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2018/10/28 09:54
NMB48での8年間を濃縮した新たな山本彩の「生誕祭」 山本彩卒業コンサート『SAYAKA SONIC』に3万人
NMB48 山本彩卒業コンサート『SAYAKA SONIC 〜さやか、ささやか、さよなら、さやか〜』が27日、大阪・万博記念公園 東の広場で30000人のファンを集めて開催された。山本彩がNMB48で過ごした8年間を濃縮して詰め込んだ3時間。「SAYAKA SONIC」とは、ファンが名付けた「山本彩生誕祭」の呼称に由来するが、まさにこの日は、山本が卒業を経て新たに生まれ変わるためのフェスであると感じる1日だった。
コンサート中、山本自身が「これまでの全部を分かち合いたくて、無理言って詰め込んだ」と語るセトリ・構成は、山本の8年間の軌跡そのもの。1曲目、アカペラでソロで歌いだしたのは、NMB48初のオリジナル劇場公演「ここにだって天使はいる」のために書き下ろされた「初めての星」。山本の凛とした声が野外ステージに響き渡ると、その声に導かれてNMB48メンバーが続々とステージに登場。全メンバー71人が揃うと、巨大なステージの端から端まで優に到達する。これだけ多くの少女たちが、山本の背中を見つめ、追いかけてきたということを、視覚的にも理解させられる。
ヒットナンバー「イビサガール」「ナギイチ」、デビューシングル「絶滅黒髪少女」などを披露した後は、山本のソロライブを支えるバンド「チームSY」が登場し、ソロアーティスト・山本彩を存分に見せつけるステージを展開。小学5年生でアブリル・ラヴィーン に憧れてエレキギターを始め、小中でバンド活動。この頃に「音楽を仕事にしたい」という想いを強くしたという彼女にとって、バンドは“もうひとつの私の原点”というべきものなのだ。
可愛く清楚なアイドル衣装から一転、黒の革ジャンにエレキギターを抱えて登場した山本は、ソロ曲「ジャングルジム」「抱きしめたいけど」をバンドと共にパフォーマンス。さらにNMB48のメンバーが加わって、山本作曲のNMB48ナンバー「孤独ギター」へ。ここではセンターステージで、日下このみのパッショネイトなソロダンスと山本のギターが交じり合う。NMB48楽曲のなかでもロックテイストの「HA!」をバンドアレンジで聴かせた際には、「万博ーッ!」とファンをあおる山本。その姿は、近い未来に観られるはずのソロアーティスト山本彩の野外コンサートが、今眼前で繰り広げられている錯覚をさせられるほどだった。
MCを挟んだ4つ目のパートは、各曲の歌詞一つ一つに、山本がNMB48メンバーへの想いをこめたパートだったのかもしれない。長い時間をかけて育んだ想い「結晶」、自分なりの生き方を見つけて扉を開ける「最後のカタルシス」、新たな夢を乗せながらたゆまず進んで行く「星空のキャラバン」、“自分らしく”生きる大切さ「365日の紙飛行機」。最後に研究生メンバーとともに歌った「夢は逃げない」には、“夢を自分から諦めるな”という強い叱咤激励のメッセージを歌い込んだ。
そこから、山本が多彩な衣装に早着替えするユニットコーナーに突入。キレッキレのダンスからの「野蛮な求愛」では、加藤夕夏をはじめとするNMB48きってのダンスの猛者たちの中においても、圧倒的なダンスを見せつける山本。歌唱力が特に注目されるが、ダンスの実力もAKB48グループ随一だったことを再認識する。そして、白間美瑠、吉田朱里、川上礼奈ら現在残っている第1期生で歌った「友達」では、モニターに大写しになった山本の目が潤んでいるようだった。
そして俗にいう『エモい』瞬間が続発したのが、NMB48卒業メンバーたちとのコラボレーションだ。1期生のなかでも仲の良いメンバーと組んでいた非公式ユニット“俺ら”のメンバー、小笠原茉由、三秋里歩、岸野里香、山口夕輝が登場し、「俺らとは」を歌唱すると“うおーっ!”という驚きと歓喜が地響きのように伝わり、真っ赤なペンライトの海が広がる。
続く「プライオリティー」では、男装姿の百花が登場。やはり男装姿の山本と、太田夢莉、三田麻央を巻き込んでの「百合劇場」を展開。女性同士のキスを見せつけると、女性専用エリアから“悶絶”の声が上がった。山本と太田は“さやゆーり”としてイチャイチャぶりを見せつけているが、こうしたNMB48ならではの“百合妄想”を愉しんできたのも山本の一面。それがAKB48グループにおいてのNMB48の女性ファンの多さの一因になっていたことも否めない。
『横山本』と呼ばれる、山本の盟友、AKB48総監督・横山由依からのビデオメッセージでは、横山がNMB48と兼任をしていた時代、エースでキャプテンという重責を担う山本に対し、「抱えた荷物を半分持つ」と自身も“クサい”と笑う台詞で支えたエピソードを振り返る。さらに1期生の山田菜々も多忙につきビデオメッセージ…と思わせておいてステージに登場。デュエット曲「太宰治を読んだか」を聴かせた。
続いて、渡辺美優紀ラストシングル「僕はいない」のイントロが流れざわつく中、スクリーンに渡辺の顔が映し出されると、この日一番のサプライズ演出に会場は“大爆発”。もう二度と見られないと思われていたWセンター“さやみるきー”の奇跡のツーショットに歓喜があふれた。微妙で、絶妙で、複雑な関係の二人の約2年ぶりの邂逅。渡辺の“さやかちゃん”呼びに、「エモさ」を抑えきれない女性ファンがいちいち悲鳴をあげるのも無理のない事だろう。
ラストスパートは火焔の特効が度肝を抜く「カモネギックス」に始まり「甘噛み姫」「北川謙二」「僕らのユリイカ」のシングル曲をメンバー総出で畳みかけ、本編ラストソング「ずっとずっと」の最後には盛大な花火が上がった。すぐに巻き起こった「さやかコール」で舞い戻った山本は、美しい白のドレスに身を包み。ラストシングル収録のソロ曲「忘れてほしい」を歌唱。情感たっぷりの楽曲を、確かな歌唱力で歌い上げた。
ソロ曲を歌い終えた山本の元には白間、吉田、川上の現役1期生に、出演した小笠原、三秋、岸野、山口、百花、渡辺、山田、さらに上西恵、近藤里奈、木下春奈、門脇佳奈子、沖田彩華、山岸奈津美ら卒業生が加わり「卒業旅行」を歌唱。またさらに、太田里織菜、肥川彩愛、松田栞、篠原栞那、小柳有沙、森彩華、原みづきも参加して「三日月の背中」を披露。すでに母になったメンバー岸野、松田もおり、8年という時の流れを感じさせるが、卒業メンバーとポーズをとる山本の顔は、穏やかな表情に満ちていた。
郷愁に浸る大切な時間を経て「卒業生のみんなと歌えるのもうれしいですが、今いる現役メンバー全員であの曲を歌わせていただきたいと思います!」と、NMB48在籍最後のシングル曲「僕だって泣いちゃうよ」を、そしてNMB48初めてのオリジナル曲にして、これまで幾多のコンサートの最後を飾ってきたNMB48のアンセムといえる「青春のラップタイム」を披露。この楽曲中に「NMB48は、私の青春でしたー!」と叫んで花道を全力疾走する姿に、山本彩のNMB48人生の完全燃焼を見ることができた。
花道に並んだメンバー全員とハイタッチし、最後の劇場公演(11月4日)について「もう少しだけ、NMB48とアイドルをまっとうしたいと思います」とコメント。一人ステージに残った山本に対し、3万人からの「さやかコール」が自然発生。感極まり目を潤ませながら「私は、応援してくださる皆さんはもちろん、NMB48のメンバーが好きだから、グループが本当に心の底から好きだったから、こんなにも長く続けてこられたし、情熱を注いでくることができました。これからは私と同じようにたくさんのメンバーが、NMB48にすべてを懸けて、もっともっと素敵なグループになってくれると思っています」とメッセージ。
続けて「卒業する身の私が、これからのNMB48を担うみんなの道標になれるように、私自身、もっともっと精進して自分に厳しく、みなさんを幸せにできるように頑張っていきます」と宣言。メインステージ後方に現れた、天へと長く続く階段を上って去って行く山本。その姿には新たな、明るい未来が広がっているように見えた。
ステージ上で「前から歌うことを仕事にしたいと思っていましたが、チャンスをつかめずに挫折をして、一度その夢を手放していました。でも、もう一度私に歌うことを許してくれたのがNMB48でした」とグループに感謝の気持ちを贈り、「これからの私の人生をかけて、恩返しをさせてください」と語った山本。ソロのアーティストしてのREBORNを果たす彼女にとって、このNMB48で過ごした8年間は、かけがえのない財産となったはずだ。
■『SAYAKA SONIC 〜さやか、ささやか、さよなら、さやか〜』セットリスト
01.初めての星
02.転がる石になれ
03.ワロタピーポー
04.イビサガール
05.ナギイチ
06.絶滅黒髪少女
07.RESET
08.約束よ
09.ジャングルジム
10.抱きしめたいけど
11.孤独ギター
12.HA!
13.結晶
14.最後のカタルシス
15.星空のキャラバン
16.365日の紙飛行機
17.夢は逃げない
18.Bird
19.Blue rose
20.嘘の天秤
21.野蛮な求愛
22.友達
23.俺らとは
24.プライオリティー
25.太宰治を読んだか
26.僕はいない
27.カモネギックス
28.甘噛み姫
29.北川謙二
30.僕らのユリイカ
31.ずっとずっと
EN1.忘れて欲しい
EN2.卒業旅行
EN3.三日月の背中
EN4.僕だって泣いちゃうよ
EN5.青春のラップタイム