「RIZIN」のリングでも戦っている女子総合格闘家・渡辺華奈（FIGHTER’S FLOW）が9日、東京・新宿FACEで行われた『DEEP JEWELS』フライ級（56.7kg）5分3R（ヒジ打ちあり）の試合で奈部ゆかり（HMC JAPAN）と対戦。判定ドローに終わった3月大会からのダイレクトリマッチとなったが、攻勢をとった渡辺が2-0判定で勝利を収めた。

　柔道界から十分な実績を引っ提げ、昨年12月に鳴り物入りでプロの総合格闘技に参戦した渡辺。大晦日の『RIZIN』では、テレビ番組『超人女子』出演で知名度の高い杉山しずかを破ってトップ戦線に名乗りを上げた。しかし今年3月の奈部との対戦では、ともに柔道をベースに持つ選手同士、決め手を欠く展開でドローに終わり、渡辺はリングで悔し涙を流した。

　実力の拮抗した接戦からの再戦は、前回の5分2Rより1ラウンド多い5分3R、さらにヒジ打ちが認められたルールで対戦。完全決着を目指す2人は、前日軽量での会見でもひりついた舌戦を見せ、当日も気合十分の表情でリングインした。

　1R序盤は、先手を取って仕掛ける奈部のパンチが渡辺の顔をのけぞらせるシーン目立つ。一発、奈部の右がきれいに当たり、渡辺の動きが一瞬止まったところに奈部がラッシュからのテイクダウンを仕掛けるが、渡辺は辛くも対処。距離を取ると逆に渡辺が力強い右ストレートを打ち込み、組み付いても渡辺の膝蹴りが有効。ラウンド後半に組んだ状態から渡辺が内股で投げるも、きれいに回りすぎてしまい、奈部がバックから攻撃を仕掛ける形に。最後はコーナーに押し付け合う状態で、ほぼ互角の内容でラウンドは終了。

　2Rは組み合いからの打撃の攻防の展開に。渡辺のヒザに対し、奈部は組み付いてパンチ対抗。ロープ際での渡辺の投げを奈部はディフェンスするも、ロープを掴む行為に対してレフェリーから口頭注意が与えられる。このラウンド、渡辺が鼻血を出しドクターチェックが入った。

　3Rはスタートから中間距離でパンチを打ち合う。ロープ際で組み合う展開のなか、渡辺が投げると、両者ロープの間からエプロンサイドに飛び出してしまう。両者をコーナーに分けての再開後、渡辺が積極的に右ストレート、コーナーに詰めてのヒザ蹴りで攻勢。奈部も負けじとパンチを返す。終盤、ロープ際で渡辺が奈部を投げてバックを取り、パンチと首狙いで攻める。奈部も立ち上がって片足タックルで逆襲。最後は渡辺が奈部の足を刈って引きずり倒し、上になったところでゴング。

　うつむき加減の不安げな表情で判定を待つ渡辺だったが、ジャッジは29-27、29-27、28-28と2者が渡辺を支持。奈部が投げを受けた際にロープを掴んだ行為に対してイエローカードが出たことを考えると、やはり今回も僅差の戦いだった。勝ち名乗りを受けた渡辺は、今回は安堵の表情を浮かべ涙を流した。

　連勝を阻んだ相手との再戦を勝利でクリアした渡辺は、今回の戦いで、多少泥臭くとも勝利を求める気迫を見せつけてくれた。傷だらけの顔はその勲章と言えるだろう。スター性と実力を併せ持ち、まだまだプロ格闘家として成長中の彼女が、今後の女子格闘技界をけん引する一人であることは間違いない。