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2022/06/02 18:32
デビュー15周年の節目を迎える川口春奈、芝居への想いを明かす「コメディは自分が生き生きするジャンルだと思うのと同時に、一番難しい」
俳優の玉木宏が主演を務める映画『極主夫道 ザ・シネマ』がいよいよ6月3日(金)より全国公開される。数々の伝説を残した最凶の極道 “不死身の龍(たつ)”が、足を洗い選んだ道はなんと専業主夫。高すぎる主夫力で家事全般に命を懸け、時にはご近所のトラブルに奮闘。玉木が全身全霊、爆笑アクションを連発で演じる“史上最強の主夫”が映画になって帰ってくる。『Deview/デビュー』では、ドラマ版に続いて、玉木演じる主人公・龍の妻・美久役で出演する川口春奈に直撃インタビュー。映画化への想いや映画版ならではの見どころ、笑いの絶えないにぎやかな現場だったという撮影エピソードなどを聞いた。
【映画『極主夫道 ザ・シネマ』/川口春奈インタビュー】
■「ゲストの方をお迎えしたり、笑いの質もパワーアップしているのですが、同じチームで映画を撮れたことが本当に嬉しかった」
――連続ドラマ版から約2年の時を経て、映画化される本作への想いから聞かせてください。
「映画の撮影はドラマの撮影が終わってから大体1年後くらいに始まったのですが、ほかの仕事で会っている方もいるので、自分的には“あ、もう映画なんだ”という、あっという間の感覚でした。それに、ドラマと映画は同じスタッフで撮影しているので、ドラマで培われたチームワークを映画にそのまま引き継いでいけて。ドラマに出ていないゲストの方をお迎えしたり、笑いの質もパワーアップしているのですが、本当に何のストレスも違和感もなく、同じチームで映画を撮れたことが本当に嬉しかったです」
――ドラマと映画で変わってない部分は?
「空気感というか、チーム感ですかね。やっぱりドラマを3ヵ月間一緒に作ってきたことが大きくて。スタッフも同じだったので、例えば、監督がどんな画が欲しいのかがすぐにわかるし、悩むこともなかった。ドラマの撮影から1年くらいしか空いてないこともあって、思い出すような作業も必要なかったですし、本当にすんなりと、何も変わらない感覚で撮影はできました」
――主人公で夫役の龍を演じた玉木宏さんとのやりとりも相変わらずで。
「本当にバランスのいい二人だと思います。今回も、たっちゃんが家族や仲間のために頑張るところを見せてくれていて。どうでもいいくだらないところと、家族愛とのギャップやバランスを考えながら、一緒にお芝居をさせてもらっているんですけど、玉木さんも監督も本当に伸び伸びとやらせてくれて。テンポが大事なので、会話のリズム感はテストで試したりはするんですけど、ドラマで3ヵ月も一緒にやってきたから、監督の欲しいものや見せたいところ、狙いたい意図が私たちにも見えている中でお芝居をすることができた。劇中では玉木さんを叩いたり、関節技をかけたりすることもあるんですけど(笑)、『思い切りやっていい』っていう感じで自由にやらせてくれてありがたかったです」
――では、映画版ならではの変化をあげるとすると?
「もともと家族の話がメインであるので、ドラマでもそこはしっかりと描かれていたのですが、今回は、リュウという男の子と出会ったことによって話が進んでいくので、強いていうなら、リュウに対する美久の思いや母性ですかね」
■「それぞれの個々のキャラクターの圧がすごくて…」
――龍、美久、向日葵の3人家族に小さな男の子、リュウが加わりますね。
「必然的に一緒にいる時間が多かったので、リュウに癒されてましたね。普通に撮影している時とか、私だけじゃなく、みんながリュウに癒されていて。映画版では、リュウとの出会いから別れの中で、美久が男の子にどんどん惹かれていく過程や母性をしっかりと描いているので、笑いもパワーアップしていますが、家族愛もより濃く描かれているんじゃないかなと思っています。だからこそ、他人だけど、こんなに気持ちが入っちゃうんだっていうところを、最後の別れのところまで持っていきたいなと思っていたんです。向日葵に対してもそうなのですが、リュウに対しての美久の気持ちや関係性の変化をしっかりと見せないと、クライマックスにいけない気がして。なので、笑いは笑いでちゃんとやりつつ、家族愛や母性もしっかりと描ききりたいなと思って演じました」
――映画版には新しいキャストも多数参加されています。
「みなさん、本当にしっかりちゃんとふざけてくださっていて(笑)。一緒にお芝居をさせてもらっても、はたから見ていても、すごく面白かったです。こんなにキャラが濃い人たちに混ざっても負けてないというか。それぞれの個々のキャラクターの圧がすごくて。すごくパワフルだったし、楽しかったです」
――撮影の合間にはどんな話をしましたか?
「(吉田)鋼太郎さんとは絡みがなかったので、あまりお話できてなくて。松本(まりか)さんとは初めましてだったんですけど、ホント他愛もない話をしていましたね。美味しいお店を教えあったりとか、MEGUMIさんと一緒に女子トークをしたり、なんでもないことをしゃべりながら過ごしていました」
――松本さん演じる元レディースの虎春は恋のライバルでもありますよね。
「美久は原作もそうですけど、勘違いから始まる妄想が多いんですよ。やきもち焼きだし、“そうかも?”って思ったら被害妄想がどんどん強くなってしまう。その被害妄想ぶりが面白かったりするので、松本さんに対しては敵対心を剥き出しでやった方が面白いよねっていう感じでキャラクターを作っていって。松本さんも松本さんで女性の部分を出すキャラクターだったので、その二人がぶつかることが面白いなって思いました」
――撮影現場はどんな雰囲気だったんですか。
「もう、映画のまんまですね(笑)。とにかく賑やかだし、常にどこかで笑いが起きていました。お芝居している時も、それを見ている監督が笑っていたりして。笑いに貪欲な人たちばかりだったので、真剣にはやっているんだけど、雰囲気的には常にゲラゲラ笑っている。賑やかで楽しい雰囲気でした」
――川口さんのいわば顔芸から始まる映画でもあります。
「ふふふ(笑)。“中途半端にしない”ということを心がけました。第三者の視点でいうと、大の大人が本気でふざけている姿を見ると笑けてくるじゃないですか。でも、そこで笑いを狙ってやるとバレてしまう。意図的に笑わせたいというよりは、“全力でやっているからこそ面白く見える”ということを、監督はじめ、チームのみんなが共通認識として持っていて。だから、笑かすためにはやってないんですよね。本当に100%、一生懸命に驚いて、思い切り喜ぶっていうことだけを意識している。美久というキャラクターは喜怒哀楽や情緒が激しすぎるというか……いろんな顔を持っている女性なので、あんまり恥じらいなくやるのがいいのなと思いながらやりました」
■「コメディはやっぱり自分が生き生きするジャンルだと思う」
――完成した作品を見て、ご自身ではどんな感想を抱きましたか。
「呆れるくらいてんこ盛りで、監督の手数が多いなって思いました。くっきー!(野性爆弾)さんのくだりとか、ヒドイじゃないですか(笑)。自分は現場に居られなかったんですけど、あのシーンの撮影がヤバかったっていう話を後日聞いて。みんな、『笑いすぎてヤバイ。見てほしい』って言っていたんです。あのシーンはみんなアドリブなんですけど、くっきー!さんが固有名詞を出しすぎて、ほぼ使えなかったらしいんです。私は試写で初めて観たのですが、すごくリラックスできていいな〜と思いながら、ずっと笑って観ていました。何にも考えずに、みんなが真剣にコントをやっているのを客観的に見られるみたいなシーンで面白かったし、好きですね」
――ご自身の出演シーンで特に印象に残っているのは?
「運動会ですね。グリーンバックでワイヤーに釣られて撮っていた部分があるんですけど、別にふざけているつもりはなくて」
――あははは。ふざけているつもりないんですか?
「ふざけているつもりはないんですよ。ただ、『何やっているんだろう、私は……』って思う瞬間はありました(笑)。ワイヤーに釣られながら、動きを指示されて、ぐるぐると回されて、強い風を当てられて……。出来上がったものを見たら、空に吹っ飛んだたりしていて。それは、現場では想像できなかったことでしたね。“いや、こんなことになってたの?”って自分でもびっくりだし、MEGUMIさんや松本さんとのバトルシーンは、バカバカしくて好きですね」
――龍の元舎弟である雅に思い切りビンタして、その後に頬をつねるシーンでは、志尊淳くんが本気でびっくりしていたというか、戸惑っているように見えました。
「ふふふ。私、手が大きいので、超痛いんですよ、たぶん。あれもね、笑いは痛みに比例するなと思って。ここはバイオレンスシーンだと思って、思い切りいくことで、それだけで面白いと思っちゃうんですね、自分は。だから、躊躇することなくやっているし、そのあと、何事もなかったかのように芝居をするところが、なんか、『極主夫道』ぽいなと思っていました」
――生き生きとしていましたね。
「はい。生き生きとさせていただきました」
――(笑)。川口さんのコメディももっと見たいなという気持ちがありますが、幅広いジャンルで活躍中の川口さんが、今思う、お芝居の魅力というのは?
「自分自身、コメディはやっぱり自分が生き生きするジャンルだと思うんですけど、だからこそ、難しさも感じていて。間とか、狙いすぎたらどうなのか、とか。コメディはとっても難しいんですけど、見ている人をハッピーにする力があると思うんです。そういう意味では楽しいのですが、でもやっぱり難しい。しかも、今回のように原作がある作品だと、それぞれが持つイメージもあるじゃないですか。それでも、実写化されて、ドラマをやって、映画をやって、と続けて皆さんに見ていただけるありがたさもありますし、やっぱりコメディは破壊力があって面白いなって思います」
――シリアスとは違う?
「どれが楽とか、やりやすいとかはないですけど、私自身はコメディが一番難しいと思います。でも、好きなジャンルではあるので、たくさんやりたいですね」
■「年齢を重ねていく度にすごく魅力的な仕事だなと思うようになっている」
――2007年『二コラ』オーディショングランプリから今年で15周年を迎える節目でもあります。
「最初は自分発信で入ったわけではなかったので、よくわからない世界に飛び込んできちゃった感じがあったんですね。でも、だんだんと、お芝居が好きという気持ちよりは、すごく影響力のある仕事だなと感じるようになって。作品や自分を通して、相手の価値観や考え方が変わったりする。人の人生に寄り添えるような責任感重大な仕事にいるんだなっていう不思議さは持ちつつ、特殊だけど、すごく魅力的な仕事だなっていうのは、年齢を重ねていく度に思うようになっています」
――これまでを振り返って、何か転機になった作品はありますか。
「私、常にフラットでいるんですよ。だから、この作品だからという特別なものはあまりなくて。もちろん、いつも、全力ですけど、そこまで気負いすぎずに、フラットにやっているつもりですね。あまり背負いすぎると、自分のいいところが消えちゃうなと思うので、本当に、ゆるくやらせていただいている感じです」
――また、本作では、穏やかな暮らしの中にある何気ない幸せを描いていますよね。川口さんが幸せを感じる瞬間は?
「食べることが好きなので、美味しいご飯を食べている時かな。しかも、友達や家族と、美味しいねって、共有できる時間。美味しいっていう思いを人とシェアできる時が幸せですね」
――YouTubeチャンネルでもたこ焼きや焼肉を美味しそうに食べていましたね。
「何かを食べる企画が多いですね。人がご飯を食べている姿ってなかなか見れないと思うので、コンテンツとして面白いかなと思って、定期的にやっています」
――劇中でも食事シーンがありましたね。
「ドラマの時から食べているシーンは多かったんですけど、めちゃくちゃ美味しくて! 本当に、撮影が終わったらみんなで完食するくらい美味しいんですよ。美久は料理が壊滅的にできない子なので、見た目はひどいんですけど……実は味はめっちゃ美味しくて。食事シーンのために出てくる料理は撮影中の1つの楽しみでもありました」
――今後やってみたいことは何かありますか?
「元々はアクティブなこと好きなので、旅行とか、どこかお出かけしてみたいですね。コロナ禍でできることが制限されているので、早く、アクティブなことができたらいいなと思います。海外も行きたいけど、まずは地方に甥っ子が住んでいるので、甥っ子に会いに行きたいです」
――公開を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
「こんな時代なので、何も考えずに、2時間笑ってもらえれば嬉しいし、そういう映画が一本くらいあってもいいなって思っています。原作ファンの方もたくさんいらっしゃると思いますが、原作やドラマを見ていなくても楽しめる作品になっていますし、本当にあっという間な2時間だと思うので、何も考えずに笑っていただけたら幸いです。ちょっと疲れている人に見てもらいたいなと思います」
――最後に芸能界デビューを目指している読者に向けて、川口さんが夢を叶えるために大切だと思うことを教えていただけますか。
「人に偉そうに言える立場じゃないんですけど(笑)、好きなことへの情熱を忘れないでほしいなと思います。学生の時を振り返ってみると、もうちょっと楽しんでおけばよかったなって思うくらい、時間は二度と戻ってこないんですよね。だから、この映画もそうでしたけど、本当に今、好きなこと、今、やりたいこと、今、頑張っていることを全力でやってほしい。その結果がどうであれ、全力でやった方が後悔はないと思うんです。私は遊びも仕事も、常に全力でやっているし、好きなことや、夢や目標があるだけで人生が豊かになると思うので、志を高く、モチベーションを持って、どんなことにも全力で向き合ってほしいなと思います」
(撮影/ワタナベミカ 取材・文/永堀アツオ)