――なるほど（笑）。ちなみに今までで、転機になった作品、出会いというのは？

池岡亮介「やっぱり、Dステ14th『十二夜』ですかね。この作品からホリケン（ネプチューン・堀内健）さんの舞台（堀内夜あけの会「恐怖　タコ公園のタコ女」）に繋がるなど、コメディ方向に仕事が広がったんです。『十二夜』の演出の青木豪さんに手取り足取り、いろんなことを教えていただき、“こんな感じでやると笑ってもらえるんだ!?”と、すごくうれしかった。そこから、“コメディやりたい！”って気持ちが増していったんです。『柔道少年』や音楽朗読劇『�K世界 〜リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について 〜』などもそうでしたが、僕の動きって、どこかクセがあると思うんですね。基本に忠実な動きじゃなくても、自分の好きなようにやっていいよと認めてもらえたのが『十二夜』だった。女性役としての所作は意識しましたが、自分がおもしろいと思うことを自由にやれた作品でした」

――いろんな作品で、いろんなスタッフさんと仕事をする中で培ってきた処世術、コミュニケーション術みたいなのはありますか？

池岡亮介「僕は苦手な人っていうのがほぼいないんです。役作りで苦戦することはありますけど。もちろん、最初からピタッとハマれるわけじゃない。それこそ『十二夜』のときは、最初に自分なりに考えて持っていったものが、稽古場ではまったくハマらなかった。“シェイクスピア、全然わからないな”と思いながらも、自分で考えたプランでやってみたら、稽古場全体が“……”っていう空気感になってしまって。（青木）豪さんも、“これ、どうするかな…”みたいな感じでしたからね。“あ、これ完全に的外れだったんだな”っていうくらい、周囲をポカーンとさせてしまって、今思い返すと本当に恐ろしい状況でした。あのときの自分を褒めてあげたい気持ちでいっぱいです（笑）。思いっきりマイナスからのスタートでしたから。そう考えると、苦手意識のあるミュージカルもマイナスからなので、むしろ楽しんでいます（笑）」

――苦手なのに楽しい!? 楽しむ境地になる秘訣は？

池岡亮介「“自分は自分のやれることを精一杯やるだけ”と、開き直っている部分は大いにありますけど（笑）、ミュージカル俳優のみなさんの演技を間近で観られるってことですね。メカニズムが全然違うんですよ。歌にしても芝居にしても、あの精度、正確さには毎回、感動します」

――今年、6月に出演したA New Musical『ゆびさきと恋々』はいかがでしたか？

池岡亮介「楽しかったですが、歌はやっぱり難しかったです。なかなか上手くリズムが取れない曲があって、上山竜治さんがアドバイスをしてくれたんです。そこから、“あ、できた！”と、ひとつ壁を越えられた。竜治さんのような方には本当に、憧れます。歌が上手すぎる状態って、どれだけ楽しいんだろうなって。そんな話をしたら、『そうなりたいから、ミュージカルをやるようになったんだよ』とおっしゃていて。自分はまだまだテクニカルな部分が足りないので、気持ちの部分を優先して歌うとブレてしまう。だから、ミュージカルを専門にやっている方たちはすごいなって思うんです。音のコントロールを完璧にした上で、感情にもしっかり訴えてくる。そういった方たちと一緒にいると、上手く歌いたい！という気持ちにもなるんですが、そこは一旦置いておいて、役としての感情を優先させて歌ってみたら、歌唱指導の先生に褒められたこともありました。結局はお芝居なのかなとも思いますし、奥が深いです」