――この作品が受かったときは、かなりテンションが上がったのでは!?

田中亨「いやもう、思わず声が出てしまいました。事務所の方と焼き肉を食べていて、静かなお店だったのに“よし！”って声を出してしまって、“あ、すみません”って（笑）。自然に声が出たときに、自分でも結構期待していたんだなって自覚したんです。やっぱりPARCO劇場は憧れだったし、何回も観に行っていた劇場ですから、いつかは出たいと思っていたんですよね」

――特に気になっている、楽しみにして欲しいシーンは!?

田中亨「二幕が結構シリアスなシーンが多い反面、一幕はエンタメ要素がある感じになっています。登山にまつわる作品で、一幕では僕が演じるサイモンと、浅利陽介さん演じるリチャードが山のことを説明する役割を担っていて。お客様に上手に説明できるよう、まずは登山についての勉強から入りました。注目して欲しいのは、二幕に主演の正門良規さん演じるジョーと、古川琴音さん演じるお姉さんのセーラのとあるシーン。そこは本当に緊迫感のある場面なので、楽しみにして欲しいです。僕が演じるサイモンは同じ場面にはいないんですが、客席がどんなふうになるのか、今からとても楽しみです」

――今までやってきて、俳優業のどんなところに魅力を感じていますか？

田中亨「僕、今の仕事って『ONE PIECE』みたいだなって思っていて、勝手に“ひとり『ONE PIECE』”って呼んでいるんです。自分が船長で、いろんな島に行って旅をして、たくさんの出会いを経験していく。冒険がずっと続いている感じで、次々とミッションに挑んでいくゲーム感覚なところがあるんです。やりやすい演出家の人もいれば、相性的に理解するまで時間がかかるときもある。そういう人とも仲間になって、年齢を重ねたときに一緒に何か作れたらって。船にも様々な役割の人がいるように、演劇にもたくさんのプロ、スタッフさんが関わっていますから。冒険も楽しいし、自問自答しながら自分も成長していける。分析することが好きっていうところも、楽しんで続けられている理由な気がしています」

――分析はどのようにやっているんですか？

田中亨「20歳になったぐらいから、思ったこと、考えたことを全部ノートに書くようにしています。例えば、演出家はどういうことを伝えたいのか、こういうことを試したけどいい反応がなかったから、次はどうしようか、ということをすべて言語化して書き留めます。頭の中にある漠然とした思考を具体的に言葉にすることで、悩んでいることの原因や課題が見えてきて客観的に整理ができる。その繰り返しが楽しいんです。感じてくれる人だと、昨日と今日とで僕が全然違うということに気づいてくれて、“こいつは何かやってきたな”と思ってもらえる。分析をすることで着実に前進できるので、やることが多いほど、困難なときほど燃えるようになりました」