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2023/11/03 21:51
濱田龍臣「今までになく必死にもがいている」、ニール・サイモンの自伝的傑作青春グラフィティ『ビロクシー・ブルース』が開幕
舞台『ビロクシー・ブルース』が3日、日比谷・シアタークリエにて開幕。初日公演前には公開ゲネプロが行われ、主人公・ユージン役の濱田龍臣らキャスト陣が囲み取材に出席し、意気込みを語った。
本作は、ブロードウェイを代表とする喜劇作家ニール・サイモンの自伝的戯曲であり、青春グラフィティの傑作。1985年にブロードウェイで初演され、トニー賞最優秀作品賞受賞、ドラマデスクアワード演劇部門ノミネート他、数々の賞を受賞し、1988年には映画化(邦題『ブルースが聞こえる』)もされ、名優マシュー・ブロデリックが主人公・ユージンを熱じた。
物語の舞台は第二次世界大戦中の新兵訓練所。若者たちが繰り広げる、笑いとエネルギー、そして少しのほろ苦さとたっぷりのユーモアに彩られた青春群像劇となっている。
公開ゲネプロの前に行われた囲み取材には、濱田をはじめ、宮崎秋人、松田凌、鳥越裕貴、新納慎也が登壇。作家志望の主人公・ユージンを演じる濱田は、「ユージンは自分のことを回顧録に記しているということもあり、彼がノートを開いて、そして振り返っていくというところから始まります。その中で、作品全体がユージンの主幹で広がっていくような、すごく知的で、でも可愛らしい部分もある。そんなキャラクターになっていると思います」と役柄について語る。
博学だが虚弱体質で、軍隊を嫌う異端者でもあるエプスタインを演じる宮崎は、自身の役について「みんなの輪から外れているような青年で、ユージンの理解者なのか何なのか、ユージン側から見たらどう見えているのかわからない男の子だなと思いながら、いまだにやっています」と述べ、「人のために動いているのか、自分のために動いているのか、それも見る側からしたらよくわからない、ハッキリしないような青年で、掴みどころがない男の子です」と説明。
おとなしい性格で歌うことが好きなカーニー役の松田は、「僕が演じるカーニーは優柔不断な男です。皆様のお近くにもいると思います。“なんでそんなことで悩むんだ”と。そういう男の子で、この作品の中でも恋に悩み、自分の将来に悩む役柄です」と明かし、「でもこの戦時中という時代の中、この群衆の中でどういう風にカーニーが生きているのかという、成長過程も見られたりすると思います。優柔不断な男が、この仲間たちとの出会いによって、何か判断できているんじゃないか、そんなことを思う今日この頃です」と役への熱い思い語った。
そして、自分ではユーモアがあると思い込んでいる暴れん坊・セルリッジを演じる鳥越は、「セルリッジはこの年代にふさわしい、素直なアホ男です。クラスに1人おればいいなと僕は思っています。そんな役どころです」とコメント。すると隣にいた松田から「そのままやん!」と突っ込まれ、「良いキャスティングですね!」と満面の笑みを浮かべ笑いを誘う。
新兵訓練担当の鬼軍曹・トゥーミー役の新納は、「トゥーミーはいわゆる“鬼軍曹”です。本編を観ていただければわかりますが、コンプライアンスが叫ばれている今の世の中で、コンプライアンスのことを無視してやっていますが、そこに礼儀と作法を持ってパワハラをしている…という役です。お楽しみに」とコメント。
ニール・サイモンの傑作で、長セリフや会話の応酬が見どころの1つでもある本作。宮崎が「長セリフと言ったら…」と新納を見つめると、新納は「“ニイロ・サイモン”としては、ニール・サイモンを本当にしばきたくなるぐらい、長セリフのオンパレードです(笑)」と自身の名前をもじって場を盛り上げつつ、「これは役者のエゴなのですが、長セリフが多い役で知り合いとかが見に来て『セリフよく覚えたね』という感想を言われるのが一番恥ずかしいんです。なので、それを言われないように一生懸命稽古をしていたのですが、この通しを何回か重ねていくうちに、いろんな方から『そんなにいっぱい喋っているようには見えないよ』と言っていただいて。でも、僕としては『こんなに一生懸命覚えたのに…』っていう。役者としては狙っていたことではあったのですが、でも…っていうジレンマの今日を迎えております」と、長セリフが多い役ならではの葛藤を告白。
そんな新納の役柄に対して、宮崎が「冒頭のシーンで、新納さん演じるトゥーミーが出てきて、バーっとしゃべるシーンがあって。稽古中に印象的だったのは、『わりとお客さんは、トゥーミーがしゃべっている最中の僕らのリアクションを見ているから』と言われていて。“なんてコスパが悪い役なんだ”と思いました(笑)」と話すと、新納も「そうなんですよ! 話を聞いているみんなのほうが面白いんだもんね。お客さんの意識もそっちにいっているから、もう(自分のセリフは)BGMでしょ?(笑)」と自虐的に語りつつ、「全部かっさらってやる!」と宣戦布告するひと幕も。
また、濱田はセリフの応酬に関して「テンポ感はすごく探ったなと思います。台本の読み合わせというところから稽古が始まって、その頃から比べると、動きがあるにしても、すごく会話のテンポ感が上がった」と述べ、「それは言葉の持っているパワーというか、表現力があるからこそ、このテンポ感になったんだなとすごく感じています」と明かす。
18〜20歳までの新兵を演じるキャスト陣は、23歳の濱田以外は30歳以上ということもあり、新納が「僕は軍曹役ですが、みんなは若い新兵の役。ただ、実年齢でいうと実際はみんなそんなに若くないんです。でも、稽古を重ねるにつれて、その会話のテンポで若さがなんとか出てきて、うまいこと誤魔化せていると思います(笑)」と語ると、宮崎・松田・鳥越の3人は「ありがとうございます!」と新納に一礼し、笑みを浮かべていた。
さらに、濱田は「稽古場のことを意外とあまり覚えてなくて。けっこう遠い昔くらいな気がするし、1ヵ月やった気もするし、1ヵ月やっていない気もする…っていう、すごく不思議な感覚です」と打ち明け、「(演出の)小山さんとは細かいところまでいろいろとお話させていただいていて、その時、その時でちゃんと吸収はしているのですが、何を言われたのかまでは覚えていないんです。というのも、今までになく、必死にもがいている自分なので」と稽古を振り返る。そして、「でも、今日も『まだここがこうだったね』みたいなお話をしていただいたりして、すごくありがたい限りだなと思っています」と本作への想いを語った。
舞台『ビロクシー・ブルース』は、11月3日(金・祝)〜19日まで日比谷・シアタークリエにて上演される。