――2017年の『男水！』が総集編だとしたら、2018年は『マジで航海してます。〜Second Season〜』や24時間テレビでの『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』など映像への進出もあり、転機の年でもあったのかなと。そして2019年に音楽劇『マニアック』という、これまた大きな作品との出会いが。

宮崎秋人「振り返ると、本当に1つひとつの作品が次へのキッカケになっていたんだなって思います。『マニアック』は、日本の演劇界でもトップレベルで演技が上手い人たち、おもしろい人たちと対峙して、自分の至らなさを痛感した作品でした。自分なりに築いてきたものがあったからここにいるんだと思っていたんですが、現状の自分には、足りないことだらけだったんです。初めてPARCOさんとやらせていただいた作品だったんですが、この頃から、“ここでヘマしたら、何かしらの大事な扉がひとつ閉ざされる”という焦りを持つようになりました。それ以降、ドラマでも、森新太郎さんとやった『HAMLET-ハムレット-』も。役者を続けられなくなるとまではいかずとも、一流の演出家や俳優の方とは、もう一緒にできなくなるかもしれない。ワークショップひとつとってもそうです。各現場で、常にある種の怖さ、危機感を感じながら、必死でやっています」

――舞台での自分のポジションについては、どんな印象を持っていますか？

宮崎秋人「今は、華のある主役と、実力で脇を固める人の、中間ぐらいなのかな…という感覚です。座組の中での身の置き方も、舞台上でも。ひとつ言えるのは、“二枚目”としてやってこなくて良かったなと。まぁ、最初から事務所の人たちには言われていたんですよ。『君は二枚目じゃないからね』って（笑）。自分でもそんなふうに思っていないのに、もし二枚目として売り出されていたら、カッコつけなくちゃいけないじゃないですか。そのギャップが最初からなかったのは、本当に良かった（笑）。『つばめ刑事』で演じた秦も、最初の企画書には“若手イケメン刑事”って書いてあったんです。でも、本読みをしたあとに新しくできた役表に目を通したら、“若手刑事”になっていて。『オレ、“イケメン”取られた！』って、現場でみんなで大笑いしました（笑）」

――最近もドラマ『最愛』に舞台『ザ・ドクター』、そして来年１月に『マーキュリー・ファー』と話題作が目白押しです。

宮崎秋人「家でぼーっとしている暇があったら仕事をしていたい、っていうモードなので、本当にありがたいです。体があと３個くらいあればいいのに！っていうくらい、今が一番、貪欲かもしれない。映画ももっともっと、やりたいですしね。連続ドラマだと最後まで脚本が出来上がってない場合もあるので、ちょっとずつ自分の役が大きくなったり、台詞が増えていったりすることもあって。結末が見えないからこそ、本を書いている人の中でキャラクターが変化していくのかなと、この醍醐味は連ドラでしか味わえないなと思いました。『最愛』に関しては、僕は以前から個人的に松下洸平さんを応援していたので、自分はまだまだドラマの現場では端っこでおとなしくしていますが、松下さんがすごく楽しそうに芝居をされているのを見ているのが楽しい（笑）。津田（健次郎）さんもとても優しくしてくれて、とても和やかな現場です。ドラマの現場では出自の違う役者が集まって、それぞれが自分のできる芝居をして、その瞬間を切り取ってもらっている。『漂着者』のときもそうでしたが、もうね、何でもやってみちゃえ！っていう精神です。それを使うかどうかは監督にお任せすればいい話ですから」