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2021/10/29 18:01

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【秋の学園ドラマに見るキャストオーディションの実際】 『おいしい給食 season2』監督・綾部真弥「リアル中学生と仕事をするのは楽しい まだ日本の未来は明るいなって思います」

『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会
『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

 10月も終盤、秋クールの各局連続ドラマが出そろった。今クールは意欲的な学園ドラマも多数放送され、生徒役キャストの中に、キラリと光る個性を見つけるのも楽しみの一つだ。そんな中、新人俳優の発掘に関わり、新人をバックアップしてきたメディア「デビュー」が、ドラマ制作スタッフに、キャスティングの実際、新人抜擢に込めた想い、未来の役者に向けてのメッセージを取材。今回、市原隼人主演の学園ドラマ『おいしい給食 season2』(テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビほか順次放送)の綾部真弥監督に話を聞いた。

 「おいしい給食」は、1984年の中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田幸男(市原隼人)と、給食マニアの生徒・神野ゴウ(佐藤大志)による、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描く学園グルメコメディ。深夜ドラマの定番ジャンルとなった「食ドラ」において、初めて「選択の余地なき食」=「給食」に挑んだ前作(2019年10月〜12)に続き、『season2』では、2020年3月に公開された『劇場版 おいしい給食 Final Battle』の2年後を描く。

■ドラマ『おいしい給食 season2』監督・綾部真弥インタビュー

――『おいしい給食』は原作の無い完全オリジナル作品です。登場するキャラクターは、やはり現場で役者さんを交えて創り上げる部分が大きいのですか?

【綾部】「企画・プロデュース、脚本の永森裕二さんと、僕ともう一人の監督(田口桂)とでコンセプトを練り上げて、本当にゼロから作りました。最初の企画段階の甘利田先生は、今の市原くんほどアグレッシブに激しく動く感じじゃなかったんですが、元々の要素を市原くんのアイデアで膨らませて、自然とそうなっていったんです」

――生徒役のキャストを見るだけでも、少しデコボコした昭和のクラスの空気感が表現されているなと思います。

【綾部】「『おいしい給食』の舞台設定は、小学校だと子供過ぎちゃうけれど、まだ子供くささが残る世代にしたいなと思って中学1年生にしました。通常、日本の映画やドラマでは、中学生モノなら高校生以上を、高校生モノなら20代の子を中心に入れると思うんです。この世代は、芝居の技術や理解力が1年で全く違ってくるのでそうするんですが、この作品に関してそれは嫌だったんです。とにかくリアルな中学生で世界観を作りたいと思って、『season1』では本物の中学1年生を多く入れています。ただ可愛い、カッコいい、芝居が上手い子ばかりではなく、まだ技術に関してはゴツゴツしていてもいいので、80年代当時にいそうなキャラクターの子を、バランスよく入れたいと思ったんです」

――『season2』でも生徒役キャストは全てオーディションで決定したそうですね。オーディションで重視したのはどこですか?

【綾部】「僕はよくオーディションを行うタイプの監督だと思うんですが、一番に見るのは“やる気”です。漫画や小説などの原作があったり、今作であればシリーズもので前作があるのに、それらを観て来ない人が多い。『season1』を観ていなければ、『season2』のオーディションには当然受からないんです。今回新たにキャスティングした、山崎玲奈を含めたメインの子たちは、しっかりシーズン1を観て研究をして来ているんですよ。渡された台本の前後を考えて、こういう芝居だったら面白いんじゃないかと準備する。そこがキャスト決定の上で大きかったと思います」

――オーディションに臨む心構えから違ったと。

【綾部】「本当にシンプルなんです。今回の企画に対して調べて来ているか、監督に対するアプローチがあるか。芝居の上手下手以上にこの二つは大事ですね。企画を理解していて、それに対して努力をしてきているか、その上で監督について調べていて、“綾部監督と仕事をしたい”と言われれば、同じ実力ならそちらを選びますし。日本ってオーディション自体が少ないと思うんです。だから大人の役者でもそこを分かっていない人が多いんですよ」

――オーディションで選んだなかで印象深いキャストのエピソードはありますか?

【綾部】「神野ゴウは、台本上ではすごく魅力的なキャラクターなんですが、“本当にこんな子がいるんだろうか?”と。だから『Season1』のオーディションの時は、とにかく神野ゴウを探すというのがメインテーマでした。そして佐藤大志の芝居を最初に見たときは“とうとう見つけた!”という感じで、神野ゴウは彼しか考えられないって思いました。すごく可愛かったんです。おいしそうに食べるし、ふと挑発的な目で見るのも可愛くて、斜め45度の角度が凄く似合って…。彼の場合は前面にやる気を押し出すタイプではないんですが、将来俳優になりたいという強い意志を持っていて、ぜひこの子と仕事をしたいと思いました」

――佐藤くんは市原さんとも堂々と渡り合って、劇場版でも活躍。『season2』にも成長して帰ってきましたね。

【綾部】「言われることは分かってもできないという人がほとんどのなかで、彼はこちらの要求一つ一つに対して、ちゃんと応えて着実にステップアップしていきました。劇場版で彼が涙するシーンは、映画の一番の見どころと言えるぐらいで、あそこまでの芝居ができるようになったのは、監督冥利に尽きますね。まさかここまで成長してくれるとは思いませんでした」

――『season2』で新たに加わる山崎玲奈さんについてはいかがですか

【綾部】「彼女はオーディションにあたって『season1』を観ていて、渡された脚本に対してのアプローチが非常に的確だったんです。そして、彼女の活発な感じや、すこし肌が日に焼けている感じが、今の子と違う80年代の女の子らしくていいなと思いました。彼女は実際に中学3年生なんですが、もっと大人びているリアル中3も多い中、子供の無邪気さも残しつつ、ハキハキと大きい声で芝居をしていて、外見も芝居へのアプローチも良かったので、印象に残りました。オーディションで注目した子には、別パターンの芝居もやってもらって対応力を見るんですが、彼女はちゃんと対応できていたんです。総合力で学級委員長という役にも合っているし、やる気もモチベーションもあって、必死で技術を身に着けようとしていているので抜擢しました。案の定、現場でも台本にしっかりメモしたり、勉強熱心なので、この子は絶対に伸びる子だなって思います」

――各プロダクションがここぞと送り込んでくる子たちでキャスティングすると、綺麗な子ばかりが揃ってしまうのかなと思うんです。でも実際の教室にはふとっちょも短足もいるわけで。そういう子たちを抜擢して配置するにはやはりオーディションが必要なんですね。

【綾部】「大変だけど面白い作業ですね。オーディションで出会った10代のリアル中学生と仕事をするのは楽しいですし、まだ日本の未来は明るいなって思います(笑)。素朴に元気よくやっている子たちに会うと、こっちも元気をもらえる。神野ゴウみたいな特別な子がいて、ちょっと不良っぽい子ヤンキーの男の子・女の子がいて、目立たないメガネキャラの子もいて、ちょっとぽっちゃりした子もいて…。そんなバランスを考えながらシーンを創り上げていくのは楽しいです」

――「デビュー」のユーザーは“美人じゃないと女優になれないんじゃないか?”という悩みを持つ子も多いんですが。

【綾部】「非常にカッコいい、可愛い、美しいは一つのアドバンテージにはなると思うんですが、逆に言えばそういう人もたくさんいるわけであって。映画やドラマで“普通”が求められることもあるし、体格がものすごく大きいとか、小さいとかがビジュアルとして求められることもある。よく僕は役者に“鏡を見ろ”というんですが、自分はいったいどういうタイプなのか、自分と似た外見や芝居の役者を観て、目指す方向性を考えることも大切だと思うんです、絶対に需要はあるはずなので。特殊なポジションで強くなれば、すごく売れる可能性だってあるので」

――今後役者デビューを目指す人に、オーディションに臨むうえで心がけてほしいことはありますか?

【綾部】「先ほどのオーディションの話は、ワークショップで若い役者に対しても必ず言っていることで、すごくシンプルなんです。まず第一に企画を理解する。シリーズものなら過去作を見る、原作モノなら原作を読んでからオーディションに行く。2番目は監督が誰なのか。その監督の作品はチェックしておく。監督の気持ちで言えば、自分の作品を観ていないということで点数がガタ落ちになるので(笑)。その努力もできないようなら、一緒に仕事をしたいという気持ちがあるのか疑わしいですよね。

 『おいしい給食』でも、子供たちだけで400〜500人のプロフィールが送られて来て、実際に300人ぐらいに会っているんです。1日に100人近くに会うと、覚えているのは、ちゃんと勉強して来て、僕らと仕事をしたいと思っているのかどうかなんですよね。多くの人が、台本を渡されると、それ演じることを先にやっちゃうんです、セリフを覚えなきゃいけないとか、どう演じるかとか。それって実は一番最後で、一番最初に企画があって、監督へのアプローチがあって、そして台本なんです。

 監督によって要求される芝居も違うはずですから、当然ですよね。渡された台本を見て、この監督はどういう芝居を要求してくるだろうかと想像して、企画内容が分かっていれば前後のシーンはこうなるはずだから、こう演じればいいかな、この監督だったらこのぐらいのオーバーアクトをしたほうが気に入られるかな…とか。作戦を練って台本を読む。このセットなんですよ」

――ありがとうございます。では最後に、2年を経てさらにパワーアップした『おいしい給食 season2』の見どころをお願いします。

【綾部】「パワーアップした甘利田先生、おいしそうな給食も見どころなんですが、せっかくデビューの読者の皆さんなので、生徒役のキャストにも注目していただきたいと思います。『おいしい給食』では、子供たちのささやかな日常が描かれています。本当に他愛もない会話だったり、おいしそうに食べている子供たちの笑顔だったり、それは彼らがオーディションを勝ち抜いて、現場で努力して得た笑顔だったりして、僕はそれが凄く大好きなんですよ。だから市原くんや佐藤大志の面白い給食対決を楽しんでもらいつつ、脇を固める俳優たちの愛しい日常生活を感じてもらえればと思います。それらは、特に今の状況下で我々が失ってしまっているものなので、この作品から感じていただけたらと思います」

 『おいしい給食 season2』はテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビほかにて放送中。

関連写真

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 神野ゴウ(佐藤大志):『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 神野ゴウ(佐藤大志):『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 皆川佐和子(山崎玲奈)『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  • 『おいしい給食 season2』より。(C)2021「おいしい給食」製作委員会

  

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