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2019/07/02 19:50
“生きたパタリロ”加藤諒、「お芝居の中で遊ぶことを学びました」
1978年の連載開始から40年以上も愛され続け、シリーズ累計発行部数が2500万部を超える魔夜峰央原作の超人気漫画『パタリロ!』。2016年の2.5次元舞台化に続き、劇場用映画『劇場版「パタリロ!」』が、現在TOHOシネマズ新宿ほかにて全国順次ロードショー公開中。今作でも主人公のパタリロ・ド・マリネール8世を演じ、「生きたパタリロ」と称賛される俳優・加藤諒に、映画公開への想い、作品の裏舞台、そして俳優人生最大のハマリ役について話を聞いた。
■劇場版「パタリロ!」主演・加藤諒インタビュー
――公開を前にオールナイト上映イベントが行われました。大きなスクリーンで観た『パタリロ!』はどうでした?
「すごかったです! 自分のパタリロ顔のどアップはちょっと照れくさい感じでしたけど、あんなに大きなスクリーンで上映されることへのすごく有難い気持ちもありますし、やっぱり、劇場で観たい映画だなって思いました。この映画は、公開までいろんなことがあって、公開にたどり着くまでにいろんな方の尽力があったと思うので、皆様に感謝したいなって思います」
――映画はどんなタイミングで制作されたんですか。
「1作目の舞台が終わったあとに、映画を撮影して、舞台第2弾の『スターダスト計画』、という流れでした」
――巨大な倉庫のなかで撮影をしたと、舞台の時にチラッと明かしていましたが
「大きな倉庫に黒幕を張って、そこにセットを立てて撮影をしたんですけど、日中は搬入ですごい音がするんです。そんな中で撮影をするのっていままでにない経験で、最初は慣れなくて戸惑いました。ただ、最後には僕たちが撮影している間に、セットのバラシが始まるんですよ。その音もものすごいデカいんですけど、それにも動じずにお芝居ができたときは、“あ、自分、ちょっと成長した”って思いました(笑)」
――舞台の世界観をベースにしながら、様々な映像表現が詰め込まれた作品になりましたね。
「でも、パタリロのゴキブリ走法では白組さんのVFXを使わずに、ちゃんと舞台と同じ小道具を使ったり、舞台ならではの演出を敢えて映画でもやるっていう感じが新しいなって思っていて。映画を観ているのに舞台を観ている感覚にもなるし、それでいて映画にもちゃんとなっている。不思議な、観たことがない作品が出来上がったなって思います」
――一方で、舞台では出来なかった、漫画のコマのように一瞬でキャラクターが変わる表現は映画的ですよね。
「それは舞台でもやりたかった部分なんです。パタリロの変装の一つ“シバイタロカ博士”のシーンは生着替えで表現したりして。映画ではカットを変えたら一瞬でコスチュームを変えられるので、パタリロのキャラがパッパッと変わるシーンは映画ならではの面白さがありますよね」
――それに映画はギャグやパロディの詰め込み方が尋常じゃないです。
「凄いですよね(笑)。ホントに全部撮りきれるのかなっていう感じでした。実はこの作品が全アフレコっていうのが、意外と観た方に気付かれていなくて。早い段階で全アフレコということに気付いてもらったら、口が微妙にずれているところが面白かったり。あとマヤメンズさんのダンスも実はずれていたり…。隅々まで観ていただけたら発見があって面白いと思います」
――魔夜峰央さんの原作で大ヒットした映画『翔んで埼玉』も、がっつりフィーチャーされています。
「春日部市役所まで行って撮影させていただきました。僕は『翔んで埼玉』では埼玉県で一回もロケがなかったので、ちゃんと埼玉で撮影できたことが嬉しいです。外でこんなかっこうでロケしていたら、絶対に“何やってるんだろう?”って見に来る人がいるはずじゃないですか? ぜんっぜん人がいませんでした(笑)。だからすごく撮影がやりやすかった」
――アブないシーンの描写もかなり攻めてると思いました。
「SMシーンもグレードアップしてますからね! 変態チックなシーンや、マライヒとバンコランのラブシーンは、舞台では描けなかったところで、映画的な表現になっていますので、楽しんでもらえたらいいなと思います。映画は舞台よりもマライヒのメイクが結構ナチュラルで、なかなか男感がアップしていて、ちゃんとBLになっているなと思いました」
――そこも劇場版ならではの見どころですね。
「この作品は、バンコランとマライヒの恋愛物語がいいんですよ。顕作さん(小林顕作監督)も“この映画のベストショットは、バラ園のマライヒのアップだ”って言ってたのを聞いたので。“主役はボクなのに!”って思いながら(笑)」
――ちょっと黒いところが出ましたね(笑)。映画のプレスキットの対談のなかで小林監督が「加藤諒はね、根がちょっと悪いんですよ。いい意味で」と語っていて、一方で「お芝居させちゃうと良い子ちゃんになっちゃうのがつまらなくて」という指摘がありました。それが、『パタリロ!』の現場で一枚脱げる部分があったのでしょうか。
「『お芝居の中で遊ぶ』ということを学ばせていただけたかなと思います。他のいろんな作品に出る時も、台本のなかでどういう風にお芝居したら面白いかを常に考えるようになりました。そのまんまを演じるのではないということを」
――黒い部分も吐き出すように?
「出るようになりましたね(笑)。ほんっとに出るようになりました! 初演の千秋楽の時なんて、バンコランやタマネギ部隊にめっちゃ暴言を吐きましたし(笑)。パタリロと出会ったことで、役者・加藤諒が変わったと思います」
――ここまでの役に出会えることはなかなかないのでは?
「本当に幸福なことだと思います。『生きたパタリロ』とか、こんなに周りの方からピッタリな役と言ってくださることって、そんなにないと思うんです。そのなかで、パタリロは加藤諒しかいないと言ってくださったり、そういうのって役者としてもすごく嬉しい事ですよね。ここまで同じ役を演じさせていただくという経験が無かったので、それなりの年月がありますし、この役に注いだ愛情は大きいので、もし突然、“加藤諒じゃない人でやります”ってなったら、すごく悲しい気持ちになると思います」
――本作では哀川翔さん、西岡徳馬さん、鈴木砂羽さん、松村雄基さん、近江谷太朗さん、木下ほうかさんら、意外な豪華ゲストの方が登場していて、皆さんノリノリで演じてらっしゃいます。
「こんな西岡徳馬さん観たことない!こんなことやらせてしまっていいのだろうか?っていう感じで、本当に面白かったですね。鈴木砂羽さんは元々『パタリロ!』が大好きな方で、“タマネギ部隊でもいいから出たい”って言ってくださっていたんです。今回映画にも出演してくださって、本当にありがたいなって思うんですけど、衣装が板っていう(笑)。こんな大女優さんに板!これは『パタリロ!』にしかできないのかなって思います」
――ここまできたら、この先の展開も気になります。
「僕は舞台もやりたいし、『スターダスト計画』の映画もやりたいなって思ってたんですよね。だから、この間のオールナイト上映の時に顕作さんが、『スターダスト計画』の映画もやりたいという話をされていて、ちょっと泣きそうになりました。嬉しかったです」
――舞台と映画が融合した作品が生まれて、役者として新しい可能性を感じることはありますか?
「舞台を一緒に作り上げたキャスト陣を中心として、周りを大御所の方々が締めてださって、こうやって劇場公開できるというのは、ある意味すごいことなのかなと思います。舞台で人気の作品でも、実写映画化のときには知名度の高い役者さんをキャスティングすることが多いんですが、そのなかで舞台のキャストのままでやらせていただけたというのは、有難いことですし、幸せなことです。2.5次元界で活躍する役者さんの希望になったらいいなと思います」
――加藤さんだけでなく、皆さんこれ以上ないハマリ役ですよね。
「僕だけじゃないんですよ、この作品は。バンコランもマライヒもタマネギ部隊も、マヤメンズだって、みんなもうこの世界には欠かせないメンバー。みんながいるから、僕はパタリロになれたと思っていますので、みんなで頑張って行きたいなって思います」
映画『劇場版「パタリロ!」』はTOHOシネマズ新宿ほかにて全国順次ロードショー公開中。なお、現在加藤諒が所属しているキューブが、オーディション情報サイト「デビュー」の特集「夏の特別オーディション2019」に参加、新人を募集している。応募の方法は「デビュー」に掲載中(下記リンク参照)。