこともあって、自分の引き出しの中だけでは限界があるなとすごく感じました。なので、最近は今まで以上にいろんな作品を観たり、普段は行かないところに行ってみたり、いろんな人と会ったり、インプットの時間をすごく大切にしています。ゼロから何かを生み出すには、自分の知らないものに触れたりする機会を増やさないとなと思って、最近は意識的にやるようになりました」

――『ビジネス婚』をはじめ、『ゲームの名は誘拐』（WOWOW）では刑事役、7月5日公開の映画『先生の白い嘘』では学生と、本当に幅広い役柄を演じていますよね。

井上想良「いろんな役をやらせていただくことは本当にありがたいことだなと思っているのですが、だからこそ課題でもあるんです。役のふり幅はあるのに、自分のふり幅が見えないというか。もっと見せ方とかで違いを出したいし、作品によってぜんぜん違って見えるような俳優になりたいと思っています」