芋生悠、石橋夕帆監督の初長編映画『左様なら』に主演 新進女優と気鋭の女性監督の友情タッグ対談 | ニュース | Deview-デビュー

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2018/11/20 11:51

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芋生悠、石橋夕帆監督の初長編映画『左様なら』に主演 新進女優と気鋭の女性監督の友情タッグ対談

映画『左様なら』の石橋夕帆監督と主演女優・芋生悠(C)Deview
映画『左様なら』の石橋夕帆監督と主演女優・芋生悠(C)Deview

芋生悠、石橋夕帆監督の初長編映画『左様なら』に主演 新進女優と気鋭の女性監督の友情タッグ

 数々の映画祭で注目される新進気鋭の監督・石橋夕帆の映画『左様なら』が20日から音楽と映画の祭典『MOOSIC LAB』(新宿K’s cinema/渋谷UP LINK)で上映される。Twitter・Instagramで若い世代の支持を受ける人気イラストレーター・ごめんの初期の短編漫画を原作に、期待の若手女優・芋生悠、祷キララらを主演に据え、登場人物やエピソードを大幅に加えてオリジナル脚本で映画化した本作。今回、プライベートでも親交の深い、石橋夕帆監督と主演女優・芋生悠が対談。映画の制作エピソードから、普段の交流、今後タッグを組みたい作品への妄想までたっぷりと語ってもらった。

 高校生の由紀(芋生悠)は平穏な日々を過ごしていた。ある日、中学からの同級生の綾(祷キララ)が亡くなる。綾の死をきっかけに複雑な感情を抱えた由紀は、クラスの女子からハブられるようになり、クラスメイト達の人間関係にも思わぬ波紋が広がる。友人の死、いじめがあってもなお、当たり前のように続いていく「日常」を繊細に新たな切り口で描く、次世代の青春群像劇が映画『左様なら』だ。

■映画『左様なら』/監督・石橋夕帆×主演女優・芋生悠 対談インタビュー

――以前、芋生悠さんに取材したときに、石橋夕帆監督の話を聞いていたので、とても興味があって対談をお願いしました。お二人の出会いは2016年の短編『それからのこと、これからのこと』ですよね。

芋生「『それこれ』のときは、まだ熊本にいた時で。顔合わせのときが“初めまして”でしたよね?」

石橋「私の地元まで来てもらって。最初の日に顔合わせ、衣装合わせ、世間話、そしてファミレスに行くという流れで。撮影は一日半ぐらいでしたね」

芋生「そのとき、台本が紙ペラ数枚だったことにまず驚かされて。“自分で付け加えたいところがあったら加えていいし、言い易いように言ってもらっていい”みたいな感じで。台本のことはそのぐらいで終わりで、石橋さんは、キャストのみんなが仲良くなるようにっていう空気を作ってくれて。ファミレスに行って、笠松(将)くんも私も絵が描けるから、似顔絵大会が始まって。初めましてなのにめちゃくちゃ仲良くなりましたよね。最初の出会いから面白かったです」

――どこか波長が合う部分があったんですかね?

芋生「監督は妄想がすごいです。想像力みたいなものが。二人で“もし、こういう人物がいたら…”っていう話になったら、すごいところまで行きますよね」

石橋「『if…』的な話はずっと続けられますね。実際に形にはなっていないんだけど、『芋生さんで妄想してみた』みたいな企画を3つぐらい話したことがあって…」

芋生「外国人の男の人とのバディものとか(笑)」

石橋「文字にすら起こしてないんだけど、口頭で伝えて。あとはオタクが主人公のヤツと…。こういうのできたらいいよねって話していながら、まったく違う『左様なら』ができたという(笑)。でもまだ虎視眈々と狙ってますよ」

芋生「全部のストーリーが頭の中にあって、1本作品が出来ているんです。今、台本を書いてないって聞いて、びっくりしました(笑)」

石橋「企画書程度にしか書いてないけど、内容は頭の中に全部あります。頭の中では再生できちゃいますね」

芋生「脚本を書いているときに絵が浮かぶタイプですか?」

石橋「全部同時進行気味なんだけど。今までの作品も、頭・おしり・間の何個かのキーになる映像がまず思いついて。それをなんとか一本化するためのストーリーを考えて。なおかつプロットが立ち上がったら、脚本を書きつつ、頭半分で人物設定を考えて、キャスティングが決まってから人物設定を肉付けして…みたいな」

芋生「そういう話は聞いたことが無かったから面白いですね。石橋さんは、私自身の中から引き出して役を肉付けしてくれるから、自分のなかにある部分も演じるキャラクターの中にあったりして、入りやすい感じがします」

石橋「役と自分が重なる部分も大切にしてほしいし、素の部分も大切にしてほしい。その半々ぐらいのバランスでみんなに演じてもらってますね」

――以前、「脚本を読むと自分を見抜かれている感じがする」とも言ってましたね。

芋生「自分の嫌いな部分が役に入っていたりすると、ああ、凄いなあって」

――『左様なら』のときに、当て書きと感じたことはありますか?

芋生「“感情表現が希薄”というところは、由紀と重なるな、と。主人公の由紀が、綾はどう思っていたんだろうというのを探していく物語であるんですけど、同時に、由紀のことも、最初読んだ段階では分からない部分があって。それは作品の中で、いろんな人物と由紀が出会うことによって、相手から受ける発見がいくつもありました」

――石橋監督の緻密なキャラクター造形で、周りの全ての役がバックグラウンドを持って生きているから、彼らと接するときのリアクションで、由紀自身が見えてくるのが面白いですよね。

石橋「由紀は、“こういう子だったらいいな”っていう、他人が見たい姿を勝手に投影されているように思うんです。由紀は音楽が好きな子なんだって思うから、クラスメイトの滝野(田中爽一郎)は話しかけてくるし。人の期待を押し付けられるというか。そういう勝手な想いで観られても“いや、ちげーし!”、みたいになることも」

芋生「由紀は一番普通で、クラスの階級の中でも真ん中で、どこに対してもいい顔している。でも学校の外の世界に触れた時に、自分のなかにあった別のものが出てくるという感じで。こだまたいちさんが演じたバンドマン・忍野(皓太役)とのシーンでは、台本を読んで感じていたイメージとは違う発見がそこにあって。サプライズっぽく出てきたものも写っています」

――学校から外に出たシーンが間に挟まることで、登場人物が違った表情や、素を出す部分があったり。

芋生「ライブハウスのシーンでも、忍野が歌いだすと、“おおっ!”てなる感じ」

石橋「ライブは実際のリアクションで撮ったよね。ライブ演奏をしてもらいながらリアクションを撮影して」

芋生「こだまさんの役は最初から完璧にハマっていましたね」

石橋「忍野役の役者さんのキャスティングが切羽詰まっていたとき、元々SNSのつながりがあったこだまさんが思い浮かんで。音楽の匂いをまとっていて、なおかつ演技ができる人。もともとバンドをやっていた方なので、“この人だ”と思って。実際に入ってみたら相性がよかったですね」

芋生「全員と本読みをしているんですけど、こだまさんとは最初からハマって、あんまりリハもやらずに臨みました。でも幼馴染の慶太役の平井亜門くんとは、亜門くんが人見知りなので、人見知りにどう対応すればいいかが私は分からなくて、お互いに目が合わせられませんでしたね(笑)。でもそのあとにファミレスで、二人で音楽の話をしたらすごく盛り上がって、現場に入る前にほぐれました」

石橋「『MOOSIC LAB』は主題歌や劇中歌で音楽とのコラボレーションがあるんですけど、私のなかでは、ストーリー自体にも『音楽との出会い』の話の要素も入れています」

芋生「人同士って、音楽の話をすると仲良くなりますよね」

石橋「私は、中・高・大学と、映画を始める前にバンド活動をしていて。全然しょぼいバンドだったんですけど(笑)。そこからバンドをやめてやることが無くなり、映画を撮ることになりました。高校生の時に音楽にハマっていったときの感覚もちょこっと入れています」

芋生「去年、映画でギターを弾かせてもらったり、音楽は好きですね。元々ずっとL'Arc〜en〜Cielが好きで、ラルクしか聴かない、ほかの音楽は興味ないみたいな感じだったけど、2年前ぐらいからバーッてたくさん聴きだして。一つぐらいしか聴かなかったのに」

石橋「今、ものすごい詳しいもんね。私は逆に新しいものへのアンテナが、音楽に関しては無くなってきちゃったから、芋生さんに教えてもらってます。あ、そういえば、もう一つ芋生さんで妄想していたのはバンド群像劇だった」

芋生「おおーっ! ガールズバンド?」

石橋「いや、アイドルでも面白いと思ってて。今はライブハウスでバンドの対バンにアイドルが入るみたいなブッキングもあるから、そのカオスさも面白いなって思う。『左様なら』にも、ちょっとローカルなライブハウスが出てきたんですけど、エンタメ作品のカッコいいものじゃなくて、もっと日常と地続きに感じられるライブハウスも、撮りたいものの一つなんですよね。バンドの出番の時に態度悪く携帯とかいじってるファンが、アイドルの出番になったら、みんな最前まで来てイエー!みたいになって、バンドが荒んだ気持ちになってるとか…」

芋生「細かい! すごい(笑)。あと、この間、介護の話もありましたね」

石橋「実は今撮りたいナンバーワンはそれ。要介護者が家族にいるご家庭の群像ものなんですが、介護はテーマではなく日常の中にあって…」

芋生「その話を聞いたとき、ちょうどじいちゃんが体調を悪くして入院してて、体力の弱ったばあちゃんが介護していて…という状況があったので、ぜひ撮ってほしいって思ってました」

石橋「テーマものをやるつもりは今後一切ないんです。あくまで娯楽として映画を撮るわけで。今回の映画でも、いじめや死があっても、やっぱり日常の中に起きていることっていうふうに落とし込みますね」

芋生「だから、石橋さんの作品を観た時に『何もなかった』って感想を言う人も…」

石橋「めちゃくちゃいると思う(笑)。自分は妄想ばっかで、自分の日常生活がつまらないものという前提で生きてるから、それをちょっとフィクションにして、起きてることは自分の日常と変わらないんだけど、少しドラマチックに変換したいというスタンスで映画を作っているので。あくまでも普通のことしか起こっていないんだけど、観ようによって素敵かも知れないという気持ちで映画を作っています」

芋生「『それこれ』も、『ぼくらのさいご』も、何も起きてないんです。『それこれ』でいうと、卒業式の前日から当日までっていう、すごくマニアックだけど、実際に卒業を経験した人なら感じる、あのフワフワ感というか浮ついた感じは、あの瞬間あそこしかないじゃないですか。なんとも言い難い空気感を作ってくれるし、それが自分の経験したことみたいになってくるんですよ。自分の中の記憶になる作品を作られる方だなって思っています。そこが石橋さんの凄みじゃないかと」

石橋「ありがとうございます(笑)。『左様なら』ももっとゆっくりできたらよかったけど、ちょっとせかせかしたかな」

芋生「『左様なら』は、今までの作品とはちょっと違っていて、石橋さんの挑戦なのかなって。今回は『記憶』というよりは、『夢』だったのかな? 今回は大事なシーンを海で撮ったんですが、“海に流されたんじゃないか?”というぐらい夢の中のようでした」

石橋「『左様なら』自体、日常モノといいつつ、どこか現実味のないフワフワした感じに描いています。だから、冒頭に人が死んでるのに妙に重くない感じ。今、人が死んだり、いじめられたりみたいなことは、ゴシップ記事ぐらいの重さになっちゃってるんじゃないかな」

芋生「SNSに『死んだってよ』『悲しい(涙)』 みたいに書けるぐらいの重さとというか…」

石橋「芸能人の誰かが死んで、『悲しい』って言ってても、3分もしたら『今日こんなランチ食べてます』ってアップできる。実際に近い出来事がプライベートでもあって、ああ、なんか、みんなそんなにこの人が亡くなって悲しいんだっけ?って思って。その人とのそれまでの関係を知っていると、『別にこの人のこと忘れて生きてたよね?』っていう人たちが、誰かが亡くなった時にこぞって悲しみ出すことに違和感があって。それは悪いことではないんですけど、そういうものだな…という感触で。『左様なら』の映画版としてはそこを描こうと思いました」

芋生「そういう部分も自分の中では分かったうえで、由紀という役にそれを前面に出してしまうと、押しつけがましい感じに映るので、難しくもありましたね。いじめグループの子に水をぶっかけるシーンも、由紀は自分では理由がよく分かっていないっていう」

石橋「ずっともやもやしていながら、その正体がわからない」

芋生「それを頭で考えてしまうといけないと思って、なるべく空っぽで向かうようにしていました。役作りをするときに、台詞に細かく気持ちを入れるのが好きだったりするんですけど、この映画では一切しなかったですね。いろんな人が由紀に話しかけてくることに対して、受けて返して、ということを考えました」

――こうやって二人で話しているのを聞いていると、この先も、二人のタッグは続いていくんだろうなと期待しちゃいます。

石橋「今は、静かな情緒のある作品で来ているんですけど、実はけっこうエンタメの作品も好きで、コメディを撮りたい気持ちもあるんです。マンガの実写化にもめちゃくちゃ興味もあるので、そういうところでも一緒にできたら楽しみだなって思います」

芋生「コメディ、やってみたいです! 石橋さんの新たな作風を一ファンとしても見たいですし、それに関われたら光栄でしかないです。さきほどの介護の話も、重い話なんですけど、石橋さんならそれを日常に近づけてフラットに描いてくれるんだろうなって思うし。またご一緒できるまでに、私もたくさん引き出しを増やしていきたいです」

石橋「お互い離れている時も、それぞれ頑張りながら、合流出来たらいいね」

■『MOOSIC LAB 2018』映画『左様なら』上映スケジュール】

11月20日(火) 21:10〜新宿K’s cinema
11月25日(日) 19:00〜新宿K’s cinema
11月30日(金) 21:10〜新宿K’s cinema
12月11日(火) 18:20〜渋谷UP LINK
12月12日(水) 21:10〜新宿K’s cinema

■石橋夕帆(監督・脚本)

2015年、監督作品『ぼくらのさいご』が田辺・弁慶映画祭コンペティション部門に選出され映画.com賞を受賞、横濱HAPPY MUS!C 映画祭で音楽映像部門最優秀賞を受賞。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、福岡インディペンデント映画祭、小田原映画祭、新人監督映画祭等。国内複数の映画祭に入選。 2016年、『それからのこと、これからのこと』を監督。同年6月にテアトル新宿、シネリーブル梅田で開催された田辺・弁慶映画祭セレクション2016で監督作品の特集上映を行う。 2017年、『atmosphere』『水面は遥か遠く』『いずれは消えてしまうすべてのものたちへ』『閃光』を監督。『水面は遥か遠く』がショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017ミュージックショート部門奨励賞を受賞。同年、TBSドラマ『コウノドリ』放送直前SPナビ番組の取材ディレクターを担当。

■芋生悠(岸本由紀役)

1997年熊本生まれ。2018年2月に映画『野球部員、演劇の舞台に立つ!』(中田節夫監督)が公開。ぴあ初日満足度ランキング1位を獲得。4月には主演短編映画『ひとひら』(吉田奈津美・町田梨華監督、是枝裕和監修)が第9回沖縄国際映画祭にノミネート、上映。また第2回未完成映画 予告編大賞『MI-CAN』にて主演作『ヒノのヒゲとレインコート』(八幡貴美監督)が大根仁賞を受賞。『あの群青の向こうへ』(2018年/96分/主演)で、『2018門真国際映画祭』最優秀主演女優賞を受賞。ラジオでも初のメインパーソナリティとして4月からFM MOOV「芋生悠 はじめてのラジオ」(火曜9:30〜10:00放送)にレギュラー出演。ステッカー所属。

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