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2017/08/23 17:01
木村了扮する帝一らがライヴで大暴れ「學蘭歌劇『帝一の國』―大海帝祭―」完全レポート
古屋兎丸による人気漫画を原作に、全三部作で上演された舞台「學蘭歌劇『帝一の國』」。【最終章】の上演から約1年の時を経て、8月11日〜13日の3日間、東京・日本青年館ホールにて、同舞台の劇中で歌われた楽曲をふんだんに盛り込んだライヴ「學蘭歌劇『帝一の國』―大海帝祭―」が開催された。
原作は、2016年4月まで集英社「ジャンプSQ.19」「ジャンプスクエア」で連載されていた古屋兎丸による人気漫画。日本一の超名門・海帝高校を舞台に、「将来は総理大臣になって、自分の国を作る」という野望のため、生徒会長になる事を決心した主人公・赤場帝一が、個性豊かなライバルたちと命がけの生徒会選挙を繰り広げる異色の学園コメディ。2017年には、菅田将暉を主演に迎え映画化され、大ヒットを記録した話題作。
學蘭歌劇『帝一の國』は、2014年に【原作】古屋兎丸・【脚本】喜安浩平・【演出】小林顕作により初の舞台化。『美少年たちによる生徒会長選挙戦争』という、他には類を見ないダークかつ濃い学園ストーリーを中心に、芝居はもちろん、歌と踊りで艶やかに、かつユーモラスにショーアップ。2015年7月には【第二章】、2016年3月には【最終章】を上演し、原作ファン舞台ファンのみならず、あらゆる層から注目と笑いを集め、大きな盛り上がりをみせた。
その【最終章】の千秋楽で、気持ちが高ぶるあまり「ライヴとか、見たいですかー!?」と口走ってしまった小林が、強く願い、小さな徳を積み続けたことで、棚ボタ的についに叶った、學蘭歌劇『帝一の國』―大海帝祭―。感動の【最終章】から約1年、主人公・赤場帝一役を演じる木村 了を筆頭に、舞台三作品に出演した全キャストが集結し(一部キャストは映像出演)、3日間限りのスペシャルライヴを行った。
『Deview/デビュー』では、初日公演の模様をレポート。開演直前には、三津谷亮が演じる帝一の相棒・榊原光明による場内アナウンスが流れ、光明ならではの可愛いアナウンスで会場を温める。そして、PENICILLINのヴォーカルHAKUEIが歌う主題歌『日本』が流れ、会場が暗転し、ついに開演か!?と思った瞬間、スクリーンに「あれから、どれくらい経ったのでしょうね」などの文字が次々と映し出され、開演を焦らされる。なかなか始まらない展開に、笑いが起こり、オープニングから學蘭歌劇『帝一の國』の世界観に引き込まれる感覚だった。
そして、観客による10からのカウントダウン後、満を持して、黒いサングラスをかけた木村了演じる赤場帝一がポップアップでステージ上に登場すると、会場のボルテージも一気に上昇。大歓声に包まれる中、木村がサングラスを外し、海帝高校の制服に身を包んだキャスト陣が勢ぞろい。同舞台でお馴染みの楽曲『これは戦争』で、「大海帝祭」が幕を開ける。
歌い終わったキャストたちがノリノリの中、木村が「みなさ〜ん。ご無沙汰です!」と挨拶すると、他キャストも全員で同じセリフを繰り返す。続けて、「『帝一の國』が帰ってきました!」と叫び、今回はライヴ公演ということで、「さしずめ僕らはArtists!Top Artists!? (ザワザワする観客に向けて)皆さん、わかってます。諸々わかってます。だけど……今日だけは、その……勘違いしてもいいですか!?」と客席に問いかける。観客たちも各々「いいよ〜!」と返し、ミュージシャンといえばのアイテム、イヤモニを付けて見せるなど(線は繋がっていないので、その後即外していた)、ライヴ序盤から、學蘭歌劇『帝一の國』ならではの掴みで、アットホームな空間が出来上がっていた。
全員による『未来をつくりだすのは僕らなんだここに勝利の旗をかかげろ』の歌唱後、木村がステージに残り、帝一の想いを歌った『生徒会長になる僕は』、『まずはルーム長になる僕は』を続けて披露。曲間には、三津谷演じる光明が登場し、「今日もカッコイイよ!」と絶賛。「にゃんにゃんにゃ〜〜〜ん!」と光明の決めセリフを披露しつつ、テンションが上がったためか、突然光明が三津谷の出身地である青森弁でまくし立てる。飛ばしまくっている光明に対して、帝一も「様子がおかしい!(笑)」とツッコミつつ、息ピッタリの掛け合いを見せ、二人で『僕の夢は僕の國』を歌い上げる。
入江甚儀が演じる大鷹 弾は、他キャストが演じるバッグダンサーズ(弾曰く“妖精さん”)を従えて、往年のアイドルソングを匂わせる『大鷹弾のテーマ』で会場を盛り上げる。帝一の父・赤場譲介(大堀こういち)がVTRで登場すると、「父さんね、父さん……今日そっちに行きたかった〜!」「ホントですよ〜」「ホント?ホントに、ホント??」と、ステージ上の帝一と絶妙な掛け合いを見せて笑いを誘いつつ、『父から息子へ〜そしていつか〜』を熱唱。
トレンチコートにハット姿に着替えて登場した木村。すると、帝一の恋人・白鳥美美子役の乃木坂46の井上小百合、樋口日奈の映像がスクリーンに映し出され、ダブル美美子とデュエットソング『ここで待っている』を歌唱。ダブル美美子から「私のほうがステージ数が多かった」(井上)、「少なかった分、帝一くん私のときのほうが集中してた」(樋口)、「正直、どっちなの?」(井上&樋口)と詰め寄られるひと幕も。そんな中、「帝一を困らせないで〜」と三津谷が割って入り、『振り子の君』を歌いだす。
冨森ジャスティン演じる氷室ローランドと、その相棒である細貝圭演じる駒 光彦が登場すると、冨森は「皆さん、お待たせしました。あなたの氷室ローランドです!」とアピール。二人は謎のポージングをしながら、公演での思い出を振り返り、細貝は初演時に怪我したことをイジられると、「やめろ〜」と言いながらも、自身でも「危うく、俺は駒 光彦から“怪我光彦”に改名させられるところだった」と自虐ネタを展開。そして、氷室のテーマソング『ヒムローランドへようこそ』を風を浴びながら熱唱し、そのカリスマ性を見せつけた。
そんな中、「ヒームーロッ!ヒームーロッ!」と声がすると、スクリーンには津田健次郎演じる堂山会長が現れ、続いてインド風の民族衣裳を身につけた瀬戸祐介演じる本田章太が登場し、『堂山会長に気に入られたいから』を歌う。帝一をはじめ他のキャストも加わり、「森園先輩に気に入られたいから〜♪」と歌うと、今度は大河元気が演じる森園億人がスクリーンに。「森園せんぱ〜い!」という客席からの呼びかけに笑みを浮かべ、“二回転”で静かに喜びを表現。常に冷静で知的な話し方をする森園だが、「空前絶後のこの僕は、生徒会を愛し、生徒会に愛されたこの僕は…森園…バキンバキン、ズンズン、億…人…」と流行りのネタを匂わせる発言をし、突如「いえ〜〜〜〜〜〜い!!」と叫び、会場を沸かせていた。
佐藤流司が演じる海帝中学時代から有名な不良・久我信士がステージに現れると、佐藤永典演じる女子のような可愛さで多くの熱烈なファンを持つ夢島 玲が映像で登場。幾度の呼びかけにも応じないつれない態度の久我に対し「そんなところも可愛いっていうか、お茶目っていうか…なんていうか……好きだぞ!」と呼びかけると、会場からは思わず「可愛い〜」という声が漏れる。さらに「もう、なんでそんなつまんなそうなのよ。あ! わかった。私が傍にいないからだ〜♪」と指摘する夢島に対して、久我は「俺はお前がここにいなくて寂しいんだぜ」と返すと、会場は黄色い悲鳴で包まれ、二人の関係性を描いた『クラスメイト』が披露された。
そして、突如MCとして構成・演出・音楽を務める小林顕作が現れ、この日のスペシャルゲスト、原作者の古屋兎丸氏がステージに登場。日替わりでキャスト5人が5つの部屋に用意された衣裳(1人だけ女装で、残り4人は帝一のもの)に着替えるお楽しみコーナー「5DOORS」も。そのまま、キャスト陣が客席に降り立ち観客とハイタッチするなどのふれ合いタイムで会場はさらに盛り上がる。その後、他のキャスト陣も客席を練り歩き、『もしもぼくが天使になれたら』を歌唱。その間に、古屋がその場でイラストを書き上げるというライヴペインティングも同時並行で行われ、貴重なイラストが描かれた色紙は観客1名にプレゼントされた。
小林による“ライヴで歌われない楽曲”をギターの弾き語りを披露し、キャスト陣が、【第一章】夏合宿の際の戦闘服に着替えて再登場。“誰が頂点に上りつめるか”を綴った『Let me fly』では、細貝が演じる成田瑠流可、冨森が演じる光家吾朗、瀬戸祐介が演じる高天原蒜山が参戦。その後、平沼紀久をはじめとするオールラウンダーズ(作品における全風景を担う役であり、最も過酷な役)が仕切るMCコーナーへ。オールラウンダーズのぎたろーから、初めてできたという彼女の名前に関する3択クイズが出題され、「正解だったらハグ」「不正解だったらキス」という過酷な条件のもと、回答者に指名された原嶋元久と細貝。そこでまさかの不正解を選択してしまい、ぎたろーからキスのプレゼントをされ絶叫&悶絶。そんな二人の反応を見たぎたろーは「俺だって嫌だわ!」と訴え、会場は笑いに包まれた。
そして、ライヴは後半戦に突入。市川知宏が演じる野々宮裕次郎による『ティーンズライフ』や、原嶋が演じる羽入慎之助による『ゆずるじゃないよ慎之助だよ』、吉川純広演じる東郷菊馬、谷戸亮介演じる根津二四三、そして高天原蒜山による『シルク・ド・キクマ「セカイノオワリ」』、『マヨネーズ皇国』など、公演でのハイライトともいえる“帝一メドレー”を披露。
再び冨森と細貝による氷室&駒コンビがバスローブ姿で登場すると、ド派手なハッピ&フンドシ姿に早替わり。そして他キャスト陣も同じ衣裳で勢ぞろい、『帝一の國』伝統芸“はだか太鼓”へ。バチを振りかざし息の合ったエアー太鼓を披露し、一気にお祭りムードが高まる。そして氷室のお尻を他キャストたちが連続で叩いていく“みだれ太鼓”や、尻太鼓でのクイズ出題、裏名物(?)の“逆みだれ太鼓”と題して、古屋氏が両腕を伸ばし、手のひらを横に構えると、そこを目がけてキャスト陣がお尻を突き出し、そこを目がけて走り去っていくという体を張ったパフォーマンスに、会場はさらにヒートアップ。続けて、“はだか太鼓”には参加しなかった久我がラジカセを持ち込み、再演のサブタイトルでこの曲がかかると何故か身体が勝手に動いてしまうという『マイムマイム』を全キャストで踊り、観客とともに楽しんだ。
ライヴ終盤、スクリーンには、これまでの公演の稽古模様や当時のキャストインタビューを振り返るVTRとともに、ファンへの感謝のメッセージが映し出される。學蘭歌劇『帝一の國』の軌跡が詰まったVTRに、温かい拍手で包まれる会場。そしてキャスト陣が一人ずつ登場し、『影をあつめて〜Give your smile〜』、『ぼくにだってわかっている』を熱唱。
ステージ上で、木村が「2014年4月に【第一章】が始まり、【最終章】まで全三作やらせていただきました。そして今回、こんな形でライヴが実現するとは全く思ってもみませんでした。ダンスができるメンバーはごく僅か。歌はほぼ口パク。芝居は熱量だけで乗り切ってきた僕らのために、ご来場くださったみなさまには“感謝”この一言につきます。ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、「僕らにしか見せられないものを見せようと、全力で頑張りました」と宣言。
続けて、キャスト全員で「學蘭歌劇『帝一の國』―大海帝祭―、これにて終演!『君はひとりなんかじゃない』」と叫ぶと、ロックテイストの楽曲でキャストも観客も一体となりノリノリに。キャストそれぞれがサインボールを客席に投げ入れ、会場の熱気も最高潮の中、本編が終了。
アンコールでは、キャストの似顔絵がちりばめられたお揃いオリジナルTシャツで登場したキャスト陣。アンコール1曲目は、佐藤が「いろいろあって、CDに入れられなかったあの曲、やっちゃっていいですか!? タオル用意しちゃって!!」と呼びかけ、『ぬすんだバイクはかえそうぜ』をキャスト全員で熱唱。その後、未来への希望を描いた『遠く』を披露し、曲間に「みんなありがとう!また会おうね!」(木村)、「楽しかったー!」(入江)、「みんなに会えて幸せだニャン』(三津谷)など、一人一言ずつ感想を語った。
最後は、毎度お馴染みのエンディング曲『すみれ、ばら、こちょうらん』でお別れ。終演後も鳴り止まない拍手に応え、キャスト陣が全員で手を繋ぎ再び登場し、観客に笑顔で手を振り、最後の別れを惜しんでいた。シリーズ最後の最後、集大成としてのライヴ公演だったが、しんみりした空気は一切なく、キャストはもちろん、作り手や観客、すべての人が、この作品を愛し、この特別な空間を思いっきり楽しんでいる感じがひしひしと伝わってきた。オープニングから終演まで、學蘭歌劇『帝一の國』ワールド全開の、笑いと幸せに満ち溢れた空間だった。
なお、このライヴ公演のDVDが12月22日に発売されることが決定。全キャストが集結した、歌あり!ダンスあり!ファン必見の超豪華ステージがDVDで蘇る。また、「大海帝祭」の開國を記念して、現在JOYSOUNDにて舞台映像付きのカラオケが配信中。会場に行けなかった人も同DVDやカラオケで、學蘭歌劇『帝一の國』ワールド、そしてこの“お祭り”を体感してはいかがだろうか。