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2016/04/15 18:18
雨男の座長・赤澤燈「この公演にとって恵みの雨になれば」舞台「クジラの子らは砂上に歌う」が開幕
巨大な漂白船を舞台にした次世代ファンタジーを原作とした、舞台『クジラの子らは砂上に歌う』が14日に東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて開幕。初日公演直前には公開ゲネプロがとフォトセッションが行われた。
原作は、『このマンガがすごい!2015』オンナ編において、10位にランクインし、『第1回次にくるマンガ大賞』にノミネートされた、梅田阿比によるファンタジー少女マンガ。砂がすべてを覆い尽くす世界で、砂の海を漂う巨大な漂白船“泥クジラ”で暮らす人々を描く。感情を発動源とする超能力「サイミア」を操る「印(しるし)」と呼ばれる短命の能力者と、能力を持たない長寿のリーダー的存在「無印(むいん)」が共に暮らす世界。外界から閉ざされた泥クジラの中で、仲間とともに平穏に暮らしていた、主人公・チャクロたちが、ある日流されてきた「島」で謎の少女・リコスに出会うことで物語が動き出す。
ゲネプロ前に行われたフォトセッションには、主人公・チャクロを演じる赤澤燈のほか、前島亜美(SUPER☆GiRLS)、山口大地、崎山つばさ、碕理人、佐伯大地、宮崎理奈(SUPER☆GiRLS)、大野未来、五十嵐麻朝が出席。
泥クジラの問題児グループ「体内モグラ」のリーダー格で、サイミアの一番の使い手・オウニを演じる山口は「今回の“クジ砂”という作品はアニメ化もされていないので、僕等役者、アンサンブル、スタッフみんなで命を吹き込んで、舞台上でそれぞれのキャラクターの生き様、人生を具現化している。そこが今回の大きな見どころかなと思います」とコメント。さらに、「これまでも原作ものの作品をやらせていただいたことがありますが、こんなにも原作をみんなが愛しているという作品は出会ったことがないくらい。“クジ砂”をみんなが愛して、同じベクトルを向いてここまで作品を作ってきました」と自信をのぞかせる。
無印で泥クジラの次期首長候補の少年・スオウ役の崎山は「役者として板の上で生きているなという感覚がすごくある。役者が体を使って表現できること全部やったり、布一つで船に見立てたり、いろんなものに替わったり、“演劇って素敵だな”って思えるところが今作のみどころです」と語り、「この舞台は円盤化(映像化)しないので、ぜひマスコミのみなさん、この素晴らしい方達を記録に残して頂ければなと思います」と集まった報道陣に呼びかけた。
謎の少女・リコスを演じる前島は「日本ですごく盛り上がっている、2.5次元舞台に出させて頂くことが本当に嬉しくて、始まる前からとてもワクワクしていた」と目を輝かせ、「原作を読ませていただいて、稽古をして行く中で“クジ砂”を心から大好きになった。好きだからこそ、もっとたくさんの方に“クジ砂”の良さを知っていただきたいと思って、毎日稽古を頑張ってきました」と原作への想いを熱く語る。さらに「2.5次元作品だけど、すごく演劇らしくて、人の死や何のために生きるのかとか、何を守っていきたいのかとか、すごく考えさせられる作品です。観てくださった方にも響く言葉がたくさんあると思うので、“クジ砂”を愛してもらえるように頑張りたい」と意気込む。
最後に座長の赤澤は、この日の天気が雨模様だったことに触れ「僕、雨男なんです。ここ最近出る舞台の初日がほとんど雨。でも、この作品の泥クジラという船の人たちの中では、雨は恵みの雨で貴重なもの。だから、雨男と上手く重なって、この公演にとって恵みの雨になればいいなと思います」と雨男をプラスにとらえ、「この作品の何か良いって、作品ももちろんですが、“人”が良いんです。ここに居るキャストもそうだし、裏でスタンバイしている人も、アンサンブルキャストも、一人一人が自立して同じ方向を向いて、1つの作品を作っていくというスタイルがすごく好き。ステキな人が集まって、愛がある人が集まった、一生懸命な素敵なカンパニーです」とアピール。
そして最後に赤澤が「一人でも多くの方に観て頂きたいのはもちろんのこと。原作の知名度ももっと上がっていけばいいなと思っています。この作品を通して、届けて、広げて、繋げていければと思っております」と座長らしい意気込みを語って挨拶を締めた。
誰ひとり見たことのない外の世界に憧れを抱きつつも、「外世界から閉ざされた泥クジラので短い一生を終える」という運命を受け入れ、仲間とともに暮らすチャクロ。そんなある日、突然漂着した廃墟と化した船の上でチャクロは1人の少女・リコスと出会い、泥クジラに連れて帰る。チャクロの幼馴染サミたち仲間も、初めて出会う外の人間に興味津々で歓迎。最初は敵視していたリコスも彼らの純粋さや優しさに触れて、次第に心を開いていく。そんな中、平穏に過ごしていた彼らの元に、突如として帝国軍が来襲。感情を持たない彼らの襲撃によりたくさんの仲間たちが犠牲になり、チャクロたちの運命が急展開していく。
砂がすべてを覆い尽くす世界の物語ということで、舞台上には砂浜が広がるだけのシンプルなセットのみ。役者たちがそれぞれのキャラクターに命を吹き込み、2次元の世界を立体化する。アンサンブルが操る白い布が、時に船になり、時に特殊能力サイミアを表現するなど、演劇ならではの演出も見どころのひとつ。
純粋で好奇心旺盛な心優しき少年・チャクロを赤澤がピュアに演じ、彼らの様々な“感情”に触れ、徐々に心が豊かになっていくリコスを前島が繊細に表現。“印”故に短命な人生を受け入れつつも葛藤する少年たちの想い。“印”の若者たちの短命を憂うスホウ。自警団として泥クジラを守りつつ、心に闇を抱える団長……様々な想いが舞台上で交錯する。平穏だった日々に突如訪れた残酷な現実に対し、目を背けることなく立ち向かい、希望の光を求めて戦う少年たちのまっすぐな想いが胸を熱くする。
舞台『クジラの子らは砂上に歌う」は、4月19日(日)まで、東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演中。