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2017/05/18 12:01
舞台版『心霊探偵八雲』最新作 久保田秀敏×美山加恋インタビュー「二人のシーンでちょっとニヤけてもらえたら」
神永学の人気推理小説を原作とした舞台シリーズの最新作、舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』が、5月31日より東京・大阪で上演される。「ANOTHER FILES」の舞台化シリーズで、『いつわりの樹』(2013年)、『祈りの柩』(2015年)に続く、待望の3作目であり、最終章となる今作。主人公・斉藤八雲を演じる久保田秀敏とヒロイン・小沢晴香を演じる美山加恋、そして演出を手がける伊藤マサミに、本作への想いを語ってもらった。
『心霊探偵八雲』は、赤い左眼を持ち、死者の魂を見ることのできる大学生・八雲が、同じ大学に通う晴香とともに、謎に満ちた怪事件に挑むスピリチュアル・ミステリー。テレビドラマ、コミックス、テレビアニメなど幅広くメディア展開されている。舞台版では、原作者の神永学自身がシナリオを手掛け、原作の世界観をそのままに、舞台ならではの表現で、重厚かつ濃密な心理描写を描くミステリー会話劇が繰り広げられる。
【舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』
主演:久保田秀敏×ヒロイン:美山加恋×演出:伊藤マサミ インタビュー】
◆「3作連続で八雲を演じられるというのがすごく嬉しい」
――『心霊探偵八雲』ANOTHER FILESの舞台化シリーズの待望の新作上演が決定。『いつわりの樹』、『祈りの柩』に続いて、2年ぶりに八雲を演じることになった今の心境は?
【久保田秀敏】「僕は、初めて主演を飾った作品が、この『心霊探偵八雲』だったので、それをシリーズとして続けられるというのが、まず嬉しいことだなと思っていて。2年の時を経て、また八雲をやると決まったときは、改めて引き締め直さないといけないなと感じました」
――『心霊探偵八雲』が舞台化されて10年目という節目の年でもありますね。
【久保田秀敏】「そうですね。原作の神永先生もすごく力を入れてくださっているので、それに負けないように、稽古を頑張っていきたいなという想いです」
――美山さんは、前作に続いて、2度目の出演になりますね。
【美山加恋】「とても長い間続いている作品でもありますし、前回出演させていただいたときに、“絶対続きがあるだろうし、次もやりたい”と思っていたんです。でも、去年は『心霊探偵八雲』の話がなかったので、“あれ? 本当に私できるのかな?”という想いがあって。そんな中で新作上演の話を聞いたので、“待ってました!!”という感じでした」
【久保田秀敏】「本当に“待ってました!”という感じだったよね。去年、八雲をやるという話がなかったので、“僕だけ聞かされてないのかな?”と思ったし、“これは(八雲役)チェンジなのか?”って思いました(笑)。でも、歴代で舞台版での八雲を3作連続で演じた人はいないと聞いていたので、3作連続で八雲を演じられるというのがすごく嬉しかったです」
――伊藤さんは、久保田さん同様、3度目の『心霊探偵八雲』になるわけですが、今作の上演にあたってはどんな経緯があったのでしょうか?
【伊藤マサミ】「実は2年前の『祈りの柩』のとき、神永先生と、“前々作『いつわりの樹』が2年前だったし、2年おきに『心霊探偵八雲』やれたらいいね”みたいなことをなんとなく話していて。そのときに、“社交辞令にならないようにしましょうね”ということを言っていたので、今回、引き続き『心霊探偵八雲』の演出のお話をいただいたときに、約束を果たせるなと思いました。この2年の間にいろいろと勉強してきたことを、『心霊探偵八雲』で開放できるようにしたいと思いましたし、みんなともまた再会できる喜びがあります」
――この2年の間、久保田さんも美山さんもさまざまな役を演じてきていますが、八雲や晴香のことはどこか頭の片隅にあった感じですか?
【久保田秀敏】「いい意味で、一度リセットはするんですけど、やっぱり自分が魂込めて演じてきた役というのは、どこかしら残っていましたね。ほかの作品をやっているときでも、暇があったら小説を読んだりしていましたし、“八雲=自分が演じるんだ”という意識は僕の中でずっとあるので、八雲という役が体に染み付いているのかなと思います」
【美山加恋】「2年前に『祈りの柩』をやったときに、マサミさんに言われたことに対して、もちろんそのときは全力で自分なりに解釈してやっていたんですが……。時間が経って、別の作品をやっているときに“あれ?もしかして、マサミさんが言っていたことって、こういうことなのかな”という風に、違う作品で理解できたこともあって。そういう意味では、『心霊探偵八雲』という作品は、ずっと自分の記憶の中にありました」
――演出を手がける伊藤さんから見て、お二人の役者としての印象は?
【伊藤マサミ】「二人ともとてもまっすぐな子だなという印象を抱きました。4年前にヒデ(久保田)と出会ったときに、“この作品は八雲を演じる彼次第だな”と思っていたんですが、一緒にやってみて、ヒデの作品づくりの仕方や向き合い方が、すごくまっすぐで、僕はその精神が好きでとてもやりやすかったんです」
――美山さんについては?
【伊藤マサミ】「加恋は、いい意味で何も飾らないし、本当にまっすぐなので、本音もたくさん言ってくれるんです。でも、まっすぐだから、すぐ壁に当たる。ここ曲がれば良かったのに、まっすぐ行っちゃって壁にぶつかる…みたいな、そんなところも可愛らしいなと。それはヒデも一緒なんですが、二人とも本当にまっすぐだから壁にぶつかりやすいけど、それを越えられるポテンシャルを持っているので、前作はちゃんと二人が引っ張ってくれていい作品になったなと思っています」
――久保田さんと美山さんは、お互いに対して、どんな印象を持っていますか?
【久保田秀敏】「台詞覚えがめちゃくちゃ早いですし、前回の稽古のときに、学ぶことしかないなって思いました。2、3回やったらもう全部台詞言えていたし、僕なんて、何回も繰り返さないとできないタイプなので、それこそ真逆。本来は、僕が引っ張っていかないといけないのに、前回はちょっと頼りすぎてしまった部分があったので、申し訳なかったなと。でも、この2年間で学んだこともありますし、これは勝負だなと思っています。先輩、今回もよろしくお願いします!」
【美山加恋】「いや、違うんですよ! それは八雲くんの台詞量が多すぎるだけで、私はそんなにスゴイわけではないんです。久保田さんは、やっぱりまっすぐな人だなって思います。不器用なんだろうなと思うときもありますが、でもそのまっすぐさが、八雲くんがすごく魅力的だなと思った部分でもあります」
【久保田秀敏】「ありがとうございます! お世辞でも嬉しいです!!」
【美山加恋】「お世辞じゃないですよ!!(笑)」
――お二人からみて、伊藤さんはどんな演出家さんですか?
【久保田秀敏】「マサミさんは、演出家と役者の間に変な壁がなくて、距離感も近いですし、いろんなことを話せる方です。キャストと演出家が別の立ち位置ではなくて、同じフィールドに立っているからこそ、お客さんにカンパニーの良さがダイレクトに伝わるのかなと思います。真剣なときは本音で言ってくれるし、ふざけるときは本当にふざけてくれますし。僕も不器用なので、すぐ壁にぶつかるんですが、そういうところでいろいろと助言してくれたりする、すごく信頼のおける演出家さんであり、同じプレイヤーの方だなって思います」
【美山加恋】「え〜と……面白い人です」
【伊藤マサミ】「今、ヒデが答えてる間、考える時間いっぱいあったやろ。誰がオモシロおじさんや!(笑)」
【美山加恋】「本当に面白いんですよ(笑)。キャスト一人一人、ちゃんと見てくださっていて、突っ込める人にはどんどん突っ込んでいくので、マサミさんの突っ込みで稽古場がすごく楽しくなるんです。そういうところがすごくいい人だなと。私が壁にぶつかったときに、いつもニヤニヤしてるんですよ。そういうところは意地悪だなって思うところもありますけど(笑)。私たち役者を信頼して任せてくださる部分もあって、稽古場が自由で楽しかったという印象がありますし、それはマサミさんがそういう雰囲気を作ってくださっているからだなと思います」
――今作は、晴香に殺人の容疑がかかって逮捕されたりと、今までにない展開が待っていますが、改めて見どころを。
【久保田秀敏】「晴香が逮捕されるということが八雲にとってもとても大きなことで。八雲は表面上では冷たいことを言ったりするけど、なんだかんだ晴香に頼られることが嬉しいんですよね。そんな中で、晴香が殺人の容疑者として逮捕されてしまう。いつも傍にいる人が捕まったり、いなくなったりしたら、人間的にどんな心理になるんだろうかと考えたときに、八雲はひね曲がった性格の上に、そんなことがあったらきっと耐えられないだろうなと思っていて。ストーリー上では、淡々と事件の真相を追っているけど、内心ではめちゃくちゃ焦っているんですよね。それが後半部分で、晴香に触れたりとか、八雲なりの愛情表現というか、晴香に対しての想いが現れている場面もあって。そういう部分で、八雲の心境の変化やギャップとかを出していけたらいいなと思っています」
【美山加恋】「いつもとは違う八雲くんが見られるところが今作の一番の魅力だと思います。たぶん今までの『心霊探偵八雲』のなかで、八雲と晴香の関係性が一番素敵な形で現れていると思います。あとは、今回登場人物がすごく多くて、人間関係も複雑に絡んでいるので、謎解きのシーンは本当に重要になってくるなと思っています。前回も謎解きの場面は何回も何回も繰り返し稽古しましたし、本当に大変なシーンなんですが、お客様にちゃんと理解してもらうために、八雲くんやみなさんと一緒に、シーン作りを頑張りたいと思っています」
――久保田さん、美山さんのお二人に期待するところは?
【伊藤マサミ】「『心霊探偵八雲』の一番の魅力って、人間の情念みたいなものがすごく深く描かれている部分だと思うんです。それによって殺人事件が起きたり、情念があるからこそ霊となってこの世界にとどまっていたりする。それを表現するって、なかなか大変なんですよね。ヒデと加恋が生きてきた人生の中にあった、出会いや別れ、嬉しいことや悲しいことをおそらく遥かに超越した人たちが出てくるし、それを受け止められる器を持っていないといけない。それで前回二人は壁にぶつかったんだと思います。今回、また新たな壁が立ちはだかると思いますが、この2年で二人ともいろいろと学んできていると思うし、成長もしていると思うので、変わらずにまっすぐその壁にぶち当たってほしいですね。その壁を越えた先に、千秋楽にとてもいい顔をしている二人が僕にはもう見えているので」
――では、最後に意気込みをお願いします
【久保田秀敏】「『心霊探偵八雲』の舞台化10年目であるとか、ANOTHER FILES 舞台化シリーズの最終章であるからどうとかではなく、まずは役者がそこに生きないと伝わるものも伝わらないと思っていて。段取りでお芝居を作ってしまうと、ただこなすだけの芝居になってしまう。その場で相手とキャッチボールをして、“こう投げられたから、こう返す…”っていうのをきちんとやらないと、リアルな芝居は表現できないと思うので、僕自身が八雲としてそこに生きていないといけないなと。いかに魂を込められるかが勝負だと思っています。人間の奥深くまで八雲自身が入っていって、それを開放してあげられるかにかかっていると思うし、その中で晴香との関係性が見えてくればいいなと思っています」
【美山加恋】「この舞台は、作り方が普通の舞台とは違う部分もありますし、これから役者を目指したいという『Deview』読者の方々が見ても、勉強になることがたくさんあると思いますし、そういう方々にもぜひ見てほしいなと思います。今回は、いつもの八雲くんよりも、とても人間味が溢れた八雲くんが見られると思うので、そういうところを楽しんでもらえるように頑張りたいです」
【久保田秀敏】「見せますよ!! 八雲の心境の変化や晴香に対しての接し方とかを見て、“なんだよ八雲!! はっきりしろよ!”みたいに思われたら正解かな。壮大なラブストーリーをぜひ見ていただきたいです!」
【美山加恋】「八雲くんと晴香のシーンで、ちょっとニヤけてもらえたら嬉しいですね。二人のやり取りも大事にしたいと思います」
舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』は、5月31日(水)〜6月11日(日)まで品川プリンスホテル クラブeXにて上演される。その後、6月16日(金)〜18日(日)まで大阪ビジネスパーク円形ホールにて大阪公演を上演。また、大阪公演初日の前日、6月15日には同所にて、舞台版『心霊探偵八雲』〜最終章特別企画〜ファン感謝イベント「ラスト八雲」 IN 大阪が開催される。