劇団『電動夏子安置システム』本公演出演者オーディションに潜入取材|読者レポーター企画「TeamD」読者レポーター企画「TeamD」Vol.2 | 特集 | Deview-デビュー

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劇団『電動夏子安置システム』本公演出演者オーディションに潜入取材|読者レポーター企画「TeamD」読者レポーター企画「TeamD」Vol.2

2023/06/08

劇団『電動夏子安置システム』本公演出演者オーディションに潜入取材!オーディションを実体験!

電夏オーディション潜入

コメディにこだわり、23年にわたって公演活動を続ける劇団『電動夏子安置システム』の、本公演出演キャストオーディションの現場にTeamDの読者レポーター、長谷川さん、露木さんが潜入! ゲームを取り入れたウォーミングアップから、シーンを用いた実践的な芝居まで、独特の方法で行われるオーディションにTeamDメンバーもビックリ!! 実際に模擬オーディションを体験させてもらったり、俳優の先輩である劇団メンバーにためになるお話を聞いたりと、盛りだくさんの取材になりました!


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今回参加してくれたTeamDメンバー

長谷川さん、露木さん(左から)露木さん・長谷川さん

劇団『電動夏子安置システム』本公演出演者オーディションに潜入取材!オーディションを実体験!

電夏オーディション潜入

電動夏子安置システムは、2000年に旗揚げされた劇団。演劇という表現手段の中から娯楽性を重視し、限りなく万人が共感できる『笑い』を探し出して提供できる喜劇の創造を目指す。「喜劇=笑える悲劇」の理念の下、公演においては、存在しないようでいて確実に有る笑いの方法論から「シチュエーション」に着目し、理不尽な制約やルールに縛られた非現実的な状況下で翻弄される登場人物たちの、必死の抵抗と報われなさを描く事で笑いを生み出す…と、ちょっと難しい言葉で解説してみたけれど、とにかく“笑える”お芝居を上演する劇団であることは間違いない。

電夏オーディション潜入オーディションの説明をする道井さん

今年4月、デビューにて18歳以上を対象に出演者を募集。書類選考通過者が実技オーディションに集められた。この日は7〜10人ほどを1ブロックとして、各ブロック1時間程度のオーディションを4ブロック実施。まずは劇団員の道井良樹さんがオーディションの主旨を説明。今回は、2023年10月12日〜15日・駅前劇場で上演予定の『ブルーバードの教室』と、2024年5月下旬に赤坂RED/THEATERで上演予定の『(株)デスゲーム工務店』の出演者を選ぶオーディション。ただし「何公演か後にお声がけすることもありますし、劇団員も募集しています」と、一緒にもの作りをする仲間を見つける場でもあるようだ。「稽古場で怒ることはほとんどない劇団なので、伸び伸びとやっていただいて結構です。お飲み物はお好きなタイミングで飲んでいただいて結構ですし、15%未満だったらアルコールも飲んでいただいて」などと、ジョークで場を和ませつつオーディションがスタート。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入劇団員の道井さん、吉岡さんも参加して「自己紹介」からスタート

まずはウォーミングアップ的に「自己紹介」からスタート。これは参加者が輪になって、前の人の自己紹介をどんどん繋げながら回していくゲーム形式で行われる。輪に加わった道井さんが最初に「寿司と相撲が大好きヨシキです!」と言うと、次に劇団員・吉岡優希さんが「寿司と相撲が大好きなヨシキの隣の、昨日ハイボールを飲みすぎたたぴです!」と自分の自己紹介を付け加えて回して行くというのがルール。10人も回すと自己紹介も膨大でグダグダになり、笑いあって終了となるが、それぞれのパーソナリティーも垣間見え、一生懸命ゲームに興じることで、一体感も出て気持ちも身体もほぐれていくようだ。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入「面接」の現場を舞台にした台本による演技の審査

続いては1ページの短い台本での演技。『面接』の現場が舞台だが、面接官の質問に対する答えが、一つずつずれていることから生まれる可笑しさが見どころ。同じ台詞でも、参加者の演技によって全然違った面白さが出ることに、読者レポーターの二人も感心しきり。一通り演技が終わったところで、道井さんがアドバイス。「質問と違う答えが出た時の面接官役のリアクションが肝なんです。お客さんはボケそのものより、リアクションで笑ってくれることが多いので、お客さんの笑いの背中を押すのはこっち(面接官役)の仕事。後、面接官は一人でも成立するところだけど二人いるので、ニコイチ感を出したい。顔を見合わせるようなリアクションを入れてもらったりして、一緒に困惑する共同作業にしたいんです」。その言葉を受けて、参加者はリアクションの間や大きさをそれぞれの感覚で更新していく。道井さんをはじめとする劇団員は、それを声を上げて大笑いながら見守っていた。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入「模擬裁判」のシチュエーションの台本での演技

電夏オーディション潜入参加者の熱演に思わず笑ってしまうレポーターの二人

電夏オーディション潜入参加者の演技を笑顔で見つめる中山さん

次に10人程度の登場人物が参加する台本の演技へ移行。小学校の職員室で、教師たちが昔話の『桃太郎』を題材にした模擬裁判を行っているというシチュエーションだ。参加者の熱演に、読者レポーターの二人もオーディションであることを忘れて大笑い。今回、台本の一部を配役を変えながら順番に回して行ったが、「全員が全役をやることは珍しい。普段は最初の自己紹介のキャラクターを見て配役を決めることが多い」(道井さん)のだそう。劇団員の新野アコヤさんは「ツッコミが上手そうな人、ボケが上手そうな人を分けて配役する」といい、「ボケとツッコミの時で輝き方が全然違う人も」(道井さん)と、実際に芝居の中に入ったときの演技の適性を、この台本で見極めているようだった。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入オーディションを体験するレポーター。まずは「自己紹介」から

普段は審査を受ける側のオーディションを、審査する側から見るという新鮮な体験をして興奮気味のレポーター二人に、道井さんから「じゃあ、ちょっとやってみますか?」と、オーディション体験のお誘いが! まずは先ほど見たばかりの「自己紹介」のゲームを体験。劇団員たちのノリの良さもあいまって二人もたちまち笑顔になり、心身ともにパフォーマンスしやすい状態に。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入「他の人が言うことをちゃんと聞く」というのも意外に難しい

その時、この「自己紹介」の目的について、道井さんがちょっとタネ明かしをしてくれた。「オーディションやお芝居となると、ついつい自分の所のセリフに一生懸命になっちゃうけど、本当は相手がヘンなことをしたときに対するリアクションが大事なんです。普通の自己紹介だと、自分の事を言っておしまいになって、他の人のことは余裕が無くて聞くこともできない。敢えてああいうゲームにすると、無理矢理他の人の言うことを聞いて覚えようとしないといけない。そうやって他の人のことを拾ってあげることが演技には大事なんです。決して記憶力のテストではないんです」。なるほど!遊んでいるように見えて、そういう資質も見ていたりするんだと、二人も腑に落ちた様子。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入「面接」の台本に挑戦。中山さんの指導を受ける長谷川さん

続いて先ほどの「面接」の台本にも挑戦。長谷川さんの堂々としたキレのある演技、そして露木さんの独特の空気感に、見ている劇団員の方々も大笑いでリアクション。それを受けて二人もノリノリでコメディ演技の魅力にのめり込んでいく。一通り演じたところで、劇団で演出・演出補を務める中山隼人さんからアドバイス。「前の人のセリフを受けて、ちゃんと会話が出来ているかどうかが大事。相手のセリフが聞けていないと、自分の順番が来た時にただ自分のプランで演じてしまう。相手のセリフを聞いて出てきたものを保って、その状態でセリフを言うことが大事なんです。なおかつ、最終的にはお客さんが笑いやすいテンポで攻めたい」。このアドバイスを聞いて、自分なりに修正して台本に臨む二人。

電夏オーディション潜入指摘を受けた後の“アジャスト力”が大事

道井さんは「僕もオーディションを受けることが多いんですが、オーディションでこんなにしっかりやることって滅多にないです。一度しかやらせないときは、主に役のイメージに合うかどうかを見ていたり、2、3回やってもらう時には、注文に対してどれだけ変えられるかという“アジャスト力”を僕らは見ています」と、審査する側の視点を教えてくれた。新野さんも「言われたことに対して、どれだけ別の引き出しを見せてくれるかが、一緒に作品を作りたいと思うポイント」だという。重ねて「演技力という面で言えば、セリフが無いときも、他の人が喋っている間ずっと芝居ができているか」も観ているのだという。そして中山さんからは「セリフを単語まで切って意味付けをして読んでほしい。舞台は作りものなので、作りものである以上全部に意味があるんです。曖昧にしてしまうと観ている側が“薄いな”って思っちゃう」と、台本を読み込む上でのヒントをくれた。

電夏オーディション潜入

電夏オーディション潜入露木さんの独特の言い回しに笑いが起こる

一つのオーディションを、参加する側と審査する側から体験するという得難い経験をした二人。コメディ演技の面白さ、奥深さにも触れて、俳優になるという夢への想いをより強くしたようだった。

■電動夏子安置システムについて

2000年6月に結成。明治大学演劇研究部にて6作品を執筆、うち数本を演出する主宰・竹田哲士を中心に、同部引退有志により発足。以後、ワークショップなど公演外活動を経てスタッフ・キャストを募り、同年11月、旗揚げ公演に至る。 演劇という表現手段の中から娯楽性を重視し、限りなく万人が共感できる『笑い』を探し出して提供できる喜劇の創造を目指す。 「喜劇=笑える悲劇」の理念の下、公演においては、存在しないようでいて確実に有る笑いの方法論から「シチュエーション」に着目し、理不尽な制約やルールに縛られた非現実的な状況下で翻弄される登場人物たちの、必死の抵抗と報われなさを描く事で笑いを生み出す。 時に物語性や情感を排除してまで、一つの笑いを生み出すために論理を積み重ねて導き出す手法は「ロジカル・コメディ」と称される劇団独特の作風となる。

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