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2023/01/19 08:42
連続テレビ小説『舞いあがれ!』水島祐樹役で注目の俳優・佐野弘樹「まだやったことがない役柄、監督、作風に貪欲に挑戦したい」
エンタメ界の新人開発に特化したオーディションメディアとして2023年に40年を迎える『デビュー/Deview』が、芸能プロダクション141社が参加する新人募集特集『冬の特別オーディション2023』を開催中。それに合わせて、同企画に参加する事務所が2023年にプッシュする所属者をピックアップしてインタビュー。連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)に水島祐樹役で出演し注目度上昇中の佐野弘樹は、2023年も続々と出演映画が公開となる期待の若手俳優。「やったことがない役柄、監督、作風がまだいっぱいあるので、貪欲にチャレンジしていきたい」と抱負を語った。
【ブレス所属:佐野弘樹(さの・ひろき) インタビュー】
――連続テレビ小説『舞いあがれ!への出演は大きな反響がありました。
「朝ドラに出演するという情報が出てから、親の世代や周りの人たちからたくさんの連絡をいただきましたし、放送が始まってからは気付かれるようになりました。“水島さんですか?”とか声をかけられるのは初めての反響で、嬉しかったですね。小さな女の子からファンレターもいただいて、年齢を問わず、7歳の女の子にまで届けられるというのはこの仕事の素晴らしさだなって、改めて思いました」
――朝ドラの現場はこれまでの仕事と違ったものでしたか?
「約2ヵ月本当に長い期間現場にいることが出来て、遅くまで撮影が押して明日も撮影だというときも、全く苦じゃないというか、幸せな事なんだというのを実感していました。スタッフさんやキャストさんと、日を追うごとにコミュニケーションの深度が深くなっていって、現場でのクオリティーが自ずと高くなっていくという、すごい経験をしていることを実感しました。それぞれが第一線でやっている方ばかりだったので、学ぶこと、吸収することが多い、本当にいい現場でした」
――だからこそ航空学校編のメンバーとも密にぶつかり合うことが出来たんですね。
「これまでは割と年上のベテランの方と絡むことが多くて、同年代の俳優とあそこまでガッツリとお芝居で絡む経験が無かったですね。水島というキャラクターは、ほかの5人と違って、すごく明るいんですけど、表には出さない感情を持っていて、みんなといる時は互いの橋渡しをして和ませる役で。能動的に動く役ではあるんですけど、大事なシーンでは受動的なことが多かったので、それぞれの人から受けて、本当に自然にやっていたという感じですね。何も考えずにその場に居られたから、純粋に楽しかったです」
――航空学校を去ることになる水島に柏木(目黒蓮)が悔しい思いをぶつける印象的なシーンも話題になりました。
「あのシーンは特に受動的と言うか、向こうがどれだけの熱量で来てくれるかにかかっていた場面だったので、脚本上で“泣く”とか細かい指定はあったんですが、そこはあまり考えず、目黒くん演じる柏木がどれだけ真摯にぶつかって来てくれるかを、楽しみにしながら演じていました。彼は彼で自分から発電しなくてはいけないので、ちょっと時間がかかって大変だったと思うんですけど、僕はやっていて楽しかったですね」
――水島のひょうひょうとした部分は、俳優・佐野弘樹の持つイメージともマッチしていたように感じました。
「周りから見た僕のイメージは、外見からしてやんちゃそうだとか、明るい奴というキャラクターだと思うので、そういう意味では佐野弘樹と水島がリンクして、ミックスされた良いものがちゃんと出ていたんだなって、周りの方の意見を聞いて思いました。でも、アップした後に演出の方が“良かったよ!ただ佐野君って、明るいほうなの?温度が低いほうなの? どっちが本当の佐野君なの?”っておっしゃっていて。深く関われば関わるほど、僕の持っている両面がちゃんと見えているんだなって思ったのは意外でした」
――このような作品を経験して、ご自身の変化を感じていますか?
「僕自身は何も変わっていないと思います。外部からの気付かれ方や、ファンレターをいただくようになったとか、そういう事実として見られ方は変わったかもしれませんが、僕の実感的には何も変わっていませんね」
――今回新たに佐野さんを知った方も多いと思うのですが、改めて佐野さんが俳優を始めたきっかけを教えていただけますか?
「地元は山梨で、卒業したらすぐに就職というような高校に通っていたんですが、就職したくなかったんですよ、無理だなって。だから東京に行けば何とかなりそうだと、都内に近い大学に通わせてもらって、そこでやりたいことを見つけようって思っていました。安定した道を作って、就職に一番強いゼミにも入っていました。でもいざ就活が近づいたとき、ゼミの先生が必ず出なさいと言っていた講義に、必要ないと思って出なかったら、ゼミを辞めさせられてしまったんです。これでもう就職は無理だな、どうしようかなって思っていたとき、バイト先の先輩が“もし興味があるなら、今俺舞台をやっているから出てみないか?”って誘ってくれて。あぁ、やってみようかな、演技。という感じで始めました。これまで芸能界に漠然とした憧れはあったにせよ、演技をやろうとか、自分がやれるとは全く思っていなかったんですけどね」
――そんな始まり方ではありますが、実際にやってみて自分に響くもの、続けたいと思う魅力が演技にはあったんですか?
「二つぐらいの要因があって。一つは、怒ったり泣いたり、大声を出したりって日常的にはしないじゃないですか? でもそれをするだけ良かったって褒められるのが、めっちゃ面白いじゃんって最初に快感を覚えたこと。もう一つは、いい勘違いをし続けられたことです。最初に出た舞台では、出演者が何人かいた中で、僕が一番素人なんですけど上手い部類だったんです。演出家に怒られない、うまい具合にそういういい立ち位置にいて、それが1〜2年ぐらい続いて“俺行けるんだ”っていういい勘違いをしたまま、挫折せずに自信をつけながら、ブレスが参加したワークショップオーディションに行っても“お願いします!俺行けますよ!”みたいな気持ちで臨むことができたんです。その前にめちゃくちゃ怒られていたら、多分へこんで、演技への熱意が高まるまでの間に、もういいやって思っちゃってたかもしれないです」
――その後、現場でも芝居をやめようという挫折などは経験せずに?
「一回もないです。今もずーっとそのラインなんですが、調子に乗らなかったのが良かったのかもしれないです。人と出会うタイミングが良かったんです。ブレスに入って今のマネージャーに出会っていなかったら、僕は多分小さい枠の中で勘違いしたままテングになっていたり、挫けたりしていたかもしれない。ちょうどいい塩梅で、僕のレベルに見合った、今までやったことのないステージの仕事を経験させてもらえて。そこで大人の人たちと触れ合って自ずと学んでいくという。小さい劇場やグループだけじゃなくて、ちゃんと社会を知った人たちがいるわけで、出会いのタイミングが良かったんだと思います」
――マネージャーとの出会いがあって、一つ一つ積み重ねていくことが出来た。
「あの時の、あの現場がここに繋がっていたんだ、という風に少しずつ点と点が線に繋がってきている実感はあるので、あとはその分母を増やしていきたい。そしていつ芽が出るのか、ピックアップしてもらえるのかは、着実に真摯に続けていれば自ずと見えてくると思っています」
――着実に映画への出演を重ねている佐野さんですが、2月公開の映画「TOCKA タスカ―」にはメインで出演しています。
「人が最後に選べる自由って死に方…テーマを聞いたら重いんですけど、そんなことはなくて、割とユーモアあふれる作品です。全編北海道での撮影で、16ミリフィルムで撮っています。北海道の空気感が画から伝わると思います」
――フィルム撮影は今では珍しいですね。
「初めての経験でした。多分もっとフィルムのことを知っていたり、好きだったらビビっていたと思うんですけど、ちょうどいい具合に映画は好きだけど、16ミリフィルムって何だって感じだったので、フィルムカメラがカラカラ鳴っていても臆することなくいろいろなことが出来ました。今では、フィルムってこれだけお金がかかって大変なんだって知っちゃってるから(笑)。楽しみではあるんですけど」
――どんな役どころを演じていますか。
「生きる理由を無くした中年のおじさんが、娘に保険金を残すために誰かに殺してもらいたいという話で。シンガーの夢を諦めて北海道に出戻りしてきた女と、北海道に住んでいて病気の母親や妹の面倒を見るために稼がなきゃいけない青年が、事情を知ってなんとかおじさんの希望を叶えようとするんです。僕が演じる青年・幸人は、死にたいとは思っていないんですけど、先の見えない生活の中、とにかく金を稼いでどうにかしなきゃいけないってことに必死で、グレーなことをやっている。今まで演じたことのない、明るいとかお調子者とかではなくて、本当に誠実というか、良く言えばちゃんと生きている人。悪い言い方をすれば、その稼ぎ方良くないよね、もっと頑張れることがあるんじゃないって言われちゃうような青年です。この映画は少し前に撮られたのですが、今、嘱託殺人や自殺ほう助などがリアルな世界で事件になっている分、映画のなかでは、なかなか死ねないというもどかしさがリアルだったり、滑稽に見えたりすると思います」
――俳優として多彩な作品に出演していますが、今度どんなことにチャレンジしたいですか?
「チャレンジしたいことはいっぱいあるなぁ。役柄、監督、作風とか、まだまだやったことがないことがいっぱいあるので、貪欲にチャレンジしていきたいです。逆にやったことがある監督に何回も何回も呼んでもらうのも役者としてすごく嬉しいので、一発で終わらないで、ちゃんと結果を残したうえで、もう一回君とやりたいって言われるような、芯のある役者になっていくのが目標です。もう少し具体的に言うと、ブレスで一番の稼ぎ頭になりたいです。それと麻生さんをはじめ、ブレスの方々と共演したいです。深水元基さん、黒川芽以さん、河井青葉さん…先輩方と一度も共演がないので、現場でお会いしたいですね。そして“ブレスの後輩です”って言いたいです」
――ブレスという所属事務所には愛着を感じているのでしょうか。
「一番最初にご縁があって、出会えた人たち、場所なので、故郷というか特別な場所ではあります。結果論にはなるんですけど、自主公演を開催したり、自分で監督をして映画を作ったり、僕がやりたい監督と一緒に映画を作って公開するとか、マネージャーさんと相談の上で割と自由にやらせていただいているので、僕のやり方には合っていると思います」
――今後も自分で監督はやってみたいですか?
「すっごく興味あります。最初は本当にただの興味でやってみたんですが、監督という職業・ポジションからみる作品の景色って全然違うので、俳優部として現場に入っているときに監督脳って別に要らないと思うんですが、知っていていいこともあるなって気付くことができました。俳優部としていいクオリティ、いいパフォ―マンスに繋がる経験・知識にはなるなと。結局、僕は俳優部に還元することが最終目的なので、そういう意味で監督や、脚本を書いたりすることにめちゃくちゃ興味があるし、今後もやって行きたいと思います」
――カメラにも興味があるようですね。
「フィルムカメラで撮っています。今年で30歳になるんですが、その前に今まで出会ったご縁のある方たちに、僕を撮ってもらって写真展を開きたいんです。改めて30歳の区切りで直接感謝を伝えたいですし、そこから生まれることもあると思うので、今年中に開催したいです」
――最後にこれから俳優を目指そうと考えている読者にメッセージをお願いします。
「僕は映画業界やエンターテインメント業界ってすごいところだと思うし、やっぱり俳優ってすごく面白いと思う。でも俳優ってどこからが俳優なのか分からないし、ファンの方々との距離も遠くて近づきがたいので、一見敷居が高そうに思われがちなんです。だけど何も知らなくても興味があったら一回飛び込んでみてほしいと思う。やってみて全然面白くないなら続けなくていいし、やってみて面白かったらやればいいし。飛び込むことで気付けることがあると思います。怖い人ばかりではないですし、常に自分の事を考えたり、他者のことを考えたりしている職業ではあるので、人として成長できる職業だと思うんです」
――佐野さん自身、俳優に対する知識も経験もないところから飛び込んで今があると。
「言ってみれば自分がそうでした(笑)。ジョン・カサヴェテスもなんにも知らない。ハリー・ポッター好き、スパイダーマン最高!みたいな感じでしたから。だから“このドラマが好き”“俳優やってみてぇ!”みたいなノリできてくれる人とやってみたいです。手垢にそまった感じではない人が、どんなお芝居をするんだろう? 学べることもすごく多いと思います。俳優は、毎日同じ場所で同じ作業をするような仕事ではなくて、いろんな人との出会いもある。自分でどうにかしなくちゃいけないっていうところに面白味を持ってくれるような人がいっぱい増えたら、面白いなって思っています:
【プロフィール】
佐野弘樹(さの・ひろき)●1993年12月8日生まれ、山梨県出身。ブレス所属。
趣味:映画鑑賞、カメラ、古着屋巡り
スポーツ:サッカー
特技:サッカー
資格:普通自動車免許
ドラマ/連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK)
映画/「TOCKA タスカ―」(鎌田義孝監督)2023年2月18日〜渋谷ユーロスペース他順次全国公開
2023年公開「飲茶友達」(外山文治監督)、2022年公開「焼け石と雨粒」(櫛田有耶監督※主演)「この街と私」(永井和男監督)「LONG-TERM COFFEE BREAK」(藤田直哉監督)2021年公開「浜の朝日の嘘つきどもと」(タナダユキ監督)ほかに出演