撮影/草刈雅之 取材・文/根岸聖子 ヘアメイク/菅野綾香(ENISHI) スタイリスト/黒田領(ViVid)
『ガッチャマン』や『タイムボカン』などの人気作を生み出してきた、タツノコプロの“55周年記念作品”として実写映画化される『破裏拳ポリマー』。主人公・鎧武士を演じた溝端淳平は、坂本浩一監督との4ヶ月間の猛特訓を経て、本格アクションに初挑戦。鍛え上げられた肉体と超絶アクションにより、俳優としての新境地を切り開いた溝端に、本作にかける想いを語ってもらった。
「ヒーローものをやることはないと思っていたけど、今になってこういう機会をいただけて嬉しい」
――主演映画『破裏拳ポリマー』では、溝端さんにアクションのイメージがあまりなかったこともあり、想像していた以上にアクションシーンが多かったのが印象的でした。
「こんな戦うとは思ってないでしょうね(笑)。アクションシーンの8割くらいは自分でやっているんですけど、変身してから、あれだけ手数の多いアクションをすることはなかなかないですよね。そこも余計に新鮮というか、意外に思う方は多いかもしれません。思い返せば、撮影中は毎日、誰かしらと戦っていましたね(笑)。でも、アクションはとても楽しかったです」
――どのような準備をして撮影に臨んだのですか?
「監督の坂本(浩一)さん自身が、ジェット・リーと一緒に現場でアクションをやっていたような方ですから、現場の誰よりも上手いんですよ。実際にやって見せてくれるんですけど、そのクオリティーが高すぎて、演じるこっちが困るくらいすごいんです(笑)。撮影に入る前に、坂本さんのジムに通って、直々に教えていただきました。基本のミット打ちから始まり、今回はカンフー、武道に通じるアクション映画だったので、それらを徹底的に練習して。普通のケンカシーンだと、型とかは気にせず、大ざっぱのほうがカッコ良かったりするんですよ。でも、今回の“破裏拳”だと、構えや型があって、ごまかしが利かない。稽古終わりには、坂本さん自らがアクションシーンをスマホで撮影してくれて、その動画を家でチェックして動きを確認することもやっていました。月に3回ぐらいで4ヵ月くらい通ったかな」
――そんなアクションシーンで特に大変だったのは?
「ポリマースーツを着てのアクションです。視界もあまりよくないし、スーツの固い部分同士がぶつかると痛いですしね。この作品用に素材から開発したんですが、あまり伸びない材質なんですよ。しかも通気性もよくないので、動きづらくて、感覚でやるしかなかった。音も聞こえにくかったので、結構大変でした。でも、後半になればなるほど、“もっとこうすればカッコ良くできるかも”という欲が出てきました。監督の指示のおかげで、すごく迫力のあるものになったと思います」
――役者として、新たなイメージをプラスしてくれる作品ですが、最初にオファーがあったときは、どう感じました?
「いやもう、この先、自分がヒーローものをやることはないと思っていたんです。『仮面ライダー』も『スーパー戦隊シリーズ』も通ってこなかったので。だから、まさかこういう形でアクションをがっつりできるとは思っていませんでしたし、正直、嬉しさと戸惑いの両方の感情がありました。ヒーローものに出ている自分とか、想像できなかったんですよ」
――このタイミングでやることになるとは、考えもしなかったと。
「それこそデビュー当時に、『仮面ライダー電王』のオーディションに落ちて以来ですから。僕が上京したときには、もう佐藤健くんがやっていて、途中参戦のライダー役のオーディションがあったんですね。最初は、割と感触が良かったらしいんですが、とにかく緊張していて『台本を読んで』と言われても、台詞がもう噛み噛みで(笑)。生まれて初めて台本というものを渡されて、緊張で結局、上手くできずに落ちてしまったんです。“自分はヒーローには縁がないんだなぁ”って思っていたけれど、今になってこういう機会をいただけて嬉しいなと。新しいことにチャレンジしたいっていうのが、最近の僕のモットーだったので、やっぱり嬉しさのほうが大きかったかな。若いうちに、1本、そういうアクションものをやっておきたいというのはあったので」
――アクション以外で、この作品で新鮮に感じたことは?
「ポリマースーツを作るときに、何度も何度も採寸をしたので、“本当に完成するのかな!?” って不安になりました(笑)。衣装合わせで、あんなに時間がかかったことなんて、今までなかったんですよ。何回も試作品を着て、修正して…という繰り返しで。なので、完成したときは感動しました。これは相当、丁寧に精巧なものが作られたんだなって。気分は上がりましたね。10分後には暑くて脱ぎたくなりましたけど(笑)」
――1970年代にオンエアされたアニメが原作ということで、個人的に魅力を感じたのはどんなところでしょう?
「ヒーローの苦悩や、まっすぐで純粋に悪を許せないという気持ちなど、最近では珍しいくらい、ものすごい直球なんですよね。古き良き時代の、そんな昭和の匂いも魅力的だなと思いました。ビジュアル的にもレトロというか、独特な世界観なんですよね。僕が演じる鎧武士の衣装も、上下デニムですし」
――演じた鎧武士というキャラクターについては、どのようなイメージで役作りを?
「まず、どの世代の男からも好感を持たれるような人物にしたかった。どちらかといったら、“カッコイイ、二枚目キャラ”というよりは、どうしようもない人間のほうがおもしろいなって思って。探偵事務所で登場するとき、武士は下半身パンツ姿なんですけど、あれは僕の案なんです。もともとは、ちゃんとした衣装が用意されていたんですが、衣装合わせのときに『脱いでいいですか』って提案して、採用されたんです」
――ちょっとユルい部分も大事にして。刑事と探偵のバディものでもありますが、刑事役の山田裕貴さんとのお芝居はいかがでしたか?
「撮影の順番がバラバラで、それこそラストに近いシーンを最初の頃に撮影したりしていて、鎧とバディを組む来間役の山田裕貴くんとの撮影初日も後半の核となるシーンだったんです。山田くんとは初共演だったし、重要なシーンだったので、けっこう時間をかけて撮ったんですが、段取りをやって、カメラアングルを決めたあと、さあ本番ってなるときに、山田くんと気になるところをいろいろと話して。それを監督に話したら、立ち位置や芝居の動きなどを変えてくださったんです。最初の撮影のときに、がっつり山田くんと話せたことで、早めに信頼関係を築くことができたかなって思います。大事なシーンだし、初日だしっていうので、納得にいくまで話し合ってやりましょうっていう。坂本監督も、そういった役者の気持ちを大事にしてくれたので、ありがたかったです」
――完成した作品を観た感想は?
「初号の試写って、どうしても自分の芝居は冷静に見られないので、アクションにおいてはもっとこうすれば良かったなって、自分の中では反省点がたくさんありましたけど……とにかく山田裕貴が良かったなと」
――山田さんのどんなところが?
「本当にチャーミングで人間的な魅力があるから、純粋で真っ直ぐな来間譲一というキャラがハマッていたし、リアルなバディ感が出せたと思います。台本を読んでいるときから、お互い、前半のダメな部分と、後半での成長をうまく描きたいよねって話していたんです。僕らの関係性が良かったからこそ、作品にも反映できた気はしますね」
――ヒーローものということで、溝端さんが憧れていたヒーロー的存在だった人物とは!?
「『ドラゴンボール』の悟空や、『ワンピース』のルフィかな。特に『ドラゴンボール』には異常な憧れがありました。小さい頃は、本当にかめはめ波を打てると思っていたし、いつか修行したら、空も飛べるんだって思っていましたね。幼稚園くらいの頃ですけどね(笑)。小学校のときは『仮面ライダー』シリーズや『ウルトラマンティガ』も大好きでしたね。まぁでも、男の人って、大人になっても、そういう少年心は変わらないと思います。『スター・ウォーズ』のフォースとか、“自分、使えないかな?”って思ったりしますからね(笑)。いまだに、家でゴロゴロしていて、離れた場所にあるリモコンとか、“ん〜〜〜(念じる)”ってやって、引き寄せられないかなって思ったりします」
――ものぐさヒーロー(笑)。では、デビューを目指している読者にメッセージをお願いします!
「自分で進む道を決めるか、他人に決めてもらうか、たまたま縁があってその道に入るか……といった3つのパターンに分かれていると思うんですが、僕は、その3つのバランスが大事だと思っているんです。自分が選択してやることもあれば、人からの勧めでやるということもありだし、また、運良く決まることがあってもいい。どれかに偏る必要はないし、むしろ偏ってしまうことでチャンスを逃すこともある気がするんです」
――なるほど。
「例えば、自分ではテレビドラマや映画に出たいって思っていたけど、『舞台にチャレンジしてみたら?』って人に勧められて、そっちでチャンスがあったとしたら、やってみたほうがいい。道は一つじゃないし、自分の価値観や考えだけじゃなく、柔軟に対応することが大事だと思うんです。“こうするんだ!”って決めたところで、自分の思った通りに人生が運ぶとは限らない。それよりは、僕は、人との出会いや、人から言われたことも受け止めて前に進んで行っている人のほうが、輝いて見えるし、幅が広がると思っています。三日坊主でもいいから、まずはやってみるっていうのが大事なのかなって思います」
本格アクションに初挑戦した溝端淳平が、主演映画『破裏拳ポリマー』の見どころをアピール
溝端淳平(みぞばた・じゅんぺい)●1989年6月14日生まれ、和歌山県出身。エヴァーグリーン・エンタテイメント所属。NHK-BS時代劇『立花登青春手控え2』出演中。9月15日から上演される舞台『ミッドナイト・イン・バリ 〜史上最悪の結婚前夜〜』、今冬公開予定の映画『輪違屋糸里 〜京女たちの幕末〜』に出演。『誰だって波瀾爆笑』(日テレ系)MCレギュラー。
映画『破裏拳ポリマー』
5月13日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
5月13日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
©2017「破裏拳ポリマー」製作委員会
「ガッチャマン」「キャシャーン」「タイムボカン」シリーズなどタツノコプロが生み出した数多くの人気キャラクターのなかでも、カンフーなど格闘技の要素を大胆に取り入れた肉弾アクションが話題を呼び、独特な存在感から異端のヒーロー「破裏拳ポリマー」。タツノコプロ55周年を記念し、坂本浩一監督×溝端淳平主演で実写映画化。
≪story≫
警視庁と防衛省が極秘裏に開発した特殊装甲スーツ「ポリマーシステム」。奪われた3体を取り戻すため、警視庁が白羽の矢を立てたのは、最強拳法・破裏拳の唯一の継承者でありながら元ストリートファイターで今は探偵の鎧武士(溝端淳平)。実は彼だけが、紅き最強スーツを起動できるのだった――。
捜査が進むにつれ、明らかになる裏切りと過去の秘密。そして、世界をも転覆させる巨大な陰謀。紅きポリマースーツに隠された謎とは!?
公式サイト: http://polimar.jp/
≪story≫
警視庁と防衛省が極秘裏に開発した特殊装甲スーツ「ポリマーシステム」。奪われた3体を取り戻すため、警視庁が白羽の矢を立てたのは、最強拳法・破裏拳の唯一の継承者でありながら元ストリートファイターで今は探偵の鎧武士(溝端淳平)。実は彼だけが、紅き最強スーツを起動できるのだった――。
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