――そして最新作、舞台『漆黒天 -始の語り-』についても。現在は稽古中とのことですが。殺陣は全部ついたそうですね。

荒木宏文「そうですね。（映画と）アクション監督は違うので、違いは出てくると思いますが、演劇に合った表現になっています。その中で、攻撃をする意図、役としての攻撃心理は筋を通したいと思っています。さっきの話じゃないですけど、“＜役者＞が集まってるな〜”っていう感じでおもしろいです。器用な俳優もいるけど、器用さだけでは上手くいかないなって危機感を持っている。役者マインドが強い人たちに触発されて、器用な部分を使っちゃダメだってなっているんです（笑）。器用にこなすんじゃなくて、できないところに踏み込まないとダメだなって、触発されて取り組んでいる俳優が多いから面白い現場になっています。しかもコミュ障ばかりだし」

――そうなんですか（笑）。

荒木宏文「コミュ障というか、陰キャというか（笑）。だから黙々とやるし、ずっと朝まで飲んで語るっていう感じのコミュニケーションをたくさん取るタイプは少ないかな。お芝居を通してしかコミュニケーションが取れないような人が集まっているので。“自分はこういう風に表現するので、よろしくお願いします！”っていうのを芝居で提示してくるというか、刀を交わさないとわからないっていう（笑）。それが今回のカンパニーの面白みなんじゃないかなと思います」

――舞台『漆黒天 -始の語り-』は、映画『漆黒天 -終の語り-』の前日譚を描く作品ですが、映画との繋がり、物語の構成について、荒木さんが感じたことは？

荒木宏文「舞台の脚本・演出を担当される末満さんが、まず坂本監督が作られた映画を先に観たからこそ、どのように舞台をつくりあげていくか悩まれることはあったと思うんです。自分が何をしたいのかという部分と、どう（映画と）共存するのかを客観視し、ムビ×ステのムービーとステージの連動も考えた上で、ただ前日譚を描くだけの連動の仕方ではつまらないと感じられている。細かい部分まで連動させて、どちらかを観たら、もう一方もまた観たくなるような繋がりを考えてつくられていると思います。まだまだ余白の部分、可能性を感じながら、楽しんで作っているようにも見えます。きっと、舞台を観たら、映画で観たこと、自分が出した答えを疑いたくなると思いますよ（笑）」