――ヒロインが、そういうハイスペックなオトコたちの嘘を見抜きながら、真実の愛を探すという物語ですからね。

牧田「そうそう。だから、その裏をいかに見せるかが肝だと思って。台本も、最初の自信満々な振る舞いは自分とは全然違うなと思いつつ読み進めていったら、“えっ、なんだこいつは！”というシーンが出てきて（笑）」

三津谷「僕もびっくりしましたよ。“えっ、これ牧田さん!?”って、台本を読んで嫉妬しました」

牧田「僕も、"どうしよう!?"と思う半面、これは楽しそうだと思った。監督も『好きにやるだけやっちゃって』と言ってくださっていたしね。それは僕だけじゃなく、みんなに対して話していたことだと思うけど。それでそのシーンの芝居を自分なりに精一杯やって、素の自分に戻ってスタッフさんたちを見た瞬間、“あれ!? これって素の僕自身もこういうやつだと思われた!?”って不安になりながらも、あえて普通に落ち着いた態度でいました」

三津谷「それ、逆に怖い（笑）。僕がその場にいたら、“あ、この人、きっと本当の自分を出しちゃったから、あえて平常心でいるように見せているんだな”って疑います（笑）」

牧田「いや、芝居は楽しかったよ！ でもあれは素ではない!!（笑）」

三津谷「僕も、樫くんの裏の顔についてリアリティを出すために、そういう男性とお付き合いしたことのある人に取材として話を聞いたりしたんです。そういう男性は、裏と表でどういう違いがあるのか、どんな特徴があるのか。映像ではいろいろと難しい面もあるんですが、僕なりに精一杯演じました」

――どちらも濃いキャラクターを演じていますが、どこかしら共感できる部分というのはありましたか？　まったく同じではないにしても、例えば、自分の好みに相手を変えたいなど、エッセンス的な部分での共感など。

牧田「いや〜ないかなぁ」

三津谷「行き過ぎたパターンではありますよね。一部の男性が持つ一面をデフォルメして、エンターテイメントとして見せているから。ただ、好きな相手を束縛したいとか、嫉妬心的なところでは、理解できないこともないです（笑）」

牧田「みっちゃんの情念的な部分が（笑）。Dステの『チョンガンネ』で共演したときに、みっちゃんの目が印象的だったんだよね。芝居以外でも、怒ったときの目に深い闇があったりして（笑）。感情がフリーズしたような感じなんだよね。いろいろ負の感情をためこんでいるんだなぁと思ったよ」

三津谷「最近はそういうの、なくなりましたから！（笑）」

――ちなみに、ウソをつくのは上手いほうですか？

三津谷「いや、僕は下手ですね」

牧田「どうしても、ウソをつかなきゃいけないとなったら完璧につくようにはします。でも、それがバレない自信があるかと言われれば、そうとは言い切れない。"相手のためにも隠すんだ！"という意志が強ければ大丈夫だろうけど、それが揺らいだらわからないな」

――『ウソはつき続けるとボロが出る』といった台詞もありました。

三津谷「そう！ だから僕、自信ない。絶対に無理だな〜」

牧田「みっちゃんは（ウソ）つけなそう」

三津谷「いつかバレるかもという不安がある限り、たぶん、つけないですね」

――10月は映画『ダウト〜』の他にも、それぞれ別作品も控えていますね。

三津谷「牧田さんは、オペラに出るんですよね!?」

牧田「そうそう。東京二期会の『蝶々夫人』に出演するんだよ。僕は歌わないんだけど、生粋のオペラ。生のオーケストラで指揮者の方もいて、オペラ歌手の方が歌いながら物語が進行していくんです。オペラの現場なんて初めてだったし、いつもやっている芝居とはまったく違っていてカルチャーショックを受けました。指揮者を見ながら芝居として歌っていくんだけど、普通の舞台で、その場で演出家の指示に従って芝居をするなんて、絶対にないじゃない？ でもオペラでは、それが当たり前のこと。よく、映画は監督のもの、舞台は役者のものって言うけど、オペラは指揮者のものなんだなと。『この音のタイミングでこう動いて』という演出がありつつ、指揮者の方も人間だから、いつも同じというわけじゃない。芝居が劇的に変わるところで、僕の芝居がスイッチになる場面があるんだけど、指揮者がパッと手を上げるのを見ていなきゃいけないんだよ。その上げ方も微妙に違うから、タイミングが難しいんだよね」

三津谷「へ〜、すごく難しそう。演出は宮本亞門さんなんですよね」

牧田「そう。基本の演出がありながら、音に合わせた芝居をしないといけない。プッチーニの『蝶々夫人』は有名な作品だけど、今回はこれまでとは違う手法、違う視点で見せることで、今までの『蝶々夫人』とは違う感想が出てくるんじゃないかな。ストーリーも歌詞もわかりやすいから、初めてオペラを観る人も入りやすいと思います」

三津谷「おもしろそうですね。僕はタクフェス第7弾『流れ星』に出演します。宅間孝行さんのオリジナル作品で、三回目の再演なんです。宅間さんからは『お客さんに楽しんでもらうために、役者は稽古場で苦しむ必要がある』と、毎日厳しく指導してくれています。全員の台詞を覚えた上で、台詞の一つひとつをどういう気持ちで言っているのかをしっかり突き詰めていく。ただ書かれた台詞について芝居をするのではなく、その台詞を言う5分前を考えて言えと。たとえば、『寒い朝だな』っていうセリフがあったとしたら、その文字のイメージだけで捉えると凍えるような芝居をしがちだけど、そこに“結婚式当日の朝”というモノローグがあったら、同じセリフでもぜんぜん違った芝居になるっていう」

牧田「なるほどね。で、みっちゃんはどんな役なの？」

三津谷「昭和の学生運動が盛んな頃のお話なんですけど、僕は中富先生という役です。いろいろと説明してしまうとネタバレになってしまうので、爽やかな先生とだけ。宅間さんには毎日、『とにかく爽やかなイケメンでいろ！ 三枚目の芝居をするな!!』と厳しく指導されながら頑張っていますので、久しぶりに爽やかな三津谷を観に来てくださいね！」