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2020/03/02 18:31
トライストーン所属の演技派新人女優・東野絢香「正統派ではない自覚はあります」
小栗旬や田中圭、綾野剛、木村文乃らが所属するトライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所、トライストーン・アクティングラボ(TSAL)から、昨年6月に事務所所属となった東野絢香さん。以来、舞台やドラマで活躍し、今年1月7日付のサンスポに「新たな演技派女優の登場」と記事が掲載されるなど、早くも注目を集めている。ミステリアスな雰囲気も魅力の一方で、「正統派な美形ではない自覚はあります」という彼女がつかもうとしている、女優としての唯一無二のポジションとは?
■東野絢香インタビュー
──昨年6月にTSALからトライストーン・エンタテイメントに所属して、環境はどのように変わりましたか?
「仲間が増えたという感じがしますね。TSALの頃からオーディションには出していただいていて、そのたびに講師やスタッフの方が役をつかむためのアドバイスをくださっていたんですが、今はそれに加えて、女優としての方向性や息長く活動していくためにやるべきことなどを話し合う機会が増えました。またオーディションに行くだけでなく、マネージャーさんがお仕事の話を進めてくださることもあって、『正式に所属女優になったんだな』という実感があります」
──ご自身の中では、何か変化はありましたか?
「わりと最近ですが、『自分の好きなことだけやっていてはダメなんだ』という気付きがありました。もともと私は役を自分に寄せがちで、自分の得意な芝居や役はこんな感じで、それを女優としての強みにしていこうと考えがちだったんですね。でも『それだけだとプロの役者としては幅が狭すぎる。役を引き寄せるだけでなく、役に歩み寄ることも大事だ』と、社長やスタッフさんから指摘されたんです」
──東野さんの得意な芝居とは?
「人間の暗部のような面、心の闇や孤独を演じることに興味があって、実際これまでそういった役をいただくことが多かったんです」
──東野さんのどこかミステリアスな雰囲気にぴったりかも? でも今はまさに役の幅を広げていこうとしているところなんですね。
「はい。以前受けたあるドラマのオーディションが、まさに今まで演じたことのないタイプだったんです。お金持ちのお嬢さんなんですが、ちょっと天然な面白い子で。関西弁というところは私も大阪出身なので近いんですが、お茶目で活発な、自分にはない要素がいっぱいある女の子の役だったんです。ちょうどその頃、『お芝居でウソをついてるんじゃないか?』と思ってしまう瞬間があって、これじゃダメだ、中身で芝居をしなきゃと考えていた時期だったんですね。そこを意識してオーディションに臨んだんですが、前のめりになりすぎたせいか、前半はセリフが飛んだり、気持ちがついていかなかったりとボロボロで。後半はなんとか持ち直しましたが、トータルとしては反省が多かったです。でも1つだけ、ウソをつかずに芝居ができたのはよかった、これでダメでもいいや、という気持ちで会場をあとにすることができました」
――今後、舞台だけでなく、映像作品の出演もチャンスが増えていきそうですね。
「TSAL時代は舞台での活動が多めだったんですが、今はドラマや映画のオーディションに行かせていただくことも増えました。舞台は大好きなんですが、地方に住んでいる家族にはなかなか観てもらえないんですよね。昨年、関西テレビ『猪又進と8人の喪女』で、初めてドラマに出させていただいたときは、おじいちゃんやおばあちゃんも大はしゃぎで電話をくれて。家族や親戚みんなが喜んでくれたのは嬉しかったです」
──そんな東野さんの原点といえばTSAL。18歳で上京して入所したわけですが、数ある選択肢の中からなぜTSALを選んだんですか?
「高校時代も演技を学べる学校に通っていて、3年生のときにいろんな事務所や養成所の方が新人発掘のような形で来校されるんですが、そのときにTSALのスタッフさんが1人1人に対して『あなたの強みはこういうところだからさらに伸ばしていきましょう。ここが足りないから学んでみては?』と、とても細かい分析をして頂いたんです。その指摘がとても的確で、きっとここは1人1人をきちんと見てくださるんだろうなと信頼できたのが決め手でした。実際、TSALに入ってその直感は間違っていなかったと実感したことも、たくさんありました」
──東野さんはどんな指摘を受けたんですか?
「もともと私は人と関わるのが怖くて。子どもの頃から友だちも少なかったので、それで1人でできることとして映画をよく観るようになったんですね。そのことをある講師の方が見抜いて、『芝居の第一歩はまず人に踏み込むことだ。人と関わることを恐れるな』と、心の持ちようをアドバイスしてくださったんです。そのことを実践するようになってから、オーディションもスムーズに行くようになったんです。まだ短い役者人生の最初の転機でした」
──具体的に教えていただけますか?
「自分が相手に対して恐怖を覚えていると、相手も緊張して心を閉じさせてしまう。だからまずは1つでも、相手のいいところを見つけてみよう、という方法です。オーディションでも審査員の方々のいいところを1つずつ見つけて帰ることを自分の宿題にしました。そうすると自然とポジティブな感情が生まれてきて、変な緊張もしなくなるから芝居に集中できるようになってきました」
──そのアドバイスはあくまで東野さんへのもので、ほかのTSALレッスン生はまた別の指摘やアドバイスがあるわけですか?
「はい、みんなが私みたいな人ばかりじゃないですから(笑)。TSALのレッスンはクラスで行われますが、『みんな頑張れ』じゃなくて、1人1人の頑張り方を明確に教えてくれるんです」
──TSALといえば、トライストーン・エンタテイメントの先輩の前原滉さんも出身者の1人ですね。
「はい、まだ私がTSALに在籍していた頃にワークショップでご一緒したことがあります。そのときに芝居でカップル役をやらせていただいたんですが、前原さんのお芝居には一切のウソがなくて。私自身、その頃はまだ人に恐怖があって、かたくなな状態だったんですが、前原さんの芝居に引き込まれて、最後には嗚咽が出るほど泣いてしまいました。すごい役者さんだなあと、尊敬しています」
──前に前原さんにインタビューさせていただいたときに、東野さんのことをコメントされていましたよ。いわゆる正統派なルックスではないところに親近感を覚えているとか。
「そこは私も自覚していて(笑)。『もっと可愛く生まれていたらよかったのにな』と思っていた頃もありました。だけど最近は自分の顔が好きになってきのか、この見た目でよかったと思う場面が増えています。たぶん私の顔立ちであれば、ごく普通の女の子からものすごくブサイクな役もできると思うんですね。また正統派美人な役どころは無理だとしても、内面から演じることでチャーミングだったりセクシーだったり、そういったいろんなステキな女性を演じることはできるんじゃないかと──。実際、きれいな女優さんはたくさんいらっしゃいますが、見た目が整っているからではなく、内面を伴ったお芝居をされるからこそステキな女性を演じられるわけで、そう考えると役者は生まれ持ったルックスではなく、内面から出る表情や仕草をどれだけ役に落とし込むことができるかが大切なんだろうなと思います」
──今後はどんなお仕事をしていきたいですか?
「この事務所には映画が本当に好きな方がたくさんいて、忘年会などで集まると映画の話が止まらないんですよ。私も昔から映画が好きですが、知らない作品の話題が出るとチェックして追いかけて観るようにしています。なので、やっぱり映画は出たいですね。ジャンルを限定したりせず、いい作品を作ろうという熱量のある現場に携わりたいです。もちろん舞台もドラマも、とにかく芝居の世界が盛り上がるような方たちと関わっていきたいですね。最近は事務所でもよく、今年のアカデミー賞を獲った映画『パラサイト 半地下の家族』の話題が出て、『作品としては素晴らしかったけど、やっぱり悔しいよね』という話になるんです。日本映画ももっと頑張りたいよね、と。そんなふうに、業界をもっとよくしていこうという気概のある事務所にいられることが本当に幸せだなと感じています」
(撮影/厚地健太郎 取材・文/児玉澄子)
PROFILE
東野絢香(ひがしの・あやか)●1997年11月9日生まれ、大阪府出身。身長170cm。特技:関西弁、ピアノ。趣味:麻雀、料理。舞台;劇団ガバメンツ『ハイヤーズハイ』劇団PU-PU GIRLS旗揚げ公演『女子高』、イキウメ カタルシツ演芸会『CO. JP』、イキウメ『獣の柱』。ドラマ:『猪又進と8人の喪女』(関西テレビ)第3話メインゲスト・神宮寺紫音役。CMファミリーマート「チキンベル奏者の崩壊」篇出演。2018年VIPO主催アクターズセミナー賞優秀賞受賞。最新情報は、事務所の公式HPにて公開。