劇作家・演出家・扉座主宰 横内謙介インタビュー 「演技について何も分からない人にこそ、ここに来てほしい」
2019/01/18
「ものを作る力を養い、生み出していくという経験をしていると 様々な現場で活きるスキルやツールを身につけることができる」
劇作家・演出家の横内謙介が、岡森諦、六角精児、杉山良一らととも善人会議として旗揚げし、改名を経て37年目を迎える劇団・扉座。早くから俳優養成にも力を入れており、22期の研究生たちによる扉座サテライト公演『LoveLoveLove22』が、2019年2月10日(日)〜17日(日) すみだパークスタジオ「倉」にて行われる。毎年、若き研究生たちとともに舞台を創り上げている横内氏に、実践的な演劇人育成について、演劇を取り巻く今の環境、そして演劇に触れることの意義について聞いた。
「恋愛にまつわる研究生の実体験をもとに舞台化」するオムニバス『LoveLoveLove22』。すみだパークスタジオ内に構える扉座の稽古場では、研究生たちが作ってきた作品の一つひとつを横内氏がじっくり見て、アドバイスを送っていた。研究生全員が台本を書き、演出を練り、研究所の仲間をキャストに起用して、10分前後の作品を完成させる。そのなかで座員の審査を通った作品だけが本番の板の上に乗せられるのだ。試行錯誤中の研究生が作ったものだけに、粗削りで拙いのだが、純粋な想いやエネルギーを感じるエピソードたち。そこに横内の切り口が加わると、グッと上演作品に近づいて行く。
横内「毎年やっている公演なんだけど、秋からやっているから100本近くできるんですよ。最終的に30〜40本に絞られて、座員、役者や、僕の劇作家の弟子、演出を勉強している者たちが予選を行って上演作品を決めて、ひと作品ごとに指導員を付けるんです。100本作っても、上演まで残るのは5、6本なので、かなりの部分を捨てている。その分、厚みが出ます。僕も台本を完成させるまでには書いては書き直しが基本だから、“ものを作るってそういうことだよ。基本的に一発作ってそれでうまくいくなんていうことは無いぞ”っていうのを、お互いに噛み締めながらやっています。稽古場では面白かったけどな…人に見せたら意外と面白くなかったな…とか(笑)。このスタイルで22年やってるんだからね」
役者を次々と育てて舞台に立たせるだけなら、第一線の劇作家・演出家の横内が、演劇未経験の若者たちと一緒に、ここまで遠回りする必要はないのかもしれない。
横内「ウチはものを創る集団をやっていて、単にタレント事務所をやっているわけじゃないですからね。常に劇団活動によって、ものを生み出していって、なるべく新しい価値を生み出そうと思ってやっているわけだから。いろんな体験をしてもらいたいということも含めて、『作る』ということを続けてきています。もちろんその中には演じるということも入ってくるんですが、演技から入って書くほうの才能を見出される人も結構います。『劇団の作り方』を教えているようなところもあるので、研究生によって旗揚げされた劇団の数はすごいよね。そこで作家になったのもいるし、劇団ではなくゲームやアニメの台本を書いているのもいます」
扉座研究所では「俳優の修行には日常訓練とともに、何より観客の前に立つことが一番」という現場・実践主義を掲げている。知識を詰め込むだけでなく、共に作品を作り、舞台にかけることが、多くの生きた経験を与えてくれるのだ。
横内「正直、芝居を短期間で教えることはできないんです。役者の修行は一生続くし、作家なんてもっと長いし。そこで僕らに何ができるかといえば、一緒に作ることができる。一方的に教えるんじゃなくて、共に力を出し合っていくことから感じ取ってもらうのが、僕らにとっては一番しっくりくるやり方だなと。例えばメソッドを一つ教えたって、そのメソッドが他の現場で通用しないことはよくある。その時に、ものを作る力を養って、生み出していくという経験をしていると、そういう場で活きるスキルやツールになると思う」
この日、横内が芝居を見るのは午後からだったが、研究生たちは朝の7時から集合して通し稽古を行っていた。皆、誰にも強制されることなく、自主的に集まったのだ。そんな稽古場には、研究生たちの熱が渦巻いている。
横内「ある一時期、グワーッと没頭してものを作る体験をするのは重要なことだな。それが彼らの今後の座標軸になってほしい。一回すごい山を登っておけば、それ以上の山を登るときも簡単にはくじけない。山にはてっぺんがあるっていうことを知っておくと強いんです。やってる最中は本当に苦しいけど、終わったときには本当に生まれ変わるので。それを僕らは『通過儀礼』と呼んでいるんですけど、それまでの甘い気持ちを卒業して、違う顔つきになっていてほしい」
スマホなどで情報が簡単に手に入る世の中になって、最近の若者は簡単に答えを欲しがるようになったとも言われる。ある意味時代に逆行するスタイルかもしれないが、その答えを自分たちで探す過程が、いい俳優、いい演劇人を創り出しているのだろう。
横内「俺らが分かってない答えを、お前らに分かられてたまるかよ、って(笑)。だからどうやったら面白くなるかを一緒に探してます。多少の経験はあるから、途中までの道案内はできるけど、最後は君の話だから、君が答えを見つけてよって。こういう試行錯誤ができるのが、自分たちで作っていることの面白さかな。シェイクスピアの『ハムレット』を上演するとなったら、彼らの経験では追いつかないですから。扉座研究所の卒業公演には、その公演のファンがすでについていて、扉座の本公演よりこっちのほうが面白いとか言う失礼なお客さんもいるんですけどね(笑)。僕の戯曲は養成所や芸能事務所で勉強に使われることも多いんですけど、30代の六角精児にあてた台本を、勉強を始めたばかりの20歳ぐらいの子がやったって、なかなか味わいとか、求めている世界には繋がらないので。やっぱり彼らの体型にあった服を着させてあげないと。無理に背広を着せても似合わない、だったら高級じゃなくてもいいから、似合うパーカーを着させてあげようよっていう感じかな」
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