――そして舞台『ビロクシー・ブルース』では、これまた胸熱なキャストが揃いましたね。最初に聞いたときは、どう思いましたか？

宮崎秋人「むしろ、笑ってしまいました。久しぶりに共演するキャストが一人、二人ならまだわかるんですけど、ここまで知っている人たちと共演っていうのが。去年で言ったら、（鈴木）拡樹くん一人と共演するだけでも、“いやぁ、嬉しいな〜”っていう感覚だったのに、今回は4人（松田凌・鳥越裕貴・木戸邑弥・大山真志）も、昔から知っているメンバーと一緒ですから。稽古場で彼らがどう役を作っていくのかを見るのが、すごく楽しみです。彼らの、俳優としての現在地はなんとなくわかっているつもりではいるんですけど、舞台に上がるまでに、どういう風に仕上げていくのかっていうのを見るのは、非常に興味深い。逆に、自分も見られてしまうんですけどね（笑）。（鳥越）裕貴は電話や、たまに会ったときに、『秋人は良い作品いっぱい出ていていいな』なんて言ってくれたりしたんです。“でも、その場所で、僕がどれだけボコボコにされているかは知らないだろ!?”って。“何もできないまんまなんだよ、実は”って自分では思っていて。たまたま、どうにか舞台に上がっているだけだから、本当は何もできないっていう状態を見られるのが、すごく恥ずかしいんですよね。見栄張ってできるふうなことをやりそうで、それが怖かったりもする。20代前半の頃に、『及第点は取れるよね』って言われたことが自分の中ではコンプレックスだったから、稽古中はとにかく0点を取り続けて、そこから奇跡が起きて100点になればいいやっていう感覚で切り替えてやってきたので。彼らの前で、果たして自分は堂々と0点出せるのかなっていう」

――きっとみなさんそれぞれに、気安さと気負いと、両方ありそうですね。

宮崎秋人「それがいい方向に転べばいいなって思っていますけど、両刃かもしれないですね。（松田）凌とか、『思うことあったら言ってな！』って言ってくるんですよ。“いや、言うことなんかないよ”って話なんですけど。たぶん、これまで凌の舞台を観に行ったときに、結構思ったことハッキリ言っていたからだと思うんですけど、さすがに同じ作品で一緒に稽古して、『お前の芝居、こうだよな』なんて、演出家でもないのに言えないですから（笑）」

――演じるエプスタインは、どういったキャラクターですか？

宮崎秋人「みんなの輪から一人だけ外れているような役で、今までやったことのないタイプの役ですね。熱さっていうのもパッと見では感じられない感じだし。今まで自分がやってきた役って、真面目で熱血、誠実……っていうようなキーワードが出ることが多かったんですけど、そことは真逆かなと。僕からしたら、魅力的な男ではあるし、ある意味羨ましいなって思う人物ではあるんです。人のため、誰かのために自分を貫くような行動をとっているようで、あたかも利己的な行動のように見せている。ひねくれているというか、真意がどっちなのか分からないんです。行動と言葉、どっちが本当なのか。自分次第でエプスタインの描かれ方が変えられそうなので、どういう役に描いていこうかなと。これまでは、特に舞台で演じる役柄に関しては、お客さんに絶対に好かれる自信があったんです。どんな役をやっても、お客さんに好かれることはできる、そういう役にできるっていう自信があったんですけど、今回はそうしたくない。嫌われ役にもなりたくもないから、よくわかんないところで、ふわふわしていたいなって思っているところです。ある意味、すごく挑戦的な役ですね」