ニュース
2016/11/15 17:14
東宝シンデレラグランプリの15歳・福本莉子さん 選考の決め手は「透明感」と「東宝ブランドの王道」
過去に沢口靖子(1984年・第1回)や長澤まさみ(2000年・第5回)など数々の女優が輩出、今年5年ぶり8回目の開催となった『東宝シンデレラオーディション』。総応募数9508人のなかからグランプリに選ばれたのは大阪府の高校1年生・福本莉子さん。審査員は「何にも染まってない透明感、東宝ブランドの王道の部分を持っていました」と選考の理由を語った。
「東宝シンデレラ」では1984年に行われた第1回で沢口靖子、2000年の第5回で長澤まさみを輩出。5年前の第7回で当時10歳にしてグランプリとなった上白石萌歌は、今年ミュージカル『赤毛のアン』で主演。審査員特別賞を受賞した姉の上白石萌音は、社会現象となったアニメ映画『君の名は。』のヒロインの声優を務めブレイクを果たした。
今回のグランプリ特典は、東宝製作映画での女優デビュー。応募の方法を公式サイトからのデジタル応募に一本化して、初の試みとして書類審査を廃止、全国10都市での予選会で全員面接を実施した。対象年齢は9〜18歳で9508人が参加。29人が東京での2泊3日の合宿審査に進み、ファイナリスト11人がグランプリ発表会へと臨んだ。
そうした新機軸を打ち出しつつも、グランプリを受賞した福本莉子さんを見ると、「東宝シンデレラ」で求められるものは『王道を行く女優の原石感』で、変わらないとも思わせた。
グランプリ発表会ではファイナリストが1人ずつ、ステージに登場。自己紹介や簡単な自己PRを行った。中1、中2、小5、小6、小4……。最年長は高3だが、全体的にあどけなくも顔立ちのきれいな女の子が多く、スピーチで言葉に詰まったりするような初々しさが漂った。特技として空手やダンスを披露し積極性をアピールする人も。
そんななかで高1の福本さんの年齢は上から2番目。ヴィジュアル的には今ドキのJKというより、可愛らしいが落ち着いた雰囲気を持っている。「フェスやライブでプロの方たちの演奏や歌を聴くのが好き。ドラマや映画もよく観ます。そんな私の毎日は友だちとワイワイ騒ぐだけの普通の高校生。今回、演技やダンスの楽しさを知って、観たり聴いたりだけでなく、自分でやることで人に楽しんでもらえたらと思いました」。そう語る自己紹介も理路整然としっかりしていて、そのキャラクターを印象づけた。
いよいよ各賞発表となり、コラボした集英社の各誌に登場できる「ヤングジャンプ」賞、「Seventeen」賞、「non-no」賞など6賞、Webサイトの専属モデルとなる「レピピアルマリオ」賞、アニメ作品の主題歌を歌うアーティスト賞、審査員特別賞と続く。最終的にグランプリとして名前を呼ばれた福本さんは、一瞬キョトンとした顔を見せつつ、涙を流したりはしなかった。賞金300万円の目録やマント、ティアラ、ガラスの靴と受け取りながら、相変わらず落ち着いているように見えた。
受賞後のステージ上で「すごくビックリして、言葉に表せないくらいうれしいです。いろいろな世代の人に愛される女優さんになります」とはっきり語り、その後の人生初の囲み取材でも動じるところがない。
今回応募したのは「友だちに勧められ」たことがきっかけ。好きな女優は「長澤まさみさんと北川景子さん」。部活は「中学ではサッカー部でした」とのこと。そして「サスペンスをやってみたいです。今のドラマでは『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』を観ていて、カラオケでは星野源さんを歌います。ダンスが流行っているので、頑張って踊れるようにしているんですけど」とも話していた。
囲み取材に立ち合った第7回審査員特別賞の山崎紘菜は「私は5年前こんなに落ち着いてなかったと思います。すごくしっかりしてますね」と驚き、上白石萌音は「透明感ってこういうことを言うんだと思います。目を見たら吸い込まれそう」と感嘆。上白石萌歌は「私はなぜか(福本さんの受賞に)号泣してしまって。自分の5年前を思い出したり、“これからたくさんのことを経験していくんだな”と、(年齢は)1コ差なのに自分が母親のように感じて(笑)、愛おしく思います」と話していた。そういう萌歌自身も、5年前はグランプリと発表されても涙ひとつ見せず、動じなかったのだが…。
オーディション実行委員会は福本さんの受賞について、こうコメントしている。
「控えめな佇まいにも関わらず、クールで芯が強く知性的な面を持ち、一見子どもらしからぬイメージがありました。合宿審査では一転、終始笑顔で課題に取り組み、そのインパクトに審査員たちが惹き付けられました。そういう“気”のようなものがありました」
そのうえで「何にも染まってない透明感、東宝ブランドの王道の部分を持っていました」とも評していた。日本の映画界を支え続ける東宝で育てる女優は、時代の流れに左右されず広く愛されるタイプというのは、不文律となっているよう。50歳を越えても清純イメージを失わない沢口靖子を始め、過去の受賞者にも共通している。福本さんのただ可愛いだけでない聡明な佇まいは、その点で他のファイナリストより抜きん出ていた。
5年前の受賞者は上白石姉妹や、ベストセラーが原作で来年公開の映画『君の膵臓をたべたい』に主演する浜辺美波(ニュージェネレーション賞)らローティーンが多く、じっくり育てた結果、ここに来てその才能が花開いている。映画デビューが決まっている福本さんは演技経験はないが、年齢的には彼女たちと同世代だ。刺激し合って映画、ドラマ界を盛り上げてくれることが期待される。
取材・文/斉藤貴志